ビューチフルドリーマーズ(ウマ娘)   作:ききき三左衛門

4 / 13
第4R 決戦!南部杯!

Chapter1 ようこそオーロパークへ!

 

 南部杯が一週間前にせまり、メイセイオペラは一足早く決戦の地盛岡へ向かうこととなった。

東京駅から乗り込んだ東北新幹線は一路北へ向かう。

(まあ、景色でもぼんやり眺めてあとは少しねまるか。※ねまる=寝る あいつの世話もしばらくしなくて済むしレースにも集中できそうだな。)

車窓からビル群などをぼうっと眺めながらそんなことを頭に思い浮かべていたのだが。

「あのう、お隣の席、よろしいですか?」

「あ、どうぞ。」

声をかけられ旅行者かなんかだと思って顔すら見ずに応じた。

しかし、隣には何故か毎日のように嫌というほど顔をあわす頭に赤い大きなリボンをつけたウマ娘がいた。

「おい、どういうつもりだ?」

そのウマ娘は変態的な笑みを浮かべながら新幹線の切符をヒラヒラ見せびらかした。

「学校あんだろが!サボんのか?デジタル。」

「実はですね……。」

 

二週間前のことだった。 

アグネスデジタルは生徒会室から出てくるユキノビジンを見かけた。

「ユキノさん。」

「あ、デジタルちゃんでねえが。」

アグネスデジタルは少し浮かない表情のユキノビジンに問いかけた。

「何かあったんですか?」

「いや、あったっていうよりは、どうしても都合が合わなくて。生徒会さんだぢの頼み事を受けられねくて。」

「頼み事ですか?それってどういうものなんですか?」

「今度、盛岡で南部杯あるべ?新聞部だがで南部杯の特派員やってけねえがって言われだんども。」

「特派員!」

「オラも去年はやったけど今年もどうかって言われだんども都合悪ぐて断るしかなくて。本当はオラも行きたがったんだけど。」

「それって誰でも参加資格があるんですか?」

「んだね。誰でも大丈夫だどは思うんだけど、できればレースさ出走するウマ娘さ親しいとかのほうがいいって言われだんども。」

「え?それじゃあ!」

アグネスデジタルは張り切ってユキノビジンを連れて生徒会室に入っていった。

 

「それで『南部杯特派員』でお前が名乗りをあげて盛岡行くって流れになったのか……。」

「ダートにも興味ありますし、何より同じチームでレースに出走する方もおられますので二つ返事で許可いただきました!しかもレース前の取材もあってその期間の学業は免除ってことで至れり尽くせりです!」

頭を抱えるメイセイオペラと対称的にアグネスデジタルは嬉嬉としてそう答えた。

「お前さあ、いやもういいや……。まあレース終わったらどっか行きたいとことかあるか?近場だったら連れてってやるよ。」

「こづくり村。」

「は?こづ……。」

メイセイオペラはアグネスデジタルの言葉の意味に気が付きすぐさま顔を真っ赤にしてアグネスデジタルの両頬を思いっ切りつねった。

「おい、どうやって作るんだよ!言ってみろ!やってみろ!今すぐ!ホラホラ!」   

「痛いへす(です)。ひょうはんへふっへ。(冗談ですって。)おこふってこほはいみひっへるひゃないへふか。(怒るってことは意味知ってるじゃないですか。)」        

「うるせぇ。ろくでもないことばっか知ってやがって!」

メイセイオペラはつねったアグネスデジタルの頬を離した。 

「ああ、もう痛いじゃないですか。そうですね、じゃあ、『プータロー村』でお願いします。」

「『プータロ村』な。そこお前が思ってる様なとこじゃないから。って!近場っつったろが。」

(こんなんでオレ、レース勝てるのか?デジタルのやつもついてきやがって。オマケに通常運転だし。こうなったらニセイ先輩にガッツリしごいてもらうか。四、五日動けなくなるくらい。あと、妹にこの変態を会わせたくない。コイツの1個上だけど。)

新幹線で少し休む予定だったが余計な疲労感におそわれつつ盛岡駅に到着した。

(ニセイ先輩もこんな感じで乗り物乗ると疲れちゃうのかな。もっともオレの疲労感はコイツのせいだが。)

車中は常にアグネスデジタルの監視、いや視姦のもとで気が気ではなかった。

ときには変態の目をしてジュルリらとよだれが出そうになっていた。

 

盛岡駅からタクシーで向かい盛岡レース場及び岩手トレセン学園盛岡校に着く。

かつての盛岡レース場の異名にちなんで「オーロパーク」という名称でも知られている。

オーロ(ORO)はスペイン語で「黄金」を意味し、その昔、盛岡レース場が別名黄金レース場と呼ばれたことに由来する。

「おい、デジタル着いたぞ。ここがオーロパークだ。」

「やって参りました!『ときめきワンダーランド!』マイルだけに!」

アグネスデジタルは両手を挙げてそう叫んだ。

「は?何言ってんだ?ホラ行くぞ。」

二人はレース場内に入っていった。

「まず、生徒会室に行って挨拶だな。」

生徒会室には芦毛のウマ娘がいた。

「こんにちはオペラです。あれ?モリユウプリンス会長は?」

「会長は今水沢で用事があって行ってる。」

芦毛のウマ娘はそう答えた。

「そうでしたか。こちらは岩手トレセン学園の生徒会副会長ヘイセイシルバーさんだ。」

「あの、日本トレーニングセンター学園の南部杯の特派員で来ました、アグネスデジタルです。よろしくお願いします!」

アグネスデジタルはしおらしく挨拶をした。

「ああ、中央の制服……。懐かしいな。そっか特派員か。話は聞いてる。できる限り協力するつもりだから遠慮なく要望は言ってください。」

「わかりました。では、色々取材させて頂きますのでご迷惑にならないよう務めさせていただきます。」

「あ、ニセイ先輩ってどこですか?」

メイセイオペラはヘイセイシルバーに尋ねた。 

「さあ?レース場かトレーニングコースいるんじゃない?」

「そうですか。ではまた。」        

そう言って二人は生徒会室を後にした。

「あの、あの方は副会長さんなんですか?」

「そ、元々中央から転校してきた人で2年前の南部杯で2着にもなってる。そのことはあんまり本人思い出したくないようでみんな触れてないけど。」

「え?どうしてですか?」

「『砂の女王事件』って言えばお前なら分かるだろ?」

「あ……。(その時の2着でウイニングライブやらされて散々だった方でしたか。)」

トレーニングコースに向かう途中、向こう側から声をかけてきたウマ娘がいた。

「お姉、帰って来たんだ。」

「ああ、早めに調整しときたくてな。」

「え?お姉ってことはこの方はもしや……。」

「あの、この方はどちら様で?」

「あ、私、日本トレーニングセンター学園のアグネスデジタルと申します。お、お姉様にはいつもお世話になっております。」

「えっと、岩手トレセン学園水沢校メイセイユウシャって言います。こちらこそ姉がいつもお世話になっております。」

「(『メイセイユウシャ』さんっておっしゃるの!なんて姉妹で素敵なお名前なの!しかも見た目もそっくり!)ジュル……。」

メイセイオペラは冷ややかな眼で言った。  

「おい、ユウシャ。あんまこいつに近づくと変態が伝染るぞ。」

「そんな!初対面で誤解を与える発言は控えてください!」

「あ?お前、さっき新幹線でなんつったかここで言ってやろうか?」

「許してください……。」

「二人は仲良しさんなんだね!」

「おい、ユウシャ。これのどこ見てそう思うんだよ!」

「そうね、仲良しさんで何よりね。」

冷たい口調で割って入って来たのはサカモトサクラだった。

姉のサカモトデュラブが遠征で東京盃参戦の付き添いで先日大井に行ったばかりであった。

そして冷たい視線をアグネスデジタルに向けた。

「サクラさんまたまたお世話になります。」 

アグネスデジタルは勝ち誇った様な笑顔を見せるとサカモトサクラは顔を引きつらせた。

我慢ならずメイセイオペラにヒソヒソ 耳打ちするかのように詰め寄った。

「ちょっと、なんであの子ついて来たの?オペちゃんの要望?」

「オレが喜んでるように見えるか?あいつ南部杯の中央トレセン特派員だってよ。ユキノさんの代わりで。」 

「じゃあレース終わるまで居座るってこと?」

メイセイオペラも嫌そうにうなづいた。

サカモトサクラは大きくため息をついた。

(いっそのこと、近くのダム湖に沈めてやろうかしら?)

