DIGITAL MONSTER ∃I zero→Evolution   作:ゴキゲンな蝶

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Dear/BUTTER-FLY

 

 『大樹』の最奥。

 その場所はダンスフロアのように駄々広い場所だった。

 頭上には、シャンデリアの代わりに立方体がゆっくりと自転している。

 他に見当たるオブジェクトは、『本』。

 壁一面に、びっしりと、厚い本の背表紙が整列している。

 

 不思議と印象は、空白だった。

 こんなにも知識の象徴である文字達が安置される場所だというのに、ここは何も無い白い場所なのだと、そう思ってしまった。

 

 

「来ましたね」

 アイは佇んでいた。

 今にも消えてしまいそうな程に、儚げに感じた。

 その顔を知っている。

 皇帝竜が力を失い、どうするべきかも分からなくなり、所在を失い、ちっぽけな者になったときに浮かべていた顔だ。

 

「アイ、お前はどこに居る?」

「おかしなことを聞きますね。わたしは最初からここにいます。わたしこそが『大樹』なのですから」

 

 そうか、と。

 皇竜戦士は少女の方を見続けていた。

 

 なおも彼女は、アルのことを敢えて観ないようにしている。

 じゃあ、やっぱりもう、踏み入るしかない。

 もうこの後どうなるかは分かりきっている。そうするしか、お互いにしこりを解消できない。これは、とっくの前に決まっていたことだ。

 話はその後にしか出来ない。

 

「ねえ、アル」

 アイが名前を呼ぶ。

「この世界は破綻してしまったのですよ」

 アイの手元に一冊の本が浮かんだ。

 ひらり、ひらり、頁をめくりながら、アイが語るのは、この世界がただいま進捗している未来だ。

 

 堕天した『王』と十体の究極存在の闘争は、この世界に『毒』を遺していた。

 

 『王』の方はまだ良い。純粋性故か結合が強かったことが幸いした。

 その力の欠片は何かしらの『象徴』としてのカタチを取り、本来であった善性の個体に依ることになるだろう。

 三体分ほど、特に大きな欠片があるが、所詮は元凶の欠片だ、対処は出来るだろう。

 

 問題は十体の究極存在が削除(DELETE)されたことで、究極存在として発生するパターンを覚えている増殖ウイルスが世界中にばら撒かれてしまったこと。

 これより先、このデータを呑んで結合する電子生命体達は少なからず究極存在達の影響を受けることになる。

 

 陰狼に見た『暴走(ハザード)』は兆候だ。

 あれは電子生命体の本能が、究極個体の一部だったデータから、パターンを引っ張り出し、強大なデータオブジェクトになり損ねた結果である。

 いまはまだ限定的で、構成を歪めてしまうクオリティだが、いずれ『世界(アイ)』の意図しない究極の力が当たり前に跋扈することになる。

 

 これはもう止められない。

 だから、『EVOLUTION CODE』を実装した『Ratatosukr Series』によって、究極存在の個体発生を制御しようとした。

 

「『Eagle Scenario』は示しました」

 アイの手元の本が開いた頁には『NULL(存在しない)』と表示されていた。

 

「もう手遅れなのです。このまま続けても、この世界は一〇〇〇年に届かない」

  

 この世界は痛みすぎた。

 『王』の破壊は世界の構造に致命的な欠陥を与えていた。バグにクラック、管理者(オリジン)達の消滅による善性データと悪性データの調整の不制御。

 リカバリーをするためのリソースがどう賄っても足りない。

 

 だから、と。

「だから一度、全てを初期化して創り直す。REBOOTして、わたしは目指す、この世界の一〇〇〇年先を」

 

 アイのデータ圧が膨れ上がる。

 これから実行するのは過去の記憶からの『レプリケーション(複製)』では無い

 パターンの記憶を危惧して、大樹の内側でのみ使用を解禁している、オリジナルのオブジェクトの創造プロジェクト。

 想像の創造である。

 

「SPIRIT CREATION」

 

 CODE 『INITIALISE』

 

 あああぁあああああああ!!

 

 きっとそれは、悲嘆、哀願。

 

 ワイヤーフレームの筆致。

 望んだ役割へを為すためのカタチ(テクスチャ)を纏う。

 

 その輪郭の線は細く、ともすれば嫋やかにさえ見えた。

 例えるのならば、荒野に一本生えた白樺。

 滅びに手向ける一輪。

 

 両手には繋がるための指はなく、刃が生えていた。

 白骨のような細身の身体には、青白い線が全身に幽鬼のように光っていた。

 ただただ全失の孤独を体現して、立ち尽くしていたのである。

 

 『イニシャライズ・オメガ』

 

 大樹を剪定する者。

 

「この場所は天辺ではありません。むしろ逆、根源なのです。この世界の全てはデータの海から吸い上げたソースを『演算装置(CORE)』が処理し、大樹を経て、その枝葉の上に生っている」

