ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「技術試験が行われる場所を教えてほしいだと?」
「はい、どうにかお願いできないでしょうか」
翌朝、ヨハンソン隊長の下にやって来た僕は、そう話を切り出した。
僕の突拍子のない話に驚いた後、隊長はため息を吐いてから言う。
「クロス、恩人に会いに行きたいという気持ちはわかる。しかし、『第603技術試験隊』は遊びに地球に降りるのではない。技術試験という任務のためだ。他部隊の任務の邪魔になるような真似が、できるわけないだろう」
「わかっています。ですが、少し気になる話を聞きまして……」
「……どういうことだ?」
こうなることは想定の範囲内。大事なのはここからだ。
申し訳ないが前世の知識をフル活用させてもらうことにしようと考えた僕は、昨晩寝ずに考えた言い訳をヨハンソン隊長に話していく。
「キャリフォルニア・ベースの兵士が話していたのですが、先日、アリゾナ砂漠に配置されていた我が軍の物資集積所が敵軍の攻撃を受け、壊滅したそうですね?」
「ああ、確かにそんな報告が入っているな」
「これが初のことではなく、今までも何度か敵軍によってこちらの集積所が攻撃を受けています。犯人は、今現在もアリゾナ砂漠に潜伏している可能性が高い。近くにある集積所を破壊するためです」
「……続けろ」
僕の話に聞く価値があると、ヨハンソン隊長はそう判断してくれた。
呆れ顔を真剣な表情に変えた彼女へと、僕は話を続ける。
「先日の襲撃の際、敵部隊は我が軍の通信機を入手した可能性が高い。次の襲撃地をどこにするかの情報を得るために、僕だったら間違いなくそうします。そして、もしもその通信機に『第603技術試験隊』が技術試験を行うという連絡が入ったら――」
「物資集積所を襲撃している敵部隊が、彼らを待ち伏せする可能性があるということか……」
ヨハンソン隊長の言葉に、大きく頷く。
少し考えた後、隊長は視線を机に向けたまま小さな声で呟いた。
「前回の襲撃が4月29日、アリゾナ砂漠にある第128集積所が標的だった。技術試験はできるだけ周囲への被害を考えずに済む場所で行うことが望ましい。砂漠はその条件に一致している。『第603技術試験隊』がアリゾナ砂漠に降りる可能性は十分にあるだろうな」
「もしもその情報が敵に掴まれていたら、間違いなく相手は攻撃を仕掛けてくるでしょう。試験機と非武装のコムサイだけで、我が軍の集積所を幾度となく壊滅させてきた敵の部隊に太刀打ちできるでしょうか?」
答えは
しかも初撃は不意打ちを受けるわけで、状況はさらに悪かったりする。
それを引き分けまで持ち込むヒルドルブのパイロットさんって本当に優秀だったんだな……と、改めて思う中、思案を重ねていたヨハンソン隊長は椅子から立ち上がると共に僕へと言った。
「確かにお前の言う通りかもしれん。敵軍に試験機を破壊されるだけならまだしも、拿捕されたりしたら相手に我が軍の技術を渡してしまうことになる。警戒を強め、お前を『第603技術試験隊』の運用試験に同席させるべきかもしれんな」
「で、では……!!」
「今から司令部に掛け合ってくる。認可が下りるかどうかはわからんが、どうにか粘ってみよう。クロス、お前はその間にこの作戦に同行する隊員を二人選抜しておけ」
「た、隊員、ですか……?」
「ああ、まさかお前一人だけを派遣すると思ったか?」
マイ中尉たちの下に迎える可能性が出てきたことは良かったが、同時にその作戦に同行する仲間を選べというヨハンソン隊長の言葉に僕は思わず聞き返してしまう。
そんな僕に対して、隊長はこう言葉を続けた。
「お前には新型機があるが、敵の規模がわからない以上はできるだけ頭数を増やしておいた方がいい。MSを二機まで搭載できる輸送機を貸してやるから、お前の他にもう一人パイロットを連れて行くんだ」
