アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
□ 【】ウルティマ・ウェポン
【スクラップ・アビス】討伐から丸一日。デスペナルティから明けたウルティマがログインしたのは、【マクロス・アリステア】だった。
存在しなかったはずのセーブポイント。それが気がついたら設置されている。
管理AIに街として認められたのか、それとも監視対象としてのマーカーか。おそらくは後者だろう。
設置されたと同時に、その周辺にいた、あるいはログアウトしたマスターのセーブ先がこちらに変更されていたようである。
「おい、ウルティマが戻ってきたぞ!」
【マクロス・アリステア】は、大量の戦利品を並べられ、それを調べ尽くしている蚤の市状態だった。
ところせましと引き上げたものを並べ、中には兵器の部品や工業機械のようなものまで並んでいる。
特に魔眼……巨大な魔法砲門はそれそのものが研究対象として、いくつか配置されていた。
それらの戦利品に夢中になっていた面々だったが、ウルティマがログインしてくるとその気配を感じ取り、意識を向ける。
ある意味で、これら戦利品の中で最も価値のあるものを手に入れた男。
実際のところ、オタクの集まりであるマクロス勢は情報に飢えている。分配を待たず戦利品の解析をしているのはそういうことだ。
やいのやいのとどんどんマスターが集まってくる。
「よう、戻ったかウルティマ」
「おかえり、ウルティマ」
「ただいま」
当然、
……地味に周囲のマスターの視線はそれに集まっているような気もする。
「ウルティマ! 特典武具手に入れただろ? 見せてくれよ!」
当然、そういう話になる。
そして、戦線に加わったものにはそれを見る権利がある。少なくともウルティマはそう考える。
「それじゃ……開封!」
手には特典武具を収められた【宝櫃】。それを開封する。
仕掛け箱のようにそのパーツをバラバラにしながら、中から飛び出したものが、少し離れた海岸へと落着した。
そこに落ちたのは、砲や機銃を一切持たない戦艦だった。
戦うための力を持たぬ、戦うための船。すなわち、後からそれをいくらでも得る事ができるという証左だった。
その銘、【狂喰分与 スクラップ・アビス】。
食らったものを切り分け与える、至宝。
「……きぐるみじゃないんだ」
ウルティマは、きぐるみになると思っていた。
あるいは、巨大な手持ち武器のようなものに。
事実、【冬竜撃槍】はその全長が35mにもなる、穂先が竜王気で構成された巨大な槍だったのだ。
【ウロボロス】であればそのようなものでも十全に、自在に扱える。
「装備補正は……なし。オレの特典武具は大体全部そうなんだけど」
【ウロボロス】は純粋な装備性能に依存しない。1つの枠に収まる装備品の強さに依存しないため、特典武具はそのリソースを余すことなくスキルに注ぐ。
その結果文章外の仕様がやたら強力になっていたり、厳しい制限の代わりに元と遜色ないスキル性能を保持していたりすることがあった。
今回、アジャスト対象となる固有スキルは6つ。
《真珠化》。《捕食吸収》。これらは【アビスシェルダー】の眷属として持たされていたもの。
《
《悪夢の残骸》。質量比で影響を無効化する、最強に近しい防御スキル。
《輝死改星》。全身に魔剣の力を伝達し、触れた相手にその力を行使する攻勢スキル。
《弱肉狂食》。《捕食吸収》で獲得した能力を保存するスキル。これにより、無制限のラーニングを可能とする器を用意した。
「で、固有スキルはっと、ひとつだけ?」
「は? それは……相当やばいやつだろ。あんだけいろんな能力を持ったUBMの特典武具のスキルが1つだけって」
多機能型のUBMでありながら、その特典武具のスキルが1つだけ。
つまり、すべてのリソースをそのスキルに注ぎ込んだ代物になっているということ。
「《
「《悪夢の残骸》は消えたかー」
「まあウルティマにはあれいらんしな」
「あればガチガチになるじゃん」
「そうしなくてももうガチガチなんだよ」
「で、効果は?」
「効果は……必殺スキルの強化だな。なんか色々効果が詰め合わせになってる」
その効果はざっくり言えばふたつ。
ひとつ、作成した【永劫鎧帰】を、《サイバネティック・レギオン》に融合している装備品のひとつに“変形”させ、その装備補正と保有スキルを獲得すること。
この時、もともと持っていた装備補正と装備性能は失われるが、持っていたスキルはそのまま残る。
変形元の【永劫鎧帰】と比べて、変形後の装備品のリソースが少なくなるようにしか変形できないデメリットが記載されていた。
ふたつ、“変形”した装備品にかかっているいくつかの制限を解除する。
