もう少しコンパクトに収まる筈が気づけば12話…完結まであと何話かかるんだろう
とはいえ、完結まで必ずやりますので宜しくお願いします
「黒澤ぁ!!」
乱暴にドアを蹴破り、憤怒の形相で貴寛が叫んだ。
「ひぃっ!」
あまりの剣幕に澪は飛び上がらんばかりに驚き、気を失った。
「みっ、澪ちゃん!」
紬が必死に肩を揺すって澪の意識を戻そうとするが、効果は今一つの様だ。
「あの…黒澤博士なら、今日はここに来てませんけど…」
和は貴寛の剣幕に怯えながらも、黒澤がここには居ない事をアピールする。
「チッ」
舌打ちした後貴寛は踵を返し、荒々しく部屋を後にする。
貴寛が立っていた場所には小さな血だまりが出来ており、悟はそれを見て驚いた。
「…血?…あの1位が?…」
「意外なんですか?グールと戦っていたのなら、怪我は珍しくないと思いますけど」
「…君達は知らないんでしたね。1位の能力を…アレは物理法則を無視した能力ですよ」
悟の言葉に紬が首を傾げる。
「…そんなに凄いものなんですねぇ」
「凄いなんてものじゃない…引力と斥力をご存知ですか?1位の能力はその二つを生み出し、自在に操る能力なんです。」
悟の言葉に和が聞き返す。
「確かに凄い気はしますけど…今一つイメージが湧きませんね。鳴神さんの発電能力の方が判りやすくて強そうな気がしますけど」
「2位ですか…確かに、2位も強いですけどね。ただ、1位と2位には越えられない壁があると言われてますから。引力と斥力を以ってあらゆる攻撃を寄せ付けない…それが1位なんです。そんな彼が傷を負うとは…何があったんでしょうね?」
ー 貴寛は施設中を探して歩いたが、ついに黒澤を見つける事は出来なかった。
右手の治療を終え、今いる幹部全員に集合をかけた。
貴寛は自分の短慮を呪った。
自分が施設破壊に出ている間、誰かを見張りに付けておくべきだった。
会議室に続々と幹部が集まってくる。
1番最後に悠が唯達を連れて入ってきた。
「…他の奴らは?」
貴寛は悠に聞いたつもりだったが、貴寛の左側に座った小柄な少年が答えた。
「兄さんは海外に居たから知らなかったんですね。全員討伐に出て帰らず終いですよ…戻ってからも単独任務でしたし、無理もないですな」
『火神 大芽』。
綺麗な顔立ちと小柄な体格から女に間違われがちだが、れっきとした男である。
貴寛とは幼少期からの友人にして弟分。
故に貴寛を「兄さん」と呼ぶが血縁関係は無い。
『ISS能力者』のランキングでは貴寛、悠に次ぐ3位の実力者だ。
「…じゃあ、これで全員か?」
その質問には今度は悠が答えた。
「…そうなりますね。なので、代わりにこれから幹部入りするであろう人間を連れて来ました」
存在は知ってはいたが、実際に会って話すのは今回が初めての唯達は貴寛に頭を下げる。
「まぁ、座れよ。…状況はだいぶ変わったから、まずはそこから話す」
それから貴寛は、黒澤の研究施設破壊に向かっていた事、グールのセクター3と交戦した事、セクター3の中には上位個体と呼ばれる通常より高い能力を持った個体がいる事を伝えた。
話しながら、貴寛は頭の中で反芻する。
(13人居て、残ってるのは2位、3位、4位、6位、8位、13位…きっかり半分やられてやがる。黒澤のヤロウ…これも折り込み済みか?)
