アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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戦利品は平等にわけられるべき。そうするべき。

□〈南海〉・東部海域 【マクロス・グランバロア】左腕甲板

 

「すまないウルティマ! マチュのバカがいきなり喧嘩売ったこと、こんな場所に急に呼びつけたこと、それに……勝てなかった敵を押し付けたこと。本当に申し訳ない」

「ん? ああ、困ってたんだろ? 別にいいよこれくらい」

 

【カンゴルゴーム・スクラップ・ドラゴン】の討伐。そのあとに行うことと言えば、戦利品の回収である。

 インフィニット・デンドログラムではモンスターを倒した場合、その身体が保有していた力が変換され、ドロップアイテムとなって勝利者のものとなるのだ。

 そして残念なことに、グランバロアという土地においてモンスターを倒した際に得られるドロップアイテムは、半分程度の割合で海中に沈んでいく。

 それが回収できなくなる前にアイテムを回収すること、ひいては誰かのドロップアイテムや海底資源を引き上げて有効利用することをサルベージと呼ぶことがあった。

 ゲームによくあるスラングの一つである。

 

「だが……マチュのバカが喧嘩ふっかけたのは駄目だろ。おら、お前も頭下げろ」

A*(エースター)! もう終わったことだろ!?」

「終わったならなおのことケジメ付けないと行けないだろうが!」

 

 あー、なんかコント始まりそうな二人だな、とウルティマは思った。

 片手間に海中へ分体を沈め、ドロップアイテムを引き上げる作業を行いながら、口論を続ける二人を見る。

 片方はマッドサイエンティストで、片方はアニメ再現系マスター。多分関わるとろくなことにならない。こういう姿をしているマスターはだいたい押しが強いんだ。

 

「そうだウルティマ、ドロップアイテムの引き上げ作業だが私の人形に……」

「うん? 今メイン上がったとこだ」

 

 海中からウルティマの分体がなにかを持ち上げる。

 戦艦の主砲ほどもある巨大な球体。【カンゴルゴーム・スクラップ・ドラゴン】の頭部の中にあった邪眼がそこにはあった。

 分体の蜂が複数取り囲むようにその球体を掴んで持ち上げている。

 

「私は役立たずだ……」

「落ち込むなってA*(エースター)! 相手は超級だぜ?」

「オレどういう扱いなんだよそれ」

 

 それは超級扱いである。

 インフィニット・デンドログラムにおける理不尽の具現にして、最強を形にした存在。それが超級である。

 故にできることは無数にあり、あらゆる分野で長けている、そう思われがちなのだ。

 ましてウルティマは装備品に由来して能力を拡張できるタイプの超級。事実として何でもできると思われている。

 本人がグランバロアきっての何でも屋なのもそれに拍車をかけていた。

 

「はぁー。気を取り直して。ウルティマ、回収漏れだ」

 

 海中から多数の少女が顔を出す。それは共通して船の造形に似た武装を身に着けていた。

 そして、覚めるような白い肌。死人を連想させる造形である。

 その人形たちは海中から大量の銃器を引き上げていた。それに、なにか遺跡の外装のようなものを同時に。

 

「……なんで残ってるんだ? あのドラゴンの身体の一部じゃなかったのか?」

「多分だが【スクラップ・パグルス】っていう……ヤドカリの一種に近いんじゃないかと」

 

 【スクラップ・パグルス】。ヤドカリに似たモンスターで、海底を彷徨っている掃除屋の仲間である。

 このモンスターの特徴は海中に沈んだスクラップを使って自らの殻を作り出すことだ。その過程で、より頑丈なものを材料にしたり、手狭になった殻を投棄したりすることがある。そのため、一部のマスターからは歩く宝箱とみなされている節があった。

 それに、特別強い個体でも亜竜級。はっきり言って【スクラップ・パグルス】のいる海底に潜れるマスターからすれば雑魚である。

 

「そんなのどうでもいい! さっさと戦利品の検分と分配しようぜ! ウルティマもいいだろ?」

「ああ。足止め分、欲しいの持っていきな」

 

 マチュはそういって話を切り上げる。A*(エースター)は考え込みすぎるクセがある。

 【カンゴルゴーム・スクラップ・ドラゴン】がなんだったかなどどうでもいいのだ。そのどうでもいいことに頭をぐるぐる回し続けられていたら、戦利品の分配などできない。

 この場を仕切って差配を決められるのはA*(エースター)だけなのだ。

 戦場で指揮を取っていたのがA*(エースター)であったから、誰もがそう自然に考えている。

 

「はいはい」

 

