略奪者もとい避難民を殺害したその日、夕暮れの中、一機のヘリが663基地のヘリポートに降り立った。
プロペラが激しく回り風が吹き荒れる中、ヘリを降りたのはグリフィンの上級代行官のヘリアンだった。
「……此処に黒騎士がいるのか?」
「えぇ……話が着いているならいる筈です……」
「はぁ……行くぞ……」
ヘリアンはそう言って複数のグリフィン関係者を引き連れ、663基地の内部へと入った。
基地に入ったヘリアンが見たのは修理が行き届いていない人形達でヘリアンはこれでよく持ちこたえたものだと思いつつ指揮官の執務室に押し入る形で入れば……。
「あ、ヘリアン。遅かったね?」
「た、助けて……助けてくれ……!」
ヘリアンが見たのは指揮官の執務室に置いてあるデスクの上に座ってナイフを弄っていたSR16とボコボコに殴られ、腕を曲げられ、足がへし折られ、歯が何本も抜け落ちた酷い有り様のヴァレリーだった。
「……やり過ぎだSR16」
「そう?でも、ちょっとは気が済んだ」
「それは同感だ。この屑には横領や物資横流しの疑いがある。お前の告発により更に証拠は固まった……出来ればこんな状態でクルーガーさんの所へ連れていきたくなかったがな……」
SR16が行ったのはMP40からの依頼だった。
ヴァレリーの不正を暴き出し、告発し、今までヴァレリーがしてきた事の全てへの報復をする事だ。
報酬はヴァレリーがしこたま溜め込んだ一部の資金と物資。
SR16は承諾しすぐに663基地へ侵入、ヴァレリー一派の人間を強襲し、制圧。
ヴァレリーを捕縛した後、証拠となる物を全て根こそぎ見つけ出してクルーガーにメッセージを送り告発、依頼をグリフィンの正式なものに認定させた。
その後、監査としてヘリアン達が来るまでヴァレリーに対して物理的な報復に移った。
地位を奪い、完治が難しい痛みを与える……死んだ方がマシな報復だった。
ヘリアンはこれをグリフィンの社長であるクルーガーにどう言えば良いのかと頭を悩ませながら着いてきたグリフィンの関係者達に合図を送るとヴァレリーを連行した。
「痛い痛い!も、もう少し丁重に!?」
ヴァレリーは無理矢理に運ばれたせいで怪我の痛みが出たが関係無く運ばれていく。
SR16は仕事完了とばかりにナイフをしまってそそくさと去ろうとした所でヘリアンに肩を掴まれた。
「待て。お前に命令を出す。此処に来たのは次いでだ」
「えぇ……休みないの……?」
「少し黙れ……!よく聞け。お前にはS09地区794基地に臨時配属させる事が決定した」
「臨時配属?」
ヘリアンの臨時配属と言うその言葉にSR16は首を傾げるとヘリアンは頷いた。
「指揮官の名はジャンシアーヌ。最近になって指揮官として所属した新入りだ。だが、新入りとは言え、既に多数の鉄血を排除し、ハイエンドモデルのスケアクロウの撃破を成功させている実力のある指揮官だ」
「何でその新入りの下に着くの?」
SR16は不満げに言うとヘリアンは溜め息をつきながら答えた。
「ペルシカ女史の強い要望だ。此処では明かせないが重要な任務をジャンシアーヌに委ねている。その際、腕の立つ戦術人形を派遣すると言う矢先にペルシカ女史がお前を推薦した。それだけだ」
「ペルシカ……」
SR16はペルシカと聞いて顔をしかめた。
普段は見せない表情の変化にヘリアンは困惑を覚えつつ、仕事人の顔つきに戻る。
「悪い話ではない筈だ。お前がその指揮官に気に入られれば正式配属の可能性もあるだろう。いつまでも放浪して戦地を駆け回ると言うなら話は別だがな」
「私をそうしたのは他ならぬ貴方達だ。何とも……思い出せないから何でそうなったのか分からないけど……」
SR16はどうでも良さそうに言うとヘリアンの眉間に皺が出ている事に気付き、SR16は惚けた様な様子を見せつつ黙り込んだ。
