ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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ドムじゃないですか!?

「シミュレーター? これで何かするの?」

 

「はい。ちょっと待っててくださいね……」

 

 訓練校で何度も使用したシミュレーターと、その設定を弄り始めたミアを眺める。

 僕がぼーっとしている間に設定を終えた彼女は、振り返ると共に笑顔でこう言ってきた。

 

「お待たせしました! 申し訳ないんですが、現在開発が大詰めになっている新型MSの運用データが欲しくって……クロスさんに協力していただきたいんです」

 

「新型MSの運用データ……?」

 

 いまいち状況が呑み込めない。運用データを取るのはいいが、新型MSってどういうことだろう?

 なんで極秘部隊とはいえ、一応は前線に配置されているこのノイジー・フェアリー隊の基地に、最新MSのデータが届くんだ? と疑問に思いながらシミュレーターに座った僕は、画面に表示されている文字を見て、大きく目を見開いた。

 

「形式番号MS-09……『ドム』!? どうしてこんな機体のデータが……!?」

 

 あまりにも有名過ぎる傑作MSの名前が表示されているシミュレーターの画面を見た僕は、素っ頓狂な叫び声を上げてしまった。

 今現在、最新鋭の機体はグフのはずだ。ドムはまだ配備されていないし、そのデータもごく一部の人間の手にしか渡っていないだろう。

 

 新型MSという超重要な情報が、どうしてここにあるのか?

 驚く僕に対して、苦笑を浮かべたミアが言う。

 

「実は私、ツィマッド社の人間なんです。両親は主席研究員で、私もそれなりに期待されている人間なので、こうして新型MSのデータを送ってもらうこともありまして……」

 

「そ、そうなんだ……! すごいね。MSのパイロットだけじゃなくて、開発まで担当してるんだなんて……!」

 

「……私なんてまだまだですよ。ジオニック社にいる、メイ・カーウィンって子なんて、私以上の天才で……上には上がいるって、ツィマッドの皆さんも言ってましたから」

 

 俯きながらそう語るミアからは、コンプレックスと悲しみ、そして恐怖の感情がにじみ出ていた。

 マイ中尉と同じ技術士官なのに、どうしてMSパイロットも兼任しているのかと不思議だったが……どうやら、僕が想像している以上に複雑な事情がありそうだ。

 

 というより、このノイジー・フェアリー隊のメンバーは一癖どころか十癖くらいあるような感じがする。

 出会って間もない彼女たちの秘密を探るような真似はしたくないが、このまま放置しておくわけにもいかないと思った僕は、一つ息を吐いてから彼女へと言った。

 

「僕は、ミアも十分すごいと思うけどな。戦うことしかできない僕より、ずっと才能があるよ」

 

「え……?」

 

 僕のその言葉に、驚いたミアが目を丸くしながらこちらを見る。

 ややあって、慌てた様子で頬を赤くした彼女は、そんな自分を取り繕うようにしながら口を開いた。

 

「す、すいません! 話が脱線しちゃいましたね。じゃあ、えっと……軽く機体の情報を確認した後、シミュレーションを始めます。まずは武装や機動性を確認してください」

 

「了解」

 

 ミアに返事をしつつ、シミュレーターをプラクティスモードに設定する。

 ドムの基本情報が画面に表示されるが、読まなくても有名なこの機体のことは僕も熟知していた。

 

(基本武装はジャイアント・バズにヒートサーベル、あとは胸の拡散ビーム砲か。ホバー移動で機動性は抜群。本当にいいMSだな……)

 

 ザクやグフとは一線を画す重厚な見た目をしているドムだが、その機動性はこれまでのMSを軽く凌駕している。

 ホバーによる地形を無視した動きはまさに格別の一言で、多分こいつがジオンの陸戦MSの中では最高の傑作機だと思う。

 

 ただまあ、相手が悪過ぎたんだよな……と、ドムの代表的なパイロットである黒い三連星の戦いとその末路を思い返しながら苦い表情を浮かべた僕は、一つ息を吐くと共にミアへと言った。

