ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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決戦、アリゾナ砂漠!

 ――宇宙世紀0079年5月9日。僕たちは、アリゾナ砂漠上空にいた。

 ヨハンソン隊長は僕の進言を受けて即座に動いてくれたが、頭の固い上層部のおかげで下手に時間を食ってしまった結果、出発は翌々日になってしまった。

 その上、キャリフォルニア・ベースを出た後でアリゾナ砂漠近くにある基地に一度寄り、そこで作戦許可をもらって……という手順を踏んだせいで、より時間がかかってしまった形だ。

 

 どうにか技術試験が行われる場所が第67物資集積所付近であることは教えてもらったが、そこに至るまでの道のりが長過ぎた。

 というより、遠回りの連続だったよな……と考える僕へと、アクセルが言う。

 

「クロス、気持ちはわかるがあまり焦るな。これは、仕方がないことだったんだ」

 

「そうだよ。それに、ただクロスが心配してるだけで、敵部隊と技術試験隊が遭遇するっていう確証はないんでしょ? 案外、何にも起きずに杞憂に終わるかもしれないよ?」

 

 励ましのような言葉を口にする二人だが、僕は絶対にこの先で戦闘が起きることを知っている。

 そこに間に合うかどうかが一番の気がかりだが、そこを心配してもどうにもならないことはわかっていたため、僕はただ黙って二人の言葉に頷くことにした。

 

「それにしても、連邦も必死だよね~! ジオンの勢力下でゲリラ戦を繰り返してるんだからさ。ずっと砂漠に潜伏して、集積所への襲撃を繰り返すだなんて、私だったらしんど過ぎて耐えられないよ。そんで、得られる成果もそんな大きくないでしょ? 何が楽しくてそんなことやってるんだかね~?」

 

 そんな空気の中、リリアがおどけた様子でそんなことを言う。

 砂漠という過酷な環境下で必死にゲリラ戦を繰り返す連邦軍を笑う彼女であったが、それに対してアクセルは静かにこう返した。

 

「いや、そうでもないぞ。集積所を襲っている部隊はかなりの手練れだし……何より、ビジョンがある」

 

「え……?」

 

 敵軍を褒めるアクセルの言葉に、リリアは驚きの表情を浮かべた。

 シートに座った状態で腕を組むアクセルは、そこから淡々と話し続ける。

 

「第一に、これまで集積所を幾度となく襲った上で自分たちの情報を外部に漏らしていないというのが驚異的だ。敵がどんな手段を使っているのかはわからないし、砂漠という連絡を取りにくい環境が味方しているのかもしれないが、そこまで徹底して自分たちの情報を露見させていない時点でそういった部分の管理ができていることがわかる」

 

「まあ、確かに……襲撃を成功させまくってるってのは、十分すごいか……」

 

「しかし、それは副次的な部分に過ぎない。敵部隊は攻撃を成功させることで時間を稼ぐと共に、失った勢いを取り戻している。そちらの方が問題だ」

 

 アクセルの言いたいことが、僕にはなんとなくわかった。

 ジオンの地球侵攻作戦は、上層部の予想に反して思っていた以上の戦果を挙げられていない。

 戦線が広がり過ぎたことで前線に補給が行き届かず、そのせいで苦戦を強いられているのだ。

 

 逆に連邦軍もMSに対抗できる術がないため、戦況は膠着状態に陥っているが……そうなると、地力の差が浮き彫りになってくる。

 国力が豊かとはいえないジオンはここからどんどん苦しくなってくるし、逆に時間を稼げれば連邦はMSの開発を済ませ、それを配備し始めるだろう。

 その後の展開をよく理解している僕がごくりと息を飲む中、アクセルが静かに言う。

 

「ジオンはブリティッシュ作戦以降、勝利を重ね続けてきた。MSという兵器や連戦連勝の勢いに乗じたおかげで、連邦を押し続けてこれたんだ。押せ押せムードというと軽く聞こえるかもしれないが、そういった雰囲気が俺たちに味方していてくれたのは間違いない」

 

「逆に、連邦はルウムで大敗を喫したせいで勢いが死んでた。自信を失い、地球に雪崩れ込むジオン軍を止められずにここまできた。その状態から逆転するには、まず自信を取り戻さなくちゃならない。集積所を襲っている部隊のリーダーは、そのために攻撃を仕掛けている……明確なビジョンを持って行動してるってことか」

 

「……重力戦線において、ジオン軍は想定外の苦戦を強いられている。開戦直後の勢いは死んだと言ってもいい。もしもここで何か決定的なことが起きれば……連邦とジオンのパワーバランスも、戦局も、何もかもがひっくり返るぞ」

 

 やはりアクセルは状況を正しく判断できる力を持っている。未来が見えているのかと思うくらいだ。

 少し恐ろしさすら感じてしまう彼の慧眼に驚く僕へと、アクセルは静かに言う。

 