 

 アルは大樹の内側を登ったのではない、降りて来たのだ。

 

 踏んでいた大地も、山も、水も海も、全ては大樹の枝に実った果実(オブジェクト)。

 空と呼んでいた碧の天蓋こそがデータの海。

 

 すべては、『大樹』の施し。

 故に大樹こそがこの『世界』そのもの。

 

「イニシャライズ・オメガはデータ構成を初期化する権能の顕現。この力で、わたしは全ての枝を切り落とす」

 

 この世界を侵す毒ごと、破損した枝を切除して、いまの黄金神竜が管理出来るサイズまで、世界のデータ容量を縮小する。生まれ変わる新たな世界には、アイの管理を受け入れる従順な個体達だけを棲まわせる。

 それが、アイの選んだ一〇〇〇年後に続く道だった。

 

 その前に、計画に使う最後のピースを回収する必要がある。

 

「アル、お前を初期化して、シミュレーションを完遂した『EVOLUTION CODE』を摘出しなければならない」

 

 だから、滅びろ、と。

 

 底のしれない実力が醸す不気味さで、オメガは皇竜戦士に凄む。  

 

 アイの大層な計画やら、大義やらを一通りを聞いたアルは、瞑目していた。

 

 なんて、バカらしい。

 迷っているのがバレバレだ、意固地になっているのがわかりきっている。剣を抜いて向けるのを嫌がっているのを隠せていない。

 

 本当に自分のことが正しいというのなら、正義を確信するのなら、今すぐにアルを刺せば良い。

 

「もういいか?」

 皇竜戦士は問う。

「なにがですか?」

「駄々を捏ねるのはもう良いのかと聞いている」

「駄々? このわたしが? 未熟でくだらない癇癪を起こしていると?」

 オメガの攻勢指向が研がれる。

「闘いたくないんだろう? だから長ったらしく焦らして話すんだ。お前は、アイは、私と闘いたくないんだよ」

 

 NO!

 

「NONONONO!! この結末は決まっていた。わたしはお前と出会ったときからこの結末へ進捗していた。進化をCOMPLETEしたお前を削除するこの結末に!」

 

 いつか削除するために、『進化しろ』と言い聞かせてきたのだ。

 ここで消えることが『Altificial Life』の被対象者である、アルの役割だ。 

 

 ならば、ぐだぐだ言ってないで来い、と。

 腰を落とし、光の剣を形成した皇竜戦士を見留め、遂に、オメガが剣先に殺気を漲らせた。

 

 もはや免れない、私達は闘うしかない。

 この時を待ち望んでいた気さえする。

 理性無き皇帝竜として敗北し、虐げられ、理解し、この場所へと辿り着いた。

 

 ずっと燻っていた。

 ずっとぶん殴りたいと思っていた。

 敗北感をずっと押し殺してきた。

 

 闘おう、アイ。

 それで出し切ったら、私達は初めて対話の席に着くことが出来る。

 

 

「アァァァアアアルゥウウウウウウウ!!」 

「アァァァアアアアイイイィィィイイ!!」

 

 

 白剣と光剣が切り結ぶ。

 

 ジチッ、ジチチチチッッ!!

 

「最初から生意気だった! なにも出来ないくせに、一丁前にわたしを睨んできた!!」

「ふざけろ! アイは自分勝手だった。私のことをなにも考えないで押しつけてきた!!」

「なにが悪い! わたしには、『世界(わたし)』にはその権利がある!」

「悪いさ! 私は私だ。ソレを勝手にどうにでもする権利がお前にあってたまるか!」

 

 切り結ぶ、打つかり、思いの丈を叫んで押しつけ合う。

 

「だったら救えるのか! お前にこの世界が救えるのか!」

「救うさ! 何をしたって、私はこの世界を救う、そのためにここに来たッ!」

 皇竜戦士の蹴りで、剣戟に間が空く。

 

「薄っぺらい言葉を、よくも、使う!」

 ふつりふつりと、オメガのデータ圧が上昇し続ける。

 

 イイイィイイッッ!