そう思わずにはいられなかった。  

「あ、そういやニセイ先輩まだいる?」 

「うん、エンペラーちゃんのトレーニング付き合ってると思う。」

「じゃ、こいつ連れて挨拶してくっから。」

二人はユウシャとサクラに別れて目的地に向かう。

「いよいよ、『魔王』様とご対面ですか。緊張しますね。」

「お前、本人の前で『魔王』とか言うなよ。オレなんかうっかり口滑らせて3時間正座で説教されたんだから。まあ、言う勇気があるなら言ってみな。どうなるかは保証できんがな。」

そんなことを言っていると向こうから小柄なウマ娘が近づいて来た。

「おう、エンペラーじゃねえか。こっちの生活に慣れたか?」

メイセイオペラが声をかけるとそのウマ娘は小さくお辞儀をした。 

「え?エンペラーさんて、トーホウエンペラーさんでしたか!今こちらにいらっしゃるんですか?」

アグネスデジタルは顔見知りであるかのように話したが当の本人は困惑していた。

「誰だ?お前なんか知らないのだ!気軽に話かけるんじゃないのだ!」

トーホウエンペラーはそう言うとそそくさと去っていった。 

「あの!ちょっと待ってください。あの……。」

アグネスデジタルは呼び止めようとしたがメイセイオペラがそれを制した。

「デジタルやめとけ。」

「あの久しぶりにお顔を拝見して嬉しくてついお声をかけてお話でもと思ったのですが……。」

「デジタル。あいつ今何でここにいるのか分かるか?」

「え?それは……。」

アグネスデジタルは答えに窮していた。

「あいつな。元々中央いただろ?でも体ができてなくてな。このままだとレース未出走のまま中央にいられなくて退学だって言われて、今も未出走でな。レースを続けるにはどっか地方のトレセン学園に転校するしかなくて仕方なく今年の春に岩手来たんだ。その格好でお前のこと知ってるって言われてどう思う?」

アグネスデジタルは中央のトレセン学園の制服に身を包んでいた。

トーホウエンペラーにとってそれは言葉にできない程の感情になるとは容易に想像できた。

「さっきのシルバーさんみたいに中央から転校してきた人もいるし、南関東やその他のトレセン学園から来た人もいる。無論岩手から転校する人もいるけど。スイフト先輩とか、カウンテスアップさんとか。ただオグリさんとかイナリさんとか地方から中央へ転校ってのは優れた実績や才能があっての事例であって実際は成績が芳しくなくてレベルの低いところに転校してくる方が圧倒的に多い。あいつもその一人なんだよ。」

「すいません……。ご配慮が足りませんでした。」

「分かればよろしい。ついでにオレへの配慮もよろしく頼む。」

「グヘヘ……。それはお断りさせていただきます。」

「おいコラ。」

すぐに立ち直ったアグネスデジタルと共にトレーニングコースに向かうメイセイオペラだった。

トレーニングコースでは黒ジャージのウマ娘が他のウマ娘と共にコースの整備をしていた。

「ニセイ先輩!」 

「おう、来やがったか。早めに調整ってとこか?」

「ええ、万全を期したくて。」

「で?隣にいるやつは誰だ?」

「あ、こいつなんですけど、ホラ、挨拶しろ。」

「あの日本トレーニングセンター学園のアグネスデジタルです。今回南部杯の特派員として参りました。よろしくお願いいたします。」

「ユキノの代わりのやつか。話は聞いてる。で、オペラ今回は期待していいんだな?オレもいい加減腸が煮えくり返って来てな。あのアブクポーロとか言うやつに言いたい放題されて黙っていられなくなってきてな。いくら温厚なオレでも。」

(自分で温厚って言ってる時点でちっともなわけだけど。言ったら面倒くさいんでスルーだなここは。)

「いや、その人の他にもタイキシャーロックさんとかエムアイブランさんとかトーヨーシアトルさんとか、バトルラインさんとかいますから、あとテセウスフリーゼさんか。でも地元なんで思い切って行きますよ。」

「G1も3回目か。」

「いや、ダービーグランプリもG1になったんで4回目っす。」

「もういい加減結果出せよお前。今だったら行けるだろ?」

「いやあ、先輩じゃないんでレースに絶対はないですから。そうそう、ちょっとご相談があるんですが。」

メイセイオペラはトウケイニセイに小声で耳打ちした。

「分かった。明日でいいか?」

「はい、では明日よろしくお願いいたします。」

メイセイオペラは一礼してアグネスデジタルを連れ去っていった。

 

(こういうことでしたか!)

次の日、アグネスデジタルはトウケイニセイに熱血指導を受けていた。

南部杯の取材の一環で岩手のトレーニングを体験取材することとなった。

何度もゲート練習させられ、その後、蹄鉄打ち、そして併走となり心身ともにクタクタになっていた。

「じゃ、お先っす。」

メイセイオペラがトレーニングメニューをこなしたらしくトウケイニセイに挨拶して去ろうとしていた。

「では、私もこれで。」

アグネスデジタルもその流れにのって付いて行こうとしたが手首を掴まれた。

「おい、どこ行く気だ。まだ終わっちゃいねえぞ。」

レベル99の魔王にレベル1の勇者は抗う術がなかった。 

「ひぃ~。」

「で、今の併走だが……。」

あれこれアグネスデジタルは指導を受け続けた。

説明を受けてはいたが次々指摘するので把握するのも一苦労だった。

おかげでトレーニングが終わると某有名ボクシングマンガの主人公のように真っ白い灰のようになった。

宿泊先にフラフラな状態で戻る。

「デジタルちゃん、大丈夫?」

メイセイユウシャが心配そうに声をかけた。

メイセイオペラもデジタルの姿に気づいた。 

「お、デジタル、だいぶこってり絞られたな。んじゃ、マッサージでもしてもらえや。おい、サクラ!こいつにマッサージしてくんない?」

そうしてサカモトサクラが出てくると不敵な笑みを浮かべながらアグネスデジタルをとある一室に連れて行った。

「あの……、マッサージって?」

「大丈夫!ホラ楽にして。」

「え?うぎゃ~!ちょ、サカモトサクラさん!」

「サクラのマッサージ効くだろ?」

嬉しそうにメイセイオペラは声をかけた。 

「え、いや、あの、マッサージはする方は得意でもされる方は……。ひぃ~ギブ!許してくださぁい!」

仲間内ではサクラの「拷問マッサージ」と呼ばれている。

苦痛は相当伴うがとても効くという評判だった。 

アグネスデジタルの叫び声が無慈悲に寮内に響き渡った。 

一通り終えると先程よりも疲労感マシマシのアグネスデジタルがそのままうつ伏せで寝そべっていた。

「お、なんだ。クタクタじゃねえか。」

そこへトウケイニセイが通りかかった。

「まあ、ちょっとやり過ぎたか。んじゃ、サクラにマッサージでもしてもらえ。おい、サクラ!」       

再び不気味な笑みを浮かべながらサカモトサクラが来た。

「悪いけど、マッサージ頼むわ、コイツの。」

「はい、喜んで!」

「は、いや、あのさっき……。」

「大丈夫、2回やれば効果も2倍ですよ。(ウソだけど。)」

 そうささやいてサカモトサクラはマッサージのおかわりを施した。

再び阿鼻叫喚のアグネスデジタルの叫び声に寮内は支配された。

「これは東京盃の分……、これはオペちゃんに馴れ馴れしくした分……。」

そうつぶやきながらアグネスデジタルに苦痛を与えているといくばくか溜飲を下げることができたサカモトサクラだった。 

「あれ?さっきサクラやってましたけど。」

「ん?そうなのか。」

メイセイオペラがトウケイニセイに2回めだと伝えたがサカモトサクラが嬉しそうにマッサージをしてるのを見て敢えて止めもしなかった。

「あいつどうでしたか?今年の新入生ですけど、まあ、一応中央のウマ娘なんでそこそこってとこですか?」

「え?ユウシャの1個下か?同い年だと思ってた。」

「ユウシャは1個上っす。」

「そうか……。」

「どうかしましたか?先輩。」            

「アグネスデジタルっつったっけ?……お前より才能あるかも。」

「まさか!あいつ、ろくすぽ練習せずにオレや他のウマ娘の尻追っかけてる様なやつですよ?選抜レースに出ようともしてないし。」

自分より才能ある。

信用できる先輩にそう言われても疑問しか残らないメイセイオペラだった。

しかしそれが立証されるのは3年後のことであった。

 

アブクマポーロはトレーナーと同伴で盛岡に向かった。

新幹線が動き出すとトイレの個室にこもった。

出発直前まで何社か取材を受けていた。

(どいつもこいつも『AM対決』って!しつこい!)

フツフツと湧き上がる苛立ちを鎮めようとしていた。

ライバルのようにたかが岩手の格下のウマ娘が自分と同列に扱われている。

帝王賞のときもそういう質問を度々受けた。 

だが実績も実力も自分のほうが圧倒的に上だ。

もう勝負付けは済んでいる。 

そう言い聞かせていた。

南部杯のミーティングでもトレーナーには自分の実力が発揮できれば初めての盛岡遠征であろうが千六であろうが勝てると太鼓判を押され、自分でもそう思えるほど自信に満ち溢れていた。

(何も不安なことはない。絶対に僕が勝つさ!あの人の前で失態するわけにはいかないんだ!)    

