アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
□<辺境都市オーコ>
辺境都市オーコ。アルターの山岳地帯に位置するオーコ子爵領の領都である。
山間の盆地にあるだけあって気候の安定した土地であり、様々な植物系素材に恵まれた良い領地だ。
歴史的に見ても【聖剣王】の仲間であった【義賊王】の根城だったという逸話が残っており、それらしい史跡がいくつも市内に残っている。
今もなお山賊めいた文化が息づいており、洗練と野蛮の混じり合う独特の雰囲気を持った都市だ。
しかし、当代の領主、【
だが、マスターの間ではそこそこ有名な都市であり、その最大の理由は<UBM>だ。
かつて3体の古代伝説級<UBM>が相互に睨み合いを続ける非常に危険な状態にあり、それを目当てに複数のマスターが出入りしていた。
広域制圧型、多量の蟲人を生み出し使役する【網蟲衆頼 クイン・ネットワーク】。
個人戦闘型、金剛の鎧持つ闘争本能の権化【金剛殻 ニアヒヒイロカネ】。
広域殲滅型、見たものすべてを捻じ曲げる魔眼【歪曲幻視 アサガミ】。
UBMの討伐を夢見てやってきては、むやみに刺激しては抗争が激化する。
オーコ子爵の驚異的な交渉能力によって被害こそ抑えられていたが、三勢力の三すくみと市民感情の破綻が当時は目前と迫っていた。
それもある日突然に終わる。
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それらによって同時に<UBM>の命脈は断たれ、辺境都市オーコに平和が訪れる。
代わりに、純白の物質で出来た巨大な
□<辺境都市オーコ>・<カフェテリア=ロジャー>
<辺境都市オーコ>、そのメインストリートに並ぶカフェテリアの1つ、<ロジャー>。グランバロアから来たという主人が過去の【海賊王】にあやかってつけた名のその店に、白い少女がいた。
長い髪から肌から服まで、なにもかもが白。紅茶につけた口の内側すらも、白く見える。
まるで大理石のような女だった。
そして、その対面に座るのは、漆黒の鎧。
全身にぴたりとフィットし、各部を装甲で覆ったエンブリオによるものである。
当代の【融帝】、ウルティマ・ウェポンその人だった。
「で、こっちは忙しい中駆けつけたわけだ。どういう要件で呼び出した?」
「まあまあ、ウルティマ。そんなに急がなくてもいいじゃない」
鈴がなるような声で、白い少女は口を開く。
彼女は【
そして、ウルティマの前に座る彼女は、女王の脳骸の一部でしかない。
「しかもノウ本人じゃなくて端末じゃねえか。こっちは本体で来たのに」
「本体は少し忙しいのよね。
言外に、これから騒がしくなるという宣言を彼女はした。最も、彼女がウルティマを呼び出すということはほぼイコールで大きな騒動が引き起こされるということでもある。
彼女の知り合いのうち、最強のカードがウルティマであるから。
「端末なのには理由があるのよ。ワタシは狙われている……」
その発言の直後。
眼の前の少女の頭。
「訂正するわ。これから狙われるのよ」
「言っている場合か! こっちの探知引っかからなかったぞ!?」
吹き飛んだ頭は、細かな光の塵のように舞う。リソースのそれとは違う、淡い光を放つ粉が散っている。
それは白。彼女の身体を構成するものと同じ白。
「なかなかレアな
1つ、類例の話をしよう。
個人戦闘型の一ジャンル、自己生存型。これはエンブリオとジョブのシナジーによって、擬似的な不死を獲得する戦闘スタイルのことだ。
その方式は多岐にわたり、カルルやマニゴルドのような攻撃そのものを無為に返す防御型、スプレンディダやアルベルトのような負傷に対して回復を行う回復型などの類例が存在している。
これらにはその能力を実現するのに莫大なリソースが必要であり……必然的にと言うべきか、超級に至ってからそのように呼ばれるようになったものが多い。
防御型ならば攻撃全てを変換なり、置き換えなりする必要があるし、回復型なら攻撃を上回る速度で回復する必要がある。
だが。死なない、その程度のことにそんな莫大なリソースを費やす必要があるだろうか?