 

「十分確認できたよ。テスト、いつでも始めていいから」

 

「すごいですね。シミュレーターとはいえ、こんなに簡単に機体の性能や特徴を把握できるだなんて……まるで、前からこのMSの存在を知ってたみたいですよ」

 

「えっ!? い、いや、そんなことないよ! あは、あははははは……!!」

 

 一瞬、ドキッとさせられることを言われたが、必死に笑ってごまかした。

 そんな僕を若干訝しがりながらも、シミュレーターをテストモードに切り替えたミアがデータの採集を始める。

 

「よし、行くか」

 

 シミュレーターだからと気楽にペダルを踏んだ僕は、ドムの機動性に感動しながらすいすいと戦場を動き回る。

 いつ、どこから敵が出てきてもいいように警戒を払っていた僕の耳に、敵機の接近を知らせるアラートが響いた。

 

(おっと、マゼラトップ砲での狙撃かな? 狙いはいいけど、正確過ぎだね)

 

 弾速の速さから敵の武装を判断した僕は、ドムを駆って狙撃手がいるポイントまで一気に移動していった。

 マゼラトップ砲による長距離狙撃はなかなかの驚異だが、これはシミュレーター。機械による照準は正確過ぎるが故に簡単に回避できる。

 

 ドムの機動性も相まって、楽々敵の狙撃を掻い潜って接近した僕は、周囲にもう二つの反応を示すレーダーを見ながら敵の位置を確認した。

 

(そうだよな。スナイパーがいるなら、それを守る僚機もいるよね)

 

 これも予想通り、だから焦らない。

 ホバー移動をしながら敵の位置を確認し、距離がそれぞれ近距離、中距離、遠距離に離れていることを見て取った僕は、まずジャイアント・バズを中距離のザクへと放って牽制した。

 

 こいつは仕留められなくていい。あくまで真ん中にいる相手の動きを止めるだけで十分だ。

 中距離のザクが動きを止めたことを確認するや否や即座にヒートサーベルへと武装を持ち替えた僕は、アニメで黒い三連星がやっていたように胸部の拡散ビーム砲で近距離のザクの目潰しをした。

 

 敵が予想外の攻撃に怯んだ隙にヒートサーベルを振り、ザクを撃破する。

 そのままドムの機動性を活かして中距離のザクにまで接近した僕は、そいつも一刀両断に切り伏せてやった。

 

「これでラストかな」

 

 肩に担いだままのジャイアント・バズで狙撃手のザクへと狙いを定め、発射。

 マゼラトップ砲を構えていたザクが回避運動を取ってジャンプしたところで、空中戦は得意じゃなさそうなドムの性能を考慮した僕は空中に向けてバズーカを連射し、敵を仕留めた。

 

「うわ、扱いやす……!! バズーカの威力もザクより上がってるし、こいつなら陸上戦艦も簡単に倒せそうだな……!!」

 

 正直な話、武装はマシンガンの方が取り回しが良くて好みなのだが……そこはサブウェポンとして選択すればいいだろう。

 ヒートサーベルもザクのヒートホークよりリーチが長くて使いやすいし、こちらに関してはドムの方が好みだ。

 

 何より、ザクとは比べ物にならない機動性が素晴らしい。

 まあ、ジャンプを活用した動きは少し難しそうだが、ドムのコンセプト的に空中での戦闘は考慮されていないのだろう。(そもそもMSが空中戦をすること自体が馬鹿げているのである)

 

 というわけで、僕は本当に惜しみのないドムへの賛辞を送ったのだが……それを聞いていたミアは、どこかポカンとした様子だった。

 

「えっと、ミア? ごめん、何か的外れなことを言っちゃったかな?」

 

「えっ? い、いえ! すみません! 少し、ぼーっとしちゃって……!」

 

 僕の言葉にハッとした彼女が慌てて返事をする。

 何か変だなと思いながらもツッコむことなどできない僕は、そのままミアの指示に従って、何度かデータ収集のためのシミュレーションを行うのであった。

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