グリフィンの黒騎士   作:謎多き作家

1 / 21
黒騎士

S10地区、鉄血工造制圧区域。

 

2061年の蝶事件を機に人類に対し鉄血工造の戦術人形達が大規模な反乱を起こし、各地に残された生存圏を制圧した。

 

それに対抗するべく2062年、民間軍事会社グリフィンは人間の指揮官とIOP製の戦術人形による部隊構成による方針によって指揮官の増員を決定、鉄血とグリフィンの戦闘は苛烈を極める事となる。

 

そんな硝煙漂う人形達の戦場の夜空を一機のヘリが飛んでいた。

 

「間も無く作戦区域だぜ。準備は出来たか黒騎士?」

 

「うん……」

 

ヘリの中には初老の男と黒のキャップ帽子とジャケット、シャツ、スカート、ブーツやタイツに至るまで黒一色、そして何より目を引くのは口から頬を覆う様に付けているマスクと言う変わった服装した黒騎士と呼ばれた少女。

 

その手には少女には似つかわしくないアサルトライフル、SR16が握られていた。

 

少女はSR16の状態を見ている中、男は無言の静粛を破った。

 

「全く……御上は何を考えてるんだか……たった一人で鉄血の補給基地を叩けなんてな……やれるのか?」

 

「うん……」

 

「うんしか言ってねぇじゃねぇか……たく……」

 

男はそう言って降下する用意を整えると予定されていた場所に低空でホバリングすると少女はそこから飛び降りる形で地上へと降り立ち、サイレンサーが取り付けられたSR16を構えながら付近を警戒した。

 

「頑張れよ!!」

 

男はそう言って飛び立って行き、残された少女……戦術人形、SR16は作戦を開始した。

________

______

____

 

SR16は辺りの警戒を怠らない様に作戦目標となる鉄血の補給基地へと突き進んでいた。

 

夜の暗闇が広がる中、鉄血の戦術人形達が巡回する場所を静かに通り抜け、時には排除と言う形で突破した。

 

SR16はやっとの思いで鉄血の補給基地の付近まで来ると双眼鏡を使って周りを偵察する。

 

鉄血の補給基地はヘリポートや多数の輸送車があり、重たい機材や前線に運ぶ弾薬を集約し、必要な場所に輸送させていると分かった。

 

基地内にはヴェスピドやリッパーと言った鉄血兵が辺りを見渡し、巡回する様子がよく見え、建物の上や高台にはイェーガーが待機している。

 

基地の周りには敵の侵入を防ぐ防壁があり、その上にも鉄血兵が見張をしている。

 

SR16は一通り、偵察を終えると鉄血の警戒が薄い場所を狙って駆け、近付くとグラップリングフックを取り出して壁の上に向かって投擲、落ちて引っ掛かった所をSR16はロープを伝って昇る。

 

壁を伝って防壁の上をSR16は警戒しながら覗くとグラップリングフックの落ちる微かな音に気付いたのか鉄血兵がやって来た。

 

「ふぅ……」

 

SR16は深呼吸し、静かに鉄血兵が近付いて来るのを待ち、それを知らずにやって来た鉄血兵がSR16が潜む壁下まで来た所でSR16が飛び出し、驚いて銃口を向けた鉄血兵を口元を押さえ、捩じ伏せるとコンバットナイフで首を深く刺した。

 

鉄血兵を永遠に黙らせたSR16は鉄血兵を元来た所の壁下に放り捨てるとそのままSR16を構えて進む。

 

素早く、そして静かに……銃とナイフを駆使して鉄血兵の排除をしながら目標の一つとなる物資の集積所を見つけ出し、SR16は中を確認すると中にも当然とばかりに鉄血兵が警戒していた。

 

物資が詰め込まれ、とても狭い場所となっている。

 

SR16はライフルが不利な狭い場所だと知ると自身のSR16をスリングでぶら下げるとサイレンサーが取り付けられた拳銃を手にしてそっと進む。

 

「……?」

 

鉄血兵が曲がり角に差し掛かろうとした所で……。

 

「ッ!?」

 

SR16が鉄血兵を押さえ込み、コンバットナイフで首を刺して目立たない所に置く。

 

