アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
□〈南海〉・東部海域 【マクロス・グランバロア】右腕艦甲板上
その船はこの世界の正道から外れた、異端の船だった。
巨大な上にまっとうな船の形をしていないものが五隻、連結して一つの船体を成している。
見る人が見ればそれはまるで人の形を模しているというだろう。
あるいは宇宙戦艦のようだとも。
事実、それは本来然るべきときに立ち上がってロボットに変形して戦う……ように設計されていた。
モデルとなった戦艦がそのようなものだったからだ。
問題は船を支える構造体である。
インフィニット・デンドログラムの世界には現実では考えられないような超金属が複数種存在し、そのどれもが現実のそれと比べても頑丈だった。
だが、その巨大な船が立ち上がるという難事に対して、それを支えきれる金属はどれ一つとしてなかったのだ。
正確には可能な金属自体は存在していると思われたが、調達することは叶わなかった。
今もまだ、改造は続けられている。だが、その真体をインフィニット・デンドログラムの世界に晒す日が来るのはいつになることか。
その製造目的を果たせず、今はただの船として使われるその戦艦には、いつしかマスターが集まるようになった。
SFを夢見た結果、<GFRS>との競争に敗れた船大工。
エンブリオによって、全く以て全うではない物を作り上げる錬金術師。
空へのロマンに取り憑かれて、果てのない戦いを挑み続ける空賊団。
闘争を好みながらも、軍事船団の気風に馴染めなかった海賊。
どういうわけか、貿易船団に所属せずに商売を行う商人。
そのいずれもが正道から外れた者たちであった。
そして、このマスターもまたその一人である。
名をマチュという。名前そのものに横切る打ち消し線まで含めて一つの名前だ。
それだけでもろくなマスターではないと見て取れる。
だが、彼、彼女のろくでもなさはそこではないのだ。
「……で、なんだ? これは」
【
悪質な路地裏マッドサイエンティストのような格好をした彼の指先には、緑色の光を放つ謎の結晶体が鎮座していた。
船の甲板の上、様々なキャッスル系エンブリオが軒を連ねるその街道にはあまりにも似つかわしくない、あるいはファンタシー世界の資材としてその場に馴染んでいるとも言えるそれに対しマチュは。
「なにって、見りゃわかるでしょ、
そう、いってのけた。
あっけらかんと、それをガンダム作品の再現品だと言ったのだ。
「なんでそんなもんこんな場所においてるんだって聞いてるんだこっちは!」
「えー……なんか……できたから」
しかも適当すぎるこの言い草である。
彼女はそもそも【サ◯コフレーム】なる特殊金属をこの船団に売り込みここに上がり込んだ身だ。
彼女はそんな経緯でここに来ているため、軒を連ねるその場所には【サ◯コフレーム】の価値と危険性を理解している者ばかり。
つまり、それの発展型を雑に置いておいていい場所ではないのだ。
「で、どうやって作ったんだこれ。お前この方向性だとこれ以上はないって言ってただろ?」
「【サ◯コフレーム】積んでたら変性した」
「……はぁ!?」
【
周辺リソースを変質させ金属を精製し、一定量の金属の性質を自在に変化させ、ありとあらゆる空想金属を作り出す特化生産型エンブリオだ。
形状こそ一般的な工房といった雰囲気である。
「《マスプロダクション・アルケミー》組み込んだのが悪かったかなぁ。まさか精神感応で周囲の感情リソースかき集めて自己増殖するとは思わなかった」
マチュはそういけしゃあしゃあと言ってのける。
金属の持つ性質を変化させるというエンブリオの能力特性の関係上、その効果はマスターである彼女にも制御不能だ。能力としての制御性を手放しているというより、その能力自体が予想不可能性を孕んでいる。
その結果が、元ネタ通りならとんでもない危険物になりうる代物の生成なのだが。
……なお【サ◯コフレーム】の名称は、伏せ字まで含めたものだ。原作再現を行ってこれなので彼女のセンスはどうかしている。
「はぁ~~~~~~」
「そういや【トロ◯ウム】できたぜ」
「マジかお前! よくやった! これでついにアレが動かせる!」
この手のひら返しである。
この男、
結局のところ、自分の創作が最優先。この【マクロス・グランバロア】に集った生産職としては珍しくない。
しれっと
これはスーパーロボット大戦に登場した触媒で、一粒ほどから宇宙戦艦を何隻も動かせるエネルギーを作り出せるというものである。
エンブリオによって再現されたそれがそこまでのエネルギーを生み出せるとは言い難いが、それでも莫大なエネルギーを生み出せるというその金属はそれだけで争奪戦になりかねない代物だ。
「【ヴィ◯ラニウム】の3倍ぐらいコストかかったんだけど? ほとんど神話級なんだけどそれ?」
【ヴィ◯ラニウム】。MCUのそれをモデルに作成された金属で、その性能も概ねその原作に準ずる。
その詳細は詳しくは語らない。だがその値段は【ヒヒイロカネ】の十倍。生産コストでそれである。
彼女の必殺スキルでしか作れないとなってはその取引価格は更に跳ね上がっていた。
「これでついに動かせるぞ……! 私の【ガンダムズズィー】を!」
「名前【赤いガン◯ム】にしなかったけそれ!? 俺の【ガン◯ム】!」
そう言い残して
その一階、最も巨大な部屋にはその鋼の巨人が横たわっていた。
巨人の体をいじくり回すように、周囲には無数の少女の姿があった。
「うわぁ……」
