794基地からヘリに乗ったSR16達はM4の座標の位置を目指して飛び立った。
暫くの空の移動の中、SR16はジャンシアーヌからのブリーフィングを聞きながら何度も装備のチェックをし、戦闘に備える。
《M4の情報によると今回の救助対象はこの区域内に潜伏している。目標は此処等一帯の鉄血を殲滅し、包囲されたAR小隊メンバーを助け出す事。偵察の結果、臨時のステーションが3から5ヵ所まで存在する事が判明した。つまり理論上は数百体の鉄血人形が活動できるけど衛星のスキャンの結果を見るにそこまで数は多くない。これは偵察報告と異なるわ》
「……上からしか見てないからでしょ?」
《その通りよSR16。恐らくはターゲットを探す為に多くが建物の中に入った影響でスキャンを逃れたと思うわ。安全の確保も兼ねて見えない奴等も含めて排除する。着陸地点に着いたらすぐに部隊を展開させてダミーを起動させて散開する事》
ジャンシアーヌのその言葉を終えるとヘリは着陸地点に到着し、SR16達はヘリを降りると周囲に展開し、鉄血がいない事を確認するとダミー人形の入ったケースを取り出してダミー人形を起動させた。
「ダミーなんて久しぶりだよ……」
SR16はそう言って自身のダミーを複数起動させた。
帽子の被っていないSR16が起動され、他の面々もダミーの起動を終えるとジャンシアーヌの作戦に基づいて行動を開始した。
《第一部隊は330方向。第二部隊は270方向。第三部隊は300方向。各部隊は互いが視認出来る距離を維持せよ。前進!》
ジャンシアーヌの指示に従いSR16はダミーを率いて友軍の人形達と共に突き進む。
道中、G36が鉄血を発見し、鉄血に悟られない様に且つ、素早く動く中でM4が声を挙げた。
「指揮官。お聞きしてよろしいでしょうか?確かに鉄血の数はかなりのものですが私達の戦力なら十分対象可能な筈です。何故、直接攻撃を仕掛けないのですか?私はAR15達を」
「M4。黙れ」
ジャンシアーヌがM4を諌める前にSR16が低い声と共に睨んだ。
「戦場に私情を持ち込む事は禁じ手だって教えたよね?それに今はあんたが指揮を取ってる訳じゃない。指揮官が指揮を取っている。指揮官がいる以上は私達は指揮官の命令に従う。余計な事を考えて味方の全体のペースを崩すつもりならそのまま引き返して帰れ」
「……すみません」
SR16に咎められたM4は不満を抱きつつも謝罪し、ジャンシアーヌの指示通りに動く。
その様子を見ていたジャンシアーヌはSR16の印象を変えた。
「意外と言う事を聞くのね……」
「不安でしたが杞憂でしたね指揮官様」
「そうね……彼女の最初の印象とは別に割り切りが早い。あれだけ単独で動く事に固執してたのにいざ、実戦になれば指示に従って戦う……本当に優秀な証よ……」
「ですが癖が強過ぎて不安になりますよね……」
カリーナのその言葉にジャンシアーヌは唸った後、次の動きを指示する。
SR16達は目標地点に到達するとそこで待機し、次の命令を待つ段階に入った。
「数は一丁前か……」
SR16は双眼鏡を片手に隠れながら鉄血を見ているとG36はSR16の双眼鏡を見つめているのに気付く。
「気になる?」
「えぇ……視認での確認も必要ですがスキャンや衛星からの情報を基本的に使いますからね……」
「ハイテク機器に頼るのも良いけどいざ、使えないとなると困るよ?原始的でも視認での偵察の有無で作戦成功率は上がる。便利な機械を使えば戦いに勝利できるなんて迷信なんだよ」
SR16はそう言って双眼鏡を再び覗くとM4が話し掛けた。
「AR15達の姿がありましたか……?」
「M4……」
「分かってます……!ですがこの数です……遅かれ早かれ見つかります……彼女達の補給だってままらない中で時間を掛けたりしたら……」
「AR小隊って何時からそんなに情けなくなったの?」
SR16のその言葉にM4はキッと怒りを露にした様な表情でSR16を睨むとSR16はあくまで冷静に振る舞う。
「高々鉄血の量産品相手に見つかって始末されたなんてさ……AR小隊への恥だし言われるのは侮辱だ。M4。ハッキリ言わせて貰う。AR小隊は他の小隊よりも強いし、いざとなった時の行動の中に無謀なんてものは入れていない。M4A1。隊長なら隊長らしく自分の隊員を信じたらどう?」
SR16のその言葉にM4は項垂れ、過去の言動に反省を覚えた。
