変態男とすれ違い街道 作:こんぺいと
雷鳴が轟いた。
窓から覗くのは黒色に染められた世界に、そして瞬く雷。雨音の中、時折思い出したように落ちるそれは、夜という時間にも関わらず教室の中を一定の間隔で照らしていた。
──教室の中にいるのは、2人。
1人は少女──
鳴動
いや、青葉が気にしているのはそこではない。何よりも重要なのは、来画が持っているモノであった。
窓が光り、一際大きい轟音が響く。それに照らされ露わになったのは──リコーダー。
そう、来画が持っていたのは、クラス一の美少女
青葉はそれを見て理解した。来画も
(……
そして、こっそりと鳴動くんが
青葉はある『機関』の潜入員である。その機関の目的は1つだけだ。
いつからかこの世界にいる異世界からの化け物を根絶する。
それが機関の目的である。その『化け物』は千差万別。今回の化け物、外道玲奈は人間を模すタイプのそれだった。
この学校に入学したのは、外道玲奈を殺すため。
そして、元々青葉がここにいるのは、玲奈が口を付ける物に毒を塗る、という方法で殺害を試みていたからである。
今日で一ヶ月目。やはり『化け物』には毒が効かないのか、という諦観と共に一ヶ月の最後を迎えたのだが……。
「……はは……見つかったら、終わりだよな」
そして、そう呟く来画。その目にあるのは怒りでも諦観でもなく、哀しみ。足もとに転がるバックの中から覗いたのは、小さな容器。
(……あれは、毒かしら?)
やはり、玲奈殺害のために動いているのだと確信する。
だが、だからといって目の前の来画が青葉の味方であるとは限らない。もし機関と敵対的な組織のエージェントだったら、青葉の方こそ終わりである。
だから、青葉は確認のために慎重に言葉を選んで聞く。
「……今回が初めてなの?」
「そうだ……っていってもな。見つかったら、全部終わりだよ」
玲奈殺害のために動いたのは初。ならば、何故今なのか。これまでにもタイミングはあっただろう。
「……そうかもしれないわね。それで、なんでこんなことをしようと思ったの? 本来なら無視して過ごすのが正解のはずよ?」
「なんでか……か。確かに、無視するって選択もあったのかもな。理由なんて俺にも分かんねぇよ。
ただ、そうしなきゃいけないって思いが止められなかった」
「……思い? 誰かの命令とかじゃないのかしら?」
「はっ……そうだな。そうかもしれねぇ。命令……そう言えるかもしれない物はあった。
だけどな! これは俺が決めたことだ! ……俺がやりたいからやった。俺が……俺の気持ちが『やらなきゃ』っていってたんだよ……それだけだ」
ふっ、と悲しげな色を瞳に宿し、来画は手に持ったリコーダーを見つめる。そして、机の上にコン、と置いた。
「……貴方」
それを認め、青葉は驚いた。ここまで『化け物』殺しに思いをかける人間にあったのは初めてだったからだ。
きっと、なにかがあったのだろう。だがそれは、所属も気持ちも違う青葉が突っ込んでいい世界を超えている。
だから、青葉は決めた。
この目の前の男、鳴動来画と協力すると。
「大丈夫よ、来画くん」
「はっ、なにがだよ。見つかった時点で終わりだ。特にお前みたいな奴にな」
それを聞き、青葉はこちらの所属までバレているのかと一瞬肝を冷やす。だが、努めてそれを無視し、青葉は一番信用を得られそうな言葉をゆっくりと口から吐き出した。
「──だって、私は今来画くんがやろうとしてること、何度もやった後だもの」
◆◇
鳴動来画は変態である。紛うことなき変態である。
世が世なら天下に名を轟かせていたのでは、と思うほどの変態であった。
なにせ、現在進行形で好きな子のリコーダーをこっそり舐めるために取りに行くというとんでもない行動を起こしていたからである。
そして、それはやはりというべきか手痛い失敗に終わる。
リコーダーを手にして、さぁ持ち帰るぞという時に扉から現れたのが──学年でも有数の冷徹美少女、緋色青葉だったからである。
(あっ、俺の人生終わった……)
そして、その思考が浮かび、来画は哀しみに包まれた
る。
(一度良いから、玲奈さんのリコーダーを味わいたかったな……)
そして包まれるその思いのまま、青葉へ向き合った。