DIGITAL MONSTER ∃I zero→Evolution 作:ゴキゲンな蝶
皇帝竜の姿では無いのですね。
ならば、――
青龍の葬送の後、アイはそれだけ言って黙りになった。
アイは青龍との闘いによってアルの中のデータを完全に引き出した姿、皇帝竜へと至らせるつもりだったのだろう。
きっとそれは実現していた。あのとき、アルが理性を捨ててでも力を引き出すことを受け入れていれば。
「ごめ……」
言いかけて止めた。
アイの思い通りにならなかったからと言ってどうしてアルが謝らなければならないのだ。
叱責してきたなら言い返すつもりだった。
それなのに、彼女はなにも語らず、これまで、ほとんどアルに従いてくるだけのスタンスをやめて先行するようになった。
その理由は間もなくに分かった。
これより先の領域には一切電子生命体が存在していない。
四方守護のオリジンが踏み入ろうとする全てを殲滅し、禁足地たらしめた場所だから。
一切の障害もなく、会話も無く、淡々と進んだ道程は、長く険しかったこれまでとは打って変わり、すぐに終わりを迎えた。
触れられる距離に届いた『大樹』は、視界いっぱいに聳えていて、さながらは壁だった。もはや木の輪郭などは分かりっこない。
「この世界が『大樹』になったみたいだ」
呟きを聞いていたアイが、いえす、と。ぎこちなく返す。
「この『大樹』こそが世界です。外界より流れ着いたデータはデータの海に溜まり、この大樹を経て行き渡る」
アイは振り向き、碧眼にアルを映して言う。
「この大樹こそが『世界(わたし)です」
だからこそ、この場所を目指した。
全てはアイがこの世界の電子使命体に直接的な干渉が出来ないという制約のため。
皇帝竜という超常存在を消滅ではなく、あえて圧縮し、『EVOLUTION CODE』を忍ばせて、成長の機会を与えながら、アイはアルをここまで導いた。
自らの力を最も発揮できるこの『大樹』の元へ。
『CALL PROGRESS』
大樹の幹に触れ、アイがプロージャを呼び出すと、景色が切り替わり、天使と戦竜人は真っ暗な空間に立ち尽くしていた。
「ここは世界の中心、大樹の内側、目指し続けた目的地」
冷ややかな声、努めて出すような、ぎこちない声。
周囲を把握しようときょろきょろしていたアルは、足下を見てぎょっとする。
足裏に感触はあるのに、二人は宙空に浮いていた。
さらには、深淵の底の底、
「……っ!」
なにかが、穴蔵の奥深くに横たわっている。
巨大で、強大で、渦巻いた莫大なデータの塊。
凝らした目でソレを観察する。
全体的に逆立った鱗にはいずれも欠けることなく生えそろい、絶対的な硬度を誇示していた。
青龍と比較してさえ別次元のデータ圧。
四対の眼光がこちらを向かないことにアルは本能で安堵していた。
「この大樹の元で、善性と悪性のデータの比率を調整する役目を担っていた竜」
『黄金神竜』
世界の中心に棲まう、絶対不可侵、最強のオリジン。
「この世界の崩壊現象の始まりは、『王』が『黄金神竜』に触れたことから始まりました」
ぽつりと、胡乱な目でアイはこれまで幾度か語りながら、触れてこなかった、王の罪架の核心を語り始めた。
その罪とは、王が黄金神竜に触れたこと。
アイが期待したとおり、『王』は調停を世界に齎した。
やることが無くなった好奇心の強い『王』は、平和になった『王国』の外側に目を向けた。
王の目にはなにが映ったか、当然、『大樹』だ。
この超質量オブジェクトは、例えこの世界のどこに居ても、必ず聳えているのだから。
臣下は踏みとどまるように進言した。
四方守護と『大樹』の神竜の神威を、常に電子生命体達は感じ取っていたからだ。
『王』にしてみれば、それもまた、興味を注がれる理由の一つだったのだろう。
『王』は全ての電子生命体の中で最強だったから、『王』として担がれた。
自分よりも強いオブジェクトには、出会ったことが無い。つまり、それはとっても『珍しいもの』ではないか。
『王』が世界の中心である『大樹』へ向かうのは、必然だった。
『王』の実力は、他者の一切を寄せ付けないレヴェルだが、それには『通常の電子生命体』相手ならという但し書きがつく。
