アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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《MOSES STYLE》

 □《竜神器》について

 

「……ふむ。キミの【ドラグウィンター】、まだ解放されていないスキルがあるね」

「【読竜王】の鑑定スキルやっべぇ。ナチュラルにエンブリオ読んでるじゃないか」

「私はそれに特化したUBMだからねぇ」

 

 ウルティマの覚悟を伝え、総力戦の準備をしているさなか。【読竜王】は、A*(エースター)とアヤカの二人と会議中のウルティマに声を掛けてきた。

 ごく自然にエンブリオと融合した特典武具のスキルの詳細を読み取り。

 

「ああ。なにやっても開放されないからよっぽどな条件なんだろうなって思ってる」

「まあ、そうだろうね。なぜなら《竜神器》について習得可能なレベルに知ることが条件になっているからね」

「それって、実質不可能ですよね? 伝え聞く【龍帝】の《竜神装》ですら、一代かぎりの技術だったそうですから」

「……キミも大概、いろいろ知りすぎてるね? 私が言えた義理ではないけれど」

「そういうエンブリオですから」

 

 さも当然のように開放されていないスキルについて語る【読竜王】。

 そして、言われない限りは気が付かない極端な条件を明かされる。

 比較対象ですら、黄河の【龍帝】のうち、もっとも優れた存在の使っていた独自技術である。

 それがどれほどのものか。

 

「《竜神装》なら、今代で使える者は10指にも満たないだろうね。《竜神器》に至っては、おそらく私と……私の玄孫の【秋竜王】くらいだろう」

「そんな、あり得ない! 特典武具のアジャストによる条件は達成可能な条件にしかならないはずだ!」

「だから、できるんだろう? ウルティマくん、キミは【ドラグウィンター】との戦いで理解しているはずだ。《竜神器》のその原理を」

「……ああ。」

 

 【ドラグウィンター】との死闘を超えた死闘。

 防御原理を凍結され、攻撃スキルのほとんどを凍結され、保有するステータスのみによる壮絶な殴り合いによって勝利。

 その中で垣間見た、《竜王気》の究極奥義。

 それこそが《竜神器:冬火征々》である。

 

「前提は、《竜王気》の特性付与。自分色の属性で、《竜王気》を変質させる。これができるか出来ないかで竜王としての格が変わってくる技術だ」

 

 【ドラグウィンター】も使っていた。絶冬の領域を展開するスキル。

 

「次に、《竜王気》そのものの極限の練度。【ドラグウィンター】の《竜王気》は、限界まで練り上げられていてそれだけで本来の赤から青白い色合いに変わってた」

「そう。圧縮にしろ変質にしろ、《竜王気》そのものの練度が必要になってくる。このあとの工程のために」

 

 【ドラグウィンター】の主な能力は竜王気。ただそれだけを極限にまで練り上げた、破戒の力だった。本来、付与された特性自体は伝説級にも満たなかった。

 それを、《竜王気》の練度のみによって神話の領域に引き上げていた。

 《竜王気》の怪物である。

 

「そして、《竜王気》の構成を……SPに偏らせる。大体10対1くらいかな」

「うん、それこそがキモなんだ。魂力(SP)による、器の内なる変革」

 

 《竜王気》の性質を変化させるには、その構成材料……MPとSPのバランスを変えるのが最も手っ取り早い。

 僅かなバランスの差で、《竜王気》は簡単に崩れてしまう。だが双方の練り上げ方を練達すれば、片方が極端に少なくなっていても《竜王気》の構成を維持することが可能になる。

 そしてSPに特化して練り上げられた《竜王気》はダメージ減衰だけではなく、強烈な自己強化の性質を帯びるようになっていく。

 

 「そしてその《竜王気》を超大量に生み出し、自分自身のレベルを特性付与の要領で変質させて強化する……これがオレの知る《竜神器》の概要だ」

 「……なるほど」

 

 そして、決定的な間違いを【読竜王】は見つけた。

 つまり、ジョブとレベル。それに対する認識である。

 《竜神装》と違い、《竜神器》にはその認識が非常に重要。なぜなら……。

 

「《竜神器》は、()を変質させ、()へ至るための技術だよ。魂力(SP)が基盤となるのは、元々SPには器を強化する性質があるからね」

「……器?」

()ですか……。確かに。一般には知られていない知識ですね」

「簡単に言えばジョブや、モンスターの体のことだ。経験値(リソース)を貯める機構そのもの。エンブリオもこれのひとつだとされてる」

 

 当たり前すぎて理解されない概念である。

 世界の深淵に触れた知識である。

 

「まあそのあたりの詳細はおいておいて。レベルの器を、SPに偏らせた大量の《竜王気》で変質させて、別のものに作り変える。それが《竜神器》だよ」

「なるほど……。で、それで何が違うんだ?」

「一番わかり易いところだと……レベルの概念がなくなる。注ぎ込んだ《竜王気》の多寡でステータスとスキルの出力が変わるし、《竜王気》に付与された特性へしたがって発揮できる力の特性が変質する」

「ああ、それで【ドラグウィンター】殴ったら拳が凍ったのか」

「……それ、本当によく勝てたね?」

 