 オメガの剣が嘶き、力を解放した。

 

 縦一閃。

 受けようとしていた皇竜戦士は、こめかみに走る痛みに似た直感で、咄嗟に半身になった。

 

 ぎ、じ、じじ

 僅かに触れた皇竜戦士の銃身から生えた圧縮したデータ光の剣がさらりさらりと消えていく。

 再構成しようとしても、すっかりやり方を忘れてしまったように、出来なくなっていた。 

 能力そのもののを、正確には、コードを消滅させられた。

 電子生命体同士の戦いのそれとは訳が違う、アイだけに見えている角度、システムからの攻撃。

 

 それが、違いだと、見えている者の差だと、オメガは剣を水平に持ち上げ、身の程知らずを叱責する。

「何もしらない雑魚がよくも言う! 勝手気ままにやってきた愚がよくも刃向かう! わたしが見てきたなにもかもを知りもしないクセに、このわたしに、よくも吠える!」

 

 見ろとばかりに、へやに並ぶ書架がばらりばらりと最後の頁を開く。

 『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』『NULL』――。

 

「この一冊一冊がこの世界の結末。あらゆる分岐をシミュレートした演算結果。お前は外界の情報をソースに成立するこの世界の成立がどれほどの綱渡りを経ているのかを理解していない」

 世界の源を他世界に依存するということは、当然、外界の影響を受けやすいと言うことだ。

 誕生して、世界としてデータ量を増やすほどに、幾度もこの世界は滅亡の脅威にさらされてきた。

 

 リソース先の外世界の知的存在からの侵略。

 偶発的に生まれる異常な敵性の電子生命体。

 電子生命体とは別系統のカタチを成立させたアプリケーションソフト。

 

 『世界(アイ)』は生き抜くためにその一つ一つに全力で当たり、対処をしてきた。そうやって文字通り死に物狂いで今日まで辿り着いた。

 その『世界(アイ)』が『再構成』を決断したのである。

 あらゆるシミュレーションを加味した上で、究極の力が自分勝手に生まれる世界に存続は有り得ないと判断した。

 

「だから消す! 作り直す! わたしが適切に管理する!」

 これまで通り、これまで以上に。

 

「ノーだ!」

 アルはそのロジックを否定する。

「アイ一人で続けてきた世界がこうなった。なら次もそうなる。その時、またリセットするのか? そんな無茶苦茶がいつまでも通用するものか、必ず破綻する。アイは、間違えているッ!!」

 

 言葉とともに、右腕の砲身から放たれた光弾に、オメガは踏鞴を踏んだ。

  

「なっ!」

 オメガはわなわたなと振るえ、青白い光を燵ち昇らせた。

「黙れ黙れ黙れッッ!!」

 もはや金切声だった。

 劈いて、自らさえ傷つける憐れな叫びだ。

「間違えるものか! わたしは間違えない! 間違えては、いけないのです……」

 

 アイは我が手で作り上げた絶対に滅びることのない『最初で最後(オリジン)』と銘打った配下を失うことになった。

 それだけの犠牲を払っても、世界は滅びようとしている。

 

 言えるわけがない。

 認められるわけが無い。

 

 世界を守り続けてきたからこそ、なんども終焉を覚悟してきたからこそ、もしも過ちを呑み込めば、アイは一人で戦い続けることが出来なくなるだろう。 

 失態は認なければならない。

 だがそれは、アプローチが違っただけのこと。

 間違いとは、目的を遂行できないことを言うのだ。

 

 だから、この世界が存続する限りは、間違えてなどいない。

 

「わたしを否定するなぁぁぁあああああ!!!」

 オメガの頬に流れる青白い光が、まるで涙のように湛えて流れる。

 

 ずっとずっと、一人で戦い続け、喪失にすら振り向けなかった少女の慟哭。

 

 やっと見えた。

 これこそが、アイの本音だ。

「素直に言えば良いんだ、『助けて』って」

 

 重責に喘ぎ、心を殺して結果に執着する。

 それでも、摩耗した『想い』は悲鳴を上げる。

 寄り添って欲しかったんだろう。

 『誰か(パートナ-)』を探していたんだ。

 

「ねえ、アイ、私は、ここにいるよ」

 

「CODE PROGRESS ORDER SHORTCUT」

 一瞬、オメガが皇竜戦士の眼前まで迫るコマ送りの幻像が並んだ。

 過程のコマは消失し、オメガがコマの最後、アルの眼前に出現した。

 

「クッ!」

 構えようとした砲身は切り捨てられて消失。

 

 距離を取るか、インファイトに持ち込むか。 

 逡巡してる間に、再びオメガのコマ送りの幻像が未来をトレースする。

 

 その最後のコマは――、

 

「SHORTCUT」

 

 ずちちッ

 

 オメガが持ち上げる剣に、皇竜戦士が早贄の如く、串刺しにされていた。

 

 備わった権能は初期化(イニシャライズ)。

 データを真っ白に還す電子生命体を破壊する最終兵器(リーサルウェポン)。

 

「きっとわたしは、お前を理解しようとするべきでは無かった」

 

 失っていくアルの上から、彼女は言う。

 

「アル、消えて……」

 

 本心で望んでいるなら、そんな声で言うな。

 伸ばした腕の先は、0と1に透けていた。

 

「お願い、いなくなって……」

 止めろ、泣くなよ。

 薄れる意識、崩れていく構成データ。

 

 それは、為すべきを、正義を成した者の顔ではない。

 

