SR16の遠距離からの狙撃はイングラムが少し頭を下げた事で失敗した。
「あ、危なッ!?」
イングラムは背を屈ませて片手で狙撃されかけた頭を触れながらもう片方の手で牽制射撃を行った。
MP5もそれに加わって発砲を開始し、G36は通信を開いて報告する。
「此方、G36!敵の狙撃です!現在、牽制を行っていますが敵の位置が掴めません!発砲音も掴めませんでした!恐らくサイレンサーを装着させています!」
《相手はサイレンサーを使ってるとなると出所を掴むのは難しいわね……でも、聞こえなかったとなると相応の距離にいるのは分かったわ。撃たれた方向は分かるわね?》
「今、撃ってるんですから分かるでしょ!?」
イングラムのその言葉にジャンシアーヌは眉間を押さえ、カリーナも苦笑いするとジャンシアーヌは指示する。
《そのまま牽制を続けて。具体的な位置が掴めないとまた狙撃を受ける事になるから身を隠しつつ、探りを入れて》
「分かりました御主人様」
G36はジャンシアーヌの指示を受け、身を隠して牽制しつつ探りを入れる。
その様子を撃たれながらスコープを覗いて確認したSR16は僅かに移動しつつ、G36達が隠れている場所に何度も発砲する。
撃たれて動いた所を撃つ……SR16はそう狙うもG36達はしきりに遮蔽物となっている木々から出てこない。
「成る程……並みの相手じゃないのは確かだね……」
SR16はそう呟きながらMP5のはみ出た頭に狙いを定めて狙撃しようとした時、背後に気配を感じとり、そのまま銃口を背後に回した。
「ッ!?」
「久し振りですね。SR16」
SR16が銃口を向けた相手はグリフィンでも勇名を轟かせるAR小隊の隊長……M4A1だった。
グリフィンの提携相手であるIOPお抱えの16LAB製の特別仕様として作られた人形の1体であり、M4はそうした特別仕様の人形達の小隊であるAR小隊の隊長を勤めている。
普通なら遭遇する以前に呑気に模擬戦に参加する程、暇をしている訳がないくらいには優秀な小隊なのだ。
「何でこんな所にいるの?」
「此処にいる以上、やってる事は分かってますよね?」
「……他は?」
「……私だけです」
SR16はM4のその返答に首を傾げるしかない。
AR小隊はM4A1、M16A1、AR-15、M4 SOPMODⅡと言った面々で構成され、作戦で別行動をする事はあっても隊が離れる事は無かった。
M4のみで尚且つ他が見当たらないと言う状況にSR16は答えを得ようとした所でM4が発砲、SR16は素早く避け、木の影に隠れると反撃に発砲する。
SR16は木を上手く使って弾丸を避けつつ、M4の隙を突き続けるのに対し、M4も木に隠れながらSR16の攻撃のタイミングを掴みつつ撃つ。
互いに激しい撃ち合いを行い同時にマガジンを交換する。
「少しは成長したね」
「いつまでも新人時代の私じゃありませんよ」
「ふーん……なら、これならどうかな?」
SR16はそう言って木の影から飛び出し、M4は驚きつつもすぐに撃とうとした所でSR16が発砲、牽制された。
M4は牽制されながら再びサイトを覗いて撃とうとした所でSR16がナイフを手にすぐ近くまで迫っていた。
SR16はM4に反撃を許すまいとナイフの届く距離に摘め、M4の銃のバレルを残された手で押さえて銃口が上がらない様にするとナイフを振るった。
「相変わらず目茶苦茶ですね!!」
M4はそう悪態つきながら自身の銃を手離し、後方に下がると拳銃を手にして発砲した。
SR16はM4の拳銃の弾を避け、M4の拳銃を持つ腕を掴み、捻り上げてもう片方の腕で顔に一発殴りつけるとそのまま服を掴んで背負い投げをして地面に叩き付けた。
「ぐはッ!?」
背負い投げをまともに受けたM4は重い衝撃によって上手く動かない身体を起こそうとするとSR16がM4の首にナイフの刃を当てた。
「まだまだ未熟だね……さぁ、おねんねの時間だ……」
SR16はそう言ってM4の首を切り裂こうとした時、M4は笑った。
「確かに私は未熟ですが……貴方は慢心しましたね……?」
「ッ!?」
SR16はM4の言葉を聞いて顔を上げた時、G36達が姿を現して銃口を向けていた。
「M4!!」
「撃ってください!彼女が反応する前に!!」
M4のその言葉にG36達は一斉に発砲した。
激しい銃声が鳴り響く中、SR16は辛うじて反応し、すぐ近くの木に隠れて拳銃を手にした。
「さっきのお返しだ!」
「無駄撃ちしないでイングラム!このまま回り込むよ!」
MP5のその言葉を聞いてイングラムはMP5に合わせながら牽制しつつ両側から回り込む。
SR16はそれを見てMP5側に飛び出し、拳銃の銃口で勢いよく殴り付け、そのままイングラムに視線を向けて三発発砲して当てた。