そう思って意気込んでいるアブクマポーロだった。

 

「一年ぶりの盛岡か。」

バトルラインは旅行雑誌を新幹線内で開いていた。

「おい、バトル。旅行気分出してんじゃねえよ。」

エムアイブランが口を挟む。

「いいじゃないっすか!勝ったら近くの温泉にでも行こうかと思って。網張温泉とか鶯宿温泉とかいうのがあるらしいですし。」

「バトル。完全にフラグだぞ、それ。悪い方の。」 

タイキシャーロックが笑いながら言った。 

「縁起でもないこと言わないでもらっていいすかシャーロック先輩。俺だってこの間の帝王賞2着だったし、去年の南部杯も2着で今回こそは!って思ってるんですけど。」  

「で、今回も2着で負けてと。」

「茶化さないでもらっていいすか。ブラン先輩。去年2着だったんであと上目指すしかないんで。」 

「そういや、フリーゼとシアトル一緒に行くんだって?」

「ええ、ウチらのあとの新幹線で行くってシアトルが言ってました。」

タイキシャーロックの問にバトルラインが答えた。

 

テセウスフリーゼとトーヨーシアトルは東京駅で新幹線を待っていた。

「おい、シアトル何やってんの?」

トーヨーシアトルはスマホを片手にレースの動画を見ていた。 

「え?これですか?今メイセイオペラのレース見て研究してんですけど。」

「メイセイオペラ?岩手のやつか?」

「ここんとこ調子いいみたいなんで。パリスナポレオンさんに7バ身で勝ったりその次のみちのく大賞典で最終直線軽く流してレコード出したりしてるんで。」

「そうは言っても『南関の哲学者』に比べたらまだまだだろ?」

「ええ、自分もそう思うんですけど、前レースの帝王賞この人にも先着されてますし。油断ならない相手ですよ。」

「ふうん。メイセイオペラね。そういや岩手って魔王とか言われるやついるけどそいつなの?」

「別人です。その魔王様ってのはもっと強いらしいです。」 

「へえ。ま、地方のウマ娘だからな。大したことないだろって前までは思ってたんだがな。」

「アブクマポーロですか?」

「ああ、川崎記念、帝王賞とG1勝ってるし今年負けなしだってよ。」 

「知ってます。帝王賞のあとバトルラインとウイニングライブのことで揉めてメイセイオペラが間に立って止められたらしいです。」

「南関のウマ娘のウイニングライブなんて見てらんないからな。岩手とかは結構頑張ってるらしいけど。ま、それは阻止したいとこだね。」

テセウスフリーゼの言葉にトーヨーシアトルは無言でうなずいた。

 

アグネスデジタルは多少の疲労感を持ちつつも取材に励んだ。

まずはメイショウユウシ、カネアサジ、ジョウテンウイン、ニッポータキオンの岩手トレセン学園の南部杯出走者4名に話を聞くことになった。

「え、あの……。」  

4名は厳しい表情を浮かべてアグネスデジタルを取り囲んだ。

「ここじゃ話も何だから移動していいか?」

低い声で厳しい表情のジョウテンウインが言った。  

「あ、はい……。(もしやこれは袋叩きにされるんでしょうか?)」

狭い一室に入ると無言のままだった。

「あの……、お話を……。」

「いやぁ、もう我慢できない。カワイイってこっちの言葉でなんて言うんだっけ?」

「めんこい。」

ジョウテンウインの問にカネアサジが短く答えた。

「めんこい!そうだった。いやあもう!」

「あの……。わ!(って、こっちの言葉って……?私のこと『めんこい』って正気か!)」

ジョウテンウインがアグネスデジタルに抱きついた。

「ああ、ごめん、かわ……、いや、めんこい子を見ると抱きつきたくなって、しかも後輩だし。エンペラーにも抱きついたら『触るな、なのだ!』ってすぐ怒るからそれはそれで面白いんだけど。」

満足したのかジョウテンウインは離れた。

「後輩って、あの……。」

「『元』先輩だろ?ああ、私らみんな中央に一応いたんだよ。その制服も懐かしすぎる。えっと、まあ、なんでこっちにいるかは察してよ。私の場合青森生まれなんで近くの岩手に転校したんだけど。」

カネアサジが答えた。 

「私なんか、泣かず飛ばずでジャンプまでやったけど駄目でまあ、岩手は芝コースあるしって転校したんだけど。」

ニッポータキオンが言った。

「え!ジャンプまでってすごいです!」

「スゴくないよ、まあ、未勝利1着は取ったけどね。そもそもすごかったらここにはいないさ。」

「そうですか……。」

アグネスデジタルはだんだん暗い感情になっていったが気を取り直して質問した。

「皆さんはG1レース出走は何度目なんですか?」

「多分ユウシ以外は初めてだと思うんだけど。ユウシは何度目?」

「今度の南部杯で4度目。安田記念2回に芝のマイルチャンピオンシップ。そのうち2回は浦和の雷帝様が勝ちなさったよ。」 

ジョウテンウインの問にメイショウユウシは答える。

「トロットサンダーさんと同じレースですか!」

「G1はサッパリだったからまあ、いいんだけど、東京新聞杯(G3)でもあたってクビ差で負かされたからそれは今でも悔しいよ。まあこっち来たのだって半分ヤケクソみたいなもんだし。」 

アグネスデジタルの問に答えるメイショウユウシだった。

取材後にメイセイオペラと会った。

「おい、どうした?珍しく元気ねえじゃねえか?」

「オペラ先輩……。もし鳴かず飛ばずでトレセン学園にいられなくなったら岩手に転校して来てもいいですか?」   

「どうした急に?ははあん、あの四人元々中央にいたからな。話を聞いてそれでやってく自信がなくなったと。」

「岩手だったから盛岡に芝コースありますし……。」

「その前にだ。お前はちゃんとトレーニングして選抜レース出ろよ。まずはそっからだろ?まあ、岩手に来てもいいけどよ。そしたらニセイ先輩にみっちり指導してもらってそっからサクラのマッサージでフルコースといこうか!」

「いやぁ!それだけは何卒、何卒!」

昨日の悪夢がフラッシュバックするアグネスデジタルだった。

 

 次の日、アブクマポーロに取材しようとアグネスデジタルはトレーニングコースで声をかけた。

「あの、アブクマポーロさんお話を伺ってもよろしいですか?」

アブクマポーロは一瞥して答えた。 

「断る。君はあいつと同じチームだろ?なんで敵にわざわざ話す必要があるんだ?」

「(敵って……。)あの、一言でもいいので。」

アグネスデジタルの言葉を無視しアブクマポーロはコースに出ていった。

「なんだよあいつ。ケチくせーやつだな。」 

「バトルラインさん。」

「ああ、君が今回の特派員か。オペラにいつもつきまとってるっていうアグネスデジタルだっけ?」

「はい、あの後でお話をお伺いしますのでよろしくお願いいたします。って、いつもつきまとってるわけじゃないですから。オペラ先輩以外にも観察対象はいらっしゃいますし。」

「つきまとってるってのは否定せんのか。確か君って芝とダート決めかねてるんだっけ?」

「ええ、まあ。(言えない……本心は。そんなこと言ったらバトルラインさんになんて言われるか。)」

「まあ、時間はまだあるし、じっくり考えると良いよ。」

「あ、はい。(え、嘘、バトルラインさんてダートにプライドある方だとオペラ先輩から伺っていたんですけど。もしかしてすごくいい人?)」

「あ、デビちゃんの話でも聞いてみれば?」

「デビちゃん?」

そういうとバトルラインはあるウマ娘に手を振って声をかけた。 

「お~い、デビちゃん!ちょっとこっち来てくれる?」 

そしてそのウマ娘は気づいて駆け寄って来た。

「バトル先輩なんすか?」

「この子、今度の南部杯の取材してて、なんか話してくれない?」

アグネスデジタルは挨拶した。 

「あの日本トレーニングセンター学園のアグネスデジタルです。取材よろしいですか?」

「ああ、良いですよ。私は山形の上山トレセン学園のデビットカードです。」

「そういえば、バトルラインさんとお知り合いなんですか?」

「まあ、私も一応君と同じとこにいたんでね。その時にバトルライン先輩にお世話になったんで。」

「(この人も元々トレセン学園にいらした方だったんですね。)そうなんですか!」

「デビちゃん調子いいじゃん。9連勝だって?」

「ええ、まあ。」

「9連勝!それで南部杯に参戦になられたんですね。」

「参戦したかったもあるし、これから自分の力がどれだけかも知りたいし。それに……。」

少し間が空いてデビットカードは口を開いた。

「それに中央にいた頃は全然勝てなくて上山来てやっとレースができてるって。今充実してるんで。後、同い年のやつには負けたくない。アグネスデジタルさん、君と同じチームのやつには。」

「メイセイオペラは手強いぞ。」  

バトルラインは手短に言った。

「わかってます。でもあの人中央の入試落ちたらしいじゃないですか。私は実力で合格したのに。なんで中央に今いるのか腹ただしくて。」

(え?オペラ先輩って入試落ちて岩手に入られたんですか!初めて聞きました。)

アグネスデジタルは驚いていた。

そしてバトルラインがそれに答えた。

「いやデビちゃんそれは違う。あいつは、いや……。忘れてくれ。」   

込み入った事情をわざわざ口にすると思いバトルラインは口をつぐんだ。

アグネスデジタルは気になったものの事情を察して話題を変えた。

「あの、それで、盛岡レース場はどうですか?」 

「まあいいレース場だと思うよ。府中にも似てるし。思ったより走りやすいかな。」

「そういやそのことなんだけどブラン先輩がさっき『なんだよこのレース場、府中とそっくりじゃねえか!』て怒ってた。シャーロック先輩がそれに盛岡レース場は府中と姉妹提携してるって答えてたよ。」

「相変わらず、ブラン先輩とシャーロック先輩とつるんでるんですか?」

「まあな、一緒のレース出ることも多いし。腐れ縁みたいなものか。」

取材は滞りなく進みその後、タイキシャーロック、エムアイブラン、バトルラインの取材、その後テセウスフリーゼ、トーヨーシアトルに取材を終えると最後はメイセイオペラに取材をする運びとなった。

 

「で?なんでオレ一人の取材なんだよ!」 

「いやいや、日頃お世話になってますが、みっちりとお話をお伺いしたくて。」

「後、なんでユウシャがいるんだよ!」

「お姉が答えにくい質問は私が代わりに答えてあげようかと思って。」

「お前ら……。(いつの間にそんな仲良くなったんだよ!)」

何故か妹のメイセイユウシャも取材に応じることとなった。

「おい、ちゃんとレースのことを聞くんだよな?」

釘を刺しにいったがアグネスデジタルはにこやかに答えた。

「当たり前じゃないですか〜。」  

「(どうも怪しい。)んじゃ、とっとと始めてくれ。」

「では、最初の質問です。初恋のお相手はいつ頃どんな方でしたか?」

「おい、のっけから関係ねえ質問じゃねえか!」

「いえいえメンタルは大事ですよ。レースは特に。」

メイセイオペラはアグネスデジタルに掴みかかった。

だが、その問いに後ろにいたメイセイユウシャが口を開いた。

「あのね、小学校の頃、すんごい速い球投げる同じクラスの……。」

「え、その話、kwsk!」

「ユウシャ!ちょっと黙ろうか。」

「うっぐ……。」

背後のメイセイユウシャの口を塞ぎ、引きずるようにサカモトサクラのもとへ送り届けた。

「全く!次こんなことしやがったらニセイ先輩の指導もう一日やってもらおうか?」

「それだけは……。勘弁してくださぁい!」

終始当たり障りのない質問応答が繰り返され取材を終えるアグネスデジタルだった。

 

 その頃アブクマポーロは最終調整トレーニング中、何故か苛立ちを覚えた。

遠くに見える岩手山を眺めつつ思った。

(なんか……。のどかすぎるんだよ!ここは!)

