Chapter1 緊急会議招集
岩手トレセン学園盛岡校生徒会室。
五月の終わりになり来月は各地方で行われるダービーのシーズンでもあり、ウマ娘の一大イベントも控えていた。
6月15日に行われる「チャグチャグウマ娘」である。
農耕に携わるウマ娘の労をねぎらい、無病息災を祈る伝統行事であり鈴を付け着飾ったウマ娘達が鬼越蒼前神社から盛岡八幡宮までの14キロを練り歩くのである。
基本的には農耕ウマ娘がメインを務めるものの、岩手トレセン学園でも協賛として協力して盛り上げるつもりではあったのだが。
メイセイオペラ、トウケイニセイ、モリユウプリンス、ヘイセイシルバー、船橋から転校してきたばかりのバンチャンプが難しい顔をしながら笑顔でダブルピースをしている芦毛のウマ娘の写真をみていた。
「どうしてこうなった……?」
トウケイニセイが思わず口にする。
その思いは皆同じであった。
一週間前、中央トレセン学園でユキノビジンはゴールドシチーに呼び出された。
「ごめん!ユキノ。あの件なんだけど……。」
ユキノビジンは内々にチャグチャグウマ娘に中央からのゲストとしての参加を打診していた。
ゴールドシチーも乗り気で快諾していた。
しかし、それを直前で辞退されてしまった。
「マネジがさ……、今度、UMAガールズコレクションのオファー受けちゃってて……。」
同時期に開催される海外でのファッションショー出演のためスケジュールが合わないとのことであった。
「そうですか……、仕事だば仕方無がんす。」
「ホントごめん!」
謝って去って行くゴールドシチーの後ろ姿を見つつどうしたらいいのかユキノビジンは悩んでいた。
手にはチャグチャグウマ娘のビラを持っていた。
(どやしたらいがべが?デジタルちゃんさ頼むが……。いや、デビュー前の大事な時期だべ。いつも甘えるわけには……。誰が都合の合う人居ねぇべが……。)
中央からのゲストの人選をどうしたらいいか短期間でスケジュールの都合の良い人を見つけなければならなくなってしまった。
そんな暗い面持ちのユキノビジンに芦毛のあのウマ娘がすれ違う。
「ん?どうした?」
「こんにちは、ゴールドシップさん。」
「なんか元気なさそうじゃねぇか。」
「いえ、なんでも無がんす。」
「なんだコレ?」
「あ!」
手に持っていたユキノビジンのビラを奪いとって目を通す。
「え?なになに……。『チャグチャグウマ娘ゲスト募集中!』って、岩手でやるアレか。」
「ええ、ゴールドシチーさんさ頼んだんどもUMAガールズコレクションだがいうファッションショーさでるがら断られてしまって……。」
「ああ、UMA?アタシ、去年フランスでやるってんで呼ばれたんだけどさ、安来節の格好ででたら何故か出禁になっちまったんだよな。」
「(そっただ格好で出だら出禁さなるのオラでもわがるべ!)そ、そうなんですね……。では……。」
「ちょっと待ちな!ゴルシちゃんがそのチャグチャグウマ娘とやらに出てやろうじゃねぇか!」
「いや……。あの……。生徒会の許可頂いてからでないと……。(多分、常識のある生徒会長さんだば止めるべ!)」
「おう!じゃあ善は急げだ!早速行こうぜ!」
無理やりゴールドシップに引きずられるかのように生徒会室へ直行した。
「良かろう。ゴールドシップ、くれぐれも中央トレセンの模範となるよう振る舞ってくれたまえ。」
シンボリルドルフは予想に反してあっさり許可した。
「ヨッシャー!やってやるぜ!よかったな!」
ゴールドシップは喜びをあらわにした。
(嘘だべ!なして!ニセイちゃんさ合わせる顔ねぇべ!)
対称的にユキノビジンは顔面蒼白となっていた。
「では、スケジュール等は後で打ち合わせしよう。」
「はい……。わがりました……。」
シンボリルドルフの声にか細い声でそう答えるしかなかった。
ユキノビジンとゴールドシップは退室した。
「よろしいのですか?ユキノビジン相当青ざめた顔してましたけど。」
居合わせていた副会長エアグルーヴは尋ねる。
「ああ、岩手の方々に彼女の素晴らしさを知ってもらういい機会だと思うのだが。」
ニヤリと笑いを浮かべるシンボリルドルフであった。
「会長もお人が悪い。」
「エアグルーヴ、そういう君も引き留めなかったではないか?」
「それはそうですが……。」
束の間の休息をと画策したのであった。
その後、ユキノビジンからトウケイニセイへ連絡があり緊急会議との運びとなったのである。
「どうせ、やっかい払いのためすんなり許可したんだろ?ルドルフめ、食えねぇ野郎だ!ゴールドシチーとゴールドシップじゃ月とスッポンもいいとこだぞ!」
トウケイニセイは吐き捨てるように言う。
「来た時の対策考えないとですね。」
メイセイオペラは言った。
「来た時の対策?いっそのこと近くのダム湖に沈めてやるか?」
「やったとて這い上がってきそうで怖いんスけど。」
トウケイニセイの言葉にメイセイオペラは答えたがあとの会話が続かなかった。
(黙っていればなあ……。)
(黙っていればなあ……。)
(黙っていればなあ……。)
(黙っていればなあ……。)
(黙っていればなあ……。)
写真を見ながら口にはせずとも思いは一致していた。
Chapter2 ゴルシちゃん盛岡参上!
