アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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【聖剣鍛冶】

 □【マクロス・アリステア】工業ブロック

 

 【マクロス・アリステア】の航行能力は低い。

 元々死んでいたものを再生させたこと、本来は海を動くようなものではないこと、必殺スキルによる融合によって余分な機能が追加されていること。

 様々な理由により海上では40ノットほどの速度しか出ない。

 一応瞬間的には超音速を出せるが、それも数十秒程度しか持たない。

 

 立ち上がって海底を蹴れば亜音速程度の速度は出るのだが、そこまでする必要もなく船をのんびりとグランバロアの方角へと向けていた。

 

 そして、マクロスに集ったアホのマスターどもは完全に無軌道に活動を再開していた。

 なにもない時は大体こんなものである。大きなプロジェクトの類も、特定のマスターが音頭をとり、進捗を管理して実行しているためほぼ個人技。

 仕事を頼めば快く応じてくれるのでそれで成り立っているという側面はある。

 仲が良くても巨大なプロジェクト……共同研究のようなものには全く向いていない。

 

 そしてこれもそのひとつだ。

 無軌道さの結果発生したもの。

 

 【魔剣の原盤(アーキタイプ・ブレイド)】という銘を打たれた、巨大な金属円盤。

 表面に想像を絶するほどびっしりとなにかの文字が書き込まれており、なによりその文字ひとつひとつが力を帯びているのが見て取れる。

 見ただけでわかる程に、怨念に似たなにかを帯びていた。

 

「で、何を溶かしたって?」

 

 菫と村正、それに加え【冶金職人(メタロジー・マイスター)】フィクサリオを正座させて問い詰めるA*(エースター)

 周囲には見世物かと集まったマスターが数人いる。

 三人は魔剣研究会という同好会を結成しており、通常の魔剣を作成・研究して見せ合うような関係にあった。

 

「フヒッ。<死線ピアニシカ><ルックラックの目頭の剣><宵闇質崩><ヒョールンプーロ>をはじめとする魔剣18本ですA*(エースター)様」

「【読竜王】の先生が溶かしていいって言うからよ、試してみただけだが」

「アホか!」

 

 当然と言えば当然である。

 持ち主の許可があったとはいえ、世界にふたつとない貴重品を躊躇なく溶かすやつがいるか。

 

 ここに三人もいた。

 

 必要とあれば唯一無二の至宝である特典武具をなげうって勝利を求めるような狂戦士もいるが、こいつらがしたのは目的すらない好奇心にまかせた奇行である。

 弁解の余地もなかった。

 

「魔剣の持つ異能特性ひとつひとつを分析したらそれだけでどれだけ新しい技術を作れると思ってるんだバカ!」

「まあまあ。私もわかっていて彼らに預けたんだ」

「お、大先生!」

 

 A*(エースター)が説教を始めようとするそのとき、ひょっこりと【読竜王】が顔を出した。

 いつの間にやら、周りにいたマスターに大先生と呼ばれている。当人が教えたがりであるため、マスターたちに様々な知識を教えておりそれによってすっかり打ち解けていたようだ。

 大先生などとおためごかしたあだ名までつけられている。

 

「アレらは、戦闘以外では傷ひとつつけられない代物でね。実のところ処分に困っていたんだ」

 

 世界を壊しうる3本の魔剣。管理AIのジャバウォックにバーターで渡したものだが、実は在庫処分の意味もあった。

 自らの手の内にあっては完全に管理できないと思ったために、現行の管理者である無限エンブリオにへと手渡したのだった。

 

「だからっていきなり溶かしていいもんでもないだろ……」

 

 所有者の許可があってはもにょもにょとした言い回ししかできなくなる。

 A*(エースター)にとってもやりづらい。知識と思慮を期待して味方に引き込んだのだが、まさか【読竜王】がやらかす(ボケ)側だとは思っていなかったのだ。

 自認が止める(ツッコミ)側のA*(エースター)は味方を失ったような気持ちになった。

 

「っつー、はー……。わかった。溶かしたことは不問にしよう」

「よっしゃ」

「ありがとうございますA*(エースター)様」

 

 一端、飲み込む。

 

「で、これはなんだ? 魔法陣?」

 

