アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
■《弱肉狂食》について
【スクラップ・アビス】が獲得した最終スキル、《弱肉狂食》はラーニングのキャパシティを拡張するスキルである。
これは《弱肉狂食》が超級職の疑似器を元にしたものであるため、理論上、無制限にあらゆるスキルを溜め込むことが可能になっている。
最も、その能力にも複数の制限が存在していた。
まず、《捕食吸収》によって獲得する
【アビスシェルダー】の絶大なステータスは複数のモンスターの最強の部位からなる莫大なステータス補正によるものであり、《弱肉狂食》ではその恩恵を受けることが出来ない。
《液体生命体》による物理無効や、特定の特殊器官に由来するスキルといったものも行使不可能であり、明確な問題点でもある。
最も、これは同時に最弱の部位を取り込んだとしても能力や身体機能に問題をもたらさないという恩恵と表裏一体ではあるが。
第二に、《弱肉狂食》に溜まったリソースによって、【スクラップ・アビス】のリソースの器を圧迫し、
このレベルアップによって、
自らの成長可能性を削り取ってしまい、場合によっては限界を超えて危険な負荷をもたらす可能性すらあった。
神話級で頭打ちになるはずの【スクラップ・アビス】がイレギュラーに到達したからくりの正体である。
もっとも、もはや成長限界に問題はない。莫大な量のスキルがその力を補正してくれる。その上、元々ステータスは《最強の形》によって得ている。
第三に、獲得量に比例して獲得のための必要な経験値量が莫大になっていくこと。
これは超級職というものの必要経験値曲線に比例するものである。
同じスキルを獲得するにも、《弱肉狂食》に溜まったリソース量に比例してそのコストとして必要となる経験値の量が違ってくるのだ。
これもまた、《弱肉狂食》の中に溜まった余剰経験値によってスキルの出力を高めることができる恩恵と表裏一体ではある。
それに《真珠化》によって死体が保有するリソースを全て食らえる以上、合ってないような問題だった。
第四に、形質獲得によって、器自体が異形化していくこと。
獲得した形質が多ければ多いほど、キメラの宿命として頑丈さが……結合部位の強度が下がっていく。
【アビスシェルダー】は脆い部位を切り捨てることでそれを回避していたが、《弱肉狂食》は疑似器。スキルによって部位を切り捨てることが出来ない。
通常、意味のない問題だが……獲得スキルの強度が下がっていってしまう。出力を補強するタイプのスキルでもない限り、状態異常などのスキルの成功確率は下がり、攻撃系スキルは防ぎやすくなり、《破壊権限》などの概念干渉によって破壊されやすくなってしまう。
もっとも、性能は据え置きのため通常は問題にならない。
これらは《捕食吸収》と《弱肉狂食》の構造上の欠陥。
このような形でスキルを構築した以上、避けられない限界である。
だが、制限の有無は問題ではない。
スキルを学習して獲得するスキルである以上、どのような制限が課されようと本質的に問題ではない。
中身に収められたものこそ、真に脅威なのだから。
■■■
【破壊王】をかたどった【スクラップ・アビス】の姿が変形していく。
獲得した形質からではない。
一部のスキルが持つ、自身を変化させるスキルによるものだ。
例えるなら、【嫉妬魔王】の《
類型が作られるほどにありふれた、第二形態を持つUBMの変身スキルである。
【深海狼猿 ウォーモンガー】という、なぜか海底に住まう狼とゴリラの合成獣めいた姿の魔獣の固有スキル、《深淵の満月》。
その効果はこれまた釈然としない。
なぜなら、狼とゴリラの合成獣が、狼男に変身してそのステータスを4倍に引き上げるというものだからだ。
生息域も、生態も、姿も、なんならスキルも納得がいかない存在。
それ故に【アビスシェルダー】に食われ、分体としての切り離しも失敗。
真珠の塊として、山の中に眠っていた。
【スクラップ・アビス】はそれを獲得し、行使する。
【鶴首爆死 ラステッド・ワン】の致死状態時肉体変異強化スキル、《カウントダウン・ゼロ》。
一定時間以内に失った、HPの総量に比例して自身の姿を強化する固有スキル。
自分自身の体を最適化し、能力を向上させるという意味では【グローリア】の《起死回生》の類例だった。
