キノの旅ーthe Another Beforeー 作:時雨 照
タチバの国
あたりは純白に輝く雪景色。そこに似つかわしくないような爆音を一台のモトラド*1が響かせています。
ただ、その音とは裏腹にまったくもってモトラドは進んでいません。
「しまったなぁ…ちょっとスピードを出しすぎちゃった……」
運転手がぼやきます。雪を蹴るタイヤはすっぽりと雪に
「エルメス今からバイク*2になれない?」
「無理だねー あと、なんとかしてここから出ないともう食料も燃料ももたないよ? まぁ、ボクは食料必要ないから別にいいんだけどね?ほら、キノがかわいそうじゃん?」
このモトラドは呑気に言っていますがどうやら危機的状況のようです。
「じゃあエルメスは置いて、徒歩で越冬できそうな国を探そうかな…」
「ウソウソ、謝るからっ!置いてかないでぇ〜っ!」
こんな状況なのに二人は楽しそうです。
微笑みながらキノがエルメスから降りると、押したりハンドルを左右に忙しくうごかしたりしました。
そうこう数十分格闘していると、たまたまいい角度になったのかやっと抜けました。その後はもう引っ掛からなそうな場所にエルメスをセンタースタンドを立てて固定し、エンジンを切って昼食の用意を始めました。
といっても、携帯食料なので用意は飲み物くらいなものです。粘土のような見た目と食感の携帯食料をモソモソと食べ、それをお茶で流し込みます。
昼食を食べ終わると、さっき苦労して雪から引き抜いたエルメスに乗り、再びエンジンをつけて走り始めます。
さて、今度こそモトラドはけたたましい音を立てて雪景色を突っ切っていきます。
え?燃料の効率?どうせ早くつかなければ燃料よりも先に食料がなくなりますから
そんなこんなでなんとか最寄りの国についたキノたちは入国審査を受けたのですが、何やらいつもと違う説明をされたようです。
「“タチバシステム”、立場によってできることが違うのかなぁ ボクたちは“旅人”だから無料で給油とか整備とかしてもらえないかなぁ」
「何かしらの恩恵はあるだろうね。でも、そんなサービスを本当にしてたら赤字で国が潰れそうなものだけど。」
そうやって
宿の人いわく、この越冬の季節にはこの国に寄って数ヶ月過ごす旅人が多く、その人たちは滞在中に買い物でお金を落としてくれるから宿代が無料なのだとか。
そんなこんなで冬の終わりも間際になった頃、キノとエルメスはそろそろこの国を去る計画を話していました。道路をゆっくりと進みながら。
そこへ、一人の人影が猛スピードで近付いてきます。
まず最初にエルメスが発見し、
「キノ、あの人なんか焦ってそうだね」
「何かから逃げているみたいだ。」
キノも言います。
だんだん近付くに連れて姿はあらわになります。性別は男で服はそれなりに着飾られていますが、それとは裏腹に
その人はキノ、あるいはエルメスの前でようやく止まると、開口一番にこんなことをいいました
「乗せてくれ!」と。
驚いて事情を聞くと、この国にある“タチバシステム”はメリットだけではなく、立場に応じた“責任”を負う義務が発生します。その重さは得られるメリットに比例します。しかし、そんな責任に耐え切れず、国から出ようとしました。が、責任がそれを許しません。そこで、旅人であるキノに連れ出すよう頼もうとしたとのことでした。
それを聞いたキノは問いました。
「あなたの名前は?」
問われた男はこう答えました。
「エアルトス」と。
──彼、エアルトスを連れ出した翌日の黎明に、キノとエルメスは眠るエアルトスの隣で話します。
「キノ、あの人連れてきてよかったの?食料なくなっちゃうかもよ」
そんなエルメスの問いにキノは平然とこう返します。
「誰かを助けて死ねるなら、そんな死に方がいいな」
大っ変長らくお待たせしました 時雨照です!
すっかり9月の終わり際での投稿となってしまいました…
さて、今回新キャラであるエアルトスが出てきたのですが、エアルトスくんは今後も出していきたいなぁと思っています。そしてキノですが、この話から結構性格を原作から離れさせていこうかなと思ってます
キノがエアルトスと関わりどんな風に変わっていくのか、こうご期待!(筆者も楽しみです…!)