けいおんアウトブレイク   作:アドルフ大佐

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閲覧ありがとうございます
第七話になります
今回は少し長めになってます…近々、挿絵を使ったキャラクター紹介を行う予定です
では、本編も宜しくお願いします


第七話 葛藤

唯は1人、自室に籠り考えていた。

「…無能力者、か…何かお似合いだね…」

呟き、泣いた。

声を押し殺して。

悔しいと思ったし、羨ましいと思った。

湧き上がる暗い感情は既に抑えが効かなくなっていた。

世界が一変し、日常を失った。

仲間を守る為、大切なギターを失った。

力を渇望し、その結果己の無力さを呪った。

悠は言った…能力が全てではないと。

だが、それは持つ者だからこそ言えるのであって、持たざる者の苦悩など判る筈もない。

単純にレベルが低いだけなら、まだ救い様はある。

能力の性能は上がるし、工夫次第で何とでもなる。

だが、レベル0は『別物』だ。

磨く事も工夫する事も出来ない。

何故なら、それ自体が存在しないからだ。

唯は自分の膝に顔を埋め、終わらない自問自答を繰り返していた。

 

ー 「…そうか…唯だけは能力を得られなかったんだな」

「…唯ちゃん…大丈夫かしら」

澪と紬も律達から話を聞き、顔を曇らせた。

「…慰める事すら…傲慢なのかも知れない」

いちごの一言は、全員に沈黙をもたらすのに充分過ぎる破壊力があった。

いつもなら…と、梓は考える。

いつもなら、自分達には音楽があった。

音楽で元気づけたり、共に音楽を奏でる事で一つになれた。

その音楽でさえも楽器そのものが無い為、演奏すらできない。

梓にとって唯は最も距離の近い先輩である。

姫子やいちごと接した事はないが、関わりのある澪や律、紬達は後輩でもある梓の面倒を何かと見てくれた。

梓自身もそんな澪達を尊敬はしているし、大好きな先輩である事に変わりはない。

だが、梓にとって唯は特別な存在だった。

唯の優しさも、過剰ともいえるスキンシップも、どこか抜けていて目が離せない所も、唯を創る全ての要素が梓を強く惹きつけて離さない。

これは理屈ではない、と梓は思う。

それが恋なのか愛なのかは判らないが、色んなものを失った世界で梓がどうしても守りたいもの…それが平沢 唯だ。

そんな唯に何がしてやれるのだろう?

答えはなく、ただ沈黙だけが重くのしかかった。

 

ー 澪は『ISS能力強化手術』を受けていない。

当初は澪も戦う覚悟はあったが、律がそれを許さなかったのだ。

人の性格や性質はそう簡単には変わらない。

痛い話や怪談ですら相当な拒絶反応を示す澪が、戦いに最も向かない事を律は見抜いていた。

澪は過保護過ぎると思ったが、命のやり取りに2度目はない。

躊躇や容赦をすれば、次に死ぬのは自分か仲間になる。

そう律に言われて納得もした。

だが、自分だけが戦わない罪悪感は常につきまとう。

そんな自分が唯の不遇を嘆き、心配するなど傲慢なのかも知れない。

だが、澪にとっても唯はかけがえのない大切な友人だった。

人を想うのに理屈や理由は必要ない。

戦えない自分にも、仲間の為に戦う友人に出来る事はあるはずだ。

ただ、所詮はただの女子高生に過ぎなかった澪には大切な友人にどんな言葉をかければいいか判らなかった。

(無知とは罪だな…こんな時なのに、何もしてやれない)

そんな自責の念を澪は感じていた。

 

ー 紬は重く沈んだ表情の澪を横目で見て、彼女が深く思い悩み、自責の念にかられている事を理解した。

彼女も澪同様、強化手術は受けていない。

謂わば非戦闘員だ。

澪の様に根本的に戦闘に向かない訳ではなく、むしろ身体能力だけなら唯よりも適性があった。

紬が非戦闘員の道を選んだのは澪の為でもあった。

軽音楽部で組んだ『放課後ティータイム』というバンドはメンバー内に強い連帯感や一体感を植えつけた。

だからこそ、紬も強化手術を受けたなら澪は律の反対を押し切ってでも同じ道を選んだだろう。

戦闘に適性がない澪が戦場に出れば澪自身はもちろん、仲間すらも危険にさらしてしまう。

律が澪の強化手術に反対した時の理由は的を射ていたと言っていい。

だからこそ、紬は自分も強化手術を受けない事が澪に強化手術を思い留まらせ、尚且つ仲間外れにしない唯一の方法だと思った。

周囲の気持ちを汲み取り、自らを犠牲にする事を厭わない紬だからこそ出来る事だ。

琴吹家の跡取りという建前もあり、紬の真意はたぶん誰にも悟られてはいない筈。

澪を思うのと同じくらい唯の事も心配ではある。

唯の真っ直ぐさはこういう時、真逆の結果を生む。

余り自分を責めてなければいいが…

唯の柔らかく、それでいて暖かい笑顔を思い浮かべ、どうする事も出来ない自分が歯痒かった。

 

ー 現在の唯に対して心配する梓達とは対象的に、律、憂、姫子、和は自分達が得た新しい能力について考えていた。

どうすれば今より強くなれるか、どう使えば能力を活かす事が出来るか。

その根底にある思い…それは形は違えど同じだ。

(唯も、澪も、ムギも絶対に守ってやる…この能力(ちから)で)

(お姉ちゃんは絶対に死なせない…何を犠牲にしても、絶対に)

(この能力(ちから)があれば唯を守れる。あの娘だけは死なせちゃいけない)

(私の能力は戦闘向きじゃないけど、唯をサポートは出来るわね。憂と協力すれば唯を守りきるのは難しくない筈)

4人は各々胸の内で堅く誓い、口を閉ざした。

 

ー いちごだけは冷静に周囲の状況を見ていた。

澪や紬、梓あたりはその表情から唯に対する心配や自分の無力さを噛み締めているのだろう。

律や憂、姫子、和あたりは決意に満ちた表情から前向きに事を考えている様だ。

いちご自身も自分の役割りがどういうものか考えていた。

行動力に関して言えば唯や律、姫子に敵わない。

知性では和がいる。

ただ、和は唯絡みになると冷静さを欠く傾向が見られた。

能力的にも戦闘に適した律や姫子、サポートに適した梓や和。

自分の能力はどちらにも寄り難い。

皆の為に、誰かの為に、それぞれが出来る事を考え、夜は更けていった。

 

 




閲覧ありがとうございました
今回はけいおんキャラクターそれぞれの心情にスポットを当ててみました…次回からは時間軸が少し飛んで3ヶ月後、訓練により戦士となったけいおんキャラクターが登場する予定です
第八話は火曜日午前中までに掲載出来ればと思います。
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