ようやく物語も序章の中盤といった所でしょうか。
それでは、今回も宜しくお願いします
校舎の外に出るのはそれほど難しくはなかった。
あれ以降、異形の者達と遭遇する事は無く、代わりに『立花 姫子』、『若王子 いちご』と合流する事が出来た。
当初は紬だけを救出しようとしていた悠だったが、唯達と行動を共にするにあたり姫子達も一緒に行く事に意見を挟む事はなかった。
校庭には数体の異形の者がいたが、手にした獲物の食事に夢中なのか襲ってくる事はなかった。
校庭に停められた装甲車に乗り込み、通い慣れた桜ヶ丘高校を後にする。
ここに戻って、再び皆とあの日常を過ごす事が出来るのか…そもそも、再び戻る事が出来るのか。
誰もが言葉に出来ない不安を抱えていたし、それが全員の口を重く閉ざした。
『セントラルシティ』。
一見するとただの大型ショッピングモールだが、その地下には有事の際に民間人を収容する施設がある。
これは実しやかに囁かれていた都市伝説ではあるが、真相は誰にも判らなかった。
一行の目的地はまさしく、この『セントラルシティ』だった。
『セントラルシティ』の中は荒れ放題だった。
唯は勿論だが、全員が1度は足を運んだ事があるはずだ。
その時の綺麗で賑やかな雰囲気は欠片もない。
所々血が壁や床に付着している有様だった。
「…ここも奴らにやられた…ある程度は俺が片付けたが、まだ生き残りがいるかもしれない…この先、エレベーターで地下に降りれば避難施設がある。後は受付でこれを渡せ…それだけで全員通して貰える筈だ」
悠はそれだけ言うと唯にカードを渡し、背を向ける。
「あのっ…一緒に行かないんですか?」
「………これ以上好き勝手やらせる訳にはいかないからな。数を減らして来る」
唯の問い掛けに背を向けたまま答え、悠は姿を消した。
唯達は言われた通り、エレベーターで地下に降り受付にカードを手渡す。
すると全員に許可が下り、施設の中に入る事が出来た。
中は想像以上だった…青い空に太陽が降り注ぎ、唯達がよく知る平和な街がそこにあったからだ。
まるでさっきまでの出来事が全て夢だったのではないか?そう思わずにはいられない。
「ホントに地下かよ?これ…」
「エレベーターで間違いなく地下に降りたはずだから、間違いないとは思うけど…信じられないわね」
律は勿論だが、和ですら感嘆の声を漏らす。
「君達かね?…2位が保護してきた少女とは」
「…あの…あなたは?」
突然、初老の男性に声を掛けられ、戸惑い気味に梓が応じる。
「私はただの研究者だよ…ついてきたまえ。施設を案内しよう」
男性の問い掛けに全員が戸惑いを隠せない。
そもそも、会った事もない人間に「はい、判りました」とついて行くバカはいない。
ただ1人を除いて。
「ちょっ、唯…知らない人について行ったらダメだろ!」
「そーですよ、唯先輩」
「おねーちゃん、めっ!」
「でもでも…施設内の事何も知らないし、ここに居るって事は鳴神さんの仲間とかでしょ?…大丈夫だと思ったんだけど…」
澪、梓、憂の剣幕に押されつつも、唯が言った事は確かに的を射ていた。
「確かに…唯の言う通りね。ここは従うしかないわ」
生徒会長でもある和が唯に賛成した事もあり、全員男性の後をついて行く。
一通り回ってから唯達は会議室の様な所に通され、椅子に座る様促され、それに従う。
「もうすぐ、琴吹氏が来られる…全ての話はそれからになるから、くつろいでおくといい」
男性はそれだけ言うと部屋から出て行き、部屋には唯達だけが取り残された。
「にしても…アレは何だったんだ?」
律の問い掛けに答える術を誰も持たなかった。
「でも、皆が無事で良かったわ」
紬の言葉に全員が頷く。
「鳴神さんの『アレ』、凄かったねぇ。どうやって出してるんだろ?」
『アレ』だけでもそれが何を指しているか、全員が理解した。
唯の疑問はもっともだ。
明らかに人間の持つ力とは思えなかった。
「ああいう武器なのか…能力なのか…どっちにしろ、私達には不要なものだわ」
「そーかな?…『アレ』があれば私達も戦えるんじゃないかな?…このまま、ここに居るだけでいいのかな?」
和の言葉に疑問を感じ、唯は素直な気持ちを言葉にした。
それは重く、強く、全員の心を打った。
「でも、お姉ちゃん…危ないよ?」
「そーですよ、唯先輩はただでさえドジなんですから…戦うとか、絶対無理です」
唯の言葉を憂と梓がすかさず否定する。
「ホントにそうか?…あたしは唯に賛成する」
「私も、唯の言ってる事は正しいと思うわ」
律と姫子は唯に賛成の意を示した。
律はここに着くまで、ずっと考えていた。
もし、自分に力があったなら…あの時唯を危険な目に合わせる事はなかった。
閲覧ありがとうございます。
今回も見苦しい文章で申し訳ないです…次は第四話を掲載予定です。