高く見積もっても、『王』の実力はオリジン一体に比肩するかのレヴェル。
四方守護が二体もいれば、制圧には失敗しない。
その余裕があったから、今後も電子生命体達の統率を命じるために『大樹』への来訪を許した。
それが、アイにとって取り返しのつかない、悔いても悔やみきれない最後の分岐点(ターニングポイント)だった。
『王』が興味を持ったのは、当然最も強いオブジェクト。
データの海から吸い上げたデータソースの善性と悪性を調整して適切に反映させる、ミドルウェアの役目を担っていた『黄金神竜』だった。
その無邪気さで、黄金神竜に接触した王は、純粋すぎる善性に偏った構成故に、釣り合うだけの加工されていない『悪性データ』を吸い上げてしまった。
黄金神竜はデータのバランスを欠いたことで機能に支障をきたして倒れ、一方の『王』は力を増幅して姿を変えると、善と悪の地平、永遠の不偏、すなわちはこの世界の崩壊を望むようになり、最悪を齎した。
傲慢の化身と成った彼の君の抹殺はオリジンが請け負うべき役目だった。
それが出来なかったのは、失った分を取り戻すように際限なく『大樹』から悪性データを吸い上げ、闇色に染まった『黄金神竜』を抑えるためだった。
オリジンを全て動員して、『暗黒の黄金神竜』を抑えることには成功した。
だが『世界』の手足であり、管理者たるオリジンの多くを失い、残った四方守護達は『黄金神竜』の担っていた調整の役目を肩代わりしなければならなかった。
代用は所詮、代用だ。
その役目のためにデザインした『黄金神竜』のようには行かなかった。
生き残ったオリジンも、一体ずつ、過剰なデータ量によるオーバーフローを引き起こして、理性を失った。
そうした彼らを『世界』は誅殺した。
抹消(DELETE)し続けた。
存続のために、明日のために、一〇〇〇年後を目指すために。
「最後には位相の影響を受けてテクスチャがひっくり返るほどに構成を歪めた北と南も、その分も肩代わりした西も、そして、最後まで控えさせたいたはずの東さえも。『黄金神竜』を除く全てのオリジンがもういない。だけれど、ここまで、疲弊した『黄金神竜』には、ここまで拡大した、いまの世界のデータ量の調整をする役目は果たせない」
碧色の瞳が、黄金神竜の鱗を反射して潤んで見えた。
アルが声をかける前にだった。
「行きますよ」
『CALL PROGRESS ORDER FACILITY』
再び、景色が変わり、アルとアイはさっきまでとは様相の異なる階層に立っていた。
「見えますか?」
アイが両手を広げ、問う。
「なんだ、なんなんだ、これは?」
フロアに整然と並んでいるのは、液体で満たされた無数のポッドだった。
液体で満たされたポッドの中には、赤いインターフェースを備えた電子生命体が休眠状態で格納されている。
アイは『Ratatosukr Series(ラタトスクシリーズ)』、と。
「データ量を管理するためのインターフェースを搭載した『次の世代の電子生命体』の実験体(ゼロナンバーズ)。彼らに『EVOLUTION CODE』を実装すれば、暴走すること無く制御した状態で、世界(わたし)が与えただけのデータ量に適した姿に変化する。各世代の個体数を世界(わたし)の任意で管理出来るようになる」
今この世界に存在する電子生命体たちは、『世界』の干渉を受け付けない仕様になっている。
ここに培養されている生命たちは、それを『改修』したモデル。
「どういう、意味だ?」
「理解できないのなら、それで結構」
アイは同じ場所で、同じ言語を使っているはずなのに、一人で言葉を使っている。そのことに今更疎外感を感じてしまうのは、きっと久しぶりだったから。
以前と違うのは、アイに拒絶の意思を感じることだ。
ようやく口を利いてくれたのに、アイは意図的にアルのことを閉め出そうとしている。以前と同じを演(や)ろうとしている。
じゃなきゃ、わざわざ聞いてもいないのに話したりなんてしない。
「アイッ!」
鳴り響くブザーが邪魔をする。
液体が漏れ出て、フロア一杯に敷き詰められたポッドが開いていく。
ラタトスクと呼ばれた電子生命体達に搭載されたインターフェースが赤い輝きを放つ。