そこへ別の鉄血兵が来ると距離が近い事からCARシステムの構えで胸に三発、頭に1発当てて倒した。

 

SR16はCARシステムのまま進むと鉄血が使う大量の弾薬を見つけるとC4爆弾を取り出し、取り付けた。

 

一つだけでなく幾つかのC4を取り付けるとその場から離れた。

________

______

____

 

SR16が集積所から離れると暗闇に紛れながらスイッチを押し、爆破させた。

 

集積所が破壊された事で鉄血兵が次々に現れるのを確認したSR16は暗闇から射撃を開始する。

 

セミオートによる正確な射撃を暗闇の中で行い、サイレンサーの消音効果もあって鉄血兵はSR16を見付けられず闇雲に辺りを発砲する。

 

SR16は発砲しては移動し、暗闇に紛れ、鉄血兵が至近距離にいればコンバットナイフで切り裂き、腕で首をへし折る。

 

たった一人の戦術人形……SR16に翻弄され、鉄血兵は数を減らす中、そこへ一人の人物が現れた。

 

「これは……何事ですか……!?」

 

今までの鉄血兵とは違う燕尾服を思わせる服と手にした指揮棒……SR16は冷たい目でその相手を見据えた。

 

「追加ターゲット確認……ハイエンドモデル、スケアクロウ……」

 

SR16はそう呟くと暗闇に紛れ、素早く、そして静かにスケアクロウに迫る。

 

SR16は発砲して護衛としている鉄血兵を撃ち倒す。

 

「ッ!?」

 

スケアクロウは気付いてSR16に攻撃しようと浮かせているビットを展開するもそれを見越したSR16が素早く銃撃し、破壊。

 

驚くスケアクロウに構わずSR16は飛び回り蹴りを仕掛け、スケアクロウの顔を思いっきり蹴り挙げた。

 

スケアクロウは吹き飛び、身に付けてきたマスクも外れた。

 

そのまま地面に倒れると蹴りを仕掛けたSR16を睨み付ける。

 

「ぐッ……!グリフィンのボロ人形がぁッ!」

 

スケアクロウは持っていた指揮棒を投げナイフの様に投げるもSR16は当たらない事を予期する様に微動だにする事もなく指揮棒は通り抜け、スケアクロウは攻撃手段を全て失った。

 

「ハイエンドモデル、スケアクロウ……お前の首にはそれ相応の報酬が出る……首だけ貰うよ……」

 

SR16の冷たいその言葉にスケアクロウはゾッと寒気を覚えた時、自身のデータベース内にある一人の人形の存在があった事を思い出す。

 

「……お前は……グリフィンの……!」

 

スケアクロウは何かを気付いたかの様に言うがその途中でSR16が発砲、トドメを刺した。

 

「……切れるかな?」

 

SR16はそう呟きながらコンバットナイフを強く握りしめた。

_______

_____

___

 

作戦を終えたSR16はヘリの中で通信を開くと同時にドスッと丸い物体を映像の前に置くと通信越しから小さな悲鳴が聞こえたと思いきや深い溜め息が聞こえた。

 

《SR16……切った首を映像の前にいきなり置くなと言った筈だぞ?》

 

「だってそうしないと見えないよ?」

 

キョトンとした表情で不思議そうに首を傾げるSR16に映像に映る目の前の人物は眉間に指で押さえる仕草をした後、諦めた様に再び溜め息をつく。

 

《……まぁ、良い……それよりも補給基地の破壊そしてスケアクロウの撃破……良くやった……次の仕事も期待している……報酬はいつも通りの方法だ……》

 

「スケアクロウの分も入ってるよね?だって、ブリーフィングでハイエンドモデルがいるなんて聞いてないし。ボーナスだよね?」

 

《ちッ……分かっている……追加報酬も用意している……》

 

「やった」

 

SR16は無表情だが無邪気な様子を見せ、目の前の人物の何とも言えない不機嫌な顔も気にしない。

 

《次の仕事は暫く無い。好きに過ごせ。次も期待しているぞ黒騎士。……次は絶対に!!……いきなり映像前に首を置くな……良いな?》

 

「?。分かった。ヘリアン」

 

