グリフィンの黒騎士   作:謎多き作家

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作戦会議

M4達と別れたSR16は一人で射撃場へと足を運び、ひたすら的に狙いを定めて撃っていた。

 

「……もっと速く、正確に」

 

只、撃つだけでなく素早くそして正確に射貫く事を意識し、的が出現した瞬間にはSR16の発砲は始まり、的を射貫いている。

 

「やってるなSR16」

 

「レスター……そっちの仕事は終わった?」

 

「まぁな。ヘリの整備なんてもう慣れてんだ。すぐに終わる。それで?ご機嫌斜めな理由は何だ?」

 

「…‥ちょっとね」

 

SR16はそう言ってそのまま無言でマガジンに弾を込めていく。

 

一つ一つ丁寧に弾を確認しながら込められていくマガジンをレスターは見ると微笑んだ。

 

「教えた事をちゃんと守って何よりだ」

 

「それは貴方の教えられた事には実用性があるからだよ。弾は支給されたとしても確認を怠るな。一発の不発が一つの命を喪う。それが貴方に教えられた事の一つ」

 

「そうだ。幾らちゃんとしてくれたとしても作ってる奴が失敗しないとは言いきれねぇ。それ以外にも長い事置いてあったせいで劣化してたり、たまたま不良品が大量に送られた弾の中に混じってて更にたまたま見逃してしまったなんて可能性も出てくる。切羽詰まってない限りは弾は自分の目でも確認して然るべきだ。それが仲間の命を救う事に繋がるかもしれねぇからな……」

 

レスターはそう言って虚しげに一本の煙草を取り出して口に咥えると火を点けた。

 

「一応、禁煙だよ?」

 

「バレなきゃ分かりやしねぇんだよ。あ、お前も共犯な?」

 

「何でそうなる馬鹿」

 

SR16はジト目でそう言うとレスターはニカッと笑うと。

 

「お前は絶対に話さないって知ってるからさ」

 

レスターのその言葉にSR16は沈黙の後、そっぽを向いて弾を込めたマガジンを自身の半身とも言える銃に装填した時、基地内の放送が鳴った。

 

《SR16さん。指揮官様がお呼びです。至急、会議室まで来てくださーい》

 

声の持ち主はカリーナでSR16は一息つくとレスターに視線を向けた。

 

「……呼ばれた」

 

「こりゃ、仕事の話だな。やれるか?」

 

「要塞に頼って籠ってる様な狩人なんかに負けないよ。でも指揮官にアレを落とす策があるなら良いけど……」

 

「言うなよ……不吉だろが……」

 

「仕方ないよ難しいんだから……それじゃ行ってくる」

 

SR16はそう言ってジャンシアーヌがいる筈である会議室へと向かった。

________

_____

___

 

SR16が会議室へと来るとそこにはジャンシアーヌの元で働く人形達が集まっていた。

 

雑談をして暇を潰す人形達の集まる会議室をSR16は見渡した後、そっと奥の席へと座った所でSR16の元に来る者が現れた。

 

「こんにちはSR16」

 

「MP40……うん、こんにちは」

 

MP40がSR16に話し掛け、SR16は戸惑いや困惑を覚えつつも冷静に挨拶を返した。

 

何の用だと思いつつ無関心だとばかりにMP40を見つめる中。

 

「え、えーと……」

 

MP40はモジモジとしていて話は進まず、SR16は首を傾げている。

 

「話が無いなら戻ってくれる?時間の無駄」

 

「あ……すみません……」

 

「おいおいそんな言い方ないだろ?」

 

SR16の辛辣な言葉にMP40が落ち込んだ所でMG3が来た。

 

SR16はまた増えたと思いながら首を横に振る。

 

「非番の時じゃない。会議室に集められている時点で作戦があると言う事。それなら始まる前に用件を聞かなきゃいけないなら早く言わなければいけない。そうでしょ?」

 

「いや……そうだけどさ……」

 

「時間は有限……それはどんな時でもね……」

 

SR16のその言葉にMG3は頭をかきながら困り果てた所で出入り口からM4とSOPIIの二人がやって来た。

 

