ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
鹵獲ザク部隊、再び
――宇宙世紀0079年9月20日。ソンネン少佐がキャリフォルニア・ベースから去って、二か月の月日が過ぎた。
少佐の教え子に恥じない活躍をしようと心に決めた僕は、あの日から曹長として、ホワイト小隊の隊長として、必死に頑張り続けている。
サブナック隊の任務もここ二カ月で何度かこなし、そこで小さくはない戦果を挙げた。
現時点ではリリアとアクセルが固定メンバーになっているが、サブナック隊の大体のメンバーが残りの二枠に入っても上手く指揮が執れるようになった……と思いたい。
僕個人としては少しずつ実力をつけている実感……は微妙なところだが、ヨハンソン隊長を含む周囲からの信頼は勝ち取れているようだ。
しかし、そんな僕の現状とは相反するように、ジオン軍の地球侵攻作戦は遅々として進んでいない。
そんな状況でついにサイド7でのMS遭遇戦……双方の軍が開発したMS同士による初の戦闘が起こってしまった。
ガンダムが、大地に立ったのである。
ここから僕たちは苦しい戦いを強いられることになり、敗北につながる道を進み続けることになる。
それでも、仲間たちと共に生き延びるために全力を尽くそうと心に決めた僕はこの日、ヨハンソン隊長に呼び出されていた。
そして、そこで……僕を一つの出会いと、もう一つの再会へと導く話を聞かされることになるのである。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
「連邦軍のザク部隊が出現した!?」
「ああ、そうだ」
この日、隊長の部屋に呼び出された僕を待っていたのは、ガンダムが大地に立ったという報告よりも驚くべき内容の話だった。
かつて僕とソンネン少佐が撃滅した連邦軍のザク部隊……卑怯にも鹵獲したザクを用いての騙し討ちを繰り返していた部隊が、再び出現したというのだ。
長く続く重力戦線で鹵獲されたザクはかなりの数に上るだろうし、機体の方はどうにかなるだろう。
しかし、アリゾナ砂漠での戦いであの部隊は全滅させたはず。パイロットはどうなっているのだろうか?
「生き延びた兵からの報告によれば、奴らはかつてお前とソンネン少佐が倒した部隊と同じく、友軍を装っての騙し討ちを仕掛けてきたらしい」
「手口も全く一緒……!? 連邦軍が、一つの戦略として確立したということでしょうか?」
「可能性は皆無というわけではない。しかし、これは戦争犯罪と呼んでもおかしくない所業だ。幾つもの部隊がこの手を使うとは、考えにくい」
敵はあのザク部隊の生き残りかもしれない……ヨハンソン隊長が言いたいことを理解した僕は、静かに息を飲む。
四カ月の時を経て、あの時の誰かが蘇ったのかと、そして、また卑怯な手で友軍を攻撃していると知った僕は、拳を握り締めると共に隊長へと言った。
「ヨハンソン隊長、自分にその部隊を調査させてください! もしも鹵獲ザク部隊があの時の生き残りだというのなら、僕が決着をつけます!」
「うむ。では、クロス・レオンハート曹長に命令する。北米大陸にて活動を続けている連邦軍の鹵獲ザク部隊を追跡し、これを撃破せよ。今回の任務はお前のホワイト小隊からリリアとアクセルを連れた三機編成の小隊と、オリバーが指揮を執るグリーン小隊のメンバー三名の計六名、MSも六機の編成で臨んでもらう」
前回の戦いで確認できたザクの数と同じか、とヨハンソン隊長の指示を聞きながら僕は思う。
純粋に六人編成の小隊一つで動かないのは、指揮官が二人いた方が行動しやすい部分があるからなのだろう。
「最後に鹵獲ザク部隊が確認できたポイントはここだ。明日までに準備を整え、出撃してくれ」
「了解!」
こうして、予想もしていなかった過去との再会に驚きを感じながらも、僕は真実を知るために動き始めたのであった。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
「こちらホワイト小隊、敵部隊の痕跡は見つからない。グリーン小隊、そっちはどうだ?」
任務を与えられてから数日後の9月23日、僕たちは北米のとある地域を探索していた。
