けいおんアウトブレイク   作:アドルフ大佐

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閲覧ありがとうございます
たくさんの方に見て頂いている様で嬉しいです
少し遅れましたが、第十話掲載します


第十話 激突

貴寛は黒澤から指定された研究施設に来ていた。

かつて、貴寛もこの施設で手術を受けて今の能力を手にした。

始まりの場所。

確か、あの頃は2人とも今とは違う名前だった。

当時は2人共…いや、大芽もいたから3人だったか。

貴寛達は当時、少し名の知れた不良だった。

自分達が敗北するはずがないと信じていたし、別にいつ死んでもいいとさえ思っていた。

ある日、自分達のチームの人間がヤクザを殺して、その金に手を付け、自分達を売った。

そこからのヤクザの手並みは鮮やかで、自分達はすぐに捕らえられ、死を待つのみだった。

「生きたいか?」

その言葉は今でも耳に焼き付いている。

おおよそ国のトップのする発言では無かったが、奴の言葉は聞く気にさせる『何か』を持っていた。

「私はね…日本を変える。アメリカの属国?表面上は友好だと言って、裏では中国や韓国にすら頭が上がらない。…私は許せないのだよ。それらを甘んじて受ける日本という国も、それを当然の様に押しつける世界もね。私は世界を変える…その為には力が必要だ…絶対的な力がね。共に来ないかね?」

当時は考えもしなかったが、思えばヤクザに殺される寸前の不良に国のトップが話しかけてる事自体が異常だったのだ。

結果的に貴寛達はその話に乗った。

思えば貴寛自身、奴のカリスマ性に魅せられていたのかも知れない。

昔を思い出し、少し感傷的になりながら貴寛は考える。

黒澤は知性のある個体がいた場合、『ISS能力強化手術』そのものを奪われる危険があると言った。

確かに、身体能力で『ISS能力者』に匹敵するグールが『能力』を得たら脅威ではある。

だからデータを破壊しろ、と…今回のキモはそこだ。

(何故、黒澤はそう考える?…奴らは寄生虫だ。宿主に寄生し、支配するだけの本能丸出しの下等生物の筈。何故、その可能性を危惧する?)

「あの狸じじい…何を隠してやがる」

貴寛は吐き捨てる様に呟き、研究施設の最深部を目指す。

そして、最深部で意外なものが待ち受けていた。

「…偶然って訳でも無さそうだが…知性のある個体ねぇ、納得だわ。もしかして、喋れたりすんのか?おたくら」

貴寛は余裕のある態度を崩さず、目の前のソレに話しかける。

『セクター3』。

現在、貴寛達が知り得る限り『グール』における成長段階の最終形態とされる。

『人』という殻を破り、人に最も近い姿形をした化け物。

セクター2時代に不自然に膨張した身体は跡形もなく、引き締まった人間の身体(それ)に近い。

ただ違うのは全身が真っ黒く、所々紅いひび割れの様な模様が全身に入っている。

紅く釣り上がった両の目に瞳は無く、ただただ紅い。

大きく裂けた口は不快な、涎の様な液体が滴り落ちている。

セクター3はただ立っているだけで、襲ってくる気配はない。

本能に忠実なセクター2ではあり得ない現象だった。

(これが『知性』ってかぁ?)

態勢は変わらず、だがセクター3から迸る殺気を感じた。

「…そう、こなくっちゃ。7年振りか…来いよ、あの時の傷の礼…しっかりさせてもらうからよぉ!」

両者、同時に駆け出す。

間合いに入るや否や、貴寛が先制の左フックを放つ。

セクター3は上体をやや屈め、最低限の動きで躱し、反撃に転じる。

転瞬、貴寛は空いた右腕でショートアッパーを繰り出す。

大振りな初撃と違い、ダメージよりもスピードを重視した一撃はセクター3の反撃より早く、がら空きになっていた敵の顎にクリーンヒットする…筈だった。

瞬間、敵は反撃を止め、上体を後ろに逸らし貴寛の右をも躱した。

(!!こいつ!動きが違ぇ!)

貴寛は完全に死に体になっていた。

敵は潜り込む様な低い姿勢で前進し、貴寛の左脇腹に強烈な一撃を叩き込む。

ガシャン!

凄まじい音を立て、机目掛けて吹き飛んだのはセクター3の方だった。

「ちったぁ出来るじゃねぇか…おい!簡単に死ぬんじゃねぇぞ?まだまだ暴れ足りねぇからよ」

貴寛がニヤニヤしながら、吹き飛んだ敵に声をかける。

先程の攻防、完全に死に体であったはずの貴寛だが、全ては攻撃を当てる為の布石。

隙を見せて、食いついて来た敵に右足の強烈なミドルを当てた。

しかし、正直ここまで食い下がられるとは思わなかったし、敵の攻撃も中途半端ながら食らっていた。

貴寛の左脇腹の辺りがじわりと赤黒く染まっている。

わずかな差だが、敵の攻撃は貴寛に届いていたのだ。

もし、まともに食らっていたら上半身と下半身が別々になっていただろう。

(当ててくるとは…予想以上だな。にしても、あの動き…明らかにセクター2とは違う。アレはそう、人間の動きに近い…本能だけのセクター2とは、別モンだな)

血の滲む脇腹に手をやり、傷口を確かめる。

(大した傷じゃねぇが…やっぱり、俺の能力でも『抑え』が効かねぇか)

音を立てて、セクター3が立ち上がる。

その時、貴寛は確かに見た。

セクター3の左腕から微量の出血があるのを…そして、それが目の前で完治するのを。

(…あれを、防いだってのか?…左手で)

「…人間ヨ…コノ場ニオイテ尚、自ラヲ万物ノ霊長タル存在ト信ジルカ?」

貴寛は驚愕した。

こいつは喋れる?人語を解する存在なのか?

知性のある個体…黒澤の言葉が蘇る。

「…喋れるんなら、話が早ぇ…洗いざらい吐いて貰うぜ?どっちが格上か判らした後でなぁ!!」

貴寛の怒声を合図に再度、同時に駆け出した。

 




閲覧ありがとうございました
今回から中盤に入り、新たな強敵セクター3が登場です
次回第十一話は貴寛とセクター3の死闘が決着して、新たな問題が発生…するかもです
では、次回も宜しくお願いします

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