その光景を見ていたG36は微笑むとそこへ別の部隊として動いていたイングラムとMP5、FF FNCが合流した。
「やっと着いた~……」
「指揮官。合流したよ」
3体はSR16達と同じ様に隠れて待機するとFF FNCはチョコを放馬る。
SR16はそれをジーと見つめ始めるとFF FNCは居心地悪そうな顔になるとチョコを差し出した。
「た、食べる……?」
「うん」
「「「(貰うんだ……)」」」
こう言う時、断るのがお約束的な会話なのに普通にチョコを貰ってマスクをずらして食べ始めたSR16に意外だと言わんばかりに見るG36とMP5、イングラムは見つめ、M4は慣れてるとばかりに興味無さげだった。
「チョコはカロリー補給に適してるからね。成体モジュールを維持するのに適してるし、何ならちょっとした楽しみになる。アメリカなんてそれを第三次世界大戦の時にも利用して大量に生産したくらいだよ」
「いや、あれは……思い出しただけでも口が……!」
SR16は満足そうな笑みを浮かべ、M4は何を思い出したのか口を押さえながら女の子がしてはいけない顔になった。
「な、何を経験したのでしょうか……?」
「き、きっと知らない方が良い筈よね……?」
「アメリカの軍用チョコってどんなのかな?」
「FNC?M4の顔見てますよね?見てますよね??」
SR16の無表情ながら満足げな雰囲気とM4の何かを思い出して口を押さえ続けてとんでもない表情になっている事に各々の反応を示しながら約1名除いて困惑した。
時間が過ぎ、日が暮れようとする中、指揮官からの通信が入った。
《第三部隊。貴方達の大好きな鬼ごっこの時間よ。思いっきり暴れて鉄血共を誘き出しなさい!》
「へぇ……」
通信を聞いたSR16は聞こえとしてはあからさまに無謀な陽動を指示した様に聞こえるがこれが普通ではない事を感じた。
会う前と会った後のギャップが違い、だらしなさそうなイメージはあるジャンシアーヌだがSR16は模擬戦以降、ジャンシアーヌの指揮官としての能力を認めていた。
犠牲は出たが確実にSR16を倒す為に狙撃手を悟らせず、悟らせてもヘイトを向けさせないまま倒す手段を構築し、SR16に初めて黒星を与えたジャンシアーヌの能力は非常に高いと判断した。
SR16の期待通りの指揮官ならジャンシアーヌは第三部隊の能力をフルに発揮できると考えに至ったのだ。
SR16は第三部隊の陽動が完了するまで静かに待機する中、鉄血が鉄橋付近まで引き寄せられると。
《今だ!C96!照明弾!》
ジャンシアーヌの合図でC96の照明弾が発射され、潜んでいたMG部隊が攻撃を開始。
RF部隊の援護射撃も加わって鉄血は大きな被害を受けていく。
《マシンガンはダイナゲートを。ライフルはヴェスビットを狙え》
絶え間ない弾幕によって鉄血が薙ぎ倒されて行く中、罠だと気づいた鉄血が後退しようと下がり始めた。
《よし。予測通り連中は方向を変えた。ARもSMG小隊。貴方達の出番よ。そちらに向かった鉄血共を片付けてしまいなさい》
ジャンシアーヌのその命令に待ち兼ねていたSR16達は銃を一斉に構えると鉄血に向かって攻撃を開始した。
鉄橋で挟撃された鉄血は数を減らしていき、数では鉄血が優勢であったが今ではジャンシアーヌ率いる小隊達の優勢へと逆転した。
SR16は発砲して鉄血を撃破し続け、弾薬が無くなったマガジンを交換しながら格闘でも戦果を挙げた。
長い戦いが続く中、やがて戦闘は沈静化されていきそして静かになった。
漂う硝煙と転がる薬莢、大量の鉄血の残骸だけが残された戦場をSR16は見渡しつつM4を見つめた。
M4はジャンシアーヌとはなしているのか無線を使っており、SR16としては何の話をしているのかと思いつつも鉄血の残党がいないか周囲を軽く見て回った。
あまり仲間から離れるのは得策ではなく、ましてや1人で行動するなと言うジャンシアーヌの厳命もある以上、SR16は出来る範囲での行動を行う。
「SR16」
SR16は呼ばれて視線を向けるとジャンシアーヌとの連絡を終えたM4がいた。
「なに?」
「AR15とSOPIIとの合流地点に向かいます」
「分かった。さっさと迎えに行ってそして帰ろう。疲れた」
SR16はそう言って慣れない仲間との戦闘に疲れを覚えつつ任務を終わらせる為にAR15とSOPIIとの合流地点へとN4達と共に向かった。