「あ、SR16……」

 

SOPIIがSR16の存在に気付くもSR16は視線を向けず無視を決め込む様に前だけを見ていた。

 

「なぁ、何かあったのか……?」

 

「え?」

 

MG3はやって来たM4にそう聞き、M4は何の事かと首を傾げるとMG3は疑問に思った事を聞く。

 

「いや、明らかに彼奴不機嫌だしさ……喧嘩でもしたのか……?」

 

「え、えーと……ちょっと色々あって……」

 

M4は濁す様に苦笑いしつつ言った。

 

当の本人であるSR16は自身のデータバンクからハンターの情報やその拠点に関する情報を漁っていた。

 

「(……本当に嫌になる……こんな要塞を相手にするのか……)」

 

SR16のデータに存在するハンターの拠点は防壁と自動砲台、そして何と言っても一番厄介な地下輸送ライン。

 

圧倒的な数の鉄血兵を含めればとんでもない要塞だ。

 

過去にSR16は一度、鉄血の拠点の情報収集として深部偵察を行っていた。

 

偵察した際の強固な守りにSR16は当初の予定に入れていたハンターを倒す事も前提とした威力偵察を止め、ある程度の観測による偵察に留めて撤退を決める程だった。

 

「(ハンターの首も取り損なった事でAR15は囚われの身か……私のせいじゃないって言うのに……)」

 

SR16は思考を巡らせていた時、G36が手を叩いた。

 

「そろそろ会議の時間です。セカンダリレベルへ移動を」

 

SR16はそれを聞いて目を閉じ、浮いた間隔が消えた所で目を開けるとセカンダリレベルの空間内に入っていた。

 

SR16は前を見ればふよふよと浮いている小さな悪魔の羽を生やした兎がいた。

 

もう一度言う……兎である。

 

「(あれは指揮官のアバターか?意外だ……)」

 

ジャンシアーヌの意外な一面にSR16は無表情でジャンシアーヌを見つめる中、会議が本格的に始まった。

 

「皆のおかげでS09地区のボスの正体が判明した。その情報は過去に行われたSR16からの偵察報告と照らし合わせた所、SP721HUNTER。通称ハンター。危険な鉄血人形よ」

 

ジャンシアーヌはそう言ってSR16が過去に基地の外へと出てきて基地内を視察するハンターの姿を撮った写真を拡大させて見せた。

 

「え?SR16ってハンターを見つけてたの?」

 

SOPIIは初めて知った言うジト目の表情でSR16を見ると。

 

「過去に命令されてね。流石に排除は難しかったからある程度まで情報を収集して帰るしかなかった。下手に騒ぎにすればハンターはより防御を固めてしまう危険もあったからね」

 

SR16の説明にSOPIIはぶつぶつと何かを言いながら再び前を向き、SOPIIのその様子をSR16は見つめるばかりだった。

 

各人形達がハンターの姿を確認した後、次にハンターの基地周辺の地図を映した。

 

「SOPIIの情報によると過去の偵察報告と比べても依然として変わらず奴の勢力範囲はこの一帯らしい。大規模な基地を持っている事からも分かる様に戦力は相当なものよ。これより行動を開始するけど今回は我々以外のグリフィンの部隊が協力してくれるわ」

 

ジャンシアーヌのその言葉にSR16は妥当だと考えた。

 

ハンターの戦闘力と姑息さを考えれば他のグリフィン部隊と組んで対応した方が勝率は上がると考えたからだ。

 

それに攻撃三倍の法則*1と言うものがあり、攻撃よりも防御の方が遥かに有利に動く事が多い。

 

前回の戦闘でもジャンシアーヌが鉄血の襲撃に対して持ちこたえ続けたのも地の利のある防御と言う有利な立ち位置での戦闘となったこそ故であり、この法則は戦いは数だけでは成立しない表れでもある。

 

それが今度はジャンシアーヌ達グリフィンの部隊が鉄血の防御に悩まされる事になるのだから戦争と言うのは全く読めたものではないとSR16は常々思っている。

 

