けいおんアウトブレイク   作:アドルフ大佐

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第二話になります。
今回、初のオリジナルキャラクターが登場します。
物語は序章の序章ですが、お付き合い頂ければ幸いです。


第二話 友達

唯が近づいても尚、異形の者は食事を止めない。

自分が噛みちぎった箇所からジュルジュルと音を立てて血を啜る。

肉ではなく、血液が主食なのだろうか?

現状、そんな事はどうでもよかった。

唯は勢いをつけて、ギターで一閃する。

バキャッ!!

幸い、ケースの中にギターは仕舞ってあるので破片が飛び散るという事は無い。

ただ、音と手応えで中のギターが壊れたのだけは判った。

殴った際の反動で唯はバランスを崩し、後方に尻餅を付く。

それとほぼ同時だった。

異形の者が素早く左腕を振るった。

狙って後方に尻餅を付いたのではない…が、それが幸いして異形の者の左腕を躱すことが出来た。

そして、その一連の出来事は唯の心の中の押し殺していた恐怖を呼び覚まさせた。

圧倒的な死の恐怖。

ただの女子高生である唯には余りにも酷な現実だった。

確かに、唯の放ったギターでの一撃は異形の者の頭部に当たった。

並の人間なら、打ち所が悪ければ死んでもおかしくはない。

だが、その一撃すら異形の者には大したダメージは与えられなかった様だ。

唯の脳裏に先程異形の者の食事になった女生徒の姿が自分と重なる。

(…死ぬ…たぶん、さっきの子みたいに…)

異形の者が食事を終え、右手に持っていた女生徒を放り投げる。

そして、一歩ニ歩前進し右腕を振り上げた。

全員が目を閉じ、来るであろうその瞬間を待った。

バチバチッ!!

つんざく様な炸裂音、辺りに漂う肉の焦げた臭い。

その直後、右腕を振り上げたまま固まっていた異形の者が仰向けにゆっくりと倒れた。

何が起きたのか誰も理解出来なかった。

ただ、異形の者は倒れ、その異形の者を倒したであろう人物が音楽室の入り口に立っている事だけは理解出来た。

「…どうやら、間に合ったみたいだな」

異形の者を倒した長身の男性はその屍を乗り越え、唯に手を差し出した。

「…立てるか?」

唯は呆然としたまま、差し出された手を取り、立ち上がった。

男性は暫く唯を驚いた目で見つめていたが、気を取り直して喋りだした。

「…さて、琴吹家からの依頼で娘の紬さんを保護します…俺と一緒に来てもらいましょう」

男性の言葉に紬は立ち上がり、凛とした表情で問いかけた。

「あなたは何者ですか?…これは一体何なんですか?」

いつもはおっとりして、柔らかい雰囲気の紬のこんな姿を見るのは、共に過ごしてきた軽音楽部のメンバーですら初めてだ。

「…一つずつ、お答えします。俺の名は『鳴神 悠』…軍の特務部隊に所属しています。今回の騒動を受けて、琴吹家から直々に娘である紬さんの保護を要請されて来ました。…次に、「これ」ですが…」

男性は先程倒した異形の者を指差し、話し始めた。

「これが何であるかは、判りません…どこから来たのかも…ただ、こいつらは人に寄生し、化け物に変えます。今現在、各地に大量発生し、軍が対処に当たっています。質問は以上ですか?…なら、急ぎましょう新手が来ると厄介だ」

言い終えると同時に、男性は素早く紬の腕を掴み音楽室を出ようとする。

「離して!」

叫びながら、紬が腕を振りほどく。

「…友達が居るの…置いてなんて行けないわ」

消え入りそうな弱々しい声で紬が呟く。

元々人一倍優しく、友達思いの紬だ…無理も無い。

それを唯達、放課後ティータイムのメンバーは嫌という程知っている。

「…ムギ、行くんだ」

声を掛けたのは軽音楽部の部長でもある律だった。

「あたし達なら大丈夫…軍が対処してるんだろ?こんなのすぐに収まるさ」

そう言って律は笑う…いつもの様に。

それは紬の胸を抉る様な痛みを伴う、哀しい笑顔だった。

「そうです、きっと大丈夫です。…だから、その人と先に避難しててら下さい」

「…そうだな…後から私達も追いかけるから」

「そーだよ、ムギちゃん…きっと大丈夫だから」

梓と澪に続いて、唯も紬を抱きしめながら励ます。

たぶん、ここで別れたら2度と会えないだろう。

異形の者は学校内に侵入していた。

そして、時折聞こえる悲鳴と何かが壊れる音、学校内に居るのはさっきの1体だけではない。

仮に運良く学校の外に出れても、家に帰り着けるかどうか…ましてや、家の中が安全かも定かではない。

それでも、大切な友人の為に自らの危険を顧みず、その背中を押す。

悠は感心していた。

(…何の為の力だ…こういう人間を助けないで誰を助けろと言うのか…)

「…時間が惜しい…全員で移動しましょう…とりあえず、話は後にして下さい」

「唯!」

「お姉ちゃん!」

音楽室を出ようとする直前、唯の幼馴染みの『真鍋 和』と妹の『平沢 憂』が走って来た。

「唯…良かった。無事だったのね」

「お姉ちゃーん」

憂は唯に抱きつき泣きじゃくり、和もホッとした表情を浮かべる。

「憂…和ちゃんも…無事で良かった」

「…1匹来てるな…急ぐぞ!…全員、俺から余り離れるな」

唯達の感動の再会を断ち切り、悠を先頭に全員が走り出す。

悠の言う通り、暫く走ると2階の廊下に異形の者がいた。

「チッ…下がってな」

悠の言葉を合図に全員三歩後ろに下がる。

それと同時に2体の異形の者が悠目掛けて駆けてくる…巨体に似合わず、一切の無駄を省いた想像以上のスピードで悠に迫る。

「嘘…早い」

思わず、澪は呟いた。

もし、悠が異形の者に倒された場合…間違いなく自分達は死ぬ。

誰もが祈る様な思いで悠の背中を見つめた。

ー悠はどこからか2本のナイフを取り出し、流れる様な素早い動作でナイフを投げる。

ナイフがそれぞれ異形の者に刺さった瞬間。

バチバチッ!!

つんざく様な音の直後、2体の異形の者が倒れる。

全員が驚愕した。

鮮やかな手並みは勿論だが、全員がその瞬間を目撃した。

あのつんざく様な音…高圧電流がショートする時の音だ。

あの一瞬の閃光…電撃によるスパークに違いない。

よく見れば、悠の身体を時折這い回るあの光はまさに雷…もしそうなら『鳴神 悠』は雷を操り、異形の者を倒した事になる。

そんなマンガやゲームの様な話がある訳が無い。

しかし、今目の前で起きた事は事実以外の何物でもない。

「…聞きたい事は山程あるだろうが、とりあえずは脱出だ。行くぞ」

悠の掛け声と共に、少女達は夕暮れ時の校内を駆け抜けた。

 




閲覧ありがとうございます。
今回も見苦しい文章で申し訳ないです…次は第三話を掲載予定です。

ちなみに第四話まで書き溜めありますので、本日中に第三話までは投稿予定してます
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