アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
□<未登録海底掘削城>
<海底掘削城>。それはグランバロアの国土……世界を覆う広大な大海原の各地に点在する<遺跡>群である。
先々期文明によって作られたとされ、グランバロアにとって知の源泉とも呼べる場所。魔動機の技術が生きたまま保存された場所であり、ここからサルベージされグランバロアの国益になった技術は数多い。
特に首都である【グランバロア号】は先々期文明の遺産であり、これを修理・運用するための知識を獲得するため、<海底掘削城>の探索は優先事項のひとつでもあった。
海底に突き刺さる形で存在するその遺跡のひとつ。
その場に二人のマスターの姿があった。
ケモミミの少女。【
【F制式兵装】を身に着けた少年。【
【融帝】、ウルティマ・ウェポンによって遣わされた、調査のための戦力である。
「ウルピ、忙しいね? 普段なら自分で来るところだもんねぇ」
「今<東海>の方の様子がおかしいらしいからなぁ。<UBM>を疑って四方八方飛び回ってるってわけ」
共に、準超級。強さの在り方は違えど、グランバロアにおいて上から数えられる特記戦力である。
そして、往々にして<遺跡>という場所は、特に<海底掘削城>という場所は特記戦力を必要とする。
何故ならば、先々期文明の警備機能が生きているか……それを上回る勢力を持つモンスターが根城としているからだ。
リノリウムめいた床材の上を滑るように現れたのは下半身がない人型機械。その頭部には刀に似た形状の武器が突き刺さっており、それからは怨念に似たナニカを帯びている。
【
「アワワ、どう見る?」
「可愛くない」
「そうじゃなくて」
グランバロアにおいて、技術は要だ。それゆえに、多くを知っている。
特に、国の礎となった<四海走破>において、それがどのような扱いだったのかも。
もし扱えるのならば、建国の最初の障害として姿を表す<
「俺、すっげー嫌な予感がしてきてるんだけど? ウルティマ直に突っ込ませるべき案件だったんじゃないのこれ?」
「ユウはビビリだなー」
「お前と違って俺は首がもげたら死んじゃうの!」
「まー、ユウはアレだもんね。個人戦闘型? ってやつだもんね。数は苦手か」
ユウはアワワをかばうように、飛んでくる魔弾を漆黒の刀剣の形をしたエンブリオ……【暴食神機 ヴァナルガンド】によって切り払っている。
頭に突き刺さった刀から、怨念のようなものを吸い上げ弾丸として発射してきているように見えるその魔弾。
攻撃自体が捕食属性の【ヴァナルガンド】で切り払わなければ何が起こったかわかったものではない。
「あー……、キリないね」
「サボってないでさっさとやれアワワ!」
「バウー」
そういうと、アワワは【ジェム】を取り出した。《船体連結》と《部分展開》という、船舶装備品用の汎用スキルと、ギア系エンブリオの汎用スキル。その組み合わせにより【海呑戦艦 モビーディック】に据え付けられた【アイテムボックス】の中身をひとつだけ取り出して見せる。
器用だが、グランバロアでは珍しくもない技術。
そして、アワワが爆発した。
爆発魔法によってアワワの身体が宙を舞ったのだ。衝撃により投げ出されたアワワの身体は、【護衛】の群れの中へと落ちていく。
無防備に、その中心にへと。
なぜそんなことをするのか。意味もなく。
否、アワワにはすでに
「《大炎醸》」
その宣言と共に、アワワが爆ぜた。
先ほどとは比較にならないほどの、超級職の奥義に匹敵するほどの破壊力。
爆発の衝撃によって、その場にいた【護衛】のすべてが壁にへと叩きつけられスクラップと化す。
ユウとて例外でなく、【ヴァナルガンド】を盾型の形態にへと変形させ防御姿勢を取っていた。
ただ一人、爆発の猛威の中でアワワだけがまったくの無傷である。
「おかしいとは思っていたけど……やっぱり。壁が壊れてないねー」
アワワの自爆。そのトリックは非常に簡単である。
【大炎醸 アブラスマシ】の爆薬化。ただそれだけ。
いつでもどこでも、自分自身が【アブラスマシ】に侵された状態にできる。
その状態を維持・発揮するには、3つの能力のシナジーによって構成されてはいるが。
特典武具、【転移水臓 マーキュリーキャンサー】。受けたことのある液体を変性させる状態異常を、即座に【モビーディック】の全身に転写する特典武具。
エンブリオ、【海呑棲艦 モビーディック】。能力特性、海水修復。どれだけ破壊されようが、海水を吸収して修復する無敵の不沈艦。海水をストックするアイテムボックスも連結済みだ。
なにより、
超級職【
自らを海水として扱うエンブリオと、船体とマスターを同一視する超級職と、液体の状態異常を自分のものに転写する特典武具。
あとは【アブラスマシ】の爆薬化を加えれば、即席の爆弾の出来上がりだ。
いつでもどこでも。そして何度でも。
地上であってすら、自爆できる。
当然その威力は超級エンブリオのそれに匹敵する。
人体全体を爆薬化し、それによって超級職奥義相当の破壊力を発揮可能。
遺跡の中であるからこそ、自分自身を爆薬にするしかなく超級職奥義程度に収まっているとも言える。
海上であるならば、その船体すべてを爆薬に変え自爆するのだから。
「《部分展開》」
キャッスル・チャリオットなどに発現することのあるエンブリオ汎用スキル、《部分展開》。名の通り、エンブリオの一部を展開する
呼び出したのは砲塔。3つの獣の頭を砲身に見立てたような、異質の造形の砲である。
それもまた、グランバロアでにわかに流行り始めているスキル《船体連結》によって、エンブリオの一部として認識されていた。
「FIRE!」
それを考えなしに壁に向かって撃ち放った。
爆風の煽りを食らってアワワもユウも吹き飛ぶが……アワワは即時にその傷がふさがり、ユウもまた何かを自身のエンブリオに与え、《医食同源》によって傷を塞ぐ。
それだけの被害を出してなお、壁は変化をもたらさない。
「つっーー……。ウルティマ案件じゃん」
「バウー」
「<迷宮化>してる。ウソだろ。あんだけの騒動になったアレがまた出てきたってことなのか?」
<遺跡>が<迷宮化>すると非常に面倒なことになる。それはウルティマがすでに実証済みである。
ただでさえ警備が固く、危険な<遺跡>の難易度が跳ね上がるのだ。
まともな地図は機能せず、ありえないほどの数の兵器が溢れ出す。
工場設備すら地形の一部なのだ。迷宮の機能として取り込まれうる。
「ウルティマがアワワと俺を送り込んだ理由がわかった。これ、最悪自爆しろってことだな」
「ううん」
「よし、急ぐぞアワワ。あんまり時間がなさそうだから」
「レッツゴージャスティーン!」
「ジャスティーンじゃねえし!」
それは水の中にあるかぎりあらゆる傷と損傷を無為にする不滅の船体を持つ。
それは船体が沈まぬかぎり決して倒れぬ不朽の命を持つ。
それは自らを冒した異常を記憶し何度でも罹患する不尽の臓器を持つ。
何度沈められようと海中から蘇り自爆する、沈まずの特攻戦艦である。