一日目。
その芦毛のウマ娘は盛岡駅に到着した。
生徒会長のモリユウプリンス、そして次期生徒会長に内定したメイセイオペラがホームに出迎えた。
「ゴールドシップさん。ようこそ、盛岡へ。」
「おう、お前は確かアレだ、地方ウマ娘で初めて中央G1とった、え~と……。」
「メイセイオペラです。」
「おう、そうそう。よろしくな!グランドオペラ!」
「違います!」
「あ、すまん、アマゾンオペラだったか?」
「メイセイオペラです!」
早速ボケをかますゴールドシップであった。
一週間の滞在と言う事もあって大きなキャリーケースを引いていた。
タクシーに乗り込み盛岡レース場のある岩手トレセン学園盛岡校へ向かった。
「うっひょー!ここが盛岡レース場か!デケェな、アレ!」
巨大なウマ娘像をみてゴールドシップは感激していた。
「なあなあ、このウマ娘像、金色に塗っていい?」
「あの、一応公共物なんで。やったらいろいろ怒られますよ。」
「硬えこと言うなよ!それじゃあ、ドロップキック一発かましていい?」
「駄目です。壊したらえらいことなりますよ。この像わざわざフランスから取り寄せたものなんで替えが利かないんで我慢して下さい。」
「ちぇっ。つまんねー!そういや、盛岡って『不来方(こずかた)』っていうんだよな?なんでそう言われてんだ?」
「一説には悪い鬼を捕らえて『二度と来ないように』って岩に手形を残したってのが由来らしいです。」
「へぇ。じゃあ、ここに鬼がもしやって来たらこのゴルシちゃんが退治してやんよ!桃太郎バリに。」
「はは……。(できればあなたに二度と来てほしくないんですが。)」
愛想笑いでそう答えるメイセイオペラであった。
向こうからトウケイニセイがやって来た。
「よう、ゴールドシップ。聖蹄祭以来だな。よろしくな。」
声をかけた。
「んで、啄木並みに大借金したってわけよ!」
ゴールドシップは無視して進んでいた。
「な!(この野郎!ガン無視しやがって!)」
掴みかかろうとしたトウケイニセイだがメイセイオペラとモリユウプリンスに抑えられた。
「堪えて下さい!ニセイ先輩!」
「離せ!」
「あ?何カリカリしてんだ?アレだな。カルシウムが足りてねぇんだろ?ほらよ、ゴルシちゃんのとっておきだぜ!」
ゴールドシップは煮干しの袋を手渡した。
「誰のせいだと思ってやがんだ!」
トウケイニセイは叫んだがモリユウプリンスに羽交い締めにされたままになり、ゴールドシップは宿泊の部屋へ案内されるであった。
「ったくよ!」
イライラしながらトウケイニセイは生徒会室でゴールドシップから貰った煮干しをバリバリ噛み砕いていた。
「今、ゴールドシップさんを部屋へ案内してきました。問題は明日からですね。(って、それ食べるんだ。)」
「明日、どうする?オペラ。」
モリユウプリンスは尋ねる。
「一応、雫石のウォーターアミューズメントパークにでも連れてって時間潰すのがいいかと。」
「わかった。じゃあ、手配しとくね。で、こっち(トウケイニセイ)はどうする?」
「できるだけ関わらない方がいいかと。聖蹄祭の時も最後取っ組み合い寸前でしたので。」
「そうね。その方向性で。」
モリユウプリンスは念を押す。
「いいですか、先輩。ゴールドシップさんと接触しないで下さいね。くれぐれも。」
「わーってるよ!」
貰った煮干しを食い尽くしていた。
二日目。
岩手トレセン学園の面々は思わぬ事態に直面していた。
「いたか?」
「いえ……。こちらにも居ません。」
「どこ行きやがった!」
朝、ゴールドシップに起床を確認しに部屋へ行くともぬけの殻であった。
「ちょっくら行って来る!」
と書き置きしていたのだが。
「ちょっと近くにはいないみたいですね。」
メイセイオペラも捜索していたが見通しの甘さを痛感していた。
「このまま、どっか行ってくたばってくれたらいいんだが。」
「ニセイ先輩、縁起でもないこと言わないで下さい!こっちに責任追及されちゃいますよ。」
「ま、簡単にはそうならんか。」
「ええ、そうですね。あ……。」
「どうした、急に?」
「同じチームのメジロマックイーンさんにもし困ったら連絡して欲しいって言われたの思い出しました。」
「なんだよ、先言え!」
「すいません、すっかり忘れてました。んじゃ、ちょっと連絡取ります。」
スマホ片手にメジロマックイーンに連絡するメイセイオペラであった。
「マックイーンさん、おはようございます。早速、困りました。朝、部屋行ったらいなくなってしまって……。」
「そうですか……。あ、もしかしたらスマホは持っているはずです。GPSで位置情報を見られるかもしれませんわね。」