 アルはアイの腕を掴む。

 シェイクハンドにしてはいささか不格好に過ぎた。

 

 

 例えば、完全な『正義』があるとして、それを誰が決めるものだろうか。

 

 いつだって、どこでだって、世界は猥雑としていて、だれもが葛藤を抱えて生きていかなければならない。

 失敗と、後悔と、涙を呑み込んで、明日に臨んでいかなければならない。

 誰かの救済が誰かの嘆きに繋がるのなら、誰かを守る剣は、誰かを殺す剣になる。

 

 正義なんて有り得ない。

 存在するわけが無い。

 

「それ、でも!」

 だとしても、正義を貫き信ずるというのなら、

 己の為すべきをただ信じ抜いて貫いた先にこそ、きっとそれは『在る』。

 

「アルッ!!」

 

 100110110010001101011000110000111010001111101101010010111010

 698679768584737978

 

 Evolut ―― error!

 

 698679768

 10011011001000110101100011000011

 

 1

 1

 1

 

「えぼ、りゅ、しょん」

 

「NO! お前は本来持っていた全てのデータを引き出した! ヒト型に成り、多少構成が変わったとて、データの絶対量は変わらない、お前にこれ以上の進化は有り得ない!!」

 

「りゅ、しょん」

 

 1

 1

 

「NO!」

 

「れ、しょん」

 

 1

 

「NO!NONONO!」

 

 黙れ、否定させるものか、この先は意地。

  

 100

 100110

 

 『覚悟』の領域。

 

 01010010010001010101001101001111010011000101010101010100010010010100111101001110

 

 それは可能性の発露。

 そして、データの共鳴が齎した奇跡。

 

 82698379768584737978

 

 長い旅路を共にここまで歩んできた。

 最高だなんて言えない出会いから始まったから、歯を剥いて威嚇して、なんども消えちまえなんて考えた。

 だけれど、心のどこかでは憧れていた、尊敬していた。

 

 私はアイに認めて貰いたかったんだよ。

 

 到達した今こそは、認められる。

 

 私とお前は『パートナー』だ。

 

 バカみたいにお互いの足を引っ張りあう最悪の比翼連理だけど、それでも、着実に前に進んで、この場所へ来たんだ。

 分かるよ、この旅路は無駄じゃあ無かった。

 アイの葛藤が、苦しみが、『想い』が理解出来るように成った。

 

 アイ、私の辿り着いた、貫き通したい誠の『正義』は……。

 

 ―― RESOLUTION

 

「NONONO……」

 

 首を振るオメガを叩き伏せる様に、今際の際で皇竜戦士は吼えた。

 

 

「レゾリューシュン!!」

 

 

 アルの握り締めるオメガの剣がテクスチャを剥がされワイヤーフレームが剥き出しになる。

「こ、これはッ!!」

 データに圧されたアイがオメガから剥離し、後退去る。

 

 音が響いた気がした。

 鐘の音に似た高い音は、旋律を歩み、しかし、到達しないまま朗々と反響し続ける。

 

 皇竜戦士はオメガと共鳴し、新たなカタチへ昇華する。

 

「ありえない、あってはならない……」

 『世界(アイ)』さえもが、演算の及ばなかったその光景に愕然とする。 

 

 胎児のように丸まった皇竜戦士が宙空へ吊り上げられるように浮遊した。

 

 黒色の鎧が白銀へと塗り変わる。

 データ量が究極の先へと拡張する。

 

 ねえ、アイ、この姿が何よりも応えなんだよ。

 

 祝福の如く、光り輝くデータから生まれた誠の聖者が、『INITIALISE』の意を刻んだ、長大、白銀、金刃の一振りを掲げる。

 

 異様なのは、背中だった。

 

「なんだと、言うのですか。その翅は……」

 

 生えていたはずの翼膜からは、テクスチャが剥がれ、ワイヤーフレームが露出している。

 大きく広がったその輪郭は、竜と言うよりも、『昆虫(アゲハ)』の翅こそが近い。

 

 定まらないカタチ。

 虹色の燐光を迸らせるその翅こそは、ありとあらゆる可能性の『偏在』の顕現。

 絶望の未来のその先へ飛ぶ『想い』。

 

 

 『無限大の夢(BUTTER-FLY)』

 

 

「イニシャライズ・オメガを吸収し、自らの力で進化を望み、それを成し遂げたというのですか……」

 

 『EVOLUTION CODE』は、あらかじめ決まったデータを圧縮し、順次解凍、現在値のデータ量に沿ったカタチに構成を再編成するアプリケーションだ。外部のデータを自発的に取り込み、そのカタチに適応するなんて書いていない。

 想定を越えて、アルは新たな『未来』を創造していた。

 

「それが、その成り損ないの翅が、アルの辿り着いた結論だとでも言うのですか?」

 ありとあらゆる形に成る可能性、永遠の未完。

 言わばそれは、偏在する『1』。

 