「良いか……お前は本来なら問題のある人形として即、IOPに送り返し、跡形もなく消えていた存在だ。それをハーヴェル氏やペルシカ女史が止め、継続して使う事を条件により性能の高い人形を融通する事を条件にいさせている。それを忘れるな」
「はいはい……合コンの負け犬さん……」
「な・に・か!……言ったか?」
「何も?」
SR16の惚けた言葉にヘリアンの眉間がピクピクと動く中、SR16は執務室の出入り口へと歩くと。
「そんなに焦っても結婚出来ないよ」
「余計なお世話だ!さっさと行け!」
SR16の余計な一言にヘリアンは遂に怒鳴るとSR16はそそくさと出ていき、ヘリアンは深ーい溜め息を吐いたのだった。
_______
_____
___
SR16は補給後に息つく暇もなく臨時配属先となるS09地区794基地へとヘリで向かっていた。
「ジャンシアーヌ……ジャンシアーヌ……あ、これだ」
SR16は移動中のヘリの中で端末でジャンシアーヌの情報を調べていた。
ある程度のグリフィンの情報の閲覧権限はSR16を含めてどの人形にもある。
そして他にもジャンシアーヌを注目する発信された情報を含めればある程度の情報はSR16の元に入るのだ。
「ジャンシアーヌ。グリフィンに指揮官として所属してから日は間もない。新人指揮官としての戦闘において鉄血と交戦。各小隊を的確に指揮、鉄血部隊を撃破後、スケアクロウを撃破。新人としての技量の高さから期待の新人とされる。ヘリアンの言っている事は嘘じゃないか……」
「嘘だと思ってたのか?」
「いや……ヴァレリーを見たらね……確かな功績があってもそれが人格に影響したものとは限らない……その功績の為にさ……人形を棄て駒の如く使ったから……だったらどう思う?」
「そんな奴だったら俺が殴ってやるさ」
「クビになるよ。まぁ、本当にそんな奴だとしても臨時の私には関係無いしペルシカの要望だよ?下手な事をしたらそいつのクビの方が飛ぶ。ほっとけば良いよ」
SR16はどうでも良さそうに言うとジャンシアーヌの顔が写った写真を閲覧する。
指揮官の制服とベレー帽をキリッとした顔つきで着こなした女性の顔がそこにあった。
「如何にも指揮官って感じだね」
SR16はそう呟きながらヘリアンみたいな真面目な人間程度の存在だと予想しながら794基地へと向かった。
________
______
____
794基地に着いたのは朝日が昇り、外で散歩でもしたくなる様な爽快な晴れの日だった。
SR16が794基地で指揮官、ジャンシアーヌとの面談が始まった。
「……貴方が指揮官?マジで?」
「え、えぇ……そうよ……私が指揮官のジャンシアーヌ……よろしくね……?」
「ごめんなさい……指揮官様ったら寝坊しちゃいまして……」
SR16が見たのは皺だらけのシャツの一部がスカートから飛び出て、更にまともにボタンも閉めてないので谷間が少し見えていたり、髪がグチャグチャのボサボサ、化粧一出来ていない女性……ジャンシアーヌが後方幕僚のカリーナに連れ添われながら現れた姿だ。
「えぇ……」
ギャップが……ギャップが違い過ぎる……とSR16は端末の画面にあるキリッとしたジャンシアーヌと目の前のジャンシアーヌを見比べ大困惑した。
「……やっぱ帰る」
「あぁ、本当にごめんなさい!?指揮官様も早く謝ってください!?」
「ぐおッ!?」
カリーナは大慌てで謝りながらジャンシアーヌを無理矢理押さえて頭を下げさせた事で不意を突かれたジャンシアーヌは女性が出してはいけない声で頭を下げる姿にSR16は……。
「大丈夫なのかな……此処……」
SR16と指揮官、ジャンシアーヌの何とも締まらない出会いとなった。