 出来上がったものが問題となる。

 【魔剣の原盤(アーキタイプ・ブレイド)】。

 十メテルほどの巨大な円卓に似た円盤である。その表面にはルーンに似た文字が彫り込まれており、それらを複写するだけでも何らかの“力”が得られそうだった。

 

「魔剣、<本物の魔剣>の贋作の製造道具、だな」

A*(エースター)様はご存知ですよね? 一部の装備スキルの作成に魔法儀式を使用するものがありますこと」

「ああ、まあな。《自動迎撃》とか《自動攻撃》……」

 

 通常、装備スキルというものは素材を加工する過程で、素材の持つスキルを加熱や鍛造、合金などの工程を経て発現させるものだ。

 これは元々の素材がそのようなスキルの()()()()()()を帯びているからこそできる加工であり、元の素材にないスキルを実現させることは概ね不可能である。

 

 それとは異なり、魔法儀式を使用したスキル付与というものも存在する。

 最も簡単で奥が深い手法で言えば【刻印術師(ルーンマンサー)】や【刻印師(エングレイバー)】のような、特別な力を持った文字を装備品に書き込むことで装備スキルを付与する方法である。

 これはジョブの保有するスキルに依存し、かつ装備のもつキャパシティで付与できるスキル数が変動する。

 

 これを大規模にしたり、傾向を変えたものが魔法儀式によるものだ。

 簡単に言えば魔法によって装備スキルを追加するというものだが、直接専門となるジョブが存在せず、間接的なものがほとんど。

 そのため、固定の手法が記録された【レシピ】が出回っていて、それに固定のスキルが設定されている、といった状況にある。

 

「この原盤はですね。コレの上で、原盤にある文字を刻んで、原盤に溜められている“情念”を武器に移すことで、魔剣を作り出せるものなのです」

「ま、基礎原理は妖刀と一緒だな。原料となる怨念が<本物の魔剣>由来のものになってる関係で、<本物の魔剣>みたいな力を持つんだが」

 

 特別なスキルを持った妖刀の作り方は、その能力がランダムでいいなら極めて簡単である。

 大量の怨念を武器に与えればいい。それによって与えた怨念に由来する異能を発現しうる。

 たんにその武器の持つ力が増幅され、使用者を呪うようになるだけのケースも多いが。

 

「まあ、この手法も問題があるよね。装備スキルとしてまとまってくれないし。曖昧な『理』だけが武器に宿って、宣言だけで使えるようなものにならないんだよねぇ」

 

 フィクサリオが口を開く。

 彼が作る魔剣は、どちらかと言えば特異金属に由来するもの。錬金炉による金属加工のエンブリオにより、金属の力を十数倍にしたスキルをもつ魔剣を作り出す。

 そのためせいぜい属性を持った魔剣しか作れない。

 それを村正に打ち直してもらってアクティブスキル化することも多かった。

 

「『理』……? いやまて、曖昧なスキル? アヤカがなにか言っていたような」

「【神】系統だね」

 

 A*(エースター)の疑問。それを固有スキルによって読み取った【読竜王】がその答えを出す。

 

「ああ、それだ。器に溜められたリソースと理を組み合わせて、オリジナルのスキルを作れる超級職だったか」

「与えられるのはオリジナルのスキルを作れるという前提で、だけどね。想像の通り、あの原盤で作った武器はある意味で神の器の状態に等しいよ」

「つまり……内包する『理』を使って、オリジナルのスキルを作れないと扱えないもの、ってことか?」

 

「そこでね! 村正を見てくれ!」

「は?」

 

 フィクサリオはそういう。村正を指さし、《看破》の使用を促した。

 そこに合ったのは【聖剣鍛冶(セイント・スミス)】という見たことも聞いたこともないジョブ。

 いや、連絡では言っていたのだが。

 

「こ、こういう曖昧さを持つ武器を作り出す専門のジョブのようですよA*(エースター)様」

「つまり、なんだ。<本物の魔剣>の贋作を作ろうとしたら、聖剣とかいう代物になった、と」

「あと適当に剣士捕まえて転職させた。武器渡したら【聖剣士(セイントソードマン)】ってジョブが開放されてたからな」

「は?」

 

 めちゃくちゃをやっている。

 無軌道すぎる。

 よくジョブ枠が空いていたなとか、色々思わなくもない。

 