最後に鹵獲ザク部隊が目撃された位置で発見した痕跡を追っていった僕たちであったが、しばらくしたところでそれを見失ってしまい、今は小隊で分かれて敵を捜索している。
僕とリリア、アクセルの三人はアリゾナ砂漠での一件もあり、今回の任務に対して強い緊張感を抱いていた。
オリバーが指揮を執るグリーン小隊に報告の通信を送るも、返事がないことに若干の苛立ちを覚える中、アクセルが言う。
「どう思う? やはり、アリゾナ砂漠の生き残りがいると思うか?」
「あり得ないよ。だって、あいつらはクロスとソンネン少佐が倒したじゃない」
「いや、そうじゃなかったのかもしれない。もしかしたら、生き延びた奴がいたのかも……」
ザクは全機撃墜したが、もしかしたらすんでのところで脱出に成功したパイロットがいた可能性もある。
あの砂漠で何とか生き延びたそのパイロットが、かつて所属していた部隊と同様の戦術でジオンを襲っているのかも……という可能性を、僕は否定しきれなかった。
(歴史を変えて、ソンネン少佐を生き延びさせてしまったんだ。そのせいで、向こうも誰かが生き残った可能性だってある……)
ソンネン少佐を救ったことに後悔はないが、そのせいで連邦軍のザク部隊に生き残りが出てしまったというのなら、それは僕の責任だ。
なんとしてでもここで敵を撃破しなくては……と考えていたところで、リリアが憤慨した様子で言う。
「もう! グリーン小隊は何してるわけ!? 何の返事もないんだけど、通信ちゃんとONにしてるの!?」
「……もしかしたら、敢えて何も答えないようにしているのかもしれないな。手柄を独占しようと考えているのかもしれない」
「ああ、あり得るね! まったく、ヨハンソン隊長もどうしてガスを作戦のメンバーに入れるかな……!?」
グリーン小隊のメンバーは小隊長のオリバーにガス、そしてオリバーと組むことが多いパーシーの三人組だ。
オリバーもそれなりにプライドが高いが、今回はガスも加わっているから連携を取るのが結構難しいんじゃないかと僕も思っていた。
「……ガスの奴、新型を受領しても思っていたほどの活躍ができていないからな。焦っているんだろう」
「最初の内は調子に乗ってたけど、結局クロスに負けてるしね。散々煽っておいてあの結果だから、そりゃ焦るでしょ」
二人が話す通り、先行量産型のグフを受領したガスであったが、いまいちその性能を活かせているとは言えない。
最初は「ザクからコックピット周りが変わって慣れていないだけだ」と言っていたが、二か月も経つ今となってはその言い訳も使えず、苦しい状況に追い込まれていた。
「根本的にチームプレイができないんだよ、あいつ。クロスはこっちに合わせつつ、高機動ザクじゃなきゃできないことを担当してくれるじゃん? でも、ガスは周りが俺に合わせろ! ってタイプなんだもん」
「機体性能が上がった分、ザクではグフに合わせることが難しくなっている。そもそもスタンドプレーに走りがちな上に小隊長でもないからな。合わせる理由もなければ、合わせたところでそれが正しい行動というわけでもないから困る」
あまりこういう陰口は良くないのだろうが、僕も二人の言っていることと同じことを思っている。
最初はヨハンソン隊長が指揮を執るレッド小隊のエースを気取っていたガスであったが、時間が経つにつれて段々とそれが自分の思い違いであることに気付かされてしまったのだろう。
でも、新型のMSを受領したこともあり、自分はもっとできるはずだというプライドが肥大化してしまっている。
そのプライドのせいで周囲に合わせることもできなくなり……と、悪循環に陥っていた。
「あのグフ、ガスに渡すべきじゃなかったんじゃない? 私はそう思うけどな」
リリアの意見には同意できる部分もあるが、グフの格闘性能を活かすパイロットとしてはガスは適任だとは思う。
問題は、ガスがランバ・ラルをはじめとしたエース級の腕前を持っているわけでもないし、そもそもあのグフにはアニメに登場していた機体ほど高性能でもないということなのだが……と考えていた僕の耳に、グリーン小隊からの通信が入った。
「こちらグリーン小隊! 敵部隊と遭遇!! こいつら、思ったよりやる! 援護してくれ!!」