まぁ、シノビは共通だからたぶん行けるよね?
器用な方だと思ったことはある。
だからって、我が事ながらこれはない、頭おかしいとしか思えない。
始まりは酒場での軽い冗談だった。
別のギルドの冒険者から危険な花びらの対処法を聞いた時だ。
彼はこう言った、「全員で殴れ、後は祈れ」
至言である。そうなると問題は火力だ。
当時のメンツで火力が一番ないのがメディックの俺だ。
へヴィストライクを取る手もあるが、そんな暇はないし回復役がいなくなる。
という話を飲みに誘った糸目にしたところ、奴はこう言った。
「後衛らしく弓を使えばいいじゃないですか。」
至言である。酔った頭ではそう思った。
早速、ギルドメンバーのレンジャーに弓を教えてもらった。
筋がいいと言われたが俺の本職はメディックである。あくまで危険な花びら対策だ。
探索が進み、ケルヌンノスにとどめを刺したのは俺のダブルショットだった。
それ以降も探索が躓くと糸目には相談に乗ってもらった。
その度にシリカ商店の収入と俺の装備は増えた。
B22階で対峙したレンとツスクルは俺の姿に引いていたし、
B25階でなんか難しいことを言っていた執政院の長は俺の方を見ないようにしていた。
最深部にいた百億の生と千億の死を見つめる世界樹の核と戦う頃には
サジタリウスの矢を放ちながら医術防御とトラッピングを張り、
属性ガードのために盾を構える俺がいた。
エトリアの迷宮を踏破したあと、俺は賞金で買った船でアーモロードへ行った。
俺以外はハイラガードへ行ったが、船の良さがわからない奴らなどこちらから願い下げである。
この航海で氷の術式の偉大さを痛感した。酒場で教えてくれたアルケミストには感謝である。
もっとも食料はそうもいかないので結局、港に停泊する羽目になった。
アーロモード側でも航海が流行っているらしく何度も向こうの冒険者に会ったり、
共闘したこともあった。彼らに会うたびに俺の装備はさらに増えた。
共闘のお礼にカッコイイ獣面をもらった時は感激のあまり男同士で抱き合ったりもした。
そのころから船を大型船に買い替えた。船員は俺のみだが忍法 分身もまた偉大だった。
途中、彼らから自分たちの船でアーロモードまで行かないかと提案されたが、
「迷宮にたどりつくまでも冒険だ」と言うと納得してくれた。海図の情報交換は何度も行ったが。
そんなこんなで、エトリアを発って数年後アーロモードへ辿りついた。
色々とごたついていたせいで、迷宮最深部は未踏だったらしく今まで教えてもらったスキルで、
早速探索に出かけた。海流に流されたり、方向が分からなくなったりしながら、
最深部で星海から来た禍神と対峙した時には、分身して多元抜刀の準備をするマフラーを付けた俺と、
攻撃の号令をかける王冠を乗せた俺と追撃の体制をとる眼帯をした俺と
バリスタを前衛で構えるゴーグルonメガネな俺と獅子王と一緒に寝る獣面をつけた俺がいた。
我ながらわけがわからない。「お前なんて俺じゃない」とは言えない、分身したのは俺なのだ。
そんなわけで、次の冒険に向けて気球の準備をしていた時である。
耐久性を考えて迷宮産の素材を使おうと考えていたら森の中にいた。
おまけに、目の前には謎の怪物、周囲にはなぜかシノビっぽい格好で統一された冒険者たちの亡骸・・・
頭の中で「!!ああっと!!」という声と双葉のイメージがよぎった気がした。