けいおんアウトブレイク   作:アドルフ大佐

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閲覧ありがとうございます
今回は物語の都合上、通常より長めとなってます。



第十三話 真実

黒澤が残したメッセージ。

「真実はここにある」。

黒澤が裏切り者である以上、罠である危険性は高い。

しかし、貴寛達に他に手がかりもなく、ただグールを殲滅し続ければいい訳でもない。

自給自足が可能な施設ではあるが、それに甘えてしまえば鳥籠の中の鳥だ。

グールに対して戦う以外の手段を見出せれば…或いは、グールの増殖を止める手立てがあれば…。

結局は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」よろしく敵の本拠地に向かう事にした。

貴寛は前回の戦いで右手を負傷した為、今回は施設の防衛に回る事になった。

しかし、今回の戦力は貴寛を抜きにしてもかなり高めだ。

人類最強の集団から2位『鳴神 悠』、3位『火神 大芽』、4位『篠森 唯乃』。

幹部ではないものの『平沢 唯』、『田井中 律』、『中野 梓』、『立花 姫子』、『若王子 いちご』の8名が今回の参加メンバーだ。

蜂須賀と六道は施設防衛の為、貴寛と共に残る手筈になった。

目的の場所はとある人工島だ。

『海上ファクトリーフロート』と呼ばれ、各有名企業がこぞって工場を建設した事は記憶に新しい。

世界的なアウトブレイクから既に半年。

大した成果もなく戦い続けてきたが、たった半年で街は壊滅的な打撃を受けた。

それは海の上に浮かぶ工場地帯も例外ではなかった様で、廃墟に等しい佇まいだ。

広大な敷地は一朝一夕での探索など無意味であると言わんばかりだ。

幹部は単独行動、唯達は団体行動で付近の探索にあたる事は前回話し合いで決めた。

『ISS能力者ランキング』にて、上位5名は軍隊の一個大隊以上の戦力と言われ、6位以下とは戦闘能力に決定的な差があるとまで言われる。

13名の幹部の内、直前のやり取りから死亡と見られているのは12位、11位、10位、9位、7位の5名。

5位に関しては直前のやり取りが全くない事から純粋な行方不明となっている。

最近になって任務から帰らず、死亡とみなされた5名と違い、5位は貴寛がアメリカから戻るのと同日に消息を絶った。

もちろん、最近殉職したと思われる5名とは唯達も面識があった。

幹部とはいえ生きて帰れる保証はない。

戦力的にも、人間は圧倒的危機に瀕している。

ズドンッ!!

凄まじい轟音に唯達は身構えた。

ズドンッ!!ズドンッ!!

音は断続的に続き止む気配はない。

「誰か戦闘してるみたいね」

「行ってみよう!苦戦してたら助けないと!」

実際、これ以上戦力を失うのは避けなければならない。

この人工島だけに限らず、戦力の低下はこれからの戦いに大きな影響を及ぼす。

姫子の呟きに唯が答え、全員がその言葉に頷き、駆け出した。

 

ー 大芽は鼻歌交じりに右手を振るう。

数体のグール、セクター2に囲まれてはいるが鮮やかな身のこなしで攻撃を避けていく。

ズドンッ!!

凄まじい爆発音と共にグール自体が爆散した。

更にグールは大芽の後ろから渾身の右フックを放つが、大芽は上体を屈め躱し、前方に跳躍する。

その途中で身体の向きを先程大芽を攻撃してきたグールに向け、左指をパチンと鳴らす。

ズドンッ!!

爆発音の後には小さなクレーターだけが残り、グールは跡形もなく消滅していた。

「便利だよね、この能力。君達グールってさ、耳が良いだろ?だから、能力使うと寄ってくるんだよね…わざわざ殺されにさ」

大芽が言いながら笑う。

そこからは先は一方的な虐殺だった。

爆発音に反応したグールが次々現れ大芽に群がるも、ある時はグール自体が爆散し、ある時は地面や壁ごとグールが爆散していく。

それを離れた所から見ていた唯達は戦慄を覚えた。

ランキング上位5人が本気で戦闘するのを見るのは、これが初めてかもしれない。

以前、学校から避難する際に悠の戦闘を見たが、あの時は避難を優先していた事もあり積極的に戦闘は行なっていなかった。

しかし、大芽の強さは常軌を逸していた。

群がるグールの数は10や20ではない。

それをものともせず次々に倒しているのだ。

次元が違う、とはこの事かもしれないと思った。

「…すげーな…グールがまるでゴミみたいだ」

「確かに圧巻ですね…さっきから爆発してる『アレ』が能力なんですかね?」

「…たぶんね」

律、梓、いちごが呆気に取られたと言った感じで言葉を交わす。

「レベル5の『爆発物生成能力』…それが3位の能力だよぉ」

突然の声に振り返ると、4位『篠森 唯乃』が立っていた。

「篠森さん…よかったぁ、グールかと思いましたよ」

「唯乃でいいよぉ。見惚れるのはいいけど、ボーッとしてたら死んじゃうよ?」

唯の言葉に唯乃が笑顔で返す。

声を出す間すら無かった。

気づいた時には飛び出してきたグールの攻撃が唯乃に当たろうとしていた。

唯達は訪れるであろう悲惨な光景に反射的に目を瞑る。

ガキィン!

