キノの旅ーthe Another Beforeー 作:時雨 照
キノとエルメスの会話において、基本的にカギカッコのさいごに「。」がついているのがキノ、ついていないのがエルメスです。あと、エルメスは所謂バイクです。
大きな国の木の下で
二十代前半ほどの、ホルスターにハンド・パースエイダー(パースエイダーは銃器のこと。この場合は拳銃)を入れて腰に吊ったキノと、色々な荷物で満載になったモトラド(二輪車のこと。空を飛ばないものだけを指す。)のエルメスが城門に向かって走っていました。
キノとエルメスは大きな国の城門で入国審査を終え、国の中に入りました。入国審査は機械でセルフでするものでした。
「変だね。人が全然いない。」
「キノ、石碑みたいなのがそこらじゅうにあるよ」
石碑の内容は、『この国はかつてさまざまな野菜や果実が実り豊かだったが、ある時一際大きなきが生えて周りの栄養を全て吸い尽くしてしまった。畜産などをしていなかったこの国は次第に人が減っていった。残った我々も大きな木の下で命を断つつもりだ』といったものでした。
「なんでもっと待たなかったんだろう」
「じゃあ、それを知るためにもその大きな木とやらのところに行ってみようか。」
キノとエルメスは木の下につきました。
木は小高い丘の上に悠然とたつ広葉樹でした。
木の下にも石碑がありましたが、それは一際大きなものでした。
それにはこう書いてありました『大きな国の木の下で眠る 108人』
「木の下で冬眠してるのかな」
「そんなわけないでしょ、クマでもないんだから。人間は冬眠できないんだよ、エルメス。」
「そうかなぁ、人間も頑張れば冬眠できると思うけどなぁ」
「仮に冬眠できるとしてもそれが理由じゃないけどね。」
「なんで?」
「さっき通った道で何読んだかもう忘れたの?」
「まさか。ちゃんと覚えてるよ。石碑でしょ」
キノとエルメスの声が葉の音にかき消されそうになります。
すると、突然キノが立ち上がりエルメスを移動させます。
それから、キノは数秒目を瞑るとエルメスを押して城門へ向かって行きました。
「キノがそんなことするなんて珍しいね」
「まあ、もう少し待てばまた野菜が育つようになったのに、かわいそうだなと思って。それに、僕だって生きるために殺してるだけで、しなくていいならそうしたくないしね。」
「キノが人間らしいこといってる」
僕をなんだと思ってるんだ、とキノがぼやきながら城門をくぐります。
先程までキノがいた場所には優しい木漏れ日が、誰かを包むように地面を照らしていました。
木の下には豊かな芝生が生え、そこから数百メートル離れた場所にはトマトやみかんなどが実っていました。
大きな国の木の下は、再び静寂に包まれました。
作者の時雨 照です。
時雨沢恵一さんの「キノの旅ーthe Beautiful Worldー」の二次創作といった形で書かせていただきました。初めてなので文章が汚い可能性がありますが、ご了承ください。
さて、これに出てくるキノですが、原作によく出てくる方のキノではありません。原作によく出てくる方のキノを助けたキノ(原作の『大人の国』参照)です。
したがって、この話は原作の『大人の国』につながる終わり方をする予定です。