「GPSですか!わかりました。」
連絡し終わりGPSアプリで位置情報を確認する。
盛岡から北北東75kmの位置を示している。
それをみてメイセイオペラは愕然とした。
「なんであんなとこまで行ったんだ?何しに?」
疑問符だらけだがひとまず捜索を打ち切った。
夕方、ゴールドシップは帰って来た。
「ゴールドシップさん、どこ行ってたんですか?」
「おう!ちょっくらアタシも『北限の海女』とやらに挑戦したくてな!久慈ってとこまで行って来たぜ!筋がいいって褒められた!へへ、コレは『あ◯ちゃん』じゃなくて『ゴルちゃん』いけんじゃね?って感じよ!」
バケツいっぱいに殻付きの生ウニを持って来ていた。
(視たくねぇな、その連続テレビ小説。)
メイセイオペラはそう思った。
「今日はウニ祭でもやりな!アタシはもういいや……。一生分、いや、来世、最来世分までしこたま食ったからよ。じゃ、もう疲れたから寝るわ。あ、明日は退屈しねぇようになんか用意しとけよ!」
ゴールドシップは部屋に戻って行った。
(コレって密漁とかじゃないよな?)
メイセイオペラはお礼がてら漁協等に確認をとる。
本人が来ていたことを確認し振り回された思いにかられどっと疲れに襲われた感であった。
三日目。
盛岡の隣の町、雫石にあるウォーターアミューズメントパーク「ちぇんじワールド」へ行く事になった。
ゴールドシップのお供にメイセイユウシャ、トーホウエンペラーをつけたのだが、二時間もしないまま、帰って来た。
「ただいま……。」
「早っ!ユウシャなんかあったのか?」
「それが……。」
メイセイユウシャに尋ねると館内に入って5分も経たず危険行為で出禁となったという。
「まあ、考えられることでもあるか。じゃあここから近くの遊園地にでも連れてってやれ。」
メイセイオペラはそう指示を出すもすぐさま帰って来る。
理由は同じであった。
「だったら動物園があるか、そこ行けば……。」
しかし、またもやすぐに帰って来る。
「おかしい、なんでだよ?」
「ゴールドシップさんが来たとたん、動物園の動物たちが騒ぎ始めてしまって。」
「どうしようもねぇな。」
出禁にまたされたようである。
「本人は?」
「レース場の芝生席に行って来るって言ってた。」
妹のメイセイユウシャにそう言われメイセイオペラは芝生席へ向かった。
「あー!つまんねー!つまんねー!」
芝生席でゴロゴロ回りながら無意味に叫んでいた。
「ゴールドシップさん。」
「何だよ!つまんねーじゃねぇか!」
「明日は地元のプロレス団体からドロップキックの指導して欲しいと依頼がありました。ぜひお願いしたいのですが。」
「おう!そうか!まあ、しょうがねぇな。わかった。教えてやる!多少暴れても大丈夫だよな?」
「それなりに身体鍛えた方々なので大丈夫かと。」
「ヨッシャー!明日が楽しみだぜ!」
機嫌がやや良くなって安堵するメイセイオペラであった。
だが、このことが後にとんでもない事態になると予測はできなかった。
Chapter3 ゴルシちゃん直伝!ドロップキック養成講座
四日目。
盛岡駅に降り立つ二人のウマ娘の姿があった。
目的地へと向かうところであった。
「どうして、こんなところに。いきなりフランスから緊急帰国してきて何するつもりですか?エル。」
グラスワンダーが尋ねると得意げにエルコンドルパサーは答えた。
「これから、とうほぐプロレスの道場へ向いマース!」
「何故ですか?プロレスでしたら東京でもよかったのでは?」
「チッチッチ、グラス、とうほぐプロレスはですね、メキシカンスタイル『ルチャリブレ』のプロレス団体なんですよ!それで特別講座があるっていうのでフランスから居ても立ってもいられないのでやって来ました!」
「もう……。トレーナーさんに無茶しないでって言われてるんですよ。わかってますか?」
「あと、社長の人崎新生さんの『拝み渡り』っていう技があってこの目で見てみたい!それと持ってきたマイ卒塔婆に『エルコンドルパサー』って書いて貰いたいデース!」
「聞いてますか?あと縁起悪いですよ、エル。」
半ば呆れていたグラスワンダーであったがどうやって無事にフランスにエルコンドルパサーを戻すのかを第一に考えていた。
「そうだ、グラス、さっき駅のお土産屋さんでお菓子買いました、ドウゾ。」
エルコンドルパサーからお菓子を手渡され口にする。
「これ、おいしいです。あんこの味でお茶うけにもいいですね。」
「グラスにピッタリのネーミングのお菓子デース。」
「名前……ですか?」
包み紙にお菓子の名があった。
見るやいなや先日、安田記念2着に敗れたのが起因したのか顔が真っ赤になり殺気立つ。