「黒澤博士の裏切りか…ということは、グールを従わせる何かが黒澤にはあると見た方がいいですね」
「本当にグールを制御出来るなら、それ、見つけ出した方がはやいかもね」
悠の言葉に4位も同意する。
『篠森 唯乃』。
幹部の中では最年少にして、『ISS能力強化手術』を受けた初日から幹部に名を連ねた猛者。
愛らしい外見とは裏腹に『ISS能力者』になる前は大量殺人鬼だった過去を持つ。
詳しくは知らないが、彼女は学校でイジメを受けていたらしい。
そんな日々がどれくらい続いたか…ある日クラスにいた30人を皆殺しにした後、同学年のクラス3つを襲撃した。
124人の内死者118人。
生き残った6人全員、一命を取り留めたが下半身付随の状態だったという。
判らないのは、イジメの主犯が生き残った6人だという事。
それ以外は教師も含めて皆殺しだ。
何より異常だったのは、生き残った6人とも『命が助かる様に、かつ、必ず下半身付随になる様に傷を負わされていた』事だった。
日本大統領でもある相楽直々の命令で彼女を迎えに行ったのは悠だった。
その時見た、あの底無しに暗い瞳は今も忘れる事が出来ない。
「でも、それなら何でここに残ってたんだろ?」
唯が不意に放った一言に全員が固まった。
言われてみれば、黒澤は何故ここにいたのだろう?
ここを離れたというのなら、グールに狙われない何かがあるという事。
それなら、ここにいる必要は最初からない。
能力者を増やす必要など一切ないのだ。
それでもここに居たという事は、それでもここに『居なければならない』理由があったからに他ならない。
「…お前、名前は?」
「はっはい!平沢 唯です!」
「唯…ナイスだ。加賀ぁ!」
「すぐに調べます」
貴寛の怒声に悟は直立不動になり、素早く部屋を出て行く。
「一連の流れを考えると…単独行動は避けるべきですかね」
「…だろうな。つっても、4位までは単体でやれんだろ…6位と8位は元々1セットだ。お前らは新人だ…固まって動け」
悠の提案を受け入れ、貴寛が指示を出す。
「後は加賀の奴が何か判ったら、全員集合して今後の検討だな。…んじゃあ、今回は解散!」
貴寛が勢いよく立ち上がり、部屋を出て行く。
全員それぞれが各々のタイミングで部屋を後にした。
ー 「今回の調査で判った事を報告します。まず、黒澤のPCのアクセス履歴から、彼が施設の制御システムにアクセスしていた事がわかりました」
「そのシステムは無事なのか?」
悟の説明に悠が割り込む。
施設の制御を奪われたのであれば、グールが一気に攻めてくる可能性もある。
限られた空間では能力も満足に使えない。
結果、人類は終焉を迎えるだろう。
「ええ、元々の仕様が五つのセキュリティに同時にアクセスして同時に解除しなければならない代物で、更に一秒毎にパスワードが変わるので、事実上アクセスは不可能なんです…これは」
「つまりは…黒澤博士はここには施設の制御を乗っ取る為にいた。しかし、それは不可能で逃亡した…こういう認識ですよね?」
「…えぇ…その通りです」
話が脱線しかけた悟を絶妙なタイミングで大芽が遮る。
「ただ、一つだけ名前の無いファイルが存在してまして…」
「…勿体ぶらないで早くしてくれないかなぁ?焦らされるの、好きじゃないんだぁ」
唯乃は笑顔だが、その発言には間違いなく殺意が見え隠れしている。
たぶん躊躇いもせずやってのけるだろう。
これは悟の悪い癖だ。
話の根本から脱線して悪戯に時間をかける事や、核心をいつまでも口にせず周りの悩む姿を眺める。
自分の優位性を確認したいのだろうが、ここにいるメンツは気が短い。
「…死にたくなかったらさっさと言え。死にたいのなら止めはしないが」
悠の言葉に味方が居ない事を悟ったのか、悟は一枚の紙を全員に配り、告げた。
「…真実はここにある、だそうです」
閲覧ありがとうございました
次回はけいおんキャラはもちろん、新たな幹部2人も遂に参戦…次回は物語としては重要なお話になる予定ですので宜しくお願いします