SR16は大人しく座り込んで待機を選ぶ中、SOPIIが近くの木を殴って怒鳴るのを聞いたSR16が呆れながら諫める。
「落ち着いてSOPII」
《あんな事を言われて落ち着けないよ!》
「それでもだよ。私はごめんだよ?あんな要塞に突っ込んだお馬鹿さんの尻拭いなんてね」
《ッ!?さっきから……さっきから何でそんな事を言うの!!SR16はAR15を助けたくないって事なの!!》
「助ける為に落ち着くんだよ」
SR16のその言葉にSOPIIは黙るとSR16はナイフの刃先を弄りながら続ける。
「あんな要塞と大軍を相手に無策で戦う方がどうかしている。仮に突っ込んで優勢に立ったとしても次は本当にAR15を盾にされる。それにこっそり忍び込もうにもハンターに勘づかれている時点でおじゃんだよ。だから……今の私達に勝ち目は無い。だけど貴方達には頼れる指揮官がいる……そうだよね二人共?」
SR16のその言葉にSOPIIは唸りながら黙り、M4はまるで考えている事が読まれたかの様に沈黙を貫く。
「冷静さを失わないでよね。必ず逆転の機会は」
SR16が話している途中、ハンターの守る基地から激しい騒音が響き、SR16達は一斉に視線を向ければ基地の方からけたたましいサイレンが鳴り響いていた。
「何事?」
SR16が双眼鏡を手にして基地内を覗き見てみれば鉄血兵同士が互いに撃ち合うと言う謂わば同士討ちが発生していた。
鉄血対鉄血と言う奇妙な事態の中、SR16達が困惑していると今度は輸送用の列車が脱線して大事故を起こすと言う光景まで捉え、これにはSR16も困惑と動揺を覚えた。
「鉄血は遂に自分達の相手すら分からなくなったの?」
SR16がそう言って双眼鏡から目を離して呟くと鉄血の基地は夥しい黒煙と共に基地の防御力は落ちていた。
鉄血の部隊の突然の混乱の中、ジャンシアーヌからの指示が飛んだ。
《何が起きているのか知らないけど此れはチャンスよ。鉄血が混乱しているとは言え固い守りがあるのは厳しい。そこでM4とSOPIIそしてSR16の三名で鉄血の基地内に潜入、防御システムを停止させて。その後で他のグリフィン部隊と連係しつつ鉄血の基地を攻略。鉄血の部隊の殲滅とハンターを撃破する。出来るわね?》
「指揮官。私の本来の専門を忘れた?それくらいなら御安い御用だよ。……M4は兎も角、SOPIIは不安だけど」
《どういう意味!?》
《……そんな事はあまり言わないでくださいね》
《M4!?何で目を反らしながら言ったの!?》
今から危険な潜入に行くとは思えない三人のやり取りを聞いたジャンシアーヌは溜め息をついた所で三人は駆け出した。
「ははは……大丈夫でしょうか……?」
その様子を見ていたカリーナは苦笑いしながらジャンシアーヌに問うとジャンシアーヌは忙しそうに状況を確認しつつ部隊に指示を飛ばしながら言う。
「M4とSOPIIの能力はまだ付き合いが短いからあまり知らないけどSR16の本来の専門が潜入工作なら彼女がいるだけで成功の確率は高まるわ。G36。彼女達が防御システムを停止させ次第、他の部隊と共に攻勢に出るわ。戦闘の用意を怠らないで」
《了解しました》
ジャンシアーヌは指示を出し終えた後、疲れるとばかりに暫く眉間を押さえた後、再び司令室のモニターを見つめた。
その頃、SR16、M4、SOPIIの三名は混乱する鉄血の隙を突いて基地内に潜入、素早く見つからない様にそして時として静かに鉄血を仕留めて先に進む。
「出来る限り早く防御システムを無力化させるよ。SOPII。サプレッサーの付いてないそれで一発でも発砲したら私がぶっ殺すからね」
「分かってるよ……」
SR16のその言葉にSOPIIは不貞腐れ、M4は苦笑いする。
《M4さん。貴方の15m直下に大量のデータフローを確認しました》