 ウルティマの分体と、A*(エースター)の人形。そして、【マクロス・グランバロア】所属のサルベージャーが協力して引き上げたのはどうも遺跡の一部のようだった。

 あの重油まみれのドラゴンに見えていたものは、遺跡を背負ってここまで来ていたのだ。

 

「とんでもないモンスターだったわけだ。なんか硬いなとは思ってたんだけど」

「硬いで済ませる超級、パねえ……」

 

 【カンゴルゴーム】。あの竜の中心にあった魔眼がそのまま回収された。

 遺跡の一部。先々期文明のシェルターの一部のようで、当時の技術がそのまま残っている。ウルティマの貫通射撃によって穴が空いているところはあるが、それでも一撃で仕留めたからか損傷は少ないほうだ。

 遺跡の防衛に使われていたであろう、魔力式の光線銃座が30丁ほど。

 そして……【廃害竜の宝櫃】。

 

「【宝櫃】はとりあえず開けるか。ウルティマも構わないよな?」

「オレが気になってるのはその目玉だから構わないよ」

 

 開封される【宝櫃】からは【重装の指輪】*1【白翠の卵】*2が2つ、【結合重油】という接着剤のようなもの、そして【廃害竜の重鎧・ネイティブ】だった。

 

 【重鎧】には伝説級に相応しい2500近い防御力に、鎧の外側に素材をくっつけられるスキル《廃棄物結合》が付与されていた。

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「なんというか……うん……」

「使いづらいなこれ……」

 

 くっつけられると書いてあるが、くっつけたところで装備スキルが増えるようなことはなにも書かれていない。素材そのものを盾にする外付けHPとしての用途が考えられるが、それならはじめから肉厚な鎧を用意して使えばよいだけだ。あるいはそれを目的としているのか。

 鎧の上から装甲材を貼り付けてダメージを減らす運用……といったところだろうか。当然大きいものをくっつければくっつけただけ重くなるし動きづらくなる。

 

「で、あのヤバい防御スキルついてないわけ?」

「ついてないねぇ……。他の防御スキルもないってどうなの」

「アレなんだったんだよ」

 

 群がるマスターの中にはそんな言葉を口に出すものもいる。

 モンスター由来の装備品には、そのモンスターの性質が残る。防御が得意なモンスターなら盾や鎧になり、かつ近しい防御スキルを装備スキルとして持っていたり。攻撃、とくに属性攻撃を得意とするモンスターならばその属性を強化したり、その属性で攻撃できたりする装備スキルがついている。

 UBMが倒せずともレアボスモンスターを狩ることによってシナジーを作り出すことを考えるマスターはそこそこ多い。

 

「これほしいやついるか?」

「じゃあウチがもらうっす! 普通に防御力高いし!」

 

 マスターのうちの一人が手を挙げる。<ヴァンキッシュ>に所属するマスターの一人だ。彼女は前衛としてパーティメンバーを守る役割を持っている。そのようなマスターは強力な防具はいくつあっても足りない。なぜなら壊れるから。

 金属塊でもくっつければ盾として使えるこの鎧は好都合だった。

 

「その指輪はこっちで欲しいぞ、差額は出そう」

 

 【廃害竜の重鎧・ネイティブ】と違い、【重装の指輪】は市場に存在している。モンスターのドロップアイテムリスト内に存在する関係か、レベルカンストのマスターならば装備品の市場で一度や二度は見たことがある代物だ。

 その参考価格が300万リルとあっては流石に名乗りあげて欲しいと言えるマスターはなかなかいない。

 それでポンと金を出せるのは……<ガルホート交易団>の資金力あってのものだった。

 

「あー……そうか。山分けってそういうのもありか」

 

 ウルティマは普段、一人で狩りをする事が多い。なので戦利品の分配というものを忘れていた。

 欲しいものを上げて、バランスが取れないと思うなら自身の持っているものを差し出したり、他の分配を削ったりして調整していく。

 

「ウチには【白翠の卵】卸してくれ!」

「その接着剤は面白い使い方ができそうだな、くれ」

「遺跡の外壁もらっていいか?」

 

 それを皮切りに、生産職連中がそういってドロップアイテムを換金していく。【マクロス・グランバロア】ではよく見る光景だ。

 生産職と戦闘職が密接に協力関係にあるとこのような状況は発生しやすい。

 特にそれが思想や目的ではなく、利益関係のつながりならばなおさらだ。

 

「で、この魔力式銃座は私が分配するとして……」

「これ、だな」

 

 ウルティマは魔眼を指差す。

 皆が気になっているものだ。それの所有権がウルティマにあるとしてもそれがなんなのかは知っておきたい。危うくこれ一つで全滅まであり得たのだから。

 