硬い物同士がぶつかる音が辺りに響き渡る。

グールの攻撃は結果として唯乃には届いていなかった。

いや、確かに当たってはいるのだが、攻撃は当たる寸前に武器で防がれていた。

振り返り様、唯乃が手にした鉈の様な武器でグールの頭を切り落とす。

飛び散る血飛沫を浴び、紅く染まりながら恍惚とした笑みを浮かべる。

唯達は背筋に悪寒が走るのを止められなかった。

気がつけば、既に唯達もグールの群れに囲まれていた。

「やるしかねーな」

律の声に全員が身構える。

幹部に負けじと唯達もグールに向かって突撃した。

初の実戦から3ヶ月、それぞれ鍛錬は怠っていなかった。

それは動きに表れる。

律は大剣を振るい、前方の敵を切り伏せる。

両脇からグールの鋭い爪が襲いかかるも、律は大剣を地面に刺し、それを支えに柄の先端に逆立ちする様な体勢からグールの首を両脚で挟み、捻る。

ブチブチッと音を立ててグールの首を引きちぎり、地面に着地する間に身体を捻って大剣を抜き、迫ってきたグールを縦に真っ二つにした。

いつの間にか呼び出していた分身も既に先程の1体を始末しており、瞬く間に4体を始末して見せた。

(へぇ…動きといい、能力といい、結構やるじゃん。2位がご執心なのも頷けるね)

律の鮮やかな手並みに大芽が内心賞賛の声を送る。

唯もまた、複数のグール相手に互角以上の攻防を繰り広げていた。

武器は手甲…いわゆる体術をメインとしたスタイルで、力や破壊力こそ欠けるものの、スピードと手数で上手くカバーしている。

何より目を引くのが防御における技術だった。

時に躱し、時に受け流し…完全にグールを手玉に取っている。

同じく体術をメインとする貴寛とは真逆のスピードと防御を重視した立ち回りは立派だが、いささか攻撃力に欠ける。

唯乃はグールを次々鉈で始末しながら唯を見ていた。

唯の周りのグールが次々に頭を切り落とされていく。

時折姿を見せる小柄な少女。

(認識阻害かぁ…あの感じだと視覚タイプかな?あのセミロングの娘が敵を引きつけて、あのちっちゃい娘が止めを刺す…6位と8位みたいな共生関係か)

唯乃も感心していた。

動き自体もそうだが、能力を活かすという点でも唯達の動きは優れていた。

どれくらい経っただろう?

辺りにグールの死体が散乱し始めた頃、突如グール達の襲撃が止んだ。

残っていたグール達も一斉に引き上げていく。

「おやおや?ボスのご登場かな?」

大芽の視線の先に新たなグールが姿を現す。

セクター3。

2体のセクター3が建物上から大芽達を見下ろしていた。

 

ー 悠はこの『海上ファクトリーフロート』に来る前に資料に目を通し、一つだけ目星をつけていた。

1箇所だけ、周りの工場とは違い「生物研究」を主にしていた工場があったからだ。

表向きは新薬開発や実験を行う施設として運営されていたが、悠はそこに目をつけた。

黒澤がこの『海上ファクトリーフロート』に何かしらの手掛かりがあると言うのなら、それは生物関連の研究施設に他ならない。

この生物研究施設を探索する内に幾つかの事がわかった。

他の工場と違い、ここだけは電気が生きている。

つまり、まだ稼働しているという事だ。

ロックされた扉も、悠の能力なら解除は難しくない。

(電気タイプのセキュリティで助かったな…まぁ、破壊してもいいんだが)

手当たり次第部屋を探索するのを繰り返す内、悠は地下の研究施設に続く通路を見つけ出し、奥へと進んだ。

とある部屋に入った時、窓から見えた光景に息を飲んだ。

幾つも並ぶ巨大な試験管…その中には14〜16歳くらいの少女が入っている様だ。

「あれは…人工生命体?…クローンか。まさかあれを?…ん?これは…」

悠は机の上の資料を手に取り、ざっと目を通す。

『新たなる方法にて、人類に進化と変革を促す『人類壊変計画』。

本計画はサンプルの量産型クローンを用いてその計画を進める。人工的に創り出したる神の兵器『スルト』にて、サンプルを新たな生命体へと生まれ変わらせる。

研究の結果、ステージ1では身体能力の向上は確認出来なかった。ステージ2では身体の異常な膨張にて、人としての形こそ失われたが身体能力は常人の約10倍程の数値を記録した。

