今回から少しずつ世界の現状など書いていければ…と思います
暫くすると先程の男性と紬の父親であろう2人が部屋に入ってきた。
「お父様!」
「紬!」
感動の再会だ。
全員が紬が父親に会えて良かったと心から思う。
しかし、それを素直には喜べない。
皆それぞれに両親がいて、兄弟がいる。
外はいつ誰が死んでもおかしくない地獄と化した。
その中で無事で居るのか…それとも。
誰もが心の中で思い、けれど口に出せないでいる。
自分達は運が良かった。
紬を救出に来てくれた『鳴神 悠』によって助け出されたから…だが、その家族は…
自分達に探しに行くだけの力も勇気も無い。
だからといって、紬の父親の様に軍を動かすだけの権力も無いのだ。
全員が嫉妬に似た感情を押し殺していた。
「さて、感動の再会はそれくらいにして…よろしいですかな?」
初老の男性が紬の父親に声を掛け、紬の父親がそれに頷くと男性は話し始めた。
「地上では…君達が見て来た通りだ。謎の生命体によって軍や政府機関は壊滅状態にある。我が国独自の『ISS能力者』による事態の収束と民間人の救出を行ってはいるものの…範囲が広過ぎて中々好転はしていない」
男性は苦虫を噛み潰した様な表情をしている。
「事態は全世界規模で起こっており、どの国も壊滅寸前まで追い込まれている。君達もご両親やご兄弟の安否など、気にかかる事もあるだろうが…ここは耐えて頂きたい。」
そう言うと男性は深々と頭を下げた。
実際、唯達は男性を責めなかった。
いや、責められなかった。
むしろ、大規模な災害などに対してこれほど広大な避難施設や有事に備えて様々な予防策を講じていた事を賞賛すべきだ。
『日本の現最高責任者、日本大統領は希代の政治家との呼び声高い天才だ』と何かの雑誌に書いてあったなと和は思った。
『相楽 総介』。
確かな先見の明と優れた指導力を以って、日本をアメリカの属国から対等の国へと変えた。
その彼が有事に備え、配備したのがこの施設であり、鳴神 悠のような『ISS能力者』だと男性は語った。
この初老の男性こそが『ISS能力者』の生みの親であり、名は黒澤 巽だと名乗った。
そこからは一頻り施設の説明や施設での民間人の役割りなどについて丁寧な説明が行われた。
「説明は以上だが、何か質問はあるかね?」
「はい!あります」
黒澤の問いに唯が手を上げた。
「さっき言ってた『ISS能力者』っていうのは誰でもなれるんですか?」
唯の質問は黒澤の予想とははるかに違っていた。
普通ならば、あの地獄を見て来た後でその発想は出てこない。
人は誰しも、自分の身を案じる生き物だからだ。
「多少適正はあるがね…強化手術を受ける事は可能だよ。…君はあの化け物達と戦うつもりなのかい?」
黒澤は改めて問い返す。
この施設には『ISS能力者』を創り出す設備が整ってはいる。
だが、志願する者はほとんどいない。
生命のやり取りは人の人格をも変えてしまう。
だから、多くの人々は戦場に赴くのを良しとはしない。
ましてや、ここに来るまでに散々外の地獄絵図をみてきたのだ、無理もない。
「ずっと考えてました…私は運動得意じゃないし、勉強も出来ないし…でも、大切な人を守りたい。何もしないで大切な人を失ったら…だから、出来る事をしようと思いました」
唯の言葉はめちゃくちゃで、黒澤の問いに答えたとは言い難い。
だが、酷く皆の心を打った。
律も立ち上がり、思わず叫んだ。
「私も!…みんなが…友達が死ぬのは見たくない。強くなりたい…みんなを守れるくらいに」
黒澤は今日まで、たくさんの人間を見て来た。
人を裏切り生き残ろうとする人間、騒ぎに乗じて不逞を働く輩も腐る程いた。
だからこそ、彼女たちには生きて欲しいと思う。
このクソったれな世界で、真っ直ぐな心を持っている…それは何事にも代え難い宝物だと、黒澤は知っていた。
「『ISP強化兵』とは、謂わば化け物だ。…人は自らの力が決して及ばぬ存在を恐れる。なってしまえば、これまでの様に人としては見られない…それでも、君達は力が欲しいかね?」
「はい。それでも…私は私だから」
唯の答えに黒澤は眩しいものを見る様に目を細める。
もはや、言う事などあるまい。
彼女たちならば、この地獄の様な世界を救えるかもしれないと…黒澤は思った。
彼女たちは自分達とは違い、世界を諦めてはいないのだから。
「…覚悟のある者は…ついて来なさい」
黒澤はそれだけ言うと、部屋から出て行った。
閲覧ありがとうございます
拙い文章で申し訳ないです…次回は第五話を掲載予定です
第五話から、けいおん以外のオリジナルキャラクターが登場します
物語も中盤になりますので、宜しくお願いします