ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
専用機をもらってしまった
――宇宙世紀0079年5月6日。元の世界では大型連休として喜ばれていた日ではあるが、こっちの世界では関係ない。
そもそも軍人にゴールデンウィークなどあるわけもなく、僕はサブナック隊の一員としてやっぱり日々任務に勤しんでいた。
本日はキャリフォルニア・ベースにて、ブリーフィングが行われることになっており、既に部隊のみんなはブリーフィングルームに集結している。
地球降下作戦からほぼ休みなしで戦い続けてきたみんなの顔には流石に疲労の色が浮かんでいて、それがこの戦争の過酷さを表しているように思えた。
「全員、集まっているな。では、ブリーフィングを開始する……とは言っても、今回はただ連絡事項があるだけだ。新しい作戦に関する話ではないから、安心してくれ」
部屋に入ってきたヨハンソン隊長の言葉を聞いて、みんなが安心したことがわかった。
どうやら少しは休めそうだなと、そう考えているであろうサブナック隊のメンバーたちに、隊長はありがたい報告を始める。
「まずは休みなく戦いに臨み続けたお前たちによくやったと賞賛の言葉を送らせてくれ。みんな、よくここまで戦い続けてくれた。このキャリフォルニア・ベースを確保できたこともそうだが、ジオン軍が着実に北米大陸に勢力を広げられているのは、お前たちの活躍があってこそだと思う」
ヨハンソン隊長からのお褒めの言葉に、みんなが嬉しそうに笑う。
疲れている時だからこそ、こういう話はいい意味で効くよな~と僕も思う中、隊長は話を続けていく。
「キシリア様もお前たちの活躍を大いに喜んでくれていてな……これからの重力戦線での活躍を期待して、我々のザクを地上型に改修していただけることになった」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。そのついでというわけではないが、今日まで連戦に次ぐ連戦で疲弊しているお前たちにも、長期の休暇を与えるとのことだ」
休暇……その一言を聞いた瞬間、みんなが拳を天に突き上げて歓喜し始める。
三十機以上のザクを地上型に改修するとなれば、どう考えたって一週間以上の時間が必要だ。
その間、キャリフォルニア・ベースで今日までの疲れを癒せるのだから、みんなが喜ぶのも当然だろう。
「ザクの改修は順番に行う。ここで改修工事予定表を発表するから、自分の機体がどのタイミングで作業に入るか確認しておけ。あと、早く改修が終わった者は、J型に慣れるためにも試運転をしておくといい。話は以上だ。予定を確認した者から退室し、自室で体を休めてくれ」
そう言って、隊長がプロジェクターで今後の予定表を表示する。
一刻も早く休みたいであろうみんなが立ち上がり、自分のザクが何時、改修されるのかを確認し始める中、同じように立ち上がった僕へとヨハンソン隊長が声をかけてきた。
「クロス、ちょっといいか?」
「え? はい、なんでしょうか?」
「ついて来い。お前には、別で話がある」
少し不安になることを言われた僕であったが、上官命令に逆らうわけにもいかないので黙って隊長の後に続いてブリーフィングルームを出た。
そのまま歩いていく隊長へと、質問を投げかける。
「あの、どこに行くのでしょうか……?」
「格納庫だ。今朝、ちょうど届いたからな」
「は……?」
なんだか楽しそうな雰囲気を感じさせる声で答えてくれたヨハンソン隊長だが、僕は一層意味がわからずに困惑してしまう。
なんで僕を連れて格納庫に……? と思っている間に目的地に到着した僕は、人が全くいないその中へと訝しがりながら足を踏み入れ……
「こいつは……!?」
「ふふっ、いい反応だ。秘密にしておいた甲斐があった」
MSハンガーに格納されている、一つ目の巨人。
それは見慣れたザクとよく似ているが、違う部分も数多くあった。
例えば、額に指揮官用のそれと同じブレードアンテナが設置されていること。
他にも右肩のシールドがやや大きめになっていたり、左肩に反った形のスパイクが取り付けられていたり、脚部にスラスターが追加されていたりと、様々な変化がある。
だけど、一番目につく変化としては、機体の色が違うということだろう。
通常は深緑色をしているザクだが、今、僕の目の前にいるこいつは……オレンジと黒に塗装されていた。
まるで闇を照らす朝日のような雰囲気を感じさせるそのザクの姿に圧倒される僕へと、笑みを浮かべたヨハンソン隊長が言う。
「MS-06G……陸戦高機動型ザク。それがこいつの名前だ。尤も、まだ試作機としての側面も強い機体でもあるがな」
「陸戦高機動型……!!」
「見た目はザクと大差ないが、今後の重力戦線を支える新型MSの技術を流用しているおかげで性能は同じ陸戦型であるJ型を数段上回っているそうだ。さらにお前に合わせ、チューンアップも施されている」
「ぼ、僕に合わせて、ですか?」
「ああ。クロス、今日からお前がこいつのパイロットだ。だからこそ、わざわざお前の好きなオレンジ色に塗装してやってるんだからな」
そう言われた僕は、キャリフォルニア・ベース攻略戦の最中にシュナイド隊長から投げかけられた質問を思い出す。
確かに僕はあの時、その質問に対してオレンジ色と答えたわけだが……まさか、こんな結果につながるとは思わなかった。
「専用機? こんな僕に……?」
「シュナイド隊長や『第603技術試験隊』の面々からの報告を受けたキシリア様が、新型MSのデータ収集の任務も併せてお前に送ってくださった。その期待に応えてみせろよ、クロス」
少し……いや、かなり奇妙な気分だった。
生き残るために必死に戦ってきただけに過ぎない僕が、あのシャア・アズナブルやランバ・ラルと同じような扱いを受け、専用機まで用意されている。
まるでエースパイロットみたいじゃないかと、自分の扱いに困惑しながらも試運転のためにエレベーターを使った僕は、先ほどまで見えなかった機体の側面部分のとある一点を目にして、ハッと息を飲んだ。
通常のザクのそれとはまた違う形状をしている、右肩部のシールド。そこに十字架とそれに巻き付く黒い蛇のようなエムブレムが描かれている。
専用機だけでなくパーソナルマークまで貰えるのかと驚く僕であったが、そのマークの意味を理解すると共に思わず呟いてしまった。
「
十字架は僕の名前であるクロスから取ったものだろう。
そこに巻き付く黒い蛇は、闇に葬られた兵器であり、神話の時代の大蛇の名前を取った艦隊決戦砲であるヨルムンガンドから来ているはずだ。
僕とヨルムンガンド、この二つの関係性を知っている人物なんて、そう多くはない。
驚いた僕がヨハンソン隊長を見れば、彼女は大きく頷いた後で僕の思いを肯定するようにこう言ってくれた。
「この機体の技術試験は『第603技術試験隊』が担当した。無論、お前の手に渡ることを知った上でな。あのエムブレムは、彼らからお前へのプレゼントだろう」
「そうか……! マイ中尉たちが、僕のために……!!」
「……そのマイ中尉から預かった手紙もある。そいつは後で渡すから、まずは新機体の試運転をしてこい」
「はいっ!」
陸戦MSの技術試験を宇宙にいるマイ中尉たちがするというのも変な話だが、彼らが僕のために力を貸してくれたということが何より嬉しくて仕方がない。
かつて結んだ絆が、僕に力を与えてくれているような気がして……そうやってやる気も高くコックピットに乗り込んだ僕は、早速この陸戦高機動型ザクの試運転に臨むのであった。
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