南関東の都市部の緊張感と真逆な盛岡の大自然豊かな情景のギャップに戸惑いを感じていた。 

その傍らでトレーナーのイシザキが最終チェックを確認していた。

(まあ、問題ないだろ。ただ……。)

出走表を覗く。

一つだけ気にかかる箇所があった。

(確か、帝王賞のときは「未定」と表記されていたが今回は「非公表」となっている。)    

メイセイオペラのトレーナーの項目の変更された箇所であった。

そしてある一人のトレーナーの姿を思い浮かべる。

(いやいや、あいつは無茶やって岩手を追放されたはずだ。確か海外に行っていると風の噂で聞いた。そんなことがあるはずは……。だが水沢のG3も盛岡の重賞も圧勝している。トレーナーがついてることは確かだ。ただ有能なダートのトレーナーは限られている。外国人のトレーナーでなければ今に明らかになるだろう。)

いよいよ南部杯が明日に迫っていた。 

 

 一方、メイセイオペラのトレーナーはとあるバーに呼ばれていた。

「おじさん、久しぶり。」  

「『久しぶり』じゃねえよ。こんなとこに呼びやがって。スナックとかでいいだろが。」

「まあまあそう言わないで。」

呼んだのはスピカのトレーナーだった。

「調子良さそうじゃない。岩手から来た何つったっけ?」

「メイセイオペラ。お前、岩手のウマ娘だって知ってわざと俺をこっちに呼び寄せただろ?」

「ブー。違いますー。たづなさんが困ってたからポイントあげようかと思って。でもいいの?おじさん。明日南部杯なんでしょ?行かなくていいの盛岡?」

「お前……たづなさんは無理だろ。あと俺が岩手出禁なってんの知ってて言ってるだろ!第一出禁なってなくても盛岡行ったら半殺しにされるわニセイに。」

「知ってて聞いた。」

「性格悪すぎだろ。」

などと話しているとリギルのトレーナー東条ハナがやってきた。

「あんたまたツケで飲もうとしてるの?」

「いやいや、今日はこのおじさんのおごりで。」

「おいコラ、誰がおごるって言った?」

おハナさんがメイセイオペラのトレーナーに気づいた。

「あなたは確か……。岩手の鼻つまみ者じゃない!」  

「アレ、おハナさん知らないの?この人メイセイオペラっていうウマ娘の担当になったんだよ、ついこの間。」

「は?」

汚物を見るような視線でメイセイオペラのトレーナーを見ていた。

「よろしくー。リギルの名トレーナーさん。」

「誰があんた何かと。」

おハナさんはすこぶる悪印象を持っていた。 

「駄目駄目おハナさん。つんけんしてると眉間にシワが増えるよ。」

スピカのトレーナーはそういうと

「お前、わかってなねえな。こういう人がいざデレるのがたまんねえじゃねえか。特にアノときとかで。」

メイセイオペラのトレーナーは言い放った。 

「たしかに。」

男二人が鼻を伸ばしていた。

さすがにおハナさんもあきれて言い放った。

「そういうのはスナックとかでやれ!どスケベ男どもが!」   

怒声に二人は退散することにした。

「しかたねえな。スナック行って飲みなおすとするか。確か近くに『細純』ていうとこあってそこは下ネタ大丈夫なはずだから。」

メイセイオペラのトレーナーはスピカのトレーナーにそういうとシャレオツなバーをあとにした。

(メイセイオペラか……。かつて岩手最強のウマ娘を育てたトレーナーが担当……。まあ、ルドルフに比べたらって、地方って言ってもあのウマ娘、ルドルフの3倍も勝ち星をあげて……。ああ!なんかムカつく!ま、でもダートだし接点はないでしょ。)

苛立ちを隠せずグラスの中のワインを一気にあおってしまったおハナさんだった。      

 

 

 

 

 Chapter2 決戦南部杯!

 

南部杯当日の朝。

トウケイニセイは外を眺めていた。

「おはようございます。ニセイ先輩。」 

メイセイオペラが起きて来た。

「雨だな。」   

「雨ですね。」

「お前、こういう時どうする?」

「そうですね。雨が続くと道悪すぎて不利だと思いますが、いい感じで砂が固まってバ場が軽くなってくれればいいレースできるかもですね。」

「そうだな、ま、健闘を祈る。」

手短に言ってトウケイニセイはレース運営の準備のため去っていった。

 

 アブクマポーロのトレーナーイシザキはスタンド場内を見渡していた。

(それらしいヤツは見当たらんな。盛岡には来てないのか……。とすると……。) 

疑念は深まるばかりであった。

 メイセイオペラのトレーナーは東京のあるホテルの一室にてモニター越しに中継を見ていた。

(さて策は施した。あとは成果を発揮するだ。バ場の状態もベストに近い。勝つ条件は揃ったってとこだな。) 

などと考えていた。 

 

「いよいよ、メインレースですね!」

「そうだね……。」

スタンドゴール前に陣取っているアグネスデジタルは隣にいるメイセイユウシャに言ったが返答は沈んでいた。  

メイセイユウシャもこの日デビューから2戦目、勝ちを狙っていたが惜しくも3着に終わった。

「お姉が弾みつけられるように勝ちたかったな……。」

「ドンマイです。次頑張りましょう!次こそ勝てますよ!」

「そうだね。気を取り直してお姉を応援するよ。デジタルちゃんありがと。」

そしてその背後には例の二人(みなみとますお)がいた。

「いやあ、やっぱり盛岡来たらこれ買わないと。」

「ジャンボ焼き鳥は名物だしな。並んで買ったかいがあったな。」

「レースも注目の一戦だしな。まあ、これ終わったら明日府中に行って毎日王冠観戦の強行策だけど……。あれ……?」

「どうした急に?」

「いやあっちの方でなんか言い争いしてるみたいだな。」

来場したファン同士の言い争いだった。

「どうせアブクマポーロ勝つし。メイセイオペラなんか出る幕ないだろ。」

「何だと!もういっぺん言ってみろ!」

地元岩手のファンそして南関のアブクマポーロを応援に来たファン同士のようだ。

「やめとけ!熱くなりすぎだべ。兄ちゃん悪かったな。こいつオペラに思い入れあるから勘弁してけろ。ま、レースに『絶対』はないからお互い見届けることにするべ。」

「フン、こんなど田舎にG1レースなんざ不釣り合いだろ。全部南関でやればいいのに。」

「何だと!アブクマポーロが勝ってるからってなった気さなってんじゃねえぞ!」

「おい、よせって。」

南関東のアブクマポーロを推すファンと岩手のメイセイオペラを推すファンの一人が言い争いそしてそれを咎めるもう一人の岩手のレースファンの構図である。 

その様子にドン引きしている例の二人だった。

 

本バ場入場したメイセイオペラは雨上がりのバ場の状態を確かめていた。

(状態は悪くない。むしろオレにとって有利な状況だと思う。枠順も内側3枠。先行争いも比較的やりやすい。ただ、盛岡のコースは枠順の有利不利の影響はあまりないけど。でも当初の作戦で行けるかもしれない。)

前日トレーナーから電話での連絡があった。

事情があって盛岡には来られないとのことだった。 

「どうだ?思い切って逃げてみるか。明日の南部杯。」

「そうですね。逃げの得意な友人からも多少アドバイス貰いましたし。」

「ちなみに誰から聞いたんだ?」

「えっと、サイレンススズカっていうクラスメイトなんですが。」

「(宝塚記念を制したあの異次元の逃亡者からか!)ほう、そいつは頼もしいな。」

作戦は固まった。   

盛岡レース場は他の地方レース場よりも時計が出やすいことで知られている。

そして 府中のコースに近いとまで言われ、盛岡レース場が新しく移転してからの南部杯勝者はいずれも中央のウマ娘であった。

一番人気は川崎記念、帝王賞G1を2勝、今年負けなしのアブクマポーロ、2番人気は昨年の覇者でレコード勝ちのタイキシャーロック。地元のメイセイオペラは3番人気であった。

(誰かさんの言葉を借りるわけじゃないけど一番人気なんかいらない。欲しいのは一着だ。アブクマポーロ……。川崎記念のときのあんたにはとてもかなわないって思ってた。けど帝王賞ではある程度の手応えはあった。南部杯は地元のレースだし、オレだってあれからトレーナーとテンコーでみっちり坂路トレーニングしたんだ。簡単にはやられるつもりはないよ。勝負だ!アブクマポーロ!)