「うっは、全然《鑑定眼》通らねえ。詳細不明箇所多すぎる」

「こっちもだ。先々期文明関係っぽいけど……」

 

 戦艦の主砲として据え付けられそうな巨大な魔眼。純粋な鉱石のようにも見え、魔法が刻まれているようにも見え。なにか超技術が使われて作られたものだということしかわからない。

 

「……ああ。これ【ジェム】だな。それも……いくらでも使える特別製だ」

 

 そう、その場で唯一それの《鑑定眼》に成功したウルティマが呟いた。

 

「わかるのかウルティマ!?」

「さすが超級、先々期文明にも詳しい」

 

「いや、超級は関係ないけど……」

 

 ウルティマが鑑定できた理由は、特典武具【Q極きぐるみしりーず れみな・くらいせら】によるもの。

 4つあるスキルのうちの一つ、《妄執なる書庫(アーク・ライブラリー)》の副作用だ。このスキルはウルティマの防御力に比例して【れみな・くらいせら】で使用できるレシピが開放されるというものである。

 そう、一般的に知識とみなされるものが、【ウロボロス】と一体化している。

 そのため《鑑定眼》の仕様の一つである、鑑定対象に対する使用者の知識に比例して読める情報量が増える仕様に対してシナジーした。先々期文明関係の物品ならばレベル10の《鑑定眼》であってもその由来や情報を読み解く事ができる。

 理屈としては【器神】が【器神】に就職できた理由と同じようなものである。

 

「えーと、なになに……? 元々戦艦に取り付ける用の魔法の演算器で、組み込まれた魔法をMPを消費せず使用できる、と。一応クールタイムもあるな。スキルにもよるが10秒から1分くらいか」

「先々期文明やべぇ。使い減りしない【ジェム】って強くね?」

「でもこのサイズは不便だろ。魔力式大砲でいいし」

 

「あとこの【カンゴルゴーム】は魔眼再現系魔法に特化して作られてるから、使用する魔法によっては光速だぞ」

「複数魔法使える上に光速はとんでもねえな。光属性魔法は大砲に積むのあんまり向かねえし」

 

 【カンゴルゴーム】で使える魔法は5つ。《デルタ・ペトラ》をはじめとして、目視したものを爆破する魔法、視線の先を焼く魔法、目線に沿って雷を放つ魔法、見える範囲の敵を拘束する魔法。

 そのどれもが上級職の奥義相当か、それ以上である。先々期文明の艦載兵器としてはやや物足りない性能ではあるが、これがMPの消費なしにある程度連射可能となると高い金を出してでも欲しいという船は山程出るだろう。

 

「とんでもないもの手に入れたなぁウルティマ。これもエンブリオに取り込めるんだろ?」

「いや、それがな。特殊装備品用の装備品は吸収対象外なんだ」

「じゃあどうやって戦艦の主砲とか取り込んでるんだ?」

「戦艦ごと。なんでこれ積む用の船を見繕わないと……」

 

 マチュが囃し立てるが、ウルティマの表情は微妙に浮かない。いくら超級といっても、【カンゴルゴーム】を乗せられるような巨大な船は予算オーバーである。元々金の動きが激しいウルティマにとって、流石に重い出費であった。

 

「ま、ならここの連中に船作らせればいいだろ。オレが紹介してやるからさ。今回の件もあるし、()()()()()()()()()()()()()()()()。だいぶ安くしてくれるだろ多分」

「こいつ、結構適当なこと言ってるな……」

 

 【マクロス・グランバロア】を製造した人物に協力を願えば、確かに強力な船は手に入る。

 だがオーダーメイドだ。元となる金額が洒落にならないことになるだろう。【マクロス・グランバロア】自体もいったいどれだけの資金や資材が投入されているのか。わかったものではない。

 趣味人が趣味にまかせて作り上げた代物はこれだから恐ろしい。

 そんな趣味人に依頼をするとどうなることか。

 

「あ。【カンゴルゴーム】作った工場の座標、鑑定情報に載ってる」

「「「「「!?」」」」」

「そんなもんあとにしろあとに! 機人(サイボーグ)村に行くぞ! 宴会だ!」 

*1
装備重量が一定値以上の場合攻撃力と防御力が1000ほど加算されるアクセサリー

*2
金属素材。金属を精錬する際に少量合金すると高品質になりやすくなる。




原作に【魔眼師】系統が出てきて【カンゴルゴーム】がだいぶ怪しくなるわ、スキルをぶった切る天災児が出てきて【ドラグウィンター】のスキル凍結能力が怪しくなるわでちょっと設定調整が大変になりましたが私は元気です。

ちなみにネタバレすると工場には行きません。
かわりに工場が来ます(?)
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