「【読竜王】、ジョブについて解説してくれ……」

「いいのかい? こういうのは自分で調べていったほうが楽しいと思うけれど」

「魔剣いじってたら聖剣出てきた時点で頭痛いんだよ」

「そうかい。じゃあ説明しよう」

 

 A*(エースター)の頭には、アルター王国の【アルター】という聖剣が浮かんでいた。

 デンドロの歴史上、聖剣と呼べるものはあれただひとつのはず。

 【聖剣王(キング・オブ・セイント)】が扱う唯一無二の剣。

 

「【聖剣鍛冶】は【アルター】の制作工程そのものがモデルとなって作成されたジョブだね。ジョブとしての特性は、特定の能力や才能に依存した武器の作成になるよ。【アルター】は【聖剣王】が扱わないと能力を発揮できないのと同じように、【聖剣鍛冶】が作成した武器は【聖剣士】しか能力を発揮出来ない」

 

 武器が曖昧さを内包することは本来ほとんどない。武器が固形化リソースで作成されている以上、スキルそのものの形も固まってしまい、完全に決め打ちの能力となってしまうからだ。

 テリトリー系の特典武具の効果範囲が圧縮を行えないのもこれが理由だ。

 水を液体のまま武器の形にするような妙技をしなければ、そのような曖昧さがはいる余地はない。

 

「ま、己の才覚一本で扱ってしまう人間もいるだろうけどね。名のない斧を【覇王】が扱ったように」

「端々に厄介そうな情報が出てるぞぉ……」

 

 マクロスに集まったマスターはオタクなので考察を好むものもいる。そのため、考察資料を読み込んでいると端々に出てくる情報が【読竜王】の発言に出てくることに恐れおののくことになっていた。

 

「【聖剣鍛冶】はその程度だね。使用に独特の癖があるかわりに能力幅の広い武器が作れる。そして当然【聖剣士】はその武器を扱う専用のジョブだよ」

 

 名称からして、対になっているジョブだとは思っていたが、想像以上に密接に結合している。

 

「固有スキルの《聖剣技》はスキルレベルごとに、“型”を獲得できる。その“型”を使って武器に宿った『理』の出力の形を固定できるんだ」

「なるほど、大体わかった。例えば『炎の理』を帯びた剣を《聖剣技》を使えば、火炎の刃を飛ばしたり、炎を剣にまとわせたりできるんだな?」

「そのとおり。それに比較的才能に依存せずにそれができる。本来そのような武器の扱いは【(ザ・ワン)】並の才能がいるからね」

 

 技能と才能の分配を行う<アーキタイプ・システム>の面目躍如。神の才能をあまねく人に与えることで、その先の無限へと至らせるための機構の最も芯の機能だった。

 

「あと。(古龍)の時代には【聖剣鍛冶】は開放されてなかったけれど、【聖剣士】は開放されてたんだよね。なんでだと思う?」

「<本物の魔剣>! 原理が似ているからか!」

 

 魔剣を鋳潰すことにより、結果的に特異なジョブを開放させたのだ。

 ならば、説教するよりも称賛すべきである。

 だが……。

 

「ぐ、ぬぬぬぬぬ……」

 

 無軌道がすぎる。

 まして、村正は齢を重ねた年長者だ。本来こういうときに止めるべきだった。だが、ノーブレーキで踏み込んでいる。

 

「……はあ。で? 【聖剣鍛冶】開放されたってことは剣……聖剣、打ってるんだろ? 見せてみろ」

 

 出てきたのは金槌とシックルだった。A*(エースター)はキレた。




ちなみに【聖剣鍛冶】で作れる武器は剣に限りません。曖昧な理を宿す武器なら大体なんでも作成範囲です。
同様に【聖剣士】も使用する武器に制限がなく、かわりに通常の武器系センススキルの類が一切ありません。

ちなみに【聖剣士】で無銘の斧を使った場合、《聖剣技》による鋳型で出力を制御すれば反動が多少マシになります。

なお聖剣と<本物の魔剣>が似ているのはたまたまです。あり方が似ているので互換性があるというイメージ。
土台となるものがリソースと情念・歴史で全く異なるので、似ているだけのまったくの別物です。

ちなみにアームズ系エンブリオで《聖剣技》を使用すると化けます。飛び《復讐》とかできるようになります。
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