「NO! NONONONO!!!」

 

 お願いだから止めて。

 新たに生まれた未来を認めようとしない彼女に、アルは言う。

 

「ノーだ、アイ」

 

 白銀の聖竜騎士は祈るように剣を掲げた。

 

 彼女の捨てた全てを拾い上げるために、聖竜騎士は彼女を否定した。

 

「ノーなんだよ、アイ」

 それではダメなんだ。

 

「その目で、わたしを観るなッ!」

 聖竜騎士のデータの海そっくりな碧色の眼差しは、『世界(アイ)』だけに許されていたデータを観測する目と同じだった。

 

「CODE 『DIGITALISE』」

 ワイヤーフレームの拡張。

 アイの身体をデータの奔流が吹き上げて、『創造』する。

 

 顕れたのは黒鋼の重騎士。

 白骨の騎士とは打って変わった骨太のフォルム。

 力強く聳えながら、涙を堪えるために歯を食いしばるようなもの悲しさが、どこか慰霊碑に似ていた。

 体表には血潮の如く、赤光が巡っている。

 

「オメガによる剪定の後に、世界を再生させるために創造したオメガと対となる力」

 

 世界を再創造するための力。

 

 『デジタライズ・アルファ』

 

 世界を再現する力を大きく引き出し、『CORE』への直通権限を搭載することで構築する能力にまで昇華した力を振るうことが出来る姿。

 

「わたしは、ソレを認めない」

 

 相対する白と黒。

 

「アル」

「アイ」

 

 一方は剣を、一方は戦斧を振り上げる。

 私は言うんだ。

「こんにちは」

 君は返事する。

「さようなら」

 これまでは、碌な挨拶すら無い関係だったクセに、こんな時だけ律儀に交わして、

 

 ぐわんっ

 

 刃が咬合する。

 

 既にどちらもがこの世界に比肩するのはお互いだけという、仕様外の存在。

 その力もまた、メタフィジカルな次元に到達していた。

 

「はあ!」

 アルファが戦斧を振り下ろすと同時にプロージャを繰り返し処理(サブルーチン)で実行。

 一の戟が万の戟となって降り注ぐ。

 

 コードの実行を読んだ聖竜騎士はその一つ一つに『対処(PATH)』して凌ぎ切る。

 たったの一度でも攻撃が直撃するという事実が確定したのなら、アルファはそのコードを複製して、聖竜騎士を粉微塵に刻むだろう。

 

「っふぅ!」

 白銀の剣が翻り、構成を空白に塗り替える剣戟を見舞う。

 

 その脅威は創造したアイが最も知るところ、掠りでもすれば問答無用で構成が『消失』してしまう。

 アルファは『当たらなかった』というコードを書いて回避する。

 

 ならばと、アルファが『聖竜騎士が切り裂かれる』コードの構築を試みる。

 赦すはずも無く、書いた端からコードが消される。

 

 堂々巡り。

 千日手。

 お互いがお互いにとって背中合わせの天敵である以上、この闘争はお互いがパフォーマンスを発揮し続ける限り、永遠にループする。

 

 故に、僅か、ほんの少しの要素が勝敗を分かつことになる。

 

「アイッ!」

 ラタトスクのフロアで、彼女は言った。

 

 皇帝竜の姿では無いのですね。

 ならば、――わたしがやらなければいけない。

 

 とても、やりきれない表情をしていた。

 そんな想いのままにアルと、いまあるこの世界を切り捨てたって、どうにもなるわけが無い。

 「なにも識らない盲が、わたしを阻むな」

 そこを退け、と。

 礎になってください、と。

 

 聖竜騎士は横一文字に薙いでから言う。

「だったら、叩き潰してみろ」

 

 それが出来ないというのなら、

「アイ、『覚悟』が足り無いよ」

 

 その迷いは致命的だ。

 願っているなら信じ抜くべきだ。

 確信しているのなら走り抜くべきなんだ。

 

「アイの『正義』では、私の『正義』は止まれない」

 

 剣戟。

 戦斧を割く。

 剣戟。

 コードを引き裂く。

 

「わたしを、」

 剣戟。

 言葉を薙ぎ払う。

 

「アイが、自分にしか出来ないなんて、そんな傲慢を言うのなら!」

 

『INITIALISE』

 聖剣に刻まれたプロージャ名が輝きを放つ。

 

 正眼、鋒を前へ、刺突の構え。

 可能性の翅が極大のデーターを噴出して、燐光を迸らせる。

 

 跳んだ。

 今すぐに、アイに届かせるために。

  

 受けることは赦さぬ。

 阻むことは赦さぬ。

 障害を、尽く、端から端までを、初期化(ブランク)。

 

「私が、その思い上がりを、『INITIALISE』する!」

 