「エル……。最期に思い残すことはありますか?」
「ち、違うんデス!」
「私がそうだって言いたいんでしょ?」
「だから、ソレは『ブシ』が訛ってそうなったってお土産屋さんの店員さん言ってました!本当デース!薙刀しまってクダサイ!」
お菓子の名は「ぶすのこぶ」というのものであった。
なんとか一命を取り留めたエルコンドルパサーと殺気を収めたグラスワンダーはタクシーで道場に着く。
早速コスチュームに着替えたエルコンドルパサーは特別講座とやらを受ける。
「えー、今回、『ドロップキック養成講座』と言うことでこの方を特別講師として招きました!どうぞ!」
スタッフに紹介された全身金色のコスチュームで登場する怪しいマスクをかぶったウマ娘の姿があった。
「ワタシは『スーパーゴルシマシン564号』ダ。コンカイ、オマエラにドロップキックのゴクイッテヤツをオシエテテヤル。アリガタクオモエ。」
「グラス!ゴールドシップのそっくりさんですよ!クオリティ高いですね!」
「え?(いや……、これってご本人ではないかと。背格好も声も本人そのものですし。ゴルシ先輩ですよね……?なぜ……?)」
早速講座というスパーリングに移る。
「ジッセンデ、オマエラ、マナベ。タショウハテカゲンシテヤル。」
「お、そうですか!では早速いっきます!」
「エル、気を付けて。」
実戦さながらにスパーリングが始まった。
互いに警戒しながら空中戦になった。
リングの中でところ狭しと技を仕掛ける。
エルコンドルパサーもかわしつつ反撃をしようとしていたが不意にドロップキックが直撃してしまった。
「エル!」
「やりますね!でもまだまだ!でもここからデス!」
額から少し流血し、血が流れていた。
それでもその血を手で拭ってスパーリングを続行するエルコンドルパサーであった。
拭った血の一滴がグラスワンダーの頬に当たる。
「血……。」
その時であった。
(血……。エルの血。怪我、いや、死……。このままだとエルが死んでしまう。ならば……。)
グラスワンダーの目がカッと見開き、おもむろに薙刀を手にとってリングに上がっていた。
「グラス!」
凍りつくような目つきになり青きオーラをまとった狂戦士(バーサーカー)と化していた。
慌てて屈強なスタッフ達も止めに入るがバッタバッタとなぎ倒されスーパーゴルシマシンにゆっくり向かって行った。
「よくも、エルを……。」
「ちょっと待て!グラス!得物(薙刀)は反則だろ?話せば分かるよ、な?な?」
思わず素に戻るゴールドシップだった。
「問答……無用!」
薙刀を躊躇することなく一閃振り下ろした。
それから数分後、グラスワンダーは正気を取り戻した。
気がつくと制服と薙刀が血で真っ赤に染まり、目の前の人物と回りのスタッフらしき屈強な男たちが倒れ込んでいる。
フロアの隅っこでエルコンドルパサーが身を縮めて震えていた。
「ゴルシ先輩!誰がこんな目に!」
「誰って、オメェがやったんじゃねぇか……。ぐふ……。」
そう、言い残してマスクが破れ、顔をボコボコにされたスーパーゴルシマシン564号ことゴールドシップが気を失ってこと切れた。
(え?私が?なんてことを……。)
ゴールドシップと間に入ったスタッフ達を血祭りにあげていたのであった。
状況を把握したグラスワンダーは顔面蒼白となった。
岩手トレセン学園盛岡校に数時間後、ゴールドシップは搬送され、医務室へ直行した。
乗り込んでいたグラスワンダーが悲痛な面持ちでメイセイオペラのもとへ近寄ってきた。
「申し訳ございません。」
すぐに頭を下げて謝罪した。
「いや、まあ過ぎたことは仕方ないんで。(しかし、どうやったらこんなに怒らせたんだ?)」
以前、メイセイオペラはセイウンスカイが「グラスちゃんを怒らせてはいけない。」と真顔で言っていたのを思い出した。
その時は普段穏やかなグラスワンダーを見て半信半疑であったが、本当であったと確信した。
ゴールドシップの顔はブクブクに膨れ上がっていてすぐに回復は難しそうであった。
その横でトウケイニセイはそれを見て顔を覆いながら笑いを堪えていた。
「えっと、一応病院行ったんですよね?」
「ええ、幸いにして打ち身と少量の出血で済んだのですが……。」
「顔の腫れが……。」
「二三日は安静にとのことですので……。まさかゴルシ先輩がチャグチャグウマ娘に参加とは知らなくて……これでは……。」
「まあ、しょうがないよね。しかし、どうしたものか……。」
「何悩んでんだオペラ。」
トウケイニセイが割って入る。
「だって、ゴールドシップさんの代わりが……。」
「代役?目の前にいるじゃねぇか?」
「あ……。」