「彼らにはお前の本来の姿からコピーしたデータを与えます。擬似的なミラーリング環境に置ける闘争のなかで、本来の力を呼び覚ましなさい」
碧色の瞳が濡れた様に光る。
「アル。進化するのです」
いつもの言葉を、押し殺した硬い声で。
「これが最後です。力を取り戻しなさい。到達しなさい。できないのなら……、消えてください」
『CALL PROGRESS』
アイの姿が消えた。
イヤがってもあの迷惑な天使はずっと側にいたくせに、ここにきて離れていこうとしている。
「ふざけるな」
二人で来たじゃないか、穴だらけの空虚になったこの世界を救い出すためにここまで長い道を駆け抜けてきたのに。
いまさらその夢を、壊されてたまるものか。
「アイッ! どこだ!」
戦竜人の声に天使は応えない。
きっと上層にいる。
飛翔体制に入った戦竜人の足に食らいつく者がいた。
ラタトスクの一体である。
体躯は小さく、とても戦竜人を傷つけることなどは出来そうに無い。それなのに、躊躇が無い。勇敢と言えば聞こえが良いが、コイツには知性を感じない。
その姿にアルは言い知れない嫌悪感を抱いていた。
「離れろ」
言っても聞かないならと尾で払ったら、容易くラタトスクは跳ねて転がった。
やはり弱い。
アイはこの程度のオブジェクトでアルを追い詰めるつもりなのか。
次々と噛み付いてくるラタトスク達を纏めて払い除けて、飛び立つ。
ラタトスクたちは届かないとみるや鉄球を吐き出してアルを攻撃し始めるが、それさえ届かない高度まで飛ぶ。
これでヤツ等じゃあ手出しは出来ない。
「アイッ! 出てこい! アイッ!!」
がつッ
戦竜人のヘルムを大型の鉄球が撲つ。
バカな、攻撃は届かないはず。
振り向けば、さっきまでいたラタトスクよりも体躯が一回り大きな個体が、翼を広げて追い縋ってきた。
まさか、これは、
「進化した?」
アイはこいつらのことを『実験体』と呼んでいた。アルに仕込んだ『EVOLUTION CODE』が、こいつら被検体にして開発されたものだとしたら。
ぞくり。
こいつらはまだアルにとっての脅威とは言えない。だが、ここから強くなる。
生体銃の引き金を絞り、撃ち抜く。
墜落していく羽根を生やした個体を見下ろす先に、アルは悍ましいものを見つける。
「共食い、している」
ラタトスク達が互いを捕食し合っている。そして、データ容量を増やした個体が姿を変えて、アルの方を向いて牙を剥き出していた。
気持ちが悪い。最悪だ。
「らぁああああああ」
過剰な攻撃だと分かっていながら、アルは両腰の生体銃を乱射する。
見たくないというアルの望み通り、煙を上げたポッドが次々と爆発し、フロアは爆風と煙に覆い隠された。
どっどっどっどっど
鼓動の早まりが治まらない、アイを目指したいのに、フロアから目を離すことも、構えた生体銃から手を離すことも出来なかった。
やがて、煙が収まった頃。
フロアは真っ赤に染まっていた。
ラタトスク達の流したデータエフェクトの色なのかと思った、違うとすぐに分かった。
再び進化したのだ。
アルが撃ち抜いた同種達の身体の影に隠れた個体達が、喰らい、食らいつくし、データを増強して、新たなカタチを獲得したのである。
巨体はもはや紛うこと無き竜。
体躯は仲間の血を吸ったかのように真っ赤であった。
尾の先と鼻先の剣角が鋭く鈍く光っていた。
そんな赤竜が数十体。
データ圧は一体当たりはアルの方が上だが、この数に一度に襲われれば関係ない。
生唾を呑む。
まだ適当にあしらおうものなら、こちらが喰われる。
赤竜、発つ。
「速い!」
生体銃で翼膜を撃ち抜き、数匹を堕とすが、後続が止まらない。
突き出された剣角を腕のスパイクを射出して往なす。
体躯は負けているが、速度と制動性では勝る。
赤竜達と戦竜人がドッグファイトを演じながら、鎬を削る。
「ちぃ」
ジリ貧だ。あっちの攻撃も当たらないが、赤竜の体毛が硬いせいで生体銃が通らない。なによりも多勢に無勢。集中力が途切れればやられる。
だとしても、
「舐めるなぁ!!」
潜り込んだ顎下から膝をくれてやる。
即座に離れる。
飛び込んできた赤竜の翼膜をスパイクで貫いてやると、二体揃って錐揉みして墜落していった。
要は倒し尽くすまで倒せば良いのだろうが!