SR16の分かってそうで分かってなさそうな返答に目の前に人物、ヘリアンは遂に顔を両手で隠して項垂れ、そのまま通信を切ってしまった。

 

SR16は何がいけなかったのかとばかりに考え込む中、SR16を送った操縦士である初老の男が豪快に笑った。

 

「ワッハハ!そりゃいきなり目の前に生首なんて置かれたら慣れてる人間でも驚くだろうよ!」

 

「そう?」

 

「誰だっていきなりドッキリ染みた何かをやったりしたら驚くもんだ。俺だって酔いが吹き飛ぶってもんだ」

 

男はそう言うがSR16には分からなかった。

 

その辺りの倫理観はIOP製の戦術人形である筈のSR16には抜けており、例え人間であっても平然と冷酷かつ残虐な行為も厭わない戦い方もする。

 

優秀ではあるがグリフィンの評判を下げかねない存在。

 

その為、グリフィンに使われながらグリフィンの正式な所属人形ではなく、雇われのPMCに雇われた傭兵に近い状態の扱いだった。

 

それ故にSR16はグリフィンに思い入れがなく、他に行き場も無い、一々仕事を探さなくても済むから使われる。

 

そんな状態を甘んじて受けた。

 

故にグリフィンや彼女を知る者達から扱っている銃に因んでこう呼ばれる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒騎士*1と。

 

 

 

*1
西洋で実在した黒騎士は現代で言う傭兵・フリーランスであり、正式に主君から騎士の位を叙勲していない、または、主君に忠誠を誓っていない、非公認の「自称」騎士である。

 

また、不名誉な行動など、何らかの理由で位を剥奪されて、紋章を用いることができない元騎士なども、この黒騎士になる事もあった。

 

必ずしも全身真っ黒と言うわけではなく、紋章が刻まれた盾を出自を隠すために真っ黒に塗り潰していた事が由来である。

 

黒騎士となる者は、家柄等が活かせない(明かせない・地位が低い)立場の騎士が多い。しかしそれゆえに、実戦の修羅場を何度もくぐり抜けた実力者である事もまた多かった。

 

フリーランスである事から、領地は無くとも、放置すると敵に回ったり、存在自体が封建制社会に疑念を抱かせるため、支配者階級である王侯貴族にとっては頭の痛い存在であった。

 

そのため黒騎士は、不名誉な存在とされていた。

 

また、単に黒塗りの鎧を着た正式な騎士や、勇猛な活躍ぶりや、性格的な理由などから「黒騎士」と呼ばれた人物も歴史上には存在している。

 




「SR16、現着した。一時の間、指揮官の力になります」

戦術人形:SR16

銃種:アサルトライフル

星:★★★★★

見た目:黒のキャップ帽子とジャケット、シャツ、スカート、ブーツやタイツに至るまで黒一色の服装とから頬を覆う様に付けているマスク。

髪は肩までの伸ばした黒髪で、黒い瞳。

胸は大きめ。

【説明】

グリフィンに正式に配備及び運用されていない特殊作戦や非正規戦を主に単独で行う謎多き戦術人形。

無口で無表情と致命的に人との関わりも少なく、また倫理観が抜けており、人形や人間問わず残虐な攻撃を仕掛ける事を厭わない為、扱い難い故に腫れ物の様にグリフィンその物から距離を置かれる形で非正式に運用され、一定の基地や指揮官の元に留まったりする事はない……が、時として指揮官の指揮を受ける事もある。

SR16本人もグリフィンに思い入れは無いが行く宛もないので使われているだけの形を受け入れている。

グリフィンにあまり受け入れられず、そして本人もグリフィンに思い入れを持たない為、スティグマ武器として使われているSR16の異名であるダークナイツと服装に因んで悪い意味で黒騎士と異名で呼ばれる事が多い。

戦闘能力は高く、隠密戦や心理戦を主に得意とし、敵に予想だにしない奇襲攻撃を仕掛けたり、敢えて残虐な行いをし、士気を挫く戦いをし、自身のスティグマされた武器に囚われずに他の武器を十分な性能で運用する事も可能。

感情が無い訳ではない……只、致命的に人付き合いをしなさ過ぎたせいである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。