ダメ元でメイセイオペラは依頼した。
「グラスちゃん、悪いんだけどゴールドシップさんの代役やってくれないかな?明後日が開催日なんだ。ちょっと間に合いそうにないから……。」
「わかりました。自分が蒔いた種ですし。でも何をすればよいのですか?」
「まあ、そんな難しいもんではないから。盛岡駅から盛岡八幡宮まで着飾って歩くだけだから。」
「そうですか。では微力ながら務めさせていただきます。でもそれまでゴルシ先輩の看病してもよろしいですか?」
「ああ……。大丈夫だよ。あ、そういやエルちゃんは?」
エルコンドルパサーは企画が駄目になったため気を取り直して急遽社長の人崎新生から「拝み渡り」講座をしてもらいマイ卒塔婆にも名前を書いて貰って目的を果たし満足気に東京へ戻って行ったのであった。
五日目。朝、グラスワンダーが訪ねてきた。
「あの……。ゴルシ先輩が……。」
メイセイオペラとトウケイニセイはグラスワンダーに食堂へ連れて行かれた。
「あの様子じゃ明後日は無理だろ?それともとうとうくたばったか!。」
などとトウケイニセイは軽口をたたいていた。
食堂につくと信じられない光景が目に映っていた。
「ゴールドシップさん!大丈夫ですか?」
「おお、お前らか!心配かけたな。でももう大丈夫だ!『ゴルシちゃん大復活!』だぜ!」
メイセイオペラが声をかけると大好物のお茶漬けを平らげていた。
(ウソだろ?昨日あんなブクブク膨れてったつーのに!)
顔の腫れが引いていて回復しているようでトウケイニセイがドン引きしていた。
「あの……。ゴルシ先輩、昨日は申し訳ございませんでした。」
グラスワンダーが頭を下げる。
「いいってことよ。アタシも調子乗ってたからな。で!今日もどっか連れてってくれるんだろ?」
グラスワンダーの謝罪を受け入れ、メイセイオペラに今日の予定を尋ねる。
「ゴールドシップさん、昨日の今日なんで申し訳ないんですが一応病院行って精密検査受けてください。」
「なんだよ!つまんねえじゃねえか!」
「中央のトレセン学園にも連絡したらそうしてくれと頼まれたんで。(ウソだけど。)」
「しょうがねえな!じゃあ、明日どっか行こうぜ!」
「明日は本番前日なのでいろいろ打ち合わせします。」
「なんだよ!こんなことならもう一週間早く来るんだったぜ!」
(そんなことになったらコッチの身が持たないんですが。)
ゴールドシップはしぶしぶ承諾した。
検査の結果、異常無しとの診断が下され、予定通り翌日打ち合わせになり、グラスワンダーもゴールドシップの驚異的回復に安堵して帰京の途についた。
六日目、本番前日。
鬼越蒼前神社に初めてゴールドシップはやって来た。
「ここからゴールの盛岡八幡宮まで15キロくらい歩いて行きます。が、ゴールドシップさんは途中の材木町から合流し、盛岡駅通って中心街の大通りを歩いて八幡宮まで行く予定です。」
「へー。」
メイセイオペラが説明するも興味が全く無さそうに聞いているゴールドシップであった。
「あいつらは何やるんだ?」
ゴールドシップは同じウマ娘でも一回り大きいガタイのウマ娘に目をやった。
「あちらの方々がここからずっと盛岡八幡宮まで子どもを担いで練り歩く農耕ウマ娘の方々です。」
「お、誰かと思いきや、あのゴールドシップじゃねえか!」
農耕ウマ娘の一人が気づいて近寄って来る。
「こんにちは、『綾織』さん、こちらが中央からきたゴールドシップさんです。」
メイセイオペラが農耕ウマ娘の綾織にゴールドシップを紹介する。
「知ってるぜ!有名人だもんな、あんた。」
「ほう、このゴルシちゃんを知ってるとはなかなか見どころがあるじゃねえか!」
「ああ、スタートしくじって細江さんに悲鳴あげさせたやつだろ?アレ大爆笑したな!」
「あ?ケンカ売ってんのかてめえ!」
「ちょっと落ち着いてください!ゴールドシップさん!」
慌ててメイセイオペラが止めに入る。
一悶着あって、落ち着いてきたあとにメイセイオペラはゴールドシップに明日の予定の説明を再開した。
ゴールドシップは退屈そうにアクビをしながら聞いているだけであった。
その時、参加する児童の一人が突如泣き叫んだ。
「ヤダヤダ!ボクも参加したい!うわ~ン!」
ダダをこねていた。
「ん?どした?」
「なにかあったんですか?」
どうやら、児童の一人が農耕ウマ娘に担がれてスタートからゴールまで歩く予定が農耕ウマ娘が体調不良で参加できなくなって一人あふれたらしかった。
「だって乗せてくれるって言ってたもん!急にダメだなんてヤダ!」
農耕ウマ娘達もなだめようとしたがその児童は泣き続けていて困惑していた。