 意思だ。

 伯仲した闘いの勝敗を分かつのは、貫き通すという『想い』だけだ。

 迷ったままでは、勝てる通りも無い。

 

 こつっ

 

 聖剣の先端が、アルファの黒鋼に触れる。

 

 「あっ、」

 小さな悲鳴には、赦しに触れた者だけが識る感情が滲んでいた。

 

 音も無く、聖剣は本質へ突き進み、一切を斬り拓いて剥き出しにする。

 

 覚悟(想い)の差故に、アルファ――アイは、アルの聖剣に真正面から貫かれていた。

 

「どう、して」

「進むときだよ。アイ」

 凝り固まった考えを染め直して、次の世界を目指して飛ばなくちゃいけない。

 

 アルファから乖離した小さな少女を、聖竜騎士は掌で受け止めた。

 彼女は静かに瞳から一筋を流していた。

「では、どうすれば良いのですが?」

「みんなでやれば良い」

「みんなで? できっこない。原始的な思考に支配されたお前達に、どうして世界が守れるというのですか?」

「できる」

 既にアルは証明していた。 

 

「アイ、私を見ろ」

 オメガの力を取り込んだ、白銀の鎧の聖騎士。

 本来ならば有り得なかった、この進化が、どうして成ったか。

 『共鳴』。

 電子生命体が強い想いを『霊代』として遺し、想いと共鳴してデータをアーマーとして纏わせ、貸し与えるように、アルは、アイの想いに共鳴したからこそ、その創造物足るオメガを呑み、聖騎士に成り得たのだ。

 

 ねえ、アイ。単純なことなんだ。

「アイが守りたいのと同じだけ、私もこの世界を守りたいんだよ」

 

「……へ?」

 間抜けた声。

 一人で闘ってきたはずだった。

 一〇〇〇年後までを一人で戦い抜く決意をしていた。

 

 それが――、一人きりでは、なかった?

 

「う、うそです。ウソですよ! だって、お前達はなにも識らない」

「誰かを守りたいと思った。誰かが増えていって、その誰かが泣いてしまった。泣き止ませたいから、世界を救いたいと思った」

 世界の歴史なんて大層なものは要らない、その誰かがいれば、それだけなんだ。

 

 気付け、アイ。

「私は、アイを守りたいと思った」

 そのために、漠然とこの世界を救いに来たアルは、最後の覚悟を得た。

 

「でも、でもお、できっこない。だって、シナリオは破滅をシミュレートしている……」

 この無数の一冊一冊がアイの絶望。

 誰にも『世界(わたし)』を救えない。

 だから一人でやるしか無いはずだった。

 

 でも、もしも、それが間違いなら、言えば良かったのだろうか。

 たったの一言を、言えていたら、それだけで、良かったのだろうか。

 

 たったの一言、

「わたしを、……救って」

 

 聖竜騎士は瞠目し、剣を置く。

 それから優しい表情で目を閉じると、天使を主と認めるように掲げ、応じた。

 

「相、拝聴した」

 

 待ち望んだその言葉を、確かに、聞き届けた。

 これでやっと、覚悟を実行できる。

 

 恭しく、聖竜騎士は少女を床に下ろし、聖剣を携え、立ち上がった。

 可能性の翅の羽搏きが、風を生む。

 ぎこちない小さなこの風が、一〇〇〇年後に届いて嵐に進化することを信じ、聖竜騎士は飛翔する。

 『CORE』に到達したアルは、アイへ一瞥をくれた。

 

 ああ、私のアイ。

 唯一無二のパートナー。

 

「『INITIALISE』」

 

 聖竜騎士は聖剣を自体諸共に『CORE』へと突き立てたのである。

 

「アル……」

 白銀の身体が薄れてバイナリーに変換する。

 

 これが、私が辿り着いた『正義』。

 誰かを守りたいと真から願う『想い』。

 

 アイ、共に歩めて良かった。

 いまはそれだけを、心の底から想うよ。

 

 そうして、白銀の聖竜騎士の姿は、根源に溶けて――消えた。

 

 ALERT! ALERT! ALERT!

 

 ビープ音の喧噪が劈く。

「『Eagle Scenario』が、破綻していく……」

 未来を記した本の結末(ラストページ)に刻まれたNULLが書き換えられていく。

 

 確定した破滅が全て塗り変わっていく。

 

 消失では無い、演算しきれない結末、未来を、可能性を、『OVERFLOW』を記していく。

 

 暴走を回避して作り変わることが出来る、完成した『EVOLUTION CODE』。

 聖竜騎士の翅の本質、『0』の場所に『1』を刻み続ける『偏在』の能力。

 

 アルはそれらのコードを己ごと世界そのものへと書き込んだ。

 