M4はG36の知らせを聞いて横を見ると基地の出入口を見つけた。
「了解。入口を探します」
M4のそう言うとSR16の方へ視線を向け、SR16は頷くと見つけた出入口から侵入。
通路から鉄血が来ないか警戒しつつ突き進み、G36が言っていたポイントの部屋まで辿り着くとSOPIIが扉の隙間に手を入れて勢いよく抉じ開け、M4とSR16が素早く突入してクリアリングを行う。
「クリア。どうやら此処はこの基地の司令室だったようね」
「M4!此処にアクセスポイントがあるよ!」
M4はそう言って辺りを見渡し、SOPIIがアクセスポイントを見つけた所でM4がアクセスポイントに近付くと電子戦を開始した。
SR16は鉄血が来ないか辺りを警戒しつつ見渡すと司令室の荒れ具合によって過去に戦闘の余波があった事が伺えた。
「(鉄血は此処を奪い取ってから随分と経つみたいだ……鉄血との終わりのない戦争……誰が得をするのやら……)」
鉄血との戦争は多くの人命と汚染の無い安全な土地が失われた。
鉄血が脅威となり、グリフィンがそれを抑える事で戦線を保ち、自称忙しい正規軍はコーラップス汚染によってE.L.I.Dと呼ばれる症状を患った人間の対象を行う。
それだけ聞けば特に違和感は無い。
グリフィンが鉄血を抑えつつ厄介なE.L.I.Dは正規軍が請け負う互いに背後を守りあってこそ成り立つ戦略。
だが、長過ぎた。
幾ら正規軍でもグリフィンを含めたPMCよりも遥かに優れた装備と人材で構成されている以上、E.L.I.Dが脅威とは言えそこまで手こずるのかと思えば疑問が現れるのだ。
正規軍の対応なら鉄血は数日とは持たずに戦争を終結させられるとSR16は考えており、数年にも及ぶ鉄血の反乱に対して他のPMCが諦めたからと言ってグリフィンが全てが請け負うのかと思うのもまたおかしい。
例え成果こそ少なくとも主力をグリフィンとして他のPMCの戦力と連携すれば自ずと押し返せる筈だとSR16は自身に搭載されている演算モジュールの計算で叩き出していた。
「(戦争の歴史は悲惨だ……それを知ってもなお止まらないのは戦争の裏にある利益の為……か……)」
SR16は鉄血の戦争の闇を見つつ目を細めた時、視線を感じ取り、素早く銃口を向けた。
SR16が視線を感じた先には基地の奥に通じていると思われる扉が微かに開いている光景だった。
「SR16?」
SOPIIが異変に気付いてSR16に声を掛けるもSR16は警戒を解かずに銃口を向け続けた時、扉ごと吹き飛ばす様にエネルギー弾が司令室内に飛来した。
「伏せて!」
SR16がそう叫ぶとSOPIIが驚きつつも電子戦に集中して動けないM4を押さえる形で一緒に伏せさせるとエネルギー弾が司令室を荒らした。
「なになに!?鉄血が来たの!?」
「兎に角伏せて!M4に気を配って!」
SR16はそう叫んだ後、エネルギー弾が放たれている空間に向かって発砲。
フルオートでの射撃が終わるとエネルギー弾の弾幕も止んでおりSR16はリロードして警戒する。
「何なの!?いきなり頭に痛みがきたけど!?」
電子戦を終えたM4が額を擦りながら起き上がるとSR16は攻撃を受けた通路の脇に素早く近付いて立つと敵の気配が無いか探る。
「敵だよM4。私やSOPIIに察知されなかった。相当な手練れの可能性がある。それより防御システムは?」
「無力化しました。大した事じゃなかったわ」
「そう。M4。貴方はSOPIIを連れて任務を続けて。私はイレギュラーに対処する」
「ちょっと待ってください。それなら私達も」
「M4。AR15が貴方を待ってるんだよ?この手のトラブルは私に任せてちゃっちゃと迎えに行って。遅れたら後で散々に言われるよ?」
SR16はそう言って撃ってきた相手を追撃すべくSR16は基地内に入り込んでいく。