キノの旅ーthe Another Beforeー   作:時雨 照

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只人の話

エアルトスを乗せた(あく)る日、彼らは旅人たちが中継地点にしがちな国にいました。しかも喜ばしいことに、周りには他の国もたくさんあるので、エアルトスの追っ手もしばらく(少なくとも一日)は来ないでしょう。

そして、エアルトスがまだ寝ている黎明に、キノはいつものルーティーンをします。つまり、軽い運動、銃の抜き打ち、掃除のセットです。

軽いストレッチをこなすとキノは、ホルスターに収まっているシングルアクション式のハンド・パースエイダー(パースエイダーは銃器のこと。ここでは拳銃の意。)に手をかけ……素早く抜きます。それを数回繰り返した後、キノは満足気に分解を始めました。

キノがソナタと呼ぶそれは比較的パーツ数が少ないのですぐに分解は終わります。

そしてその各パーツをキノは大切そうに水とブラシで洗っていきます。

回転弾倉(シリンダー)、バレル、フレーム……その全ての汚れが落とされ、キノがルーティーンを終えた頃に丁度、

エアルトスが起きました。

エアルトスは朝早くから活動しているキノを見て不思議そうにしています。

「キノはそんな早くから起きて何かしたいことがあったのかい?」

エアルトスがそんな疑問を口にすると、

「旅人の朝は早いんだよ、エアルトスくん」

突然、普段起きないエルメスが口を挟みます。

「エルメス……毎朝そんな感じで起きてくれたら楽なんだけどなぁ……」

キノにとっては大事な問題のようです。

 

さて、そんな感じで全員起きた朝、彼らは朝食をとります。どうやら今日は、前の国で買ったトーストを食べるようです。

エルメスはキノたちが朝食をとる間、エアルトスに質問を投げかけていきます。

「エアルトスくんは責任に耐えれなくなったから国を出ることにしたって言っていたけど、どんな"タチバ"の人だったの?」

その質問にエアルトスの動きは一瞬止まりましたが、すぐに訥々(とつとつ)と話し始めました。

「私は……あの国で『神の継承者』として、高い地位を得てほとんど崇められてるような状況だった。その経緯は──」

彼は語った。

あの国では独自の宗教が崇められていること。

その宗教では『神の継承者』なる者がいて、その者は神の地位を得る権利が手に入ること。

だからあの国の"タチバシステム"ではその存在が最上位になっていること。

そして、その責任は国王の比ではないと。

「でも、私は継承者なんかじゃ、実はないんだ。ただの親から生まれて、親に育てられた、()()()子だったんだ。」

自分は只人だと。

「こんな……地位も責任も望んでなかった…ただ、只人(ただびと)でいたかったんだ……!これまでも…これからも。」

そう言って涙ぐむ彼の姿は、どこか神々しさすらありました。




時雨照です!遅くなりました……
エアルトスくんの過去をちょっと書いてみましたが、これは……複雑になりそうなのと、物語の方向性が迷子になりそうですね
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