 

 

 

〔スタートしてまず直線900メートル、二つのコーナーをまわってゴール前200メートルには上り坂。

マイル戦の南部杯はスピード、スタミナそして抜群な瞬発力が要求されるハードな一戦です。

それにしても昨年の優勝者タイキシャーロックのレコード勝ちには本当にびっくりしました。

果たしてこのみちのく決戦を制するのは一体どのウマ娘でしょうか?

朝からあいにくの雨模様となりました盛岡地方ですがその雨もどうやらあがっているようです。

統一のグレードワンです。マイルチャンピオンシップ南部杯です。

ダートレースこの秋の最大のハイライトです。〕

 

 レース場内に岩手のG1ファンファーレが鳴り響いた。

 

 〔場内拍手大歓声が沸き起こりました。12名による決戦です。

 バトルライン、トーヨーシアトル、メイセイオペラ、ジョウテンウイン、デビットカード、テセウスフリーゼ、タイキシャーロック、カネアサジ、メイショウユウシ、ニッポータキオン、エムアイブラン、そしてアブクマポーロです。

 圧倒的な一番人気、船橋のアブクマポーロ、目下6連勝中のこのウマ娘が最後の枠入りであります。

 さあ、マイル戦です。〕

 

 ゲートが開き一斉に各ウマ娘達が飛び出していった。

 

〔南部杯スタートしました!

さあ、横一線のきれいな飛び出し、先行争いですが誰が行くんでしょうか?

一体どのウマ娘がハナをきってペースを握るんでしょうか?

おおっと内から3番のメイセイオペラが行きました。

岩手の雄メイセイオペラがハナを切ったでしょうか?外側につけましたのは6番のテセウスフリーゼであります。外のほうから10番のニッポータキオン3番手。昨年の優勝者タイキシャーロックは一バ身差の4番手につけております。

インコース詰め寄ってバトルライン。アブクマポーロは中団よりも少し後ろといったところ、その横にデビットカード、その後にトーヨーシアトル。固まって8番のカネアサジ、外のほうからエムアイブランであります。

 さらに後ろに4番ジョウテンウイン、最後方は9番のメイショウユウシであります。〕

 

 (なるほどな。やはり予想通りハナを主張したか。だが、ハナにたって簡単に勝てるほど甘くはないさ。フム、当初の予定通り少しペースを落とすか。最終直線は坂だしそこで勝負する。アブクマポーロと。)

 タイキシャーロックはそう考えていた。

(シャーロック先輩、ペース落としてアブクマポーロをマークってとこか。じゃあこの位置で最終直線ペース落ちてきたオペラ抜いてあの二人と争うこととなるな。)

 バトルラインは位置を確かめつつ動きを伺っていた。

(バカの一つ覚えみたいに今度もハナか。全く芸がないな。いつまでその相応しくない勝負服で走る気だ?まあいい、最終直線でちぎることには変わりはない。あいつよりもタイキシャーロックのほうが手強い。勝負は最終直線だ。そして勝って僕の力を嫌でもあの人に認めさせてやる。今の絶対王者は僕なんだ!)

 アブクマポーロは通常通りのレース展開で勝ちにいくと決めていた。

 

 3、4コーナーの中間点でも依然としてメイセイオペラが先頭を走っていた。

(平均ペース、バ場も悪くない。とするとシメシメといったところか。)

モニター越しに映るメイセイオペラを見てトレーナーはプラン通りのレース展開に手応えを感じていた。

 

〔メイセイオペラがペースを握っております。メイセイオペラが先頭。テセウスフリーゼがジワッと詰め寄って2番手です。今、第4コーナーのカーブから最後の直線です。インコースにはバトルラインが迫って来ております。さあここから最後の直線で坂が待ち受けておりますが……。〕

 

(よし、オペラ、ご苦労さんって、落ちてきたとこサクッと抜いてと……。え?ウソだろ?なんで落ちてこない?差が縮まらない!上り坂なのに!帝王賞からそんなに経ってないのにこんなに強くなるはずが……。)

最初に気づいたのはバトルラインだった。

メイセイオペラを抜くため懸命に全身全霊でラストスパートをかけたが一向に差が縮まらない。

それどころか徐々に差が広まって行く。 

タイキシャーロックもなりふり構わず慌てて猛追する。

(しまった!なんてことだ。これでは……。)

必死で最終直線の坂を駆け上がり、スパートをかけてもゴールまで追いつけない。

さらにその後ろでアブクマポーロも焦っていた。

〔さあアブクポーロはどうした?アブクマポーロは5番手につけておりますが……。〕

「(いかん!これでは間に合わない!)ポーロ!」

アブクマポーロのトレーナーも思わず叫んだ。

「それじゃ今のメイセイオペラには届かないよ。残念でしたね、イシザキさん。」

モニターでの観戦でもセイフティーリードで勝ちを確信しメイセイオペラのトレーナーは思わず笑みがこぼれた。      

(やっと気づいたか。アブクマポーロ。今の相手はニセイ先輩じゃない。このオレだ。いいかげんあんたの背中も見飽きたしな!オレを見ろ、アブクマポーロ!オレが水沢のメイセイオペラだ!) 

〔依然トップはメイセイオペラ!外からタイキシャーロックがやってくる!アブクマポーロがバ群の外から脚を伸ばしてきて2番手の一角……。〕

アブクマポーロが懸命に追うがさすがの末脚もリードを縮めるので精一杯だった。

(クソ!なんでだ?アイツにこんな力はなかったはず!帝王賞では捉えられたのに逃げ切れるはずないのに!)

アブクマポーロも懸命に追うが……。  

〔岩手の雄か?メイセイオペラが逃げ切ってゴール!3度目のAM対決は地元、岩手の雄メイセイオペラが三度目の正直で南部杯制しました!2着はどうか?〕

「っっしゃぁぁぁぁ!」  

力強く拳を振り上げて初のG1勝利をアピールしたメイセイオペラだった。

レース場も地元のウマ娘の逃走劇を目のあたりにし盛り上がりを見せた。

「凄い、あの強いアブクマポーロに影さえ踏ませなかった……。」

「見事な逃げだった。まるでサイレンススズカを見てるみたいだったな。」

例の二人も驚いていた。

「やったな!おい!ん?なして、泣いでらのよ?」

「……だってよ。一年前のこと、思い出したらよ……。」

「……だっけなぁ。あの時はレースどこじゃながったがらなぁ。」

岩手のファン二人は一年前のG1ダービーグランプリのことを思い出して感慨にふけっていた。

「こりゃ、ひょっとしたらひょっとするかもしれねぇな。」

「え?ひょっとするって何が?」

「まあ、まだ先の話だがらな。ほら、来たぞ。」

メイセイオペラがスタンド前にやってきた。 

「オペラ!オペラ!オペラ!」

スタンドからオペラコールが起きて、メイセイオペラはその声援に答えていた。

 

「やられたな。上手く出し抜かれてしまった。」

タイキシャーロックはバトルラインに話しかけた。

「オペラ……。強くなってた……こんな短期間でどうやって……。帝王賞のときはゴール手前で落ちてきたのに……。」

「ま、出し抜かれたのは私らだけじゃないみたいだが。」

タイキシャーロックはアブクマポーロに視線を向けた。

アブクマポーロは悔しさのあまり現実を受け止められず茫然自失になっていた。

(この僕が2着争い……。クソ!なんてザマだ!こんなはずではなかったのに……。) 

今年初めての敗戦、3着。

屈辱的でもあった。 

  

  

 

「やっと勝ったか。」

レースを腕組みしつつ厳しい表情で見守っていたトウケイニセイも少し笑みがこぼれた。

「やったー!お姉が勝った!」

「やりましたね!」   

スタンドにいたメイセイユウシャとアグネスデジタルも抱き合って喜び合っていた。

「お姉、結構ウイニングライブやるんだよ。デジタルちゃんも楽しみにしててね。」

「そうですか。そうですか。(でもいくらオペラ先輩がすごいって言っても地方ウマ娘ですからね。今まで何度もレベルの高いウイニングライブを見て目の肥えた私にはさすがに……。)」

アグネスデジタルは完全に高をくくっていた。

そして、場内にどよめきが起きた。

「レコード……。」

タイキシャーロックがつぶやいた。

電光掲示板のタイムの横に赤い文字で小さくレコードと表示されていた。

(まあ、私らに勝つくらいならレコードも当然か。しかし……。)

「シャーロック先輩……。」 

バトルラインもたった一年でレコードが大幅に塗り替えられたショックは大きいだろうと想像でき、そう声をかけるのが限界だった。

エムアイブランもそれを察してか無言でうなだれたタイキシャーロックの肩をたたいた。      

  

ショックを受けたのはタイキシャーロックだけではなかった。

「そんな、クマ先輩が負けるなんて……。」

船橋でレース中継を見ていたサプライズパワーは言葉を失っていた。

「やはりな、ポーロのやつ。油断が招いた結果だな。」 

コンサートボーイも傍らで中継を見て言った。 

「でも絶対、クマ先輩が勝つと思ってました。」

「あのな、レースに絶対がつくなんてのは二人位しか思いつかないぞ。だからレースには絶対はないんだ。」

「じゃあ、その二人って誰ですか?」

「一人はすぐ思いつくだろう?」

「シンボリルドルフさんですか。」

「ああ。」  

「でももう一人って……?」

サプライズパワーは問いかけたがコンサートボーイは敢えて答えなかった。

(もう一人は岩手のトウケイニセイ。40戦以上戦ってあの戦績はまず不可能だ。で、その後輩がメイセイオペラ。まあ、妥当な結果か。)