戦ってやる、とことん、滅ぼしてやる。
その後は、アイだ。
「必ずまた会う」
アイのやり方はいつも一方的なんだ。だから、今度はアルが認めさせてやる番だ。
いまのアイなら話が出来る。それを確信している。
「ここで枝分かれなんて、有り得ないだろうが!」
降り立ったアルは、どっしりと腰を低く構え、生体銃を連結した。
トリガー!
追いすがってきた赤竜を貫通し、纏めて仕留める。
終わらせない。
生体銃を抱えて無理矢理に銃閃を動かす。
「くッたばれぇぇええええええ!」
ぎゅりりりりりりりっ!!!
閃光で薙ぎ払ったのである。
「かっ、はああ、あ、はああ、はああ」
苦しい、データを放出しすぎたせいで飢餓感を覚え、過呼吸に陥る。
だが、やった。やってやった。
「っ、さあ、出てこい、アァイ!」
怒号がフロアに反響する。
音が通った後は、やけに侘しく感じた。
くちゃり
それは決して大きな音では無かったはずなのに、アルの耳に良く届いた。
くちゃり、くちゃり
咀嚼音。
屍の山に座していたのは、一匹の赤竜。
無心に、その個体は同族を食み続けていた。
どくどくどくどくどく
アルは未だに収まらない自らの胸の鼓動を思い出していた。
あれを削除しなければならない。
分かっているのに、大技を放って眩んだ身体が動かない。
ふと、赤竜は咀嚼を止め、仰いだのだ。
アォオオオオオオオオ!!
屍共がデータの塵に還って逝く。
ただし、それは本来あるべきのように大気へ消えはしない、根こそぎ赤竜のインターフェースに呑み込まれていく。
赤竜に喰われていく。
高まるデータ圧。
データの囁きが聞こえた。
―― EVOLUTION
そして、究極に至る。
暴風が荒れる、破壊が顕現する。
例えばソレは誰かが見た夢だ。
破壊とはどのようなカタチをしているのだろうと巡らせた空想だ。
力強いカタチをしているのだろう。
何者にも侵されることない鋼の如き神性を備えているのだろう。
あらゆる者に立ち塞がる敵としての絶対性を纏うのだろう。
ソレは、そういう在り方をしていた。
白銀色の巨躯。
聳える剣の翼。
圧倒的なデータ圧。
屍を喰らいて、ここに新たな究極存在は生誕した。
破壊創竜。
アガァァアアアアアアアアアア!!
「ッ!!」
勝てない。
実力が、圧倒的に隔たっている。
足が震えている。
意地を張るのが馬鹿馬鹿しくなるほどに、理解出来てしまった。
破壊創竜が戦竜人へと右腕を翳す。
どぉうっ
衝撃波。
この距離から、構成を揺らす。
黒鎧に罅が奔る。
「が、はぁ」
崩れた構成データを吐き出し、エフェクトが散る。
逃れなければこのまま瓦解することになる。
トリガー!
生体砲の引き金を絞り、衝撃の緩んだ隙を抜ける。
回り込んで打ち込んだスパイクは、かつんと軽い音を立てて、弾かれた。
ぎんっと、破壊創竜が戦竜人を覗いた。
ぐぅるるる
玉響。
鉄を嗅いだと思ったら、炎を纏った爪が眼前に迫っていた。
速い、こちらとは比較にならないほどに。
速度が自慢? 笑ってしまう。アドバンテージなんてとっくに無くなっていたのだ。
地を蹴ると同時に引き金を引く。
反動で後ろへ飛んで逃れたが、生体砲の銃身は熱でドロドロに焼けて溶けていた。
側部からの衝撃、蹴り跳ばされた。
ポッドを砕きながら冗談みたいに横っ飛びする。
声すら出ない。
この構成データの損害は致命的だ。
崩壊を感じる。
グガァァアアアアアア!!
