カトレアさんが強過ぎて全く長い話にならなかったので短いダイジェスト風味で1巻は終わりです。次は2巻に飛びます。
「着きましたね」
「うっぷ…」
小猫ちゃんと木場が廃教会に着くのより、俺を掴んだ先輩が到着する方が早かったようで辺りには先輩と俺しかいない。
そりゃあんな戦闘機も真っ青な速度で来たらそうでしょうね……それよりも俺は空中で先輩に地味にブンブン振られたせいで吐き気が……。
「ところで兵藤さん?」
「は、はい!」
先輩の様子が可笑しい。と言うよりも表面上はいつもと何も変わらないんだけど、有無を言わさない凄みどころか隣に立っているだけでピリピリと肌が小さく痛みを感じる程だ。そのお陰で吐き気も引っ込んだ。
「あなたを銃で射った神父の特徴を細かく教えてくれませんか?」
「あ、はい!」
クソ神父の事を思い出しながら先輩に特徴を話し終えると、先輩の指先に莫大な魔力が集中して、一瞬だけ小さな蒼い光が灯る。
余った魔力が水の球に変わり、先輩の周囲をミルククラウンのように規則的で綺麗な形で回転していた。
その直後、カァオ!という特徴的な謎の音と共に、構えた指先から一筋の光線のような水が噴射され、ドアに小さな穴を開けた。
え…? え……?
◆◇◆◇◆◇
音のわりに余りに地味な光景に兵藤さん達はハテナを浮かべているようですね。
私はそのまま廃教会のドアを蹴破り、中に入りました。そして、思い描いた通りの光景になっていることにほくそ笑みます。
小猫さんと木場さんはまだ到着に時間が掛かるようなので先にコイツだけは潰しておきました。
「お前は……!?」
私に続いて入った兵藤が声を上げます。
そこには腹部から夥しい量の血を流し、膝を突きながらこちらを睨み付けるクソ神父さんが居ました。
「今の極細のびーむは扉、椅子、神父、壁、山、空と一直線に抜けたわけです」
「えげつないですね…」
「褒めても水ぐらいしか出ませんよ兵藤さん。ついでに私ぐらいの悪魔になると耳を済ませば、心音で生き物のだいたいの位置と体格はわかるのですよ」
私は兵藤さんから意識をクソ神父さんに向けます。彼は傷口を押さえながら睨んで来ますが、最早戦闘どころか会話にも激痛が伴うでしょう。まあ、そうなる場所を撃ったからなのですがね。
「それはそうとクソ神父さん。話に聞けばpepper君も真っ青な程、生意気で小癪な軽口を叩き続けてくれると聞いたのですが案外静かなのですね。何処か身体の調子でも悪いのですか?」
「テ、テメェ……!!」
「貴方には私はそんなに怨みがありませんから血管や臓器が集中している場所にも当てませんでした。そのまま、何か行動を起こすのなら片手間で殺します。ですが、尻尾を巻いて逃げるならどうぞご自由に、止める理由もありませんからね。ですが、仏の顔は3度までとも言いますし、釈迦に習って私も今はそうしてみましょう」
「このクソア……ガアッ!?」
翼の1枚を棘で出来た鞭のように変形させ、クソ神父さんの身体を軽く打つ。それにより、身体を覆う布と皮膚の表面が弾け飛びました。
「これで2度目です。逃げる以外の行動するなら殺すと言ったハズですよ?」
大して危害を加えたつもりはありませんが、地面に蹲り始めたクソ神父さんに、私は血の滴る傷口をそこそこ体重を掛けて踏みました。
「あ……グガッ!? がぁぁあぁ!?」
「喚くな、喘ぐな、睨むな。高々人間1匹風情が図に乗らないでください」
暫く傷口の周囲を重点的に踏んでいると蠢く力すら無くなったのか、次第に声が聞こえなくなり、痙攣し始めてしまったようです。
「では今度こそさようなら。ボロ雑巾のクズ神父様。お出口はあちらです」
私はクソ神父さんをリフティングの要領で一度蹴りあげてから身体を一回転させて、もう一度蹴りを入れます。彼は高所に設置されていたステンドクラスをぶち破りそのまま外へと飛んでいきました。
「アイツ死んだんじゃ……」
「それならそれで構いませんよ。元より相手も殺すつもりで居たのですから。それに私は悪魔です。人間の遣り方で済ませたいのなら警察でも呼んだら如何ですか?」
「それは…」
「最終的に己の力以外は何も役に立たないのですよ。これもう小さな戦争です。
とは言ったモノの戦う前に兵藤さんを脅しても仕方ありませんね。
「まあ、今回は私がいますから兵藤さんにとっては
そこまで話したところで廃教会に小猫さんと木場さんが入って来ました。
◇◆◇◆◇◆
結論から言えば堕天使達は辻堂先輩が全部一人でやっつけてしまった。俺と小猫ちゃん達ははぐれエクソシストを相手にしていただけだ。
アーシアもまだ神器を抜かれる直前だったみたいだけど、開幕に辻堂先輩がした悪魔の翼の変形攻撃に縛り付けていた鎖が耐えれるハズも無く、簡単に救出する事が出来た。
アーシアは小猫ちゃんが部室に連れて行き、今は主犯格の中級堕天使のレイナーレひとりだけが廃教会の外に転がされ、それを辻堂先輩が相手をしている。
「…あ…あがッ……」
「そろそろ終わりにしましょうか」
既に全身が血に濡れているレイナーレを余所に、辻堂先輩の手に超圧縮された魔力で構成されたトライデントが握られた。
「ゆっくり3つ数えます。それまでに何処へなりと逃げなさい」
「た、助け…」
「さーん」
先輩が投擲するために逆手にトライデントを持ち、矛先をレイナーレに据える。
「し、仕方なかったの! 上からの命令で…!」
「にー」
トライデントに更なる魔力が上乗せされ、蒼い煌めきを帯び始めた。辻堂先輩から溢れる魔力の余波が周囲の草木を雨上がりのように朝露で濡らす。
「う、うわぁぁあぁぁぁ!!?」
「いち」
半狂乱になりながら空へ飛び出したレイナーレ。辻堂先輩は非常に遅くカウントしている。そして、30秒程経過したところで最後の言葉が紡がれた。
「ゼロ」
その瞬間、辻堂先輩の姿がブレてトライデントが俺の視界から消滅する。そして、トライデントは遥か先にいたレイナーレの堕天使の翼だけを貫く。
翼を失ったレイナーレは遥か高い空から真っ逆さまに地上へと墜落していった。
「堕天使にはお似合いの最期ですね」
「…………」
「…………」
処刑現場のような一部始終を見ていた俺と木場は絶句するばかりだ。いや、言葉に出無いこんなの。
「ああ、兵藤さん。あの堕天使をダッチワイフ代わりにでもしたかったですか? それなら勿体無い事をしてしまいましたね」
「そこまで堕ちて無いですよ!?」
「あはは……なんというか…副部長が尊敬している理由がわかったよ」
ひとつわかった。ゲームでも現実でも強過ぎるというか、レベルが高過ぎるキャラを使うと緊張感も何も無くなってしまうらしい。辻堂先輩は間違いなく俺の中での最強ランキングトップを独走状態だ。
俺は極力自分の事は自分でやるようにしようと決心した。