その回答はシンプルである。
テイムモンスターでも、人形でも、分身体でも。
自身の代わりに、己の手足となるものを現地へと送り込む。
死なないだけであるならそれだけで十分だ。
簡単に実現するならば【
最も、戦力として意味のある強さを持たせるには
翻って。
女王の脳骸の白い端末。
これは彼女の超級職、能力者系統超級職【
奥義、《
自らの内界で観測した現実を、外界に押し付ける。
歪んだ自己認識を現実のものとする、超能力者の本来の形を実現するものだ。
これにより、歴代の【
ある者は天候を操り、ある者は【炎王】すら超える炎を操り、ある者は死した者を蘇らせ、ある者は人の心を自在に操る。
それは自身の心象風景に依存するために、一代一種。
女王の脳骸の得た超能力は、
分体はこの物質を固めて操っているものである。
素粒子の塊であるために頭を打ち抜かれようが決して死ぬことはない。
それを証明するかのように、砕けた頭部はすでに元の形へと戻っている。
「ウルティマ。これから始まるのはフラッグの奪い合い。ここが始まりなのよ」
「ノウ、なんだ? ティアンが集まってきてるぞ……目の色がおかしい」
それは一目でおかしいとわかった。
というより、誰が見てもおかしい。
集まってきている人々の目は、虹色に光り輝いている。
「あら、<魔王崇拝教会>の皆さん、お揃いで。ワタクシ、少々忙しいので、あまりお相手は出来ないのですけれど」
「挑発するなよ」
ノウは集まったティアンをからかうような口調でそういい、ウルティマはそれを諌める。
だが、集まったティアンはそんなものを鼻にかけない。
もっと狂った……狂信。
「魔女よ! ここで死んでもらうぞ!」
「マスターは殺しても死なないぞ……?」
話が通じそうにない。
「まあ、彼らは捨て駒でしょう。あまり手ひどくしてあげないで、ウルティマ」
「そんな都合の良い制圧手段ないんだけど!?」
ひたすら火力と頑丈さと便利性を高めた男、ウルティマ。
一瞬で全滅させる手段なら無数にあるが、相手を殺さない手段はほとんど持ち合わせがない。
強いて言うならデバフブレスぐらいだ。
「仕方ないわ。大駒と、この後のために呼んだのだし。私がやりましょう」
「なにをごちゃごちゃと!」
囲んでいたティアンのうちの一人。その一人がしびれを切らしたのか、抜刀してそれをノウにへと振り下ろす。
だが、そこにいるのはグランバロア最高のタンク。
音よりも速く、その攻撃を腕で受け。
スッパリと切り落とされた。
「……!?」
素早く腕を拾ってくっつけるウルティマ。【融帝】のスキルのお陰で雑につなぎ合わせるだけでも腕はくっつく。【ウロボロス】同士ならばなおさら。
「《エレクトリック》」
ウルティマの動きそのものをブラフとして、脳骸は能力者系統の基本的なスキルの1つを発動させる。
それは念動力によって相手の神経を痺れさせる、初歩的なもの。
能力者系統のスキルはそのほとんどが使用者の演算能力に性能を依存していて……高い知能を持つものが扱えば、下級職のスキルですら上級職や超級職に比肩しうる性能を発揮する。
無論、高位の職になれば演算能力を強化するスキルが付随しているため、下級職のスキルでも全部使い物になるという点で珍しいジョブであった。
つまり、見える範囲のティアンを同時に締め上げるくらいのことはできる。
「あがっ、あががが」
「いけない子たち、<マスター>に無対策で襲いかかるなんて……」
そういって、倒れたティアンの一人に触れる脳骸。
それと同時に、脳骸の触れた腕が爆ぜた。
「あら」
それに続けるように。街のあちこちから爆発音が続く。
城壁の向こうに、それまでいなかったはずの巨大な巨人が姿を表す。
神の威光。それをかたどったような姿。
「おい、なんだあれは……」
「あら、あらあらあら。そんなものまで
パチリ、と再び《エレクトリック》を使い、倒れたティアンたちの意識を刈り取る。
捕虜の意識を保つ必要がなくなった。
何をやろうとしているのか、それを知る必要はなくなった。
「大物を使うとは読めていたのだけれど。《