「……こんな話、誰かに聞かれたら注意だけでは済まないだろう。信頼できる間柄の相手のみが集まっている場だからこそできた話だ」

 

「アクセル……!」

 

 無表情で無口な彼だが、どうやら僕たちのことを信頼してくれているらしい。

 そのことを喜ぶ僕は、そこでいつもなら何か言いそうなリリアが口を閉ざしていることが気になった。

 

 席から立ち上がり、彼女へと歩み寄ってみれば……リリアは、何か不思議な雰囲気を纏いながら小さな声で呟く。

 

「……戦ってる。もう、戦闘が始まってる……!!」

 

「なんだと? 俺には何も見えないが……?」

 

 アクセルの言う通り、僕も近くで戦闘が起きているようには見えない。

 しかし、同時にリリアが言っていることが正しいという確信のようなものがあった。

 

 少し前に聞いた、リリアの秘密。あれは精神を病んだ彼女が幻覚や幻聴に襲われているのだと思っていたが……そうではないのかもしれない。

 この感覚から察するに、おそらくリリアは……と考えたところで、僕は彼女の叫びを耳にして、その思考を一度中断した。

 

「居た! あそこだよ!!」

 

 リリアの発言から数分後、輸送機を飛ばしていた彼女が砂漠の一点を指差す。

 そこには確かに戦闘を行っている部隊たちの姿が見え、その双方を目にした二人はあっと声を漏らした。

 

「なに、あの機体……? 戦車なの……?」

 

「それよりも敵軍だ。連邦の連中、俺たちのザクを使っている!!」

 

「これまでも鹵獲機を使って奇襲を仕掛けてたってこと!? 卑怯っていうか、戦争犯罪じゃないの!?」

 

 二台の戦車と五機のザク……訂正、今しがた焼夷榴弾による炎に巻かれたザクが一機撃墜されたから、残りは四機だ。

 ともかく、ヒルドルブは今、鹵獲されたザクの部隊とたった一機で交戦している。

 

 ザクたちが跳躍し、一気にヒルドルブとの距離を詰める光景を目にした僕は、リリアに向かって叫んだ。

 

「リリア、できるだけ戦場に近付いてくれ! 僕はザクで出る!」

 

「敵の数が想像より多い、ヨハンソン隊長の予想は当たっていたな。俺も一緒に出よう。格納庫を開ける準備をしてくれ」

 

「いや……アクセル、君はここに残ってくれ」

 

 僕と一緒に出撃しようとするアクセルへと、そう指示を出す。

 驚く彼に向き直りながら、僕は彼にこの指示の理由を伝えた。

 

「さっきのジャンプを見るに、あのザクたちは陸戦仕様のJ型だ。まだ改修が終わってない君のF型だと、苦戦すると思う。あの機体の援護は僕に任せて、君はこの輸送機と僕の恩人が乗っているはずのコムサイの護衛を頼む」

 

「……確かにそうだな。ここは、お前に任せた方が良さそうだ」

 

 コムサイの護衛は任せろ、と即座に納得してくれたアクセルに感謝しつつ、格納庫へと向かう。

 G型ザクに乗り込んだところで、リリアからの通信が入った。

 

「ハッチ開くよ! そのまま降下して!! 言っておくけど、着地に失敗しても文句は言わないでね!」

 

「わかってる! クロス・レオンハート……陸戦高機動型ザク、出撃するっ!!」

 

 開いたハッチから飛び出し、自由落下しながら地上の状況を確認する。

 ヒルドルブはザク二機に接近されたところでスモークを炊いていて、敵の視線がそっちに集中していることがわかった。

 

「もらったっ!!」

 

 マシンガンを構え、呆然としているザクに向かって発射。

 通常のものよりも連射力は落ちたが威力は上昇しているそれは見事にザクの胴体を貫通し、大破したMSが爆発を起こす。

 

「新手か!? これは、マズいぞ……ぐあっ!?」

 

 一瞬、敵のザクのパイロットの声と思わしき渋い声が聞こえてきたが、変形を終えたヒルドルブにマシンガンを撃たれ、思わず飛び退くと共に声は途切れた。

 そこから主砲を回転させたヒルドルブがもう一機のザクの上半身を消し飛ばす間に近くを走っていた61式戦車を狙撃した僕は、周囲の敵影を確認しながら通信で呼びかける。

 

「こちら、サブナック隊所属クロス・レオンハート軍曹です。通信は聞こえていますか?」

 

「ああ、なんとかな……! 偶然かもしれんが、援護に駆け付けてくれて助かった。このまま残る敵を殲滅するが、付いてこられるか?」

 

 ヒルドルブのパイロットの質問に、ハンドサインで肯定の返事をする。

 残る敵戦力はザクが二機と戦車が一台……押し切れるはずだという自信が、僕にはあった。

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