 《竜神装》が外界に多量の《竜王気》を展開・圧縮することで物質化させる奥義ならば、《竜神器》は自らの器に《竜王気》を溜め込むことで器を変質強化する秘奥。

 マスターなら「具現化系か、強化系の違いですかね?」という発言が出ることだろう。

 そして大まかな認識という意味ではそれで間違いがない。

 多量の《竜王気》を操作し圧縮するのと違い、《竜王気》そのものを極限まで突き詰めた先にある技術。《竜王気》だけをひたすら極めた先にある。

 

「……あ、開放された。《竜神器:冬火征々》……【ドラグウィンター】が使っていたそのまんまだな」

 

 □■□

 

 《MOSES STYLE(モーセ・スタイル)》。

 

 ウルティマの《竜神器》が開放されたあと、《竜王気》への特性付与を土台にスキルを統合する案が発案された。

 その結果が《螺旋収束(キメラ・サイクル)》であり、グランバロアの超級をモデルにいくつかの案が作られ、【読竜王】の制御によって実現されている。

 これらは《サイバネティックルール》を《竜王気》に付与することで、受け皿を作り出し、そこに無数のスキル特性を統合することで成り立っていた。

 変形によって自在に圧縮・物質化を行える《サイバネティックルール》と《竜王気》の相性は激烈。

 

 そして、その案出しの際に出てきて持て余したのが《MOSES STYLE(モーセ・スタイル)》だった。

 モデルとなった【展薙海闢 モーゼ】は、海水操作を能力としており、そのマスターもまた防御魔法を得意としている。

 つまり……戦闘のための能力でありながら根本的に今回の戦いでは必要がなかった。

 

 【アビスシェルダー】と【破壊王】の戦いでは戦うための土地が必要だった。それを作り出すための力として重宝されていた。

 だが、ウルティマにとって、多少の海の深さは脅威にならない。深海でもなければ妨害にすらならない。

 もしかしたら深海に逃げる可能性も考えて案だけは練られていたのだがそれも途中で投げ出した。

 

 故に、中途半端に仕上がっている。

 これを、A*(エースター)は高速で仕上げ、それを制御する必要があった。

 

(制御担当は……【読竜王】は使えない。ウルティマの戦闘の支援に集中させなければ。なら)

 

 規定案では、《竜王気》をベースにする予定だった。これは《竜神器》の強化によって、爆発的に高まった《竜王気》の出力によってスキル群を強化するためであり、最大出力を発揮するための手段。

 ならば……。

 

「ユーリ! ミコラーシュ! アーミィ! お前らの演算能力、借りるぞ!」

 

 機人系統上級職【機騎(サイボーグ・キャバリア)】の奥義、《クラスタリンク》。これは他の機械と接続し、演算能力を貸し与えるスキルだ。

 演算器が壊れた機械であっても、演算能力を貸し与えることで操作可能になる奥義だった。

 機人系統はサイボーグであるため、同系統の味方に演算力を貸し与えることが可能であり……一人の行使する演算に、複数の機人の演算能力をプラスすることができる。

 また、演算に伴う制御の技能も貸し与えられる。

 機人氏族の方々が、ウルティマの戦いに力を貸し与えられる理由でもある。

 

 A*(エースター)が声を掛けたのは従魔師系統をメインジョブとするマスター。

 つまり、多数の配下を操って従える、その経験を持つ人物。

 

「これしかねえ! 《MOSES STYLE(モーセ・スタイル)》!!」

 

 対応する特典武具は【()()()()()()()()()()()() ()()()()()()】。この特典武具が生成できる蜂の数は数十体、ではない。

 正確には、【びーずねすと】が制御・維持できる数十体という限界があるのだ。

 この制御限界は、【ウロボロス】に融合された時点で他の演算能力で拡張できる余地があった。

 最も、生成した配下を制御する演算能力を持つ装備などひとつも存在していなかったが。

 

 だからこそ、従魔師系統を持つマスター。必然的にエンブリオもそれに類するものであり、その根底的な演算能力を使えば。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 最も、それをやってしまえば分体に出せる命令は極めて単調なものになる。なってしまう。

 それが、変形して武器を取り出し、使用しろというものだけ。

 

「やれ!」

 

 瞬間的に、無数の数の蜂が【マクロス・アリステア】から解き放たれる。

 一体一体がウルティマのステータスとスキルを持った、凶悪なる分体。

 それらが魔力式大砲を構え、【スクラップ・アビス】の足元の海面へと向ける。

 

 それらは、()()()()()()()()()()()()()()というイカれたコンセプトで作られたモノ。

 

 融合によって強化された無数の砲門によって、海水は押しのけられる。

 ひとつで足りないのならば、千の数を束ねればよい。

 ひとつで超級エンブリオに届かないならば、千の力を束ねて実現する。

 

 それを可能とするのが、ウルティマの【層鱗融鎧 ウロボロス】。

 

 時限式とはいえ、準インフィニットにへと至った力の行使である。

 

 大海に、大穴が空いた。

 

「やれ! ウルティマ! 鎧の再生は止めた!」

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