ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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『第603技術試験隊』

 ――初陣から、数日が過ぎた。

 元々の乗艦だったパプアを失った僕は、ヨーツンヘイムを母艦とする『第603技術試験隊』に一時的に配属され、面倒を見てもらっている。

 本来ならばキシリア様に話を通し、次の配属先を決めてもらうことになるのだろうが……今は大事な作戦の真っ最中とのことで、状況が落ち着くまで待機することになった。

 

 ヨーツンヘイムの艦長であるプロホノウ中佐相当官は初陣にして乗艦を失った僕のことを気にかけてくれているようだ。

 サラミス二隻を沈めた功績を称えつつ、パプアは墜ちたもののその積み荷は無事に受け取ることができたと、艦長たちは見事に任務を全うした上で戦死したのだと、励ましと慰めの言葉をかけてくれた。

 

 ただ、先の戦闘で出た犠牲者は相当な数で……顔を合わせたほぼ全員が亡くなったと言っても過言ではない。

 僕が早く出撃していれば、あの悲劇は避けられたかもしれないと何度も考えたが、プロホノウ艦長を含む『第603技術試験隊』の全員がそんなことはないと励ましてくれている。

 

 そんなふうにお客さんじみた扱いを受ける日々を過ごしていた僕は、艦長から呼び出され、ブリッジに向かうことになった。

 いったい、何の用だろうか? そう思いながらブリッジにやって来た僕は、そこにいた人物の姿を見て、ハッと息を飲む。

 

「来たか……紹介しよう。彼はレオンハート二等兵、先の戦いで轟沈したパプアの数少ない生き残りだ」

 

「彼が……!?」

 

 僕を見て驚いているのは、金髪碧眼の美青年だ。

 武骨な軍人といった雰囲気はまるで感じられず、実直で誠実な人柄がそのまま浮き出ているような顔をしている。

 

「あなたがサラミス級二隻を墜としたザクⅠのパイロットね。パプアのことは残念でしたが、あなたは十二分に責務を全うしました。気を落とさず、これからも軍人として励みなさい」

 

 そう言って僕を激励してきたのは、髪も服も真っ赤な女性だ。

 美女ではあるのだが、青年の方とは真逆のキツい雰囲気が漂っているその女性を見ているとなんだかプレッシャーを感じてしまう。

 

「レオンハート二等兵、君にも紹介しよう。オリヴァー・マイ技術中尉とモニク・キャディラック特務大尉だ」

 

(知ってる……! この二人のことは、僕も知ってるぞ……!!)

 

 オリヴァー・マイとモニク・キャディラック。この二人は、とあるガンダム作品に登場するメインキャラだ。

 その作品の名は【機動戦士ガンダム MS IGLOO】。ガンダム作品では珍しい、全編3Dで制作されたCGアニメである。

 

 シリーズの中ではマイナー寄りの作品ではあるが、フル3Dアニメという特徴のおかげで目立っていることもあり、少しガンダムをかじった人間ならばこの二人の顔と名前は見たことがあるはずだ。

 大人気対戦ゲームでも一部のキャラが出演していたし……と思いつつも、僕はこの【MS IGLOO】の内容についてそこまで詳しくはない。

 先に述べた対戦ゲームに出演していたキャラや機体については調べたが、まさか開戦直後のこの段階で絡むことになるとは思ってもみなかった。

 

(これは原作で実際にあったエピソードなのか……? 少なくとも、僕が絡んでる時点で本来のお話とは違うルートな気がするけど……?)

 

 そういった困惑を抱えたりもするが、一番気がかりなのはこの後、僕たちがどうなるか? という部分だ。

 何を隠そう、この【MS IGLOO】という作品は「負けていくプロジェクトX」と評されるほどの悲劇的な内容ばかりなのである。

 

 ジオン軍が開発した試作兵器が実戦運用に足るものか? それを判断するための試験を行う任務を託された『第603技術試験隊』を舞台に、主人公のオリヴァー・マイ技術中尉の視点から歴史の闇に葬られた兵器たちの活躍を見ていくというものなのだが……まあ、闇に葬られたと言っている時点で兵器とそのパイロットがどうなるかは察してもらいたい。

 

 そんなバッドエンドがほぼ確定している作品の舞台に上がってしまったことに今さらながら気付いた僕は、最悪の予感を覚えてごくりと息を飲む。

 初陣でサラミス級を二隻も墜とした実績のあるパイロットと、新兵器の試験を行う特殊部隊……あまりにも危険な組み合わせだ。

 

 もしも、万が一にも、プロホノウ艦長たちの口から「レオンハートくん? 君に乗ってもらいたいMSがあるんだけど……」みたいな言葉が飛び出してきたら、すぐに逃げ出そう。

 待っているのはあまりにも可哀想な結末しかないと理解している僕が迫る死の予感に表情を強張らせる中、艦長が言う。

 

「急に呼び出してすまない。だが、君にはこれを見る権利があると私が判断した」

 

「こ、これ、とは……?」

 

「……つい先ほど、マイ技術中尉が受領したばかりの新兵器だ」

 

 よし、今すぐに逃げ出そう。僕はまだ死にたくないし、死ぬとしてもできるだけハッピーな感じで死にたい。

 いやでもヅダだったらエンジンをフル回転させなければワンチャン助かるか……? とどうにか希望を見出そうと足掻く僕へと、プロホノウ艦長が言葉を続けた。

 

「沈んだパプアは、何を運んできたのか? どんな任務を受けていたのか? 死んだクルーたちの最後の仕事とは、何だったのか? あの艦の数少ない生き残りであり、艦長たちから未来を託された君には、それを知る権利がある。そう思ったから、私は君をここに呼んだ」

 

「え……? ぱ、パプアの荷物、ですか……?」

 

「ああ、その通りだ。知りたいと思わないか?」

 

 プロホノウ艦長の話から察するに、パプアが運んでいたのは今回技術試験を受ける新兵器なのだろう。

 その全容を、死んだ艦長たちが何を任されていたのかを、知りたくはないか? そう問いかけるプロホノウ艦長の言葉に、僕は少し迷った後で頷く。

 

 このまま話を聞き続ければ、新兵器のテストパイロットに任命される危険性があることはわかっていたが、パプアのみんなが命を賭して運んだ兵器が如何なるものなのか……それを知りたいという気持ちが勝った。

 

「うむ。では、君もついてきたまえ。今から私たちも、マイ技術中尉から説明を受けるところだ」

 

「はっ……! お心遣いありがとうございます、プロホノウ艦長」

 

 敬礼の姿勢を取り、プロホノウ艦長へと感謝の気持ちを伝える。

 死んでいった人たちのことを、少しでも知りたい……彼らの最後の仕事を知ることで、彼らの魂を救うことができるかもしれない。

 

 そういう気持ちを胸に、僕は三人の後を追って歩いていく。

 この先に待ち受けている大蛇との出会い、そしてその後の運命も知らないままに……。

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