ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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一か月が経ちました、ぼっちです

 宇宙世紀0079年3月13日、地上部隊による進攻と降下部隊による奇襲を受けたキャリフォルニア・ベースは陥落。第一次に続き、第二次降下作戦もジオン側の勝利で戦いは終わった。

 そこから五日後には第三次降下作戦が発令。アジア方面に部隊が降下し、連邦軍部隊と激しい戦闘を繰り広げることとなる。

 

 ……という遠くの話はさておき、北米地域に降り立った僕たちサブナック隊は、奪取したキャリフォルニア・ベースを拠点として様々な作戦に従事していた。

 

 大規模な拠点であるキャリフォルニア・ベースとニューヤークは確保できたが、連邦軍の戦力を完全に駆逐できたわけではない。

 広大な北米大陸にはまだまだ連邦軍の基地が残っており、それらを制圧したり、相手の補給を断つことも僕たちの任務だ。

 

 ザクを駆り、数々の戦場を転戦していった僕たちは、幸運なことに誰一人として欠けることなく戦いを続けられている。

 みんなもエリート部隊への抜擢を目指して士気も高く戦いに臨んでいるが、僕としては微妙な気持ちだった。

 

 こうして小規模な戦いを続け、勝利を重ねてはいるものの……地球の制圧は、軍上層部が計画していたスピードでは進んでいない。

 物資を使い続ける泥沼の戦いに嵌り、時間をも消費して、それでも決定的な勝利を掴めないでいるジオン軍は、ここから徐々に苦しい状態に追いやられていくことを知っているからだ。

 

 現に戦功がそのまま出世に直結するサブナック隊とマルコシアス隊の二つの部隊以外は、過酷な地球の環境に士気を削がれ、宇宙に戻りたがる者が続出している。

 この士気の低下もジオンが苦しくなっていく原因の一つだとは予想ができたが、ただの兵士である僕には打てる手などなく、歯がゆい思いを抱えながら時間だけが過ぎていった。

 

 基地の制圧任務、物資を運搬する部隊を奇襲する任務、また基地の制圧に哨戒任務……と、そういう戦いを続けている間に、一か月もの時間が過ぎる。

 この頃になると僕たちサブナック隊のメンバーに対して、様々な評価が下されており……隊が結成された時と比べて、様々な変化が見られるようになっていた。

 

 最もわかりやすいのは、成績トップだったガスの扱いだろう。

 ブリティッシュ作戦で小隊員に死者を出し、キャリフォルニア・ベースでの戦いでも暴走する部下を止めるどころか率先して輪を乱す真似をした彼に対し、ヨハンソン大尉は『小隊長としての適性無し』という評価を下したようだ。

 

 結果、第二次降下作戦以降は小隊長の座を下ろされ、小隊員として作戦に従事することになった。

 だがしかし、これで万事解決とならないのがガスの面倒なところで、元来プライドの高い彼は自分より成績が下である仲間たちの部下になることが許せなかったようだ。

 

 そのため、自分の力を認めさせようと小隊長の指示を無視してスタンドプレーに走ったことも一度や二度ではない。

 厄介なのはなまじ実力があるために小規模な戦闘であればそれなりに活躍できてしまうところで、本人がその結果を盾に自分の行動を反省しないところだ。

 

 今はそれでもいいかもしれないが、連邦がMSを開発したらどうしようもなくなる。

 僕も何度か話をしようとしたが、彼にライバル視されているせいでまともに話を聞いてくれず、ガスは自分の取り巻きと共に隊の中で孤立しつつあった。

 

 現在は総隊長であるヨハンソン大尉が指揮を執るホワイト小隊に取り巻き共々配属されたおかげでコントロールができているが、彼がサブナック隊の問題児であることは間違いない。

 まあ、本人は『総隊長の隊に配属された=自分は優秀だと認められた』と考えて上機嫌になっているから、今は放置しておくしかないだろう。

 

 成績二位と三位のセシリアとオリバーは順調に評価を伸ばしつつある。

 どちらも優秀な小隊長として認められてはいるが、セシリアは不測の事態に弱く、オリバーはMSの操縦技術が一歩劣るという評価を下されてもいた。

 

 双方、可もなく不可もなくといった自分に対する評価を感じ取っているのか、ままならない状況に苛立ちを覚えている様子もある。(そういう姿を見ているせいでガスが上機嫌になっている部分もあった)

 

 かく言う僕はキャリフォルニア・ベース攻略戦でかなりの活躍を見せたおかげで、結構高い評価をもらえている気がする。

 ヨハンソン大尉は僕がサラミス二隻を落としたことやルウム戦役に若干参戦していたことも知っているだろうから、大した反応はされていない。

 ただ、サブナック隊のみんなから発せられる敵意は感じ取っていて、それがとても苦しくもあった。

 