現在進行系で数億もの最大HPを失いつつある【スクラップ・アビス】にとって最強の相性を持つスキルである。
【傷痕超克 タブー・スカー】の耐性獲得スキル、《
受けたダメージに対して肉体を作り変え、耐性を獲得していく固有スキル。
カルディナの超級、アルベルト・シュバルツカイザーの【セプテントリオン】に似ているが、こちらは複数回ダメージを受ければ受けるだけ耐性を引き上げていく仕様になっている。
ダメージの種類によってはより効率の良い形質を獲得し、生態に由来するスキルによって攻撃を完全に無効化することも可能になっていた。
その3つによって、爆発的に姿を変異させ、そのステータスを引き上げていく。
その上、体の上から目で見てわかるほどにある力を帯びる。
鮮血の如き赤の攻性バリア。
金とも銀ともつかぬ金属でできた隙間のない金属鎧。
海の青に似た色合いの竜王気に混ざり、その中で充填されつつある荷電粒子。
瞬くように構築と発動を繰り返す魔法。
「おいおいおい、ここにきて意趣返しか? 【アビスシェルダー】の取り巻きごっこかァ?」
ウルティマは煽って見せるも、内心冷や汗を流す。
勝利条件が書き換わってしまった。
ここで【スクラップ・アビス】を逃がせば、奈落の悪夢は完全に。いや、それ以上の形で蘇る。
生成するドローンに自身の獲得したものを上乗せする手段もすぐ身につけるだろう。
学習能力の高さと扱う悪意の強さが、並のUBMの比ではない。
『ウルティマ! 緊急事態だ!』
緊急の通信魔法。
「こっちもヤバい! そっちは!」
『【スクラップ・アビス】外殻が真珠から
「なんで超級金属だってわかる!?」
『忙しい状況に割り込んでマチュに鑑定させた! あいつは金属に関しては天才だ!』
ある
推定で温度変化と魔法に対して完全耐性、物理攻撃に対しても高い耐性を有し……推定の硬度はEND換算で50万を超えている、とみなした。
すなわち。超級の守りである。
『それに凍らせたはずの海水が【スクラップ・アビス】に向かって流れ込んでる!』
「多分海属性魔法で強引に引き込んでる! こっちで魔法を連続行使してやがるからな!」
海水。鎧。赤い攻性バリア。
グランバロアに所属するマスターなら、誰でもわかる。
それはついこの間、超級が複数人掛かりで討伐したばかりのモンスターのスキルだからだ。
「予備があったのかよ! これだからUBMは笑えない!」
【アビスシェルダー】の眷属。その固有スキルを【スクラップ・アビス】は獲得していた。
使い勝手がいいが故に、真珠の山の中に、《捕食吸収》や《真珠化》と同じように複製したスキルを持つ個体が眠っていたのだ。
「こっちは【アビスシェルダー】みたく固有スキル山盛りに進化しやがった! レベル100超えだ!」
『~~~~~~~~!? マズい、マズいぞウルティマ!』
「何がだ!? こっちですでにヤバいことはわかるが!」
『あいつ、金属鎧も自食してる! こっちから見て金属も減ったり増えたりしている!』
「はぁ~~~~!?」
そう。
【スクラップ・アビス】が見出した、もうひとつの勝ち筋。
海水から金属鎧を生み出す固有スキル《
《悪夢の残骸》によって、自身の体の一部として認識。
《
『思ったよりもマズいことになっているね。莫大な量の経験値を獲得して……自分自身を神の器に作り変えるつもりだ。あるいは鎧の方をそうするのかもしれないけれど』
通信に割り込んできたのは【読竜王】だった。現在、ウルティマの行使する《竜王気》を制御するため、【デウス・エクス・マキナ】に同乗している。
そのため、ウルティマの行う通信には簡単に割り込める状態にあった。
「魔剣は
『呼び水にする分には残滓でも構わないのさ』
「これだからUBMは!」
スキルそのものの可用性、柔軟性がマスターやティアンのそれと比べて高すぎる。
好き勝手に弄り回して作り変えるのにあまりにも向いていた。
そして、それが
「はぁ~……。
『……はいよ。任された』
「《
想定外の。そして切り分けた切り札の1つを、
用意したこと自体が作戦会議のネタ出しと息抜きの一部でしかなかった手札を、現実段階に引き上げる。それを可能なのは
ゆえにこそ、信じて託す。
全ては、グランバロアを守るために。
《
捏造設定です。
攻性バリアの方も名前つけようかと思ったけどやめました。
たぶんつけても出番がないので。