「だったら、アタシがやってやろうか?そのチビ可哀想だろ?」
「え?ちょっと待ってください!さすがにこの子を担いで15キロ歩くなんて無謀にも程がありますよ!ゴールドシップさん!」
ゴールドシップの申し出にメイセイオペラは反対した。
「大丈夫だろ。こいつら(農耕ウマ娘)ができてこのゴルシちゃんができねぇことないだろ!」
「おい、聞き捨てならねぇな。確かにあんたは走ることは一流かも知んねぇ。だけど力でオラ達に敵うと思ってんのか?」
「おうよ!できねぇことをやってのけんのがこのゴルシちゃんってもんよ!」
「聞き捨てならねぇな!力がなんだって?」
そこへ農耕ウマ娘よりも二回り以上のガタイの大きいウマ娘がやってきた。
「すいません。レッドゴレムさん紹介遅れました。こちらがご……」
「知ってるよ、つーかオペラ。ウマ娘でコイツのこと知らねぇ奴なんかいねぇって。もちろんアレでな。」
「ゴルシさん。こちらがばんえいウマ娘のレッドゴレムさんです。」
「ほう。ガタイだけは一流だな。」
「あの……ゴルシさんこの方引退はしましたけど現役時代に数々のばんえいレースの重賞を勝ち取った伝説級の方なんですよ。」
メイセイオペラが説明するもゴールドシップは半信半疑のように上から下まで舐め回すように見ている。
「まあ、いい。論より証拠ってことを見せてやる。おい!誰か一番丈夫そうな長い縄持ってこい!」
しばらくして農耕ウマ娘の一人が太い縄を持ってきた。
「これか……。まあ、いいだろ。」
「おい、これから綱引きでもしようってのか?」
レッドゴレムにゴールドシップが問いかける。
「そう思うよな?そのまさかだ。そっちの端をしっかり持ちな。」
「随分と無礼られたもんだ、やってるぜ!」
「無礼てるのはどっちだろうな?」
双方両端の縄を掴んだ。
「おい!ふざけんな!」
ゴールドシップが両手で縄を掴んでいるのに対しレッドゴレムは片手のままだった。
「ふざけてなんかいねぇよ。ハンデやってんだ。俺らばんえいウマ娘はな日々スピードもだが力をメインにトレーニングしている。お前、1トンのソリ引いたことあんのか?」
「うるせぇ!御託はいい。」
「そうだな、やってくれ。」
中央にいるメイセイオペラに合図してメイセイオペラは手を振り落とした。
するやいなやすぐさまゴールドシップが中央に引き寄せられて負けとなった。
前につんのめり服が泥だらけとなった。
「力の差ってのを思い知っただろ?いいことだ。そうすることで謙虚さってのを身につけるからな。あきらめてお飾りになってな。」
「待て……逃げる気かよ……。」
「は?逃げるって何だよ。思いっきり瞬殺されたじゃねーか!」
「油断でもしたと?」
「ああ、そうだよ!」
「ほう、面白え。ま。二度も三度も変わらんがな。」
再戦に付き合うことにした。
メイセイオペラはもう一度セットして手を振り落とす。
今度は縄が微動だにしなかった。
「ほう、少しはやるようだな。」
「う……る……せ……ぇ。」
両者の表情は相反するものであった。
左右に僅かに揺れ動く綱、その時であった。
(ブチッ……。)
「ウギャー!」
縄が切れ、その勢いで後方にゴールドシップが吹っ飛び藪へ突っ込んでしまった。
「おや?あいこか。縄が耐えきれなかったか?ま、いいだろ。その代わり無様を晒すんじゃねぇぞ。」
レッドゴレムが特別に許可した。
複数いた農耕ウマ娘たちもお信じられない表情でゴールドシップを見ていた。
「ゴルシさん!」
メイセイオペラがゴールドシップに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「あいつの力すんげぇな。ガタイもデカいし。もしかして人一人殺してんじゃねぇのか?」
「ちょっと!ゴルシさん!」
その声に反応し、レッドゴレムは振り返る。
「んなわけねぇだろ!そんなことしたらこんなとこにいる訳ねぇだろが!」
呆れたように答えた。
不測の事態となったメイセイオペラはある大先輩のウマ娘へ相談を持ちかけることにした。
(あんまりあの方に負担かけたくないんだよね。激務だって聞いてるし。でも今はなりふり構っていられない。)
ため息をつきつつ連絡先へ通話した。
「はい、岩手トレセンのメイセイオペラと申します。ちょっと明日のことで先輩にご相談がありまして、ええ、お願いします。」
運良く勤務中だったようだ。
「よう、オペラ、元気にしてっか……って、まあ、明日のことだったな。この期に及んで電話してくるってことはニセイにも無理な案件ってことか。」
「お久しぶりです。ホープ先輩。そうなんです、ニセイ先輩だと多分無理で、丁度、明日そちらを通りかかりますし。実は……」