 これ以上僕に戦果を挙げられるとエリート部隊への転属権利を持っていかれると思っているのか、隊員のほとんどが結託して僕の妨害をしてくるくらいだ。

 ガスのスタンドプレーと同様に、今はそうやって足を引っ張り合っていてもどうにかなるが……数か月後にはどうなるかわからない。

  

 このままでは、連邦軍のMSと遭遇した瞬間にあっという間に全滅……なんて未来が待っている気しかしない。

 一刻も早くどうにかしなければと、自分を取り巻く環境に焦燥感を募らせつつも、具体的にどうすればいいのかがわからずにいる。

 

 地球に降りてからおよそ一か月後の4月15日……今日も僕は人間関係に悩みながら、基地内の食堂で食事を摂っていたのだが……そこで気になるものを見てしまった。

 

「ん……?」

 

 僕と同じように一人で食事を摂っていた、薄い緑色をした髪の少女。

 キャリフォルニア・ベースでの戦いの際、同じホワイト小隊のメンバーとして戦ったリリア・ヴァレンタインが、具合が悪そうな表情を浮かべている。

 彼女はそんな自分の体調を隠すかのように、小さな体を丸めて縮まりながら食堂を出て行った。

 

 リリアのことが気になった僕は、急いで食事を掻き込むと共に食堂を出て、彼女を追う。

 具合が悪いせいか、歩く速度が遅かったリリアにすぐに追いついた僕は、その背中に向けて声をかけた。

 

「リリア!」

 

「っっ!?」

 

 びくっ、と体を震わせた彼女がゆっくりとこちらに振り向く。

 近くだと一層具合が悪そうに見える彼女の顔色を見た僕は、慌てて言った。

 

「顔色、すごく悪いよ!? 体調が優れないなら、医務室に行って――!!」

 

「いいから、気にしないで。大丈夫だから……」

 

「大丈夫って、そんなふうに見えないってば!」

 

「放っておいてよ。別にあんたに関係は……うっっ!!」

 

 僕に対して敵対的な態度を見せていたリリアが、不意に目を見開きながら呻いた。

 そのまま背中を丸め、口元を押さえた彼女の体が小刻みに震え始める様を目にした僕は、何が起きようとしているのかを理解すると共に息を飲む。

 

「うっ、うぅ……」

 

 もうリリアは限界寸前だ。今からトイレに運ぶ時間の余裕もない。

 ならどうするか……と考えた瞬間、僕の脳裏に某『またしても何も知らない25歳の方』と強い関わりがある、髭面の大柄な男性の姿が浮かんだ。

 

「こっ、これを!!」

 

「っっ……!!」

 

 上着を脱ぎ捨て、それをリリアに差し出す。

 目を見開いた彼女は僕の手からジャケットを奪い取ると、その中に顔を埋めて……あまり綺麗とは言えない音を響かせ始めた。

 

(ありがとう、藤〇さん……これが正しかったのかはわからないけど、一人の女の子の危機を微妙に救えました……)

 

 この行動、どうなんだろう? いや、()()()()()()? って感じだ。

 やがて胃の中の物を全て吐き出したリリアは、顔を上げると共に虚ろな目を僕に向ける。

 

 ジャケットを結び、中にあるものがこぼれないようにしながら……僕は彼女へと言った。

 

「だから言ったじゃないか。具合が悪いなら、医務室に――」

 

「……がい」

 

「え……?」

 

「お願い……誰にも、言わないで……!!」

 

「え? ええっ!?」

 

 普段は人を煽り、馬鹿にしてばかりいるリリアが、涙を流しながら僕に懇願してくる。

 吐いたところを見られたのがそんなに恥ずかしかったのかと驚き、言葉を失う僕へと、彼女は声を震わせながら言う。

 

「なんでもあなたの言うことを聞くから……お願い、みんなには黙ってて。お願いします……!」

 

 ……普段の態度からは想像もできないしおらしい彼女の様子に、何か理由があることを悟った僕は口を真一文字に結んだ。

 ただ具合が悪いだけなら、あのリリアがここまで必死になるわけがない。そう判断した僕は、息を吐いた後で彼女へと言う。

 

「……なら、まず事情を聞かせて。君の答えに納得できたら、このことは秘密にするから」

 

「……わかりました。あの、もう一つお願いがあって……私の部屋から、薬を取ってきてもらいたいんです」

 

「薬? なんの?」

 

「……あとでちゃんと説明します。今は、何も聞かないでください……」

 

 僕のタンクトップを握り締めた手をぶるぶると震わせながら、俯いたリリアが言う。

 彼女の頼みを聞いた僕は、小さく息を吐くと共に口を開いた。

 

「わかった。ただし、絶対に嘘は吐かないでね? それと……敬語なんて使わなくていいよ。調子狂っちゃうからさ」

 

「あ……」

 

 呆然とする彼女へと、僕の部屋に行ってくれと頼み、丸めたジャケットと鍵を渡しながら歩き出す。

 人に言えない秘密を抱えているのは僕だけじゃないんだなと、考えてみれば当然な事実に、僕は今さらながら気付いたのであった。

 

 

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