現在、第七話執筆中で今日の夜か明日の午前中には掲載予定です
「とりあえず、最終調整は終わりかな。後は目覚めるのを待つのみか」
黒澤は満足げに呟き、モニターを見つめる。
「…で、俺を呼んだ理由は何です?」
背後から声をかけられた黒澤は、椅子ごと振り返り壁に凭れる様に立った青年を見据えた。
『鳴神 悠』。
黒澤が創り出した『ISS能力者』の中でも、『神代 貴寛』と並ぶ最高傑作の1人。
慎重かつ冷静な判断力に富んだ人物で、人並外れた野生の勘と行動力に長けた貴寛とは違った意味で一癖ある『ISS能力者』達をまとめる貴重な存在でもある。
「こういうのは君の専門分野ではないかね?彼女達を一人前の戦士に鍛えて貰いたいのだよ」
黒澤の意図は判る。
『ISS能力者』には、『レベル』と『ランキング』という二つの評価基準がある。
『レベル』とは、能力の強さや多様性、性能などを5つの段階に分けた評価基準で、『ランキング』とは、『レベル』と違い純粋な戦闘能力のみをランキング型式で打ち出した評価基準だ。
この内レベル4以上でランキング13位以内の人間を『幹部(オフィサー)』と呼ぶ。
数多いる幹部の中で、他人にものを教えるのに最も適任なのが悠だと黒澤は考えていた。
「その間、地上はどうするんです?彼女達の教官をしていては満足に戦場には出れませんが?」
悠は自分の立場と任務ゆえに、すぐに承諾する訳にはいかない。
それに、ただの一介の女子高生を志願したというだけで、大した理由もなく『ISS能力者』に変えてしまったのも納得がいかない。
彼女達に関わった悠だからこそ、彼女達には普通に生きて欲しいと思ったのだ。
「…構わんさ。1位が日本に戻ってくるからね…明日にでも着くだろう。君は彼女達の訓練、地上の討伐は1位に任せればいい」
「…なるほど…それなら、俺が抜けても大丈夫そうですね。一応引き継ぎだけはしておきます…彼女達の訓練は明日から行います。目覚めたら各自休息を取る様に伝えて下さい…では、失礼します」
黒澤の言葉にこれ以上の反論は出来ず、悠はそれだけを伝えると部屋を後にした。
ー 翌日。
悠は早速、唯達の訓練を始めた。
黒澤の言う通り、貴寛は夜遅くに戻ったので素早く引き継ぎだけをすませた。
「早速だが、本日は獲得した能力の確認と測定を行う。今回手術を受けたのは、『平沢 唯』、『田井中 律』、『中野 梓』、『平沢 憂』、『真鍋 和』、『立花 姫子』
、『若王子 いちご』の以上7名だな。教官を務める『鳴神 悠』だ、宜しく頼む…次にもう1人の教官、『加賀 悟』だ」
「ふふ、宜しくお願いしますね、みなさん」
悠の紹介の後に、悟は柔和な笑みを浮かべて挨拶をした。
(ふーん…幹部とか言うからどんな人かと思ったけど、だいぶ優男なんだな)
「そんなに優男ですかね?…戦闘支援専門だからかな?」
「えっ?」
律は驚いた。
決して口には出していないはず。
しかし、悟は律の思った事に対して的確な答えを出してきた。
いや、まるで律の思考そのものと会話している様な…
「…無闇に能力を使うな。説明がややこしくなる」
「すみません」
悠の指摘に悟の背筋が伸びる。
「こいつはレベル4の『思念会話』…要するに『テレパス使い』だ。もちろん、相手の考えを読めるし、直接相手の脳に話しかける事も出来る。…つまり、戦闘タイプの能力じゃないからと悲観せず、各自出来る事をやればいいんだ」
(…へぇ、鳴神さんって無愛想だけど優しいんだなぁ)
悠の言葉に唯は少し安心した。
ー 「測定結果は出たか?」
訓練を一通り終え、唯達を並ばせた後で悠は悟に声をかけた。
「はい、データは取れました。まずレベル5に該当する能力者が1名…『平沢 憂』。次にレベル4に該当する能力者が『田井中 律』、『中野 梓』、『立花 姫子』、『若王子 いちご』。レベル3該当が、『真鍋 和』…『平沢 唯』さんに関しては該当無し、レベル0となってます」
悟の報告は非常に残酷な結果を突き付ける形になった。
唯達とて、能力者の『レベル』と『ランキング』については事前に説明を受けている。
大体の人間がレベル2〜3の能力を得る事も教わった。
レベル5よりも希少とされるレベル0…だが、それを喜ぶ事は出来ない。
『ISS能力者』として、身体能力が向上しただけの無能力者。
つまり、落第に等しい。
「い、いやだなぁー…大丈夫だよ。みんな凄いよ!憂なんかレベル5だよ?凄いねぇ」
「…お姉ちゃん」
周囲の空気がより重たくなる。
誰もが唯にかける言葉を持たず、また、唯が強がって皆が高レベルの能力者になった事を喜んでいるのも痛々しかった。
「何事も悲観しない事だ。…得られなかったものを嘆いても仕方がない。能力が無ければ戦えないという訳ではないからな。今日は疲れただろうから、ゆっくり休んで明日に備えろ…では、解散」
悠の号令と共に訓練の1日目は幕を閉じた。
ー「随分、優しい言葉をかけるんですね…意外でした」
「…何の話だ?…別に嘘は言ってない。能力が無くても、戦う術はある」
悟の冷やかす様な言葉を悠が一蹴する。
「…ただ…あの中で1番才能があるのは『平沢 唯』だと思っていた。今もそう思っているがな」
「そうですかね?…他に比べて平均が著しく低いですが…優秀と言うなら、妹の『平沢 憂』でしょう。能力といい、平均値の高さといい、幹部候補になりそうですから」
悟がデータを見ながら、悠の意見を否定する。
「数字ばかりに気を取られてると足下掬われるぞ?」
意味深な言葉を残し、悠は背中を向け去って行った。
残された悟は、自分が間違っている事を認めたくないんだな、と悠の新たな一面を垣間見た気がしてほくそ笑んだ。
閲覧ありがとうございます
今回も拙い文章で申し訳ないです…次回は第七話、明日の午前中までには掲載予定です