「サプライズ。お前、年末どうする?」

「えっと、クリスマスとか大晦日の予定とかですか?」

「違ぇーよ。(東京)大賞典出るかって話だよ。」

「出られるのであれば出ますよ!あいつ……。」    

モニターを睨みつけ同い年のメイセイオペラに敵愾心を燃やすサプライズパワーだった。 

「そうか。まあポーロも出るだろうし。参戦するか。(まさか私以外の地方ウマ娘で今のポーロに勝つヤツがいるとはな。対決が楽しみだ。)」  

 

 メイセイオペラは岩手トレセン学園の面々にハイタッチで喜びを分かち合っていた。

そして、トウケイニセイの前に立った。

「ニセイ先輩!とうとうやりました!」

Vサインをメイセイオペラはトウケイニセイの前に出して喜びを表した。

トウケイニセイは無言のまま不気味な笑顔で手招きし、メイセイオペラは喜んで近づいたが……。

「このヤロウ!やっと勝ちやがって!俺ならとっくに五、六勝はしてるわ!」

「ちょ!痛いっす!って、まだG1四回目なんスけど。」

「るせぇ!口答えすんじゃねぇ!さんざんヤキモキさせやがって!」

トウケイニセイはメイセイオペラにヘッドロックをカマしていた。

手荒な祝福に戸惑うメイセイオペラであった。

その祝福が済むとトウケイニセイはそれぞれに指示を与えた。

「……さて喜びを分かち合ったところで、デュラブ、サクラ!お前らは会場の案内!メインが一杯になったら第2会場へスムーズに案内しろ。シルバー、ハーバーは駐車場の整理。これも一杯になったら俺に連絡しろ!それから、ギャロップ、ミヤシロ、お前らは物販全般!売り込めよ!では各自配置に付け!」

それぞれに無線機を手渡すと各自散らばっていった。

「あとはモリユウがテレビ局と中継の打ち合わせて……と。腕がなるぜ!」

ウイニングライブ興行の準備で張り切るトウケイニセイに

「ニセイ先輩。オレは?」

「お前は、勝利者インタビューがあんだろ!その前にさっさとシャワーでも浴びてライブ用の衣装に着替えろ!あと、何演るかPAさんに伝えとけよ!さっさと行け!」   

「わかりました!」 

メイセイオペラはトウケイニセイの元を去って行った。

「ったく。ホント抜けてやがるんだからアイツは!」

呆れたように嬉しそうにトウケイニセイは声を発した。

気づくと近くにアブクマポーロがまだ悔しそうに唇を噛み締めていた。

「ハハハ、ざまぁねぇな!オペラごときに後れを取るようじゃ俺には一生勝てねぇぞ、小僧!ま、ウイニングライブはお前より数千倍はマシだから見とけ。」

アブクマポーロはトウケイニセイを睨みつけた。 

だがそれを無視するかのようにトウケイニセイは颯爽と去っていった。

(ああ!だったら見てやろうじゃないか!)

内心掛かりぎみであったようでやすい挑発にアブクマポーロはまんまと乗る形となった。

 

(挑発に乗るんじゃなかった……。)

深夜の閑散とした盛岡駅の前でアブクマポーロはそう思いものすごく後悔していた。

ウイニングライブが終わり盛岡駅へ向かうもタクシーもなかなか捕まらず、やっとで乗るも渋滞で盛岡駅に着く頃には最終の新幹線もとうに出発していた。

宿も考えてはいたが一刻もここから立ち去りたい一心で深夜バスに乗ろうと東京行きのチケットを買おうとしたがこれも満席、多少割高の横浜行きが辛うじてあってそれをしぶしぶ買い、出発を待っていた。

(それにしてもアイツ……。)

メイセイオペラのウイニングライブのことが頭をよぎった。  

レースが終わり、インタビューがあってそれからライブがある。

「だがら、言ったべよ。オペラ勝つって。今からじゃ間に合わねぇべ!」

「メイセイオペラが勝ったよ。うん、これからライブあるから。遅くなるね。」         

電話口では口々にメイセイオペラのことで様々声を出して喜びを表していた。

レースの時よりも観客がどっと押し寄せて来ていた。

「メイン会場は満席です!第2会場にご案内いたします!」

「メイセイオペラのグッズ、こちらで販売しております!」

「あ?駐車場も満杯?したら、近くの遊園地と動物園に交渉して停めさせてもらえ!そっからバスでピストンだ!いいか?」

レースが終わったにもかかわらず人でごった返していた。

「すごいな。地元のオペラの優勝で盛り上がってる。」      

バトルラインが目を丸くして言った。

「それだけじゃないぞ。この前パリスナポレオンがレースでもライブでも負けたって言ってたらしいからな。」

タイキシャーロックが答えた。

「そういや、オペラって確かトウカイテイオーのクラスにいるって言ってた気がする。ダンスレッスンの。」

「ほう、それじゃ期待値あがるのも無理ないか。ま、お手並み拝見ってとこか。」

バトルラインの言葉にエムアイブランが答えた。

「バトル。明日どうする?」

タイキシャーロックが問うた。

「まあ、普通に帰りますよ。負けちゃったし……。」  

バトルラインは答えた。

「そうか、ではバトル抜きでブランと温泉行くか。」

「あ、ずるいッス。オレも連れてって下さいよ!」

「フフ、仕方ないな。まあ、体を休めるのも重要だからな。」

ライブ準備の慌ただしさを3人は呑気に眺めていた。

 

 

Chapter3 ロックハンドスター

 

「Hey!カモン!エブリバデー!ウイニングライブでトゥゲザーしようぜ!」

ウイニングライブのMCがそういうと場が盛り上がった。

「誰だよ、あんなヤツ呼んだのは?いつもの『岩手のアイドル、ウジポン』さんで良かったじゃねぇか!」

トウケイニセイがそういうとモリユウプリンスが答えた。

「今年の岩手のレースのCMキャラクターになったんで仕方なく……。一応……知名度もありますし。」 

「あれじゃオペラやりづらいだろが!せっかくの初G1奪取なのによ。」

 

「OK!それじゃ紹介しよう!ニューロックハンドスター!(新しい岩手の星!)メイセイオペラだ!ヘイ!カモン!カッ!」

(すんげーやりづらい……。なんなんだ、あの人は?)

メイセイオペラもそう思ったのだが、この有名タレントの娘が岩手トレセン学園に入学し活躍するのは十数年後の話である。

メイセイオペラがステージに登場すると歓声が湧く。

勝負服と同じ色の青と白のサイリュームを持った満席の観客が出迎えていた。

「勝ったぞー!みんな!応援ありがとう!」

メイセイオペラが手を振りながら第一声をそう放つと再びどっと歓声が湧いた。

そしてパフォーマンスが始まった。

メイセイユウシャとアグネスデジタルもサイリュームを持って最前列に陣取っていた。

(え?何これ?スゴイ……。神だ……神が目の前にいる。)

アグネスデジタルは大多数の観客とともにサイリュームを振りつつ、パフォーマンスにいつの間にか魅了されていた。

(オペラ先輩……。しゅごい……。) 

そして、フィニッシュすると同時に鼻血を吹き出し失神して昇天し仰向けに倒れた。

白目をむいて変態的な笑みを浮かべていた。

「デジタルちゃん!大丈夫?」

となりにいたメイセイユウシャは慌てふためきながらも助けを呼んでアグネスデジタルは担架で医務室に運ばれて行った。

(あの野郎、最後にブッ倒れやがって!しかも最前列で!)

メイセイオペラは内心苦々しくそう思いながらも笑顔でパフォーマンスを終えステージを去り、無事にライブを終わらせた。

 

「オペラ……スゴい……。」

ステージ袖でタイキシャーロック、エムアイブラン、バトルライン、アブクマポーロは見学していた。 

バトルラインはそれ以上の言葉が出なかった。

「さすがだな。ダートウマ娘のライブとは思えないほどだ。」

「ああ。」

タイキシャーロックとエムアイブランも感嘆するしかなかった。

(何なんだアイツは!) 

アブクマポーロもライブを見て絶句しレースでの着差以上の差を感じた。

川崎記念、帝王賞で勝った自分が披露した曲と同じ曲だった。

だがアレンジも次元が違っていてダンスも歌唱も完璧にこなす姿に当てつけられたと感じ悔しさがふつふつと沸き起こった。

ウイニングライブの本来の主旨を思い出す。

レースでの勝利をファンとともに分かち合う、というものだ。

しかし南関での自分のライブではごく少数のコアなファンが勝利を称え、多くの観客達はレース場をあとにする。

仕方なく形式的にライブするだけでそれ以上のものはなかった。

今までそういうものだと思っていたし、他の南関のウマ娘達も似たりよったりの考えが主流だったのだ。

 

盛岡駅前にバスがやってくるとアブクマポーロは乗り込んだ。

深夜のバスが東北自動車道の盛岡ICに向かう。

(クソ!油断し過ぎた!東京大賞典でも同じように上手くいくと思うなよ!メイセイオペラ!)   