「進行ルートはこの通りハンターの基地を偵察してその詳細なデータを本部に転送。これが我々の任務よ。そしてもう一つ。二名の16LABのエリート人形と一名の臨時で派遣されたエリート人形。M4A1とSOPIIそしてSR16よ。彼女達の実力はこの前の戦いで目の当たりにしたわね。SR16はもとよりペルシカさんが指揮権限を預けてくれた為、彼女達は私達と共に行動する」

 

ジャンシアーヌの作戦内容の進行の話す次いでに行われた紹介が終わるとSR16達の周りの人形達は拍手し、拍手を受けたSR16は帽子を深く被った。

 

「話は以上よ。此方に参加人員のリストを纏めてあるから各自確認する様に。これで会議は終了よ。必要な装備はカリーナから受け取って。時刻整合を行う。1305、1315に飛行場集合。解散!」

 

ジャンシアーヌのその言葉を最後にセカンダリレベルから出たSR16達は素早く装備を整えると飛行場へと向かった。

 

飛行場では今にも飛び立つとばかりにプロペラを回すヘリがあり、SR16はその一機に乗り込むと一息ついて目を瞑った。

 

「……データだけに頼るな……己の感じたものを全てが現実……どんな状況下であっても……絶対は無い……」

 

「なになに?何の事?」

 

後から乗り込んだFNCがSR16の独り言を聞いて質問をするとSR16はゆっくりと目を開けて答えた。

 

「単なる……心得かな……」

 

「心得?」

 

「私の中に残る心得……誰が言ったのかは分からないけど……幾つかの心得は今も私の中に残っている……只、それを言っただけ……」

 

「ふーん……」

 

「誰かと言う事はSR16さんは昔、何処かの小隊にいたのですか?」

 

「小隊……」

 

FNCと同じく同乗しているMP5が興味本位とばかりに聞くとSR16はうつむきながら考えた時、頭を片腕で押さえて苦しむ。

 

「SR16さん!?」

 

《どうしたの?》

 

苦しみだしたSR16にMP5は咄嗟に介抱した時、ジャンシアーヌが異変に気付いて通信を入れてきた。

 

「SR16さんが急に苦しみだして!指揮官様どうすれば!?」

 

《落ち着いて。SR16!聞こえる!》

 

「わ……私は……!」

 

ジャンシアーヌとMP5の呼び掛けが聞こえていないかの様に苦しむSR16。

 

ジャンシアーヌは仕方なくSR16の回収を指示しようとした時、SR16は急に苦しむのを止めて片腕を挙げた。

 

「……大丈夫。作戦区域に向かって」

 

「えッ!?で、ですが!?」

 

《SR16……異常がある以上、作戦に影響を及ぼす可能性がある。貴方はヘリから降りて》

 

「問題ありません。それに何の話ですか先程から?」

 

《え?》

 

「いつまでも出撃せず、急に慌てだしたと思ったら降りろなんて……何がしたいのですか?異常?そんなものはありません」

 

SR16のその言葉にSR16の周りにいる面々を含めてジャンシアーヌは唖然とするも溜め息をついて返答する。

 

《分かった。だけどもし、何かまたあれば何を言っても離脱させるからそのつもりでね》

 

「さっきから何の話ですか……まぁ、良いや。早く行こう。AR15を助けられるのかは偵察次第なんだから」

 

SR16はそう言ってそっぽを向くと周りの心配を他所にヘリは飛び立っていく。

 

その様子を見届けたジャンシアーヌは暫く考え込んだ後、深い溜め息をついた。

 

「はぁ……これは本当にペルシカさんに連絡を入れないとね……」

 

「はい……SR16さんどうしてしまったのでしょうか……?」

 

「分からない……だけど彼女は明らかに小隊と言う言葉に反応した……調べてみる価値はありそうね……」

 

ジャンシアーヌはそう言ってSR16の過去に所属した小隊について調べる事を決めたのだった。

*1
戦闘において有効な攻撃を行うためには相手の三倍の兵力が必要となる、とする考え方である。攻者が勝利すると言われる攻者と防者の兵力比率が三対一であるために、三対一の法則とも言う。

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