「りょ、了解です!」
「わかっているとは思うが、一部の隊員のザクは改修作業に入っている。そいつらは連れて行けないから、そのつもりでな。もう一人は輸送機のパイロットだ。内訳は理解したな?」
「はいっ!!」
ヨハンソン隊長からの説明を受けた僕は、大声で返事をする。
大きく頷いた隊長に挨拶をしてから部屋を出た僕は、早速同行する仲間をスカウトしに走った。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △
「……で、私たちが選ばれたってことね」
一時間後、僕はこの作戦に参加してもらうメンバーとして選んだ二人と自分の部屋にいた。
リリアとアクセル……この二人が僕が選んだメンバーだ。
「ちなみに、どうして私たちを選んだわけ? 理由は?」
「えっと……単純に信頼できるから、かな……?」
リリアからの質問に対して、一番の理由を告げる。
MSの操縦技術に関してもそうだが、二人はサブナック隊の中でも数少ない安心して背中を預けられる相手だ。
アクセルはキャリフォルニア・ベース攻略戦から何度か同じ小隊で戦っているが、本当に信頼できる。
無口で不愛想に見える彼だが、意外にも協調性は高く、さらに常にチームプレイを優先して動き、命令にも忠実に従ってくれる優秀な兵士だ。
それに加えて、状況判断能力もピカイチ。冷静に状況を判断し、最適な行動を取ってくれる彼には、僕も一目置いている。
……まあ、そんなアクセルは僕と同じで妬まれる側の人間だということも理由の一つなのだが、そこには触れないことにした。
彼のザクがまだJ型への改修作業に入っていなくて良かったと思う僕へと、リリアが言う。
「アクセルに関してはわかるよ。クロスとも仲良さ気だし、ガスとかがやってるねちっこい嫌がらせにも参加してないしさ。でも、私はどうして選ばれたわけ?」
「……どうしてって、さっきクロスも言っていただろう。信頼できる仲間、つまり仲のいいメンバーを選んだと」
「はぁ? 別に私はクロスと仲良くなんか――」
「そうなのか? ここ最近、お前は随分クロスに懐いているように見えたが……?」
「は、はぁぁっ!? そんなわけないじゃん! アクセル、あんたの目、節穴なんじゃないの!?」
大声で叫び、アクセルの言葉を否定するリリア。
気持ちはわかるが、そこまで必死になる必要もないじゃないかと思いながら、僕は地味にショックを受ける。
あの秘密の共有以来、彼女は一人で食事している僕の近くに来て声をかけてくれたり、ブリーフィングでも隣に座ってくれたりしていたから、信頼してもらえてると思ったのだが……僕の勘違いだったようだ。
悲しい気分を抱えながらも、僕がリリアを信頼している事実は変わらないと伝えれば、彼女は怒りで顔を真っ赤にしながら押し黙ってしまった。
「もう、わかったよ! 手柄を立てるチャンスだし、別に不満もないしね!」
ふんっ、と鼻を鳴らしながらそう言ってくれたリリアへと、感謝を伝える。
そうした後で改めて二人を見た僕は、深呼吸をしてから言った。
「作戦開始は早ければ明日になると思う。何があっても対応できるよう、準備を整えておいてほしい。急な話で悪いけど、二人の力を貸してくれ」
「今、わかったって言ったばかりでしょ? 輸送機の操縦だけだけど、しっかり仕事はしたって報告してもらうからね!」
「俺も問題ない。個人的に、お前のことは好きだしな。それに、友軍を助けるのは当然のことだ」
そう答えてくれた二人の頼もしさに笑みを浮かべた僕は、緊張に早鐘を打つ心臓を押さえるように左胸に手を置く。
どうにか、マイ中尉たちが危険に巻き込まれる前に合流できますようにと願いながら、迫る戦いに向けて僕も心の準備を整えていくのであった。