アブクマポーロは年末でのリベンジを誓った。

バスは消灯時間になって車内が真っ暗になっても悔しさで寝付けず横浜に着くまで一睡もできずに朝を迎えるアブクマポーロであった。 

 

Chapter4 毎日王冠

 

「カンパーイ!」

ささやかながらもその夜、メイセイオペラの祝勝会が行われた。

ニンジンジュース片手に飲み干す一同だった。

南部杯初制覇のメイセイオペラを岩手トレセン学園の面々とアグネスデジタルが祝福した。

「まあ、及第点だな。オペラが勝って、ライブも満杯だったし。興行的にもまあまあだな。」

トウケイニセイは総評した。

(良かった……。勝っても説教じゃなくて。)    

メイセイオペラも安堵していた。

「ニセイ先輩、ライブの方はどうでしたか?」 

「及第点っつったろ?そうだな、75点だ。」

「そうですか……。精進します……。」

トウケイニセイの評価は厳しかった。 

「ええ!そんな!オペラ先輩のパフォーマンスは私が今まで見たウイニングライブで五本の指には入りますよ!最&高でした!!75点だなんて!」

トウケイニセイの発言にアグネスデジタルは異を唱えた。

「つーか、デジタル、お前、終わって直後ブッ倒れてんじゃねーよ!ユウシャもびっくりしてたじゃねーか!周りに迷惑ばっかかけやがって!」

「ホント、デジタルちゃん急に倒れたからもう驚いちゃって死んだかと思って少しパニクったよ。」

「グヘヘ……。すいません。いやぁ、でも目の前に『神がいる』って思って尊死しちゃいました。いや、舞い降りた天使みたいでしたよ。」

「何言ってんだ。お前。あ、それより今度『聖蹄祭』があるんでパンフ持ってきました。ニセイ先輩来られます?」

「行くわきゃねーだろ!で、お前なんかやんの?」

「まあ、オレはユキノさんの手伝いで岩手物産展の参加になるんで。ユキノさん、ハルウララの高知に売上負け続けてるんで相当気合い入ってますよ。」

「ふうん。」

トウケイニセイはあまり興味無さそうに渡されたパンフをパラパラ見ていたがある箇所に目が止まり一瞬企むような邪悪な笑みをこぼした。

「あ、そうだ。明日、友達の出るレースあるんでテレビ中継一緒に見ませんか?」

「それって、お前のクラスのやつ?」

「ええ、まあ、サイレンススズカって言うんですけど。毎日王冠出るんで。」

「へー、宝塚記念勝ったやつか、有名人じゃねーか。」

「まあ、今回の南部杯で逃げ切れたのも彼女おかげですし。」

「まあ、いいけどよ。」

メイセイオペラの提案になんとなく受諾したトウケイニセイだった。

「え?オペラ、あのサイレンススズカと知り合いなの?凄え!」

サカモトデュラブが会話に入ってきた。

「ええ、一応クラスメイトなんで。アドバイスもらって逃げ切れました。」

「何だよ。私がアドバイスして逃げ切りで勝ったと思ってドヤ顔してたのに。サイレンススズカか、私も逃げウマ娘なんでファンなんだけど。」 

「デュラブ先輩の『適当に前に行けば』ってクソバイス。あれって何の冗談すか?」

「ひでぇ!おい、サクラ!お前の同室のやつ、G1勝ったからなった気さなってるぞ!サクラ!こっち来いよ。どこさ行った?」

サカモトサクラは料理を作っていて厨房にいるようだった。

トウケイニセイが席を立って様子を見に行った。

「サクラ、お前もそろそろこっちに来たらどうだ?サクラ……?。」

トウケイニセイが厨房に行くとサカモトサクラはうつむき加減で表情は沈んでいた。

「サクラ、どうした?なんかあったか?」

「いえ何でも。オペちゃんが勝って嬉しいですよとっても。」 

無理やりに作ったような不自然でぎこちない笑顔でサカモトサクラは答えた。

トウケイニセイはなにかを感じ取ったが今は触れずにおこうと思った。

「まあ、とにかく来いよ。」 

そう言い残してトウケイニセイは厨房を出た。

再びサカモトサクラの表情が沈む。

(オペちゃんが南部杯勝ったのは素直に嬉しい……。でも……。オペちゃんがこれから大きなレースを勝ち続けたらオペちゃん春になっても水沢に帰ってこないんじゃ……。オグリキャップさんやイナリワンさん、トロットサンダーさんみたいに中央に正式に転校だってあり得る。中央の人たちきっと返してくれない……。そうなったら私は……。)

メイセイオペラの南部杯制覇で嬉しさはもちろんあったが自分の能力に限界を感じていたサカモトサクラにとってメイセイオペラがより遠い存在のように感じてしまっていた。

(でも「行かないで」なんて口が裂けても言えない。だってオペちゃんは……。せめて姉さんみたいに遠征に行ける力があったら……。でもやっぱりそうなったら……淋しいな。あれ……なんで私……。)  

無意識に涙がこぼれていた。 

 

 翌日テレビで毎日王冠をメイセイオペラ達は観戦した。

〔グランプリウマ娘の貫禄!どこまで行っても逃げてやる!見事だ見事だ!サイレンススズカ!天皇盾本番に向かって視界良し!〕 

(さすがだな。スズカ。リギルのエルコンドルパサー、グラスワンダー相手に力でねじ伏せて逃げ切った。)

メイセイオペラはそれ以上の言葉はなかった。

「オペラ。お前の南部杯霞んだな。」

意地悪くトウケイニセイは言うがメイセイオペラも否定しなかった。

「ですね。オレの南部杯よりスズカの毎日王冠の話題でもちきりでしょうね。あ、それじゃそろそろオレ出ますね。」

「なんだ、まだ新幹線の時間あるんじゃなかったのか?」

「いや、コイツが行きたいとこあるらしいんでそこ寄ってから行く予定でして……。」

隣にいるアグネスデジタルに視線を合わせると変態的な笑みを浮かべていた。

「そうか。気をつけてな。」 

トウケイニセイはそういうとメイセイオペラ、アグネスデジタルは部屋を出て行った。

 

「カンパーイ!」

 その夜、スピカのトレーナーとメイセイオペラのトレーナーは例のバーで祝杯を上げていた。

「いやいや、大したもんだ。サイレンススズカを止められるやつなんていやしないだろ?」 

「そっちだって、あのアブクマポーロ相手に影さえ踏ませず逃げ切ったなんて、おじさんなんかやったの?」

「それ何だがそのサイレンススズカがメイセイオペラに逃げのアドバイスしたらしくてな。そのおかげだな。」

「え?そうだったの?」

「ああ、メイセイオペラが言ってたからな。」

「へぇ~。あのスズカがねぇ。」

「ま、ありがとな。おかげで南部杯勝てたし。」

「おじさん、やっぱ、なんだかんだ言って結果出すしすごいじゃん。」 

「いや、俺の功績なんて何もないさ。ニセイのやつがいろいろ教えていたようでな。ほんのちょっとパワー不足を補うトレーニングしていただけだっての。」

「またまた、謙遜しちゃって。」

「いやいや、お前のサイレンススズカのほうが。」

「いやいや、おじさんのメイセイオペラも。」

「いやいや、サイレンススズカが。」

「いやいや、メイセイオペラが。」

お互いがお互いの担当ウマ娘を称え合っている横でリギルのトレーナー東条ハナがノートPCのキーボードの打ち込みの手をとめてしびれを切らして怒鳴った。

「お前ら、うっさい!」

「ちょっとー、おハナさんツンケンしないの。まあ、うちのスズカが勝っちゃってごめーんね。あ、もともとリギルにいたんだっけか?」

「こらこら、からかうもんじゃないよ。おハナさん、残念だったね。いくらでも俺の胸で泣いていいから。慰めてやっか?俺達は祝勝会だけどおハナさんは残念会だもんなあ。世の中上手くいかないもんだ。何だったら逆にグラスワンダーみたいに俺がおハナさんの胸に埋めようか?」

「うっさい、◯ね。」

(こいつ等二人でつるむと余計にうざいな。)

おハナさんはウンザリして立ち上がった。

「言っとくけど今日は奢ってあげないからね。」

「大丈夫。毎日王冠で懐あたたかいから。」

「俺も南部杯で。」

「ねー。」

「ねー。」

 (ホントコイツら……。)

おハナさんはバーを出て行った。

「あの、すいません。お二人は店の品位を損なうようなお振舞でしたのでお引き取り下さい。お代は結構です」

店主に言われしぶしぶ出ていくスピカとメイセイオペラのトレーナーだった。

「おじさん、次はどうするの?」 

「そうだな。細純でも行くか?」

「そうじゃなくて、レースの方。」

「まあ、地元レースやってから(東京)大賞典かな。お前の方は?」

「スズカは天皇賞のあとジャパンカップでその後アメリカに……。」

「アメリカか。ずいぶん急だな。」

「まあ、そういう約束だったから。」

「そっか。」

深くは追及しなかった。

(さて、南部杯は勝てたし、ひとまず成果は出た。だが次からはマークされる立場だ。そこでも勝てるのであればこっちもドバイとか目指すか。)

勝った高揚感とともに心地よい秋の夜風を感じるメイセイオペラのトレーナーであった。 

  

    

 

Chapter5 デジたん旧レース場探訪 

 

 メイセイオペラとアグネスデジタルは盛岡市民の憩いの場「高松の池」ではなく、隣接する「こがねパーク高松」を訪れていた。 

「しかし、お前ももの好きだな。なんでこんなとこを所望したんだ?」

「だって、ここ前の盛岡レース場じゃないですか。オペラ先輩だってここ走っていたんじゃないんですか?」

「オレが入学したときにあと1年で取り壊しが決まっていてな。一度もここでレースしたことはない。ニセイ先輩はここでレコード出してた。」

「そうなんですね。」 

かつての盛岡レース場の跡地は市の公園になっていて、おもかげは周囲のトラックのみとなっていた。

ダートコースはアスファルトに舗装されている。

「ここでデジタルにクエスチョン。高低差の大きいレース場といえば?」

「中山レース場!5.3メートル!」

「……ですが、ここ旧盛岡レース場の高低差は?」

「えっとですね。4.5メートルってとこですか。」

「残念!不正解!正解は8.8メートルでした!」

「8.8!今の盛岡レース場のダートの倍じゃないですか!」

「実はこのレース場、もともとレースのためでなく軍属のウマ娘育成のために作られたんだよ。だから高低差も日本最大級になって『天然坂路』って呼ばれてた。」

「いや、でもそれじゃレースの出走者大変ですね。」

「ああ、人から聞いた話だとレースに参加した他所の地方ウマ娘から『勘弁してくれ』って言われてたらしい。」

「海外だと10メートル超える高低差のレース場ありますけど。でもどうして移転したんですか?」

「まあ、老朽化とかいろいろ原因あるんだけど一番は国際基準のレース場にしたかったってことかな。ここだと最大8人までしかレースできないから。」

(ここであの方は走っていたんですね。こんなとこで最大の強敵相手に二連覇したんですか!)