メイセイオペラは事情を説明した。
「わかった。結果はどうあれベストを尽くしてみる。」
「ありがとうございます!なんてお礼言っていいのやら……。」
「何言ってんだオペラ。いつもな一緒に飲む度に酔っ払うとスイフトのヤツが『オペラはいつも俺に頼ってきて』とか自慢しまくってて頭きてたんだ。たまには俺にも頼れよ。」
「はい、ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます。」
通話は切れた。
(最善は尽くしたつもりだ。あとは無事に終わらせることを祈るだけだな。)
着々と準備を進めいよいよ当日を迎えるのであった。
Chapter4 ゴルシちゃん、チャグチャグウマ娘なってやる!の巻
チャグチャグウマ娘の当日。
とある警察署の前で警官姿のグレードホープが路上のチェックをしていた。
(ここ通ったらふれあいプラザで休憩か。まあ、大丈夫だろ。一応策は練ってあるし。)
などと考えていた。
「精が出るねぇ。ホープ君。」
「署長、おはようございます。」
「おはよう。まあ、なんだ。何事も無ければいいがね。」
「ちょっと……署長。変なフラグ建てないでもらっていいですか?タダでさえ、あのゴールドシップが来るんですよ。」
「え?ゴールドシップ!『白い悪魔』って言われたあのウマ娘、本当に来るんだ。いや楽しみだな!いろんな意味で。」
まるでトラブルを期待するかのような署長の発言にグレードホープはため息をついた。
「まあ、そうは言ってもこっちだって『みちのく大賞典・南部杯・桐花賞』を制したウマ娘がいるんだし。そう簡単にはいかんだろ。」
「もうとっくに引退してますし。相手は中央ですよ。」
「とにかくだ。よろしく頼む。」
グレードホープの肩を叩いて署長がは去っていった。
グレードホープ。
レース引退し卒業後、岩手県警へ採用される。
主にウマ娘関連の犯罪取締に従事し、旧岩手トレセン学園盛岡校・盛岡レース場の近くの警察署勤務に配属されていた。
(だりぃ。このチビ背負ってこの先何キロ歩くんだ?)
まだ序盤だというのにゴールドシップは飽きてきてしまった。
列の最後尾でつまらなそうにあくびもだしながら児童を抱えて歩く。
「そういやお前名前なんて言うんだ?」
「ボク?ボクの名前?『バク』って言うんだよ!」
「そうか、『バク』って言うのか。」
「お姉ちゃんは『ゴールドシップ』って言うウマ娘なんでしょ?」
「ああ、まあな。」
「走るの早いの?」
「ああ、このアタシに何言ってんだ?象にお鼻長いの?って言ってるようなもんだぞ!」
「じゃあ、走って見せてよ!」
「お、ゴルシちゃんの走りをみたいってか?いいぜ、しっかりつかまってな。」
「うん!」
言うや否やゴールドシップはバク君を背負って走り出した!
最後尾から先頭にいるレッドゴレムをすぐさま追い越して行ってしまった。
「ゴレムさん!」
ばんえいウマ娘のレッドゴレムに農耕ウマ娘達は声をかける。
「うろたえるな!そのまま列を乱さず前進。休憩所まであと少しだ。」
おもむろに無線機を取り出すと冷静に事情を説明した。
(走りでうちらでは対処できない。あとは頼みましたよグレードホープさん。)
警察署前、そのウマ娘は児童を抱え爆走してきた。
「うりゃー!どきやがれ!ゴルシちゃんのお通りだ!」
無線機の発報を耳にするとすぐさま目の前でゴールドシップが走り去る。
「こりゃ思いっきり(道路交通法)違反だね!」
警察署の署長が笑顔でグレードホープに語りかける。
「まったく。(署長が)余計なこと言うから。」
軽くストレッチを済ませ、追う体勢をとった。
「では署長、予定通りでお願いします。」
署長がうなずくとグレードホープは走り出していった。
「止まりなさい!そこのゴールドシップ!」
迫るグレードホープにゴールドシップは振り返る。
「マメちん?」
「フェノーメノじゃねぇよ!本職だよ!」
「ほう、このゴルシちゃんに追いつけるかな?」
児童を抱えるゴールドシップに追いつこうとスピードを上げるグレードホープ。
(まったく、ニセイでもやらねぇようなことしやがって!まあ、あいつはあいつで違った意味であくどいところはあるけどな。)
振り切って差を広げようとするゴールドシップ。
しかし、相手はなかなかしぶとく追走してくる。
(やるじゃねぇか。マメちんといい勝負といったところか。)
ただ者ではないと感じはじめるゴールドシップであった。
(さすが、なんだかんだ言っても中央のウマ娘か。フォームといい、ストライドも地方ではありえないほどだな。まったくこんなの相手にさせやがって!)
