何とも締まらないジャンシアーヌとSR16の出会いとカリーナの全力謝罪は終わり、基地内にある指令室までジャンシアーヌ達と共にSR16はやって来た。
「改めて私がS09地区794基地の指揮官のジャンシアーヌよ。貴方の話は……えーと……まぁ、色々と聞かせて貰ってるわ」
ジャンシアーヌはSR16の戦歴は受け入れが決まってからある程度まで把握していた。
鉄血との戦闘における目覚ましい活躍、単独での鉄血に対する隠密偵察と諜報工作そして破壊工作。
一見すれば非常に優秀な戦術人形ではあるがSR16の黒い噂はジャンシアーヌの軽い下調べですぐに露見した。
グリフィンの意に反する者の排除、民間人に対する虐殺、仲間の人形に対する破壊行為、要人の暗殺。
何れも穏やかでない証拠の無い黒い噂だった。
ジャンシアーヌはこの事をヘリアンに問えばヘリアンは沈黙を持って答えた事からジャンシアーヌはその黒い噂は事実なのだと認識せざる得なかった。
「SR16です。臨時配属ですが此処に来たからには貴方の力となります」
ジャンシアーヌの挨拶に対し、SR16はそう簡素に挨拶し返す。
どんな指揮官でも変わりはしない……SR16は指揮官と言う名の人間を何度も関わった経験がある。
全員ではなくても私利私欲に走る馬鹿や戦術そのものが御粗末な低能指揮官。
グリフィンが指揮官の増員をしてから更に酷くなっており、SR16の過酷な
特にヴァレリーの様にSR16の存在を知り、都合よく使われて都合の悪いものを消させられるのだ。
故に優秀だと噂のジャンシアーヌがどんな過酷で厄介な仕事を与えてくれるのかとSR16は静かにジャンシアーヌを見つめながら指示を待つ。
それがSR16の存在意義であり、仕事だからだ。
「そうね……貴方は優秀だと思うけどどんな事が得意なの?」
「戦歴見ましたよね?」
「ま、まぁ一応……でも、これから小隊の一員で動く事になるのだから貴方の得意な事を活かせられる様にしないと」
「何故、小隊に入れるのですか?」
「何でって皆で戦うからよ?」
「何故、皆で戦うのですか?」
「え?」
「え?」
二人は思った……話が噛み合わない。
ジャンシアーヌはSR16を他の人形と同様に小隊に編入させて送り出すつもりだった。
SR16はジャンシアーヌの仕事を受けて単独での任務に当たるつもりだった。
そう……致命的に二人の価値観が異なると言う事態になったのだ。
「いやいや!一人で行かせないから!」
「私はそう言う役目を与えられた人形です。小隊との連携は考慮されていません」
「だからって一人で戦いに挑ませたりしないから」
「小隊なんて私には邪魔です」
「あんたね……!」
ジャンシアーヌはとんでもない頑固者を拾ってしまったと頭の痛め、眉間を押さえた。
小隊の重要で必要な事は能力だけでなく鉄血との大軍と戦うのに対し、各人形の特性に合わせた連携も必要となる。
ARやSMG、RF、HGにMG、SG。
銃は同じ様で違い、またIOPの人形達の銃は殆んど50年前の骨董品で構成され、人形達は元々は民生用の人形が主軸となっている。
謂わば骨董品の武器を民兵に持たせて戦わせているのがグリフィンなのだ。
射撃管制コアとスティグマシステムで強化されているとは言え、元々の民生用の人形の身体であるIOPの人形達がそのまま頑丈になる訳ではない。
それに対して鉄血はハイエンドを除けばIOP製の人形に能力でこそ負けるが装備する兵器は最新鋭であり、グリフィンが拮抗状態で苦戦するのもハイエンドの存在と鉄血兵に装備される兵器及び奪われた技術からなる強力な重火力の兵器の存在があったからだ。
ジャンシアーヌとしてはそんな戦況を考え、人形達が極力傷付かない戦い方に重きを置いていた。
全員が無事に帰ってきて欲しいと願ったからだ。
だが、目の前にいるSR16はそんなジャンシアーヌの考えなど知らない……いや、実際に知らない故にジャンシアーヌを悩ませた。
二人の間にピリピリとした空気が流れる中、そこで通信が入った。
《ハロー。SR16が着任……何、この空気?》
「あ、ペルシカ……」
「ペルシカさん……」
通信を繋げて来たのはペルシカで二人の緊迫した状況にペルシカは唖然とした。
そろそろ到着しただろうと言う感覚で繋げた通信の先でジャンシアーヌとSR16がピリついた空気を流し合ってるのだから無理もなかった。
ジャンシアーヌは一通り、何が起きたのかペルシカに説明するとペルシカは罰が悪そうな顔になった。
《あぁ……ごめんね~……その子、今まで一人で活動してたからさ~……他の人形の子達と戦った事があまり無いのよね~……》
「戦歴を見れば分かりますが……何故?」
ジャンシアーヌは疑問に思った事をペルシカにぶつけた。
SR16が単独で任務に挑む理由……それだけがジャンシアーヌには分からなかった。
何か大きな問題を起こしたからと言うのは分かるがそれが分からない。
故に推薦してきたペルシカならばとジャンシアーヌは問うとペルシカは。
《それはグリフィンの意向だしねぇ……私はこの子を使ってくれるなら別に良いの。深い理由はないわ》
「……そうですか」
嘘だ。
ペルシカは何かしら知っているとジャンシアーヌはすぐに察したがそれ以上の追求まではしなかった。
それ以上を追求した所で面倒事が増えそうだと考え、ジャンシアーヌは黙ったのだ。
小隊と組ませたいジャンシアーヌと単独で動きたいSR16。
ギスギスした空気にペルシカはうーんと唸りながら手の平を拳で叩くと。
《そんなに気になるなら戦えば良いじゃない》
「戦うとは?」
《模擬戦よ。貴方の指揮する人形の小隊とSR16一人で。SR16に有益だと示せれば彼女も納得できる筈じゃない?》
ペルシカのその言葉にジャンシアーヌは考えながらSR16を見る。
SR16は相変わらず沈黙を保ち、何を考えているのか分からない無表情のままでジャンシアーヌを待っていた。
「……はぁ、分かりました。それで良いわねSR16?」
「指揮官が望むなら……」
SR16は拒否はしないとばかりにそう返答する。
《なら、公平を期して私はルールを決めるわね》
「随分と肩入れしますね……」
《何の事やら》
ペルシカはそう言って誤魔化し、ジャンシアーヌは溜め息をついた。
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SR16は目を開けるとセカンダリレベルと呼ばれる電子空間に来ていた。
無機質な空間が広がる中、ビーとけたたましい音と共に無機質な空間は森林地帯になるとペルシカの声が響いた。
《今回の模擬戦の説明をするわね。今回の模擬戦はジャンシアーヌ率いる小隊とSR16単独との戦闘よ。ルールは簡単。先に相手を倒す事。この場合はSR16が小隊を壊滅させるかSR16が戦闘不能になるかで勝敗が決まるわ。此処はセカンダリレベル内だから弾が当たっても刺されても現実の本体が壊される心配はないから思う存分に戦えるわ》
SR16はそれを聞いて自身の銃を見てカチャカチャと動かし、チェンバーチェックをした。
《此処を現実の戦場と見立てて頑張ってね。それじゃ……模擬戦開始ね》
ペルシカが言い終わった時、再びビーと鳴り響き、SR16は銃を構えて駆け出した。