ステージ3では形こそ人型ではあるものの、外見は人とは程遠い。

身体能力はステージ2を大きく凌駕しステージ2の3倍の数値を記録した。

また、各ステージには新鮮な餌を大量に与える事により、進化する事も判った。

ただし、ステージ1からステージ2への進化は時間次第の様だ。』

「…これはグールの記録か?…サンプルの量産型クローン?大量の餌…これはたぶん、あの試験管の中のを使うのだろう。この書類…黒澤の名があるな」

「いかにも…私が発案し、推し進めてきた計画だよ。来ると思っていた、2位…いや、『鳴神 悠』」

後ろから声をかけられ振り返ると、そこには黒澤が立っていた。

「…貴様、随分余裕だな…グールにやられてない所を見ると、やはり貴様はグールを操る術を持っている様だな。それに…ここはグールの生成場か?」

「せっかちだな、鳴神よ。グールは私が作ったのだ…当然、制御する方法はあるさ。それと、ここがグールの生成場と言うのも正解だ…相変わらずの秀才っぷりだな。だが…天才でもある1位なら、その試験管の中身が何であるかも気づいたかも知れないね」

言われて、悠は横目で窓を見る。

試験管の中の少女…『ソレ』が何であるかを確認して、確信した。

「あれは…貴様!…これは、どういう事だ!」

「驚いたかね?…私も驚いたさ。彼女を目の当たりにした時はね。『オリジナル』が生きていたとは思わなかった…鳴神よ、何故私がこの計画を発案したか判るかね?」

「…知らんな。俺はお前じゃないんだ、お前の腐った考えなんて判る訳がないだろう?」

「今から20年前、私は偶然見つけたのだよ。『神の遺産』をね。そして、一つの可能性を見た…それは、この世界を変える可能性だ!私はすぐにこの研究を始めた…だが、研究を続ける内、様々な問題が浮上した。研究資金やサンプルが足りなかったのだ。しかし、世界は私を見捨てなかった!研究資金はすぐに解決した…日本のトップが「ISS能力強化手術』に興味を示したからな。そこにタイミング良く私の助手が結婚し、子供を身籠った。その子の細胞から生み出したクローンを使って、研究は遂に完成した。…世界は私を選んだ!私は新世界の神になったのだよ!!」

黒澤は狂気に満ちた笑みを浮かべ、声高らかに宣言している。

悠は迷った。

拘束して連れ帰り洗いざらい吐かせるのが正しい選択ではある筈、だが、奴がのこのこ悠の目の前に現れた事が気になった。

「この資料に書いてある事が事実ならば、この施設を破壊すればグールは生まれない…何故、ここを俺達に教えた?貴様が言う、『新世界の神』とやらになるには俺らは邪魔な存在だろう?…黒澤、貴様何を隠している?」

「何も隠してなどいないさ。…ここはただ一つのグールを生み出す場所だ。ここを破壊すれば、グールの数は増えない…それだけは真実だ」

おかしい…何かを見落としている。

矛盾を解決できていない。

黒澤の言動の中に必ずヒントはあったはずだ。

そして、一つの可能性に辿り着いた。

「…貴様…長くないな?」

「…秀才の君にはしては上出来だ。私は不治の病にかかっている…新世界の神にはなれんのだ。…だからね、世界を終わらせる事にしたのだよ!私の居ない世界で人間ごときが我が物顔で世界が続いていく…そんな事を許す訳にはいかん!!」

「下らんエゴだな…貴様は神でもなければ、選ばれし人間でもない。ただの人だ。お前を殺してグールも殺す、1匹残らずだ…それで全て終わりにしてやる」

「…なら、行きたまえ。今、この島に来ていた彼らの元に私が創り出した最高傑作のグールを送り込んだ。知っているだろう?『上位個体』という奴だ…早く行かねば全滅してしまうぞ?3位や4位だけで、1位ですら手こずったグールを倒せる訳がない!!」

黒澤は死ぬ事を受け入れている。

自分もまた、自分の仕事をしなければいけない。

「…とりあえずお前を殺して、この施設も破壊する。それが優先事項だ」

「ほぅ…意外だな。君ならすぐに飛んで行くと思ったのだが。君は彼女に偉くご執心だったからね」

確かに、悠は唯に対して執着している部分がある。

重ねている訳ではないら。

容姿は似てるが、性格なんかはまるで違う。

だが、重ねている部分があるのもまた事実だった。

この施設を訪れて、ようやくその理由が判った。

彼女は恐らく唯の…悠はため息をつき、考えを打ち消す。

「バカか、貴様は…最高傑作だか何だか知らないが、貴様が作ったポッと出の化物にあいつらが殺られる訳がないだろう?」

今日まで、何のためにやってきたか…そんなの決まっている。

悠は薄く微笑った。

「潜ってきた修羅場の数が違うんだからな」




閲覧ありがとうございました
今回は物語の核心部分に触れる…のをテーマに構成しました。
次回は第十四話、今回の続きになりますので宜しくお願いします。
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