破壊創竜の雄叫び。
瞬きをしたそこに、アルはかつての自分を幻視した。
皇帝竜。
破壊を撒き散らす、本能の奴隷。
おんなじだ、目の前の破壊創竜と皇帝竜とは、同じ存在なのだ。
だからこそ、こんなにも厭わしい。
観ていたくない。
認めたくない。
大嫌いな己(じぶん)。
「ぁ、あぁ……」
この危機を回避する方法は分かっている。
進化だ。
そして、その衝動はアルの意思一つで広がり、呑み込むだろう。
受け入れれば良い。
かつての自分を受け入れて、身を委ねれば良い。
そうしたらアレと戦えるだけの力が手に入る。
皇帝竜に成れる。
破壊創竜のデータ圧が高まる。
とどめの必殺を繰り出すつもりだ。
終わりたくない。存在したい。
滅びた彼らのことを覚えている。
全てを失い、ゼロから始めたこの旅路をアルは覚えている。
アルはここに存在している。
100110110010001101011000110000111010001111101101010010111010
消えるわけが無い。
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この強い『想い』が、願いが、『心』が、
Evolution
消えるわけが無い。
ここにちゃんと在るではないか。
そらみろ。
破壊創竜の突進を、全身鎧の戦士が正面から受け止めていたのだ。
「ふぅ、はぁあッ!」
組み合っていた手を離し、手首を掴み直すと、振り回して、放り投げる。
屹立していたのは竜の戦士だった。
赤い翼膜も、鋭い金色の爪も、皇帝竜とよく似ていたが、まったく異なっていた。
その知性を証明するように、共に歩んできたパートナーと同じ、人の姿をしていたのだから。
皇帝竜が内蔵する圧倒的な能力を効率的に引き出せる完成した形態。
それこそが、アルが到達した究極のカタチ、皇竜戦士であった。
「そう、そうか、私は、こう成ったか」
アルは五指のある手を見て取り、呟いたのだ。
言葉に滲んだのは、歓喜か、安堵か、少しの後悔か。
アイ、私は、もう一度会いに行くよ。
だからその時は、話してくれ、君の『想い』を。
衝突再び。
破壊創竜と皇竜戦士がぶつかり合う。
拳、蹴撃、ヘッドバッド。
究極に到達した、よく似た二体の闘争は、極めて原始的な殴り合いから始まった。
生存を阻害する外敵の排除。
そのために全霊を捧げる。
それこそが、生物のあるべき姿。
しかし、それだけでは創造しない。
そもそも電子生命体は外界から漂流するデータ、それも創造の意思の影響を強く受けてカタチを為す。
憧憬ゆえにだ。
物理接触を基本とする世界に生まれながら、電脳という『新たな世界(フロンティア)』を創造した力。
その想像力に電脳に生まれた電子生命体は憧憬し影響する。
だが、それでは奴隷だ、想像力の眷属でしかない。
主になるには、創造のためには、想像し得る知性が必要なのである。
「この姿は、資格だ!」
皇竜戦士の右腕の砲が光刃を形成する。
ムーンサルトで振り落ちる破壊創竜の尾を、切断。
顔面を鷲掴みに、地面に叩き伏せる。
ぐぅらららららッ――
唸り声は右拳を突っ込んで黙らせた。
「もう黙れ、お前は過去だ」
光刃を形成。
破壊創竜の肩を足裏で押さえつけ、皇竜戦士は縦一閃に破壊創竜を両断したのである。
同様のデータ量を保有する両者の勝負の優劣を分けたのは、たったの一つ。
勝負そのものへの固執か、それとも勝利(その先)への意思か。
「いまから行くぞ、アイ!」
『PROGRESS SUCCESS』
頭上に光が差す。
そこに居るんだな。
皇竜戦士は身体を沈めると、一息に飛翔した。
体躯は竜戦士よりもかなり巨大化したにも関わらず、敏捷さには一切陰りが無い。それどころか速くなってさえいる。
黒と赤の稲妻と化して、皇竜戦士は上層へ飛び込んだ。