「イングラム!」
G36は撃たれたイングラムを援護する為に銃口を構えるとSR16がMP5の首を片腕で絞めながら盾にしつつ拳銃を構えていた。
「撃てる?」
「くッ……!」
SR16の挑発とも取れる短い言葉にG36は悔しげに銃を構えるしかなかった。
卑怯者……そう呼ぶのは簡単だが相手は1人しかいない。
1人しかいないからこそ、使える手を使って来ていると思えばG36は文句も言えない。
「(本当に手強いですね……!)」
G36は目の前にいるSR16が自身との圧倒的な実力差があるのか実感させられた時、イングラムがナイフの1本を抜いてSR16に迫った。
「うおぉッ!!」
「……ふん」
SR16は落ち着いてMP5をG36に投げつけるとG36はMP5を受け止める間も無くぶつかり倒れた。
その間にSR16は空いた手にナイフを持つと拳銃とナイフを構えてイングラムを迎え打った。
イングラムは激しいナイフの攻撃を仕掛けるがSR16は掠りもしないとばかりに軽く避けて見せながらイングラムの動きを見続ける。
「大振りにナイフを振るな。当たるものも当たらない。ナイフで切り続ければ何れ相手は死ぬ。こんな風にね」
SR16はそう言ってイングラムの横に大振りに振るわれたナイフを屈んで避けるとそのまま軽く、小さな動作でイングラムの腹辺りを切った。
「痛ッ!?」
「ほらほらボサッとしない」
「え?ちょッ!?」
イングラムは驚いて立ち直ろうとしたがSR16はそのままイングラムが立ち直る前にナイフを振るった。
横、縦、斜め、突き。
何れも軽く、小さな動作ながら確実にダメージを与えてくる攻撃であり、イングラムの身体は切り刻まれ、人工血液が流れ続ける。
「イングラムから離れろ!」
MP5は立ち直ってSR16に発砲する。
しかし、SR16はそれを待っていたとばかりにイングラムを掴んで盾にしてしまった。
MP5の弾の大部分はイングラムが受けてしまい、MP5はそれを呆然とした様子で見ていた。
「そ、そんな……私……」
模擬戦とは言え仲間を誤射してしまったMP5はショックを隠しきれないでいるとSR16はそれを見逃さず素早く接近するとそのままアッパーカットでMP5を殴り飛ばしてしまった。
殴り飛ばされたMP5は動かなくなり、イングラムと共に機能を停止させた。
その様子を見ていたジャンシアーヌは冷や汗をかく中、カリーナが報告を入れる。
「MP5!イングラム!共に大破判定!戦闘の継続は不可能です!」
「思った以上に強いわね……ワンマンアーミーでやって来たのは確かだって事か……」
ジャンシアーヌは苦虫を噛んだ様に表情を歪めるとペルシカは満足げな笑みを見せている。
《強いでしょ?私も最初は此処まで強くなるなんて思わなかったのよ?》
ペルシカのその言葉にジャンシアーヌは無言を貫く中、最後の一手を入れるべく通信を入れた。
その頃、SR16はG36と立ち直ったM4を相手に立ち回って戦っていた。
激しい撃ち合いと格闘戦が混ざり合う戦闘にSR16は涼しい顔でこなし、M4とG36は疲れが見え始めていた。
「……しつこいよ二人共?」
「貴方が渋いだけです……!」
M4は息を荒げながら拳銃を構えながら言う。
M4のスティグマではない拳銃の命中精度は残念ながらお世辞だも上手いとは言えない。
だが、近距離なら十分当てられる程の腕はある。
当てられなくても牽制しつつG36を支援して戦えれば作戦通りに事を進める事が出来るとM4は考えた。
だが、SR16は自身のスティグマされている武器に頼らないで戦う術として他の武器も使用する前提で訓練されている。
それは今、SR16の手にする拳銃など使いなれていると言っても過言ではなく、近距離から中距離まで余裕で当てられる。
そして近接戦はSR16の独壇場。
下手な近接戦はM4とG36の敗北を決定すると言っても良い程だ。
睨み合いになる中、M4が拳銃を発砲、SR16は身体をずらして撃ち返し、M4の拳銃を持つ腕に当てた。
「ぐッ!?」
「M4!?」
「仲間に構ってる場合?」
G36はその声に気付いて視線を向けるも既にSR16がナイフを手にしてG36の首を狙っていた。
「終わりだ」
SR16はそう言ってナイフを振るった時、G36はそれを待っていたとばかりに自身の銃を捨て、ナイフの振るわれた腕を受け止めて掴んだ。
「ッ!?」
「……終わりなのは……貴方です!!」
G36のその言葉にSR16は掴まれた腕を振りほどこうとした時、SR16の頭に一発の銃弾が当たった。
「嘘でしょ……?」
SR16はその言葉と共に地面に倒れた。
《模擬戦終了!はい、皆お疲れ様ね~》
倒れたSR16はその声が聞こえた所で意識を落とした。