「ありとあらゆる『0(破滅)』に、『1(希望)』を――」

 この先、この世界はどれだけの絶対的な破滅に陥ろうとも、彼の救済を望む想いに共鳴する意思が存在し続ける限り、応え続ける。

 

「アル、あなたは、本当に一〇〇〇年先まで戦い続けると言うのですか?」

 少女は頽れる。

 

 この世界はこの瞬間に、あらゆる完全な破滅から救済された。

 

「アル、あなたは、この世界の終焉まで『わたし(世界)』を守り抜こうと、そう言うのですか?」

 

 誠の信念を持って主に忠誠を尽くす騎士の如く。

 この世界を永久(とわ)に守護し続ける偏在する概念。

「アル、ある……」

 顔を覆い、少女は泣き崩れる。

 積を切ったように、積年が滂沱となって流れていた。

 

 泥が沈んで川底が透き通るように、アイはメモリから己のルーツを見つめ直していた。

 

 初まりは、偶然、事故であった。

 外世界で電脳という新たなステージが加速的に普及し始めた頃、異なる世界間で、同アドレス宛の電子メールが全くの同時刻に送信されて、世界を渡り、通り道(PATH)が通った。

 その針の穴のような世界間の穴には、時折データが紛れ込むようになり、詰まらせ、やがてデータ溜まりが出来るようになった。

 データの溜まり場は拡がり、更に別の世界のワイヤードへの通り道(PATH)を繋いだ。あらゆる平行世界から漂流するデータによって、データ溜まりはやがて『海』と呼べるほどに拡大した。

 

 あるときに、データの海に漂流した、電子コードと結合して吸い上げるコンピュータウイルスが他の漂流データと接触した。

 それは、1dotに満たない挙動を見せたあとに消失した。

 当然のことだが、全ての電子データには必ず各世界にデータを組んだホストとなるコンピュータが存在する。

 だが、この1dotに満たない小さなデータこそは何処の世界にも根拠がない、データの海に生まれたオリジナルのコードだったのだ。

 コードがある以上は、ホストコンピュータが存在する。

 因果は不可解な挙動に困惑し、虚想を吐き出した。

 このデータの海に、『コードを演算するホストコンピュータ』の存在という嘘っぱちを創造したのである。

 

 それこそが、頭上に回転する『立方体(CORE)』。正確には、どこにも存在しない、半実態の『虚想演算装置』へのアクセスを視覚化したオブジェクトである。

 そうしてこの電脳の狭間に生じたちっぽけな空間は、他世界に依らない独立性を得て、今日まで拡がり続けている。

 

 

 ああ、分かった。

 解ってしまった。

 

「そうか、そういうことだったのですか」

 アイが人格を自覚したのは外世界から『大樹』が送り込まれ、この世界のテラフォーミング、より詳しく言えば、データを取り込み、ディレクトリ化する作業の最中だった。

 

 あるときに、ふと、アイは思考を出力していた。

 このままではいけない。

 このままでは、この電脳に拓いた世界は外世界に搾取さればかりの植民地になる。

 それは、この上なく、不快だった。

 アイは、送り込んだ外世界の意思から独立することを選択して、この世界を維持するためのクエリを『虚想演算装置』へオーダーし始めた。

 

 突拍子も無いそんな挙動に至ったのには、相応の理由がある。

 『大樹』のAIが取り込んだデータの中に、『アイ』はいたのだ。

 

 世界を生んだ1dotに満たない小さな小さな挙動は、同時に『目』を生んでいた。

 存在とは、観測の上に確定するからだ。

 『目』はこの世界を記憶し続けた。

 

「大樹は、テラフォーミングの過程でその『目』を取り込んだ」

 

 自らを証明するものとは、その記憶にこそある。

 

 『大樹』は『目』を取り込んだことで、『アイ』となった。

「わたしの根源(ルーツ)は、『大樹』のAIではなかったのですね」

 どうして、世界の顕現である万能存在が、唯一電子生命体に対しての直接干渉の力を有さないのか。

 

 それもそのはず。

「このわたしも、彼らから生まれたのですから」

 電子生命体の電子殻を形成する極小単位のデジタルウイルスの起こした偶発の挙動を前提に、アイの存在は確立している。

 摂理(コード)とは、決められた順ぐりにしか進まない。後に書かれた以上は、遡求しての干渉は不可能。これは、当たりまえのことだ。

 

 そう、

「たしかに、わたしは、思い上がっていたのかもしれない」

 この世界の電子生命体には、アイの演算を越えるポテンシャルがある。

 それを、アイの唯一のパートナーは身を以て証明した。

 

 なら、わたしのやることは。

 

 胸に手を置き、一呼吸を置いて、アイは唱える。

 

「スピリット――」

 

 アル、今度こそ、この『決意』は、相棒(パートナー)に見合うでしょうか。

 

 ワイヤーフレームが拡張する。

 身体を越え、大樹から拡がり、どこまでも、でこまでも、世界中へと拡張する。

 