Type:フォートレス、【人形彫刻 シェム・ハ・メフォラシュ】は人形を作り出す工場だ。
これにより、マチュの作り出した金属を加工、人形を作り出す。
そして作り出された人形には様々な効果が付与されるのだ。
《自動修復》《操作簡略化》《遠隔操作》に《自律人形》。そのうえ必殺スキルによって自身の持つスキルを複数個人形に付与できる。
最も、付与できるスキルは完全に決め打ちで、必殺スキルですら拡張性に乏しい。彼の几帳面さというべきか、決め打ちでしか行動できないというべきか、性格が反映されているといえる。
特殊金属の精製能力と自己判断で活動を行う人形の作成。この組み合わせによって二人は準超級と呼ばれるに足る戦闘能力を保有していた。
マチュの作り出す金属を元に制作された人形は、必然的に特殊なスキルを帯びる。例えば【サ◯コフレーム】を思考部位として組み込んだ自律人形はまるで人間のような判断力を帯び、戦闘技術も向上するのだ。
【結晶筋繊維】なる、人形や機械を動かす筋肉として作られた金属までレパートリーに存在している。
そして、その能力をフルに使い……人を乗せることを前提とした巨大な機械人形……つまり、搭乗式のロボットを作り上げるに至った。
<叡智の三角>が見ればガチギレすることだろう。根本的にロボットと呼ぶには、あまりに技術系統が異なりすぎる。二人が作ったそれはゴーレムのような魔法に由来する代物であるから。
人形やゴーレムをベースにすればどんな無理な構造であってもそれを動かすための魔法によって動作可能になるため、ロボットを作りたいマスターの間では割と有名な手法ではある。
だからこそティアンでも作成可能な機械技術としてロボットを作り上げた<叡智の三角>はトップクランだとも言えるが。
開発の自由度のためモデルとなった機体よりもわずかに大きいサイズで制作されていた。
各部位ごとに部品として制作しそれを組み合わせて一体の機体を作り上げる、大型生産系マスターの間ではよく使われる手法によりジョブやエンブリオの持つ制限を大幅に超過した超機体として完成されたそれ。
はからずも超級にすら勝ちの目を拾える力を持ち得ていた。
「お前ら! 仕上げ作業だ!」
「「「オースボスボス!」」」
そこで働く少女たちは彼が作り出した人形だった。エンブリオのスキルによって独立稼働可能な人形は、所有者の意志に従って仕事をやり続けるにも最も適した存在だと言える。
人形であるために疲れず、必殺スキルで付与されたスキルにより生まれながらに技術を保有している。これによって人形を量産し、生み出されたそれらがまた人形を作り上げる。そして、それらにエンブリオがスキルを付与する。
拡大再生産。【工場長】のジョブとシナジーする最大の理由だった。
「いっつも思うけど……趣味悪いよな
「周囲に“人形ガチャ”とか“ソシャゲ野郎”とか言われてるのは知ってるよ……」
若干落ち込んで見せる
「だが、この【ガンダムズズィー】でいくらでも見返せる! なんせこいつは……」
「【赤いガン◯ム】だっての! 【サ◯コフレーム】使ったから非戦闘職でも超級職並みに戦えるようになってるのはもう聞いた」
そこには、赤く塗られたガンダムが起立していた。
そう、ガンダムGQuuuuuuX版のガンダムである。
フレームに【サ◯コフレーム】を採用することで、パイロットの意識をダイレクトに《自律人形》に連動させ、エンブリオを除くあらゆる機械を超える応答性と操作性を獲得し。
駆動するために【結晶筋繊維】を使用したことで純金属製でありながら生体的な動作を可能にし。
触媒として用意した【トロ◯ウム】を使用することで、莫大なエネルギーを生み出し全身を動かすことを可能にし。
装甲に【ヴィウ◯ニウム】を使ったことで、ランクを上回る防御力を獲得していた。
金属すべてがマチュのエンブリオによって作られたものでありそのどれもが特殊性を帯びた代物。
「俺のガンダムは!?」
「待て待て待て、お前の分はあっちだあっち」
そこにはトリコロールに塗られた機体が寝かされていた。
そして、それは誰がどう見てもジークアクスだった。
「あるじゃねえか! なら早く言えよ!」
マチュはそれを見て、自分のものだと認識し、駆け寄る。
今にも頬ずりしそうなほど近づいたそのとき、突如警報が鳴り響いた。
「あああー!?」
「何事だ!」
『【
機人氏族の島。それはマクロス・グランバロアが船ぐるみで付き合いのある場所である。
数百人程度の人が住めるだけの小さな島だが、周辺海域に希少資源がゴロゴロ転がっているため、逗留するために許可を求めたことがあるのだ。
その際、快く許可をくれ、しかも突然現れた無法者にもかかわらず暖かく歓迎してくれた。
ティアンの船員の一人が重傷を負った際、氏族の貴重な代物であるアイテムを使って治療してくれた。
詐欺を仕掛けたバカが出た時、笑って許してくれた(バカはマクロス船長が吊るして絞め上げていた)。
人間的に器の大きい村だったのだ。
不満を強いて言うなら立地が【海竜王】の回遊コーススレスレなので他の誰もがビビって近づかないことぐらいだろうか。
そして、その村が今モンスターに襲われている。
「なに……? キメラ?」
マチュの脳裏によぎるのは【アビスシェルダー】のこと。
【アビスシェルダー】が討伐されたのはつい先日。分体もその身体を維持できなくなって全滅したと聞いた。
だが、もしその残党が一体でも残っていれば。その分体が再び海域を、世界を食い尽くしあの悪夢は蘇るだろう。
「
「は? 何言って、私もお前も戦えな……はっ」
「【ガン◯ム】を出せ!」
「初陣だ!」