心とは裏腹に現役時代に戻った気分のグレードホープだった。
(ま、あとちょっとで終るけどな。)
道路が封鎖され一方向に誘導されていた。
逃げるゴールドシップ、追うグレードホープ。
ゴールドシップに抱えられたバク君ははしゃいでいた。
だが、最終的に袋小路に追い込まれた。
「ゴール!ゴルシちゃん一着!って、ここはどこだ?」
赤レンガの建物がある広場にいた。
「ふれあいプラザってとこだよ。」
グレードホープが答える。
「ゴールドシップ。道路交通法違反でちょっと署まで来てもらおうか?」
「ちょっと待ってくれ!」
「……って、言いたいところだが、この先は真面目に歩け。見張ってやるからな。」
「ちぇっ、わーったよ!」
しぶしぶ承諾するゴールドシップであった。
グレードホープに連絡が入る。
「おう、オペラか。今、ふれあいプラザでな。まあ、なんとかなったよ。……ん、八幡宮でなくて材木町まででいいのか?見張り。代わりのやつに頼んだ?……ん、そうか、わかった。」
しばらくして本隊がやってきて合流し、休憩後再出発していった。
岩手山をバックに夕顔瀬橋を通り、材木町へ。
しばしの休憩の後、盛岡駅へ向かう。
ゴールドシップはいつの間にか見張りのグレードホープがいなくなっていることに気がつく。
(あれ?あの警官のウマ娘いなくなってる。って、ことはサボっていいってことか?)
一瞬にして気がダラける。
気が緩み歩行がダラダラになって最後尾のゴールドシップはおいていかれそうであった。
その時突如として背後から蹴りを入れるウマ娘があらわれた。
「痛って!何すんだよ!」
おしりを蹴飛ばされ振り向くと顔見知りの小柄のウマ娘がチャグチャグウマ娘の装束を身に纏い立っていた。
「よ!」
「って、なんであんたがいるんだ、ステゴ!」
ゴールドシップの寮での同室ステイゴールドであった。
「まあ、なんだ。成り行きだよ。私があちこち行くだろ?で、追試だのやらされてな。その時同じクラスだったオペラに学業面でいろいろ世話になったんでね。ささやかだけどそのお返しってとこかな。」
「知り合いだったのかよ!」
「ま、そういうところだ。さっさと歩け。でないとお前の黒歴史うっかり口をすべらしちまうぞ。」
「やめろ!」
ステイゴールドを背にしてしぶしぶ歩きはじめるゴールドシップ。
ステイゴールドのあとにメイセイオペラをはじめとした岩手トレセン学園の生徒達が練り歩くのであった。
盛岡八幡宮に到着しなんとか無事に終わらせることができた。
「ステゴさんありがとうございました!」
「まあ、この程度のことなら都合が合えばやれないことはないよ。」
メイセイオペラの言葉にステイゴールドはそう答える。
「この後、打ち上げしますけど、参加されます?」
「いや、遠慮しとくよ、これから行くところあるから。」
そう答え風のようにステイゴールドは去っていった。
(相変わらず掴みどころがない人だな。)
メイセイオペラはそう思った。
ゴールドシップは疲れがたまりすぎてヘタレ込んでいた。
かくして今年のチャグチャグウマ娘は無事に幕を下ろしたのであった。
翌日、メイセイオペラは盛岡駅の新幹線ホームにてゴールドシップを見送る。
「まあ、そこそこ楽しかったぜ!また来年呼んでくれよな!」
笑顔でゴールドシップが言う。
「ええ、前向きに検討させていただきます。(ぜってぇ呼ばねぇけどな!)」
やや強張った笑顔でメイセイオペラは返答した。
新幹線が走り出し、ようやく解放された気分のメイセイオペラであった。
「ああ、もう、づーがーれ゙ーだー。」
盛岡校に戻り生徒会室のデスクで突っ伏して寝るメイセイオペラは一週間分の気疲れで疲労度もMAXになっていた。
「ヘタってる場合じゃねぇぞ、オペラ。次のレースまで10日切ってるだろが。気持ちを切り替えとけよ。」
トウケイニセイにそう声をかけられる。
「そうでした。荷づくりしないと。明後日に出発なんで。」
「挑発もされてるしな。」
「まあ、挑発されなくても出走するつもりですし。G1なんで。」
昨年、三着に甘んじた帝王賞への期日が近づいていた。
後、特別編もう一つなんですがまだ未完なのでもうしばらくお待ちください。