変形によって【永劫鎧帰】にはなかった装備制限が発生しないようになっている他、【れみな・くらいせら】の融合限定の制限、【永劫鎧帰】を《サイバネティック・レギオン》で取り込めない制限、寄生しないと使用できない制限が消滅する。
そう、制限が消えてしまう。
「……」
そして、この固有スキルには《サイバネティック・レギオン》に取り込んでいる状態でしか使用できない制限がかかっていた。
実質的に【ウロボロス】に融合している状態でないと使えない、ということだ。
制限になっていないがそもそも融合しないで使うこともない。
「これってつまり……」
「ああ……」
「……?」
周囲のマスターの目つきが怪しくなる。
もともと怪しかったのだが、眼の前にぶら下げられたご馳走が手に入らないかもしれない、と思っていた矢先に確実に手に入れられる
「よし、ウルティマ!」
「うお、なんだマチュ」
「これを食って配れ!」
マチュは
《鑑定眼》には【超級金属の全身鎧の兜】とだけ表示されていた。
つまり、【スクラップ・アビス】戦で切り落とした首そのものである。
その兜の性能は異常の一言。その場にいる誰もが欲する上……有効活用できる手段、【永劫鎧帰】をそこにいるマスター全員が受け取っている。
融合すればそれだけで超級金属の恩恵が全身に行き渡る。ただでさえ強力な融合鎧が、突出した強さになってしまう。
もともとの頑丈さが逸脱しているためだ。
そして、実はこの兜の獲得を巡って暗闘が繰り広げられている。
やれ、だれが活躍しただとか、過去の貸し借りを持ち出してうちによこせだとか、これからの利益や所有物を持ち出しての交渉も行われている。
ものがものだけに、不和の原因にもなりかねない。
獲得した超級金属の鎧の断片は、マクロス勢では加工が困難だった。それを知ったまま鎧に取り込むという選択肢もあったが、可能なら装備補正まで整った兜がほしいと思ってしまう。
だが。
複製する力が、ウルティマの手の中にある。
「わかったよ。やるよ……目つきヤバいし」
ウルティマは兜と特典武具とを、【ウロボロス】に取り込む。
そして、発動する。必殺スキルと《
いくつかの銀砂シリーズを代償に、ウルティマの鎧が切り離され、形をなし……、そして、変形しなかった。
「……」
「……」
「……、失敗した。目測を誤った」
そう。シンプルにリソース量を読み違えた。
【永劫鎧帰】は前提として《サイバネティック・レギオン》と《キメラテック・ルール》を内包している。
その上、材料にした装備品のスキルは変形後も引き継がれる。
つまり、取り込んだ装備品をそのまま出力するケースですら、リソースに差が生じてしまうのだ。
保有するスキルの分だけ、変形先の装備品の格は確実に落ちる。
「断片持って来い!」
マチュの掛け声とともに、何人かのマスターが巨大な超級金属の板を持ってくる。
それは、【スクラップ・アビス】の外殻がまとっていた、超級金属の鎧の欠片。
質量同士の殴り合いによって砕けて散らばったものを回収しておいたものである。
「これを材料にしな!」
砕けた破片はそのままでは装備品ではない。だがウルティマは金属を装備品として取り込める。
なれば、この砕けた破片もまた取り込み対象。
「いいのか? これはこれでもったいない気はするが」
「加工できないからいいんだよ! 俺にも無理だった!」
あるいは金属加工特化のエンブリオなら可能なのだろうが、それを持つものは今マクロスにいない。
マチュは変性・創造特化なため、金属の形を変えるのには向かない。
長時間かければ、製造系のエンブリオで加工できるかもしれない。だがそれを待っているわけにもいかない。
盛り上がりすぎているので。
それに、砕けた破片にはスキルが乗っていない。
そういう意味でも質量からリソース量が計算しやすい。
「わかった。じゃあやってみよう」
再び必殺スキルを発動させ、金属板を【永劫鎧帰】にへと。そしてそれに《狂食の形》を発動させた。
ウルティマの手の中にはエレクトラムに似た色合いの兜。
銘は変化し、【超級金属の兜】になっていた。全身鎧とのつながりすら途切れたため、随分とさっぱりした銘になってしまっている。
「よし、できたぞ」
「ああ。じゃあ、あと13個頼む!」
「13個!?」
《狂食の形》
《最強の形》と《弱肉狂食》が結合してできた固有スキル。
作成した【永劫鎧帰】を別の装備品に変化させるのは《自切分体》を《最強の形》でより強いモンスターに作り変えていたスキルが元になっている。
《弱肉狂食》はウルティマの作成する装備の制限を外し、それを【ウロボロス】に取り込めるように作り変える効果になった。
これは、本来異なる用途のものを、ラーニングの器に作り変えた点から。
ウルティマには取り込めれば追加の器とできるものがあったため、この形にアジャストした。
《真珠化》もう持ってる。
《捕食吸収》もう持ってる。