「まさに『兵どもが夢の跡』ですね。」

「芭蕉かよ。で、デジタル、芝もダートもどっちもやるのか?」

「はい!もちろんです!オールラウンダー目指します!」

「オールラウンダー?」

メイセイオペラは首をかしげた。

「え?なにか疑問でも?」

「『オールラウンダー』つったら『障害』もやらないとな。」

「障害!ジャンプですか。……ちょっとそれは。」

「あと『ばんえい』。」

「ちょっと!ジャンプは百歩譲るとして『ばんえい』はちょっと……。」

「見たいなぁ。ガチムチになったデジタルがお願いマッソーな感じで重たいソリ引くの。」

「いやあ。さすがにつてがないなので残念ですが……。」

「あ、大丈夫。たまにばんえいのウマ娘岩手来るから伝えとくよ。『アグネスデジタルっていう中央のウマ娘が興味ある』って。」

「いやあ!ホント大丈夫ですから!そんなガチムチになったらまともに走れないじゃないですか!もう!芝とダートで十分です!」

「何だ。せっかく気を利かせてやろうかと思ったのに。じゃあ、時間だしそろそろ行くか。途中、五叉路の交差点のとこで肉屋さんがやってるうまい弁当屋があるんだけどそこでなんか買ってくか。」

二人はかつての盛岡レース場を後にした。

アグネスデジタルはふり返った。

(盛岡支部長。今度盛岡来るときは出走者として来ますね。いつか必ず。)  

そう胸に誓いアグネスデジタルはメイセイオペラとともに盛岡駅へ向かって行った。

 

 

Chapter6 川崎酒場放浪記

 

※メイセイオペラが川崎記念に挑戦する数日前、メイセイオペラ、スイフトセイダイ、ユキノビジン等は川崎レース場の下見に来ていた。その後の話である。

 

「さてと、下見も終わったしちょっと付き合えお前ら。」

スイフトセイダイがそういうと飲み屋街に足を運ぶ羽目になった。     

「え?ここでですか?」 

メイセイオペラはユキノビジンと顔を見合わせた。

強引に進んでいくとある店に立ち止まった。 

「ここにすっか。お前らはなんか適当な食いもん頼め。」 

店の暖簾には「居酒屋一輪の百合」と明記されていた。

「ここでいいんですか?(確かここって……。)」 

メイセイオペラは確信はなかったものの不安がよぎった。

「大丈夫だって!居酒屋なんてどこもおんなじだろ。ボッタクリとかじゃないから。寒いから入ろうぜ。」

(そういうことじゃなくて……。) 

メイセイオペラはそう思うもスイフトセイダイに促されユキノビジンとしぶしぶ暖簾をくぐり入って行った。

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」 

「3名で。」

「開いてる席へどうぞ!」

店はまだ宵の口であったため人もまばらであった。

「なかなか良さそうなとこじゃねーか。」

テーブル席にドカっと座るとスイフトセイダイは店内を見渡しながら言った。

メイセイオペラは少し違和感を抱いていた。

店内の店員、お客ともにウマ娘の比率が高いように見えた。

「ユキノさん、ここの店ってもしかしてアノ人の店なんじゃないですか?」

「アノ人って誰だべ?」

スイフトセイダイが注文している間そう尋ねるも意図が伝わるようではなかった。

しばらくして、料理と黒ビールとニンジンジュースが運びこまれた。

メイセイオペラはビールのラベルを見て確信した。

(やっぱり!)

そしてその後に訪れるであろうスイフトセイダイの悲劇を予感していた。

「……っかー!黒ビールってのもたまにはいいもんだな!」 

メイセイオペラとユキノビジンの心配をよそにスイフトセイダイは一口目をあおってそう言った。

「ほら、お前ら遠慮すんな。食え。」

などと上機嫌のスイフトセイダイにその人は近づいた。

「あ、スイちゃん久しぶり!私のビール美味しいでしょ?」

スイフトセイダイは話かけられると同時に口に含んでいたビールをブハーっと一気に吹き出した。

「やだもう!ばっちい!せっかくの感動の再会が台無しじゃない!ばっちいのは顔だけにしてよね。」       

(やっぱりこの人の店だった。)

メイセイオペラがスイフトセイダイを見ると一瞬で無表情になっていた。

「あらユキノちゃんもいらっしゃい!相変わらずめんこいわね。」

「どうも、ありがとうがんす。」

「あ、こちらの方ははじめましてね。いらっしゃい!知ってるかもだけど私が川崎に咲く白き清らかな一輪の花ロジータです!一応ここのお店の店長オーナーです!」

(この人が川崎の女傑ロジータさんか。)

南関三冠ウマ娘で東京大賞典でスイフトセイダイを下したもののあっさり引退を決め、川崎記念での引退レースを圧勝した逸話を持つことで有名であり、引退後は飲食店を経営していると聞いたことがあった。  

「あの、はじめまして、岩手トレセン学園水沢校のメイセイオペラって言います。今日川崎記念の出走のためレース場下見に来ました。」 

「そうだったのね。それでこの店に来るなんてスイちゃん気がきくじゃない。ニートの割には。」

「うっせーな。じゃあ出るか。お勘定。」

「ちょっと!せっかく来たばかりなのにツレないじゃない。もっと飲んでいってよ!」

「やだよ!お前のクソまずいビールなんて飲めるかよ!」

「ひっどい!さっきはあんなに美味しそうに飲んでたのに。それにしてもスイちゃんは2着が大好きでね。(東京)大賞典で私が勝ったときも2着だし、その翌年はガルダンちゃんに負けて2着で、札幌のレースでも2着だったし。フフ。」

ロジータは嬉しそうに語るとは対称的にスイフトセイダイの表情筋は死んでいた。

(ああ、無意識にスイフト先輩の傷口を広げにいってる。)

メイセイオペラはそう思った。 

「ハイ、もう一杯!」

ロジータがビールを持って来た。 

「オペラ、もう出ようぜ。ボッタクリよりも始末が悪い。」

「ちょっと!ふーひょーひがい!さあ飲んで!」

しぶしぶスイフトセイダイはビールを痛飲した。

結局、しこたまロジータビールを飲まされるハメになった。

その間ロジータは接客の合間に自身のレースの自慢をしていた。

ユキノビジンがスイフトセイダイのライブパフォーマンスについて言及するとロジータは真顔で答えた。

「……だから(東京)大賞典は絶対に負けたくなかった。スイちゃんがスゴイの知ってたから。負けたら惨めになるって思ってたから必死だったわ。」

メイセイオペラはロジータの勝負師の一面を垣間見た気がした。

 

 ユキノビジンと離れ、酒臭いスイフトセイダイの肩を担いでメイセイオペラはなんとか宿泊先でもあるスイフトセイダイの家についた。

「すまねぇな。オペラ。」

「はい、着きましたよ。」

「悪いけど、水くれ。」

メイセイオペラが龍泉洞の水を差し出すとスイフトセイダイはゴクゴク飲んだ。

「オペラ。俺みたいになるなよ。アイツの言う通り結局一度も岩手以外で勝てなかった。」

「そんな……。スイフト先輩、ダービーグランプリ勝ったじゃないですか。オレ10着だったし。」

「お前はケガしてたじゃねぇか。そんなの気にすんな。これからだろ。これから、南関でも中央でも勝てる可能性はまだある。でもな、レース人生ってのはあっという間だぞ。……だから、後悔しないようにな。」

「はい、頑張ります。」

いつの間にかスイフトセイダイは眠りに入っていた。

ベットまで運んで布団をかけるとメイセイオペラは安堵した。

(スイフト先輩……。)   

メイセイオペラも自分の部屋に行って眠りに入った。

 

そんなことを思い出しながらいつの間にか車窓はビル群に変わっていた。 

「おい、デジタルもうすぐ東京着くぞ。」

アグネスデジタルは疲れが溜まっていたのか新幹線ではほとんど寝ていた。

「ふぇっ?」  

アグネスデジタルは寝ぼけていた。

(地元レースのあと、次の東京大賞典。スイフト先輩が勝てなかったレース。まだ、オレも岩手以外でG1はまだ勝ってはいない。だから、今度も勝ちにいきたい。) 

ビル群を眺めながら新たに決意するメイセイオペラだった。

   

    

     

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。