冒険者になる理由は人それぞれだが、すべての冒険者が最初にぶち当たる壁は一つだけだ。
それは死の恐怖であり、大抵の奴が一階などの低層で直面する。
と言っても、低層のうちは衛兵が見張りをしているし、
秘かに引退した冒険者たちが各所に配置されているため、
実際に死ぬことは滅多にない。
例え、呑気に休憩し毒吹きアゲハ相手に全滅したとしても
死ぬギリギリのラインで蘇生してくれるし、極秘にそういった依頼を受けることもある。
何故そんな依頼が存在するのかといえば、ふるいにかける必要があるからだ。
それこそ、剣術をおさめた貴族だろうが農家の三男だろうが直面に迫る死に対しては平等であり、
冒険者を続ける理由を自分の死と天秤にかけたうえで
尚、前者を選べるかという試験のようなものである。
結局のところ、冒険者は皆多かれ少なかれ、自分の命を質にいれて
それ以外の何かを求め続けているのだ。
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子供のころ、医術士だった祖父から「美しい樹の根元には人の死体が埋まっている」
という話を聞いた時のことだ。
ふと幼心に遠くに見えるあの樹、祖父の兄弟やオレの両親を惹き付けた
世界樹の下には何があるのだろうかと思ったことがある。
エトリアに訪れてギルドにメディックとして登録し、
その六時間後にギルドメンバー諸共死にかけても
その想いは消えるどころか薪を加えた火のように強くなっていった。
そして世界樹の根に潜むフォレスト・セルを倒したとき、
オレの中には達成感とは別にある種の感動があった。
それは美に対する感動だった、ただただうつくしかったのである。
野草が咲き乱れる樹海も暴力的なまでの密林も海を思わせるような静寂の森も
死した森や古の都の寂寥、そして鮮血の窟でさえも・・・
きっと最初からそうだったのだ。オレにとって未知なるものは美しく、
その美しさを自分自身で感じることこそが世界樹へと駆り立てる理由だったのだ。
だからだろうか、別の時代へ訳も分からず飛ばされても
オレの中にあるのは未知への期待だけだった。
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「タイムスリップ」が発覚して数日経った。
元の時代へ戻る方法を探すのもありだが、
しばらくは知らないことばかりのこの状況を楽しむことにしようと思う。
フォレスト・セルを倒した後に船を用意した時や禍神を倒した後に気球作成に取り掛かったように、
この時代の「美」を探した後で「タイムマシン」とやらを作ればいいのだ。
行動方針が決まったので、寝床の確保と金策に走ろう。
当初、宿屋を利用しようと思ったのだが、通貨が違ううえに、
宿泊費が糸目も真っ青なほど高いので別の場所を探すことにした。
と言っても、最初にいた森はあの怪物に寝込みを奇襲される恐れがあるので
オレ一人のうちは無理だ。
都合良く、放棄された建物(廃ビルと言うらしい)を発見できたので
当分はそこを拠点にすることにしよう。
次に金策だがこの時代では、クエスト(アルバイト)は酒場で受けるのではなく
直接商店の方に向かうようだ。
おまけに採取したものを納品したり、怪物を討伐対象にしたアルバイトはないらしく、
もっぱら人手を求めている系統ばかりだ。
本職であるメディックの技を生かす手もあるがこの時代、医師免許なるものが必要らしい。
とりあえず夜は寝床の廃ビルで浮浪者相手に安く治療して闇医者の噂を広めつつ、
昼はアルバイト探しとあの怪物の調査を行うことにしよう。
このときは、小銭稼ぎの施術がそこまで繁盛するとは思わなかったし、
変なのに付きまとわれるとは考えもしなかった。
次話くらいで原作キャラを出せる気がする。