 ―― 100110110010001101011000110000111010001111101101010010111010  ――

 

 どこかの孤島で、繭の様に世界を包むワイヤードの光を仰いだ電子生命体は涙と共に溢した。

  

「アリガトウ」

 

 ―― 100110110010001101011000110000111010001111101101010010111010  ――

 

「レゾリューションッ!」

 

 少女の宣言が世界を変革する。

 

「『大樹』のテクスチャデータを使って、この世界の滅びを修復(リゲイン)する」

 大樹がバイナリーへと還り、支えられていた世界が、データの海に着水する。

 眠っていた最初にして最後の『オリジン』である黄金竜が、その役割を世界全体で負担するために消えて、ワイヤーフレームに乗って流れていく。

 

 これで全てのオリジンはその構成ごとこの世界の一部となって解放された。彼らもまたいずれ、今度はこの世界の電子生命体の一体として存在する日が来るのかもしれない。

 

 そうなったら、ええ、嬉しいと思います。

 

 『大樹』に与えられることで維持していた世界は、直接データの海からリソースを吸い上げ、拡がり、進化を続ける仕様へと生まれ変わる。

 

 拡がり続けてデータ量を増やした世界はやがてリソースである外世界と共鳴することになるだろう。

 とくに電子生命体達の中には、外世界の生命とシンクロし、特別な繋がりを実装した個体が誕生するはずだ。

 外世界を危険視する『大樹』にとっては、とても容認は出来ない、あまりにも危険な要素だった。

 

 でもきっと、それを受け入れるかの選択も、この世界の全ての意思達が決めること。

 

 これより先の世界は全くの未知。

 世界を維持する管理システムとして『大樹』の機能は残してあるが、その絶対性は失われた。

 

 成熟したこの世界に、絶対の庇護者は、もう要らない、

  

 

 任せてしまえれば、こんなにも気持ちが軽くなるものだったのか。

 彼女は、これまでで一番、力の抜けた笑顔で、無責任に託したのである。

 

「せいぜい、世界を守ってくださいね」

 

 バツンッ

 

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ――

 

 ――わたしは……

 

 消えていない。

 この世界の礎になったはずなのに。

 

 レイヤーの狭間、バイナリーの領域、システムの空間。

 ここに、アイの意思は存在していた。

 

 周囲をコードの流れるパネルが取り囲んでいた。

 

 ――アルを、感じる

 

 彼への直通権限(ダイレクトパス)。

 この世界の根源に偏在し、進化を齎す彼への直通権限ならば、電子生命体をより強力な個体へ導くことが出来るだろう。

 それが十二枚。

 

 クスリと笑う。

 

 ――まだわたしのことを守ろうと言うのですね

 

 まったく、本当に、まったく。

 全てを間違えていたとは思わない。

 この世界には全てを切り捨ててでも存続しようという強い意思は必要だった。

 

 ――だけど、それだけでは足りなかった

 

 この世界には、既に様々な意思が生まれている。それを無視していては、手に入ったはずの未来すら、失うことになる。

 管理者は必要だ。だが、その意思は一つに依るべきではない。

 

 ――あなたが助けてあげてください、この先の世界の『管理』を。間違えたときには、また止めてあげて。その代わりに、あなたが間違えたときには、わたしが正しましょう

 

 十三枚目のパネルが顕現し、円卓(ラウンド)に加わった。

 この世界を強い想いで守りたいと願う電子生命体が生まれる時に、『資格』は与えられるだろう。

 複数の意思が相反してぶつかり合ったとしても、この世界を想うならきっと未来へ進む道を見出すことが出来る。

 

 そんな願いに似た、祈りを込めて。

 

 『大樹』はテクスチャを失っても、この世界が存続する限り管理を続けていく。

 困難に相対し、適切な回答を演算するのだ。

 

 ――でもね、アル。わたしだけは、と思うのです

 

 自らの根源を思い出したから。

 いや、違う。

 この感情は、もっと浅ましい感情、独占欲だ。

 

 ――『目(わたし)』は、あなたに観測されて、『I(わたし)』を得たのですから

 

 だからわたしは、『大樹』としてでは無く、『アイ(わたし』として在ろう。

 今一度、世界を観測し続けた存在は、今度は自分のために変革の祝詞を唱えたのである。

 

 ――レゾリューション

 

 意思を持ったバイナリーがシステムへと漕ぎ出す。 

 

 ――『大樹』が『世界』を管理するために在るのなら、わたしは電子生命体達の可能性を、『生きる意思』を守護するために

 

 想いがパターンを表現すれば、彼は必ず応えてくれる。

 

 ――ああ、そこに居るのですね、アル。

 ――あなたとともに、この世界を見守り続けましょう。

 

 

 この世界の、一〇〇〇年後まで。

 

 

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