ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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ガールズトーク・インザ・バスルーム

(大きなお風呂に入るの、久しぶりだな……)

 

 ここが軍の基地であることを理解しながらも、私は心を躍らせていた。

 

 このティルナノーグが基地というより女子寮のような雰囲気があるからかもしれないが、少し緩めの気持ちで過ごせている。

 クロスのザクの調査やパーシーのザクの修理のために、何日かはここに厄介になることが決まり、どうせならばとギャレット少佐のご厚意で定期的に行われる女の子たちのお楽しみ、大浴場を解放してもらえた。

 普段はシャワーで過ごしている私が、まるでホテルのような大きなお風呂に入れるのだから、そりゃあ心も踊るってものだろう。

 

(女子ばっかりだと下着の盗難とかも気にしないでいいのも助かるな~……)

 

 男社会な軍隊では、キャリフォルニア・ベースのような環境が一般的だ。

 だから、女性しかいないこのティルナノーグでの生活は普段のストレスから解放される悦びがある。

 

 まあ、女ばかりの世界というのもそれはそれで厄介だということも理解している私は、脱衣所で服を脱ぎながら小さく息を吐いた。

 そのまま、タオルを手に大浴場に入ろうとした時……中から結構大きめの声が聞こえてくる。

 

「すごかったね、サブナック隊の人たち! あの人たちのおかげでこうしてお風呂にも入れるし、本当にラッキーだったよ!」

 

「上と下で差がすごい感じもするけどな。なんにせよ、初陣にあの人たちがいてくれて助かったのは確かだ」

 

「鹵獲ザクの部隊、かなり数も多かったですし……私たちだけだったら苦戦は免れなかったですもんね」

 

 聞こえてくる声が、ノイジー・フェアリー隊の三人のものであると気付いた私は少しばかり気まずい思いを抱く。

 チームを組んでいる仲良し三人組の中にたった一人で突撃するのって勇気がいるし、相手も気を使うよなと考える中、気になる会話が大浴場から聞こえてきた。

 

「そういえば、クロスさんのザクは大丈夫だった? 何か動きが変だったって言ってたけど……」

 

「ミアが調査したんだよな? 異変は見つかったのか?」

 

 昼間の戦闘で敵の隊長機を取り逃したクロスが言っていた、ザクの不調。

 確かにあの時、普段よりもクロスの動きが悪かったような気がしたし、ザクのどこかがおかしかったんだろう。

 問題はどこにあったのかと耳を澄まして聞く私であったが、そこで信じられない返答が聞こえてきた。

 

「いえ、実はあのザクに異変は見当たりませんでした。部品の消耗こそありましたが、動きに不調をきたすようなものではなかったですし……」

 

「えっ? そうなの?」

 

「じゃああの人、自分のミスを機体のせいにしてただけか。なんかガッカリだな」

 

「はぁ……?」

 

 ミアとかいう技術士官の返答と、そこから続くノイジー・フェアリー隊のメンバーの反応を聞いた私は、ちょっとカチンときた。

 何も知らないくせにクロスを馬鹿にするあいつらに我慢が利かなくなった私は、大きな音を響かせながら大浴場に繋がる扉を開ける。

 

 その音を聞き、扉の奥から姿を現した私の姿を見てびっくりしている三人娘に対して、威嚇の意味も込めてわざとG()()核弾頭二つを大きく揺らすように歩いた私は、ノイジー・フェアリー隊の面々を睨みつけながら言ってやった。

 

「誰も聞いてないと思って、人の隊長のことを好き勝手言ってくれるじゃん。で? 誰が自分のミスを機体のせいにしてたって?」

 

「え、えっと、その……」

 

 先の発言をしたヘレナが気まずそうに視線を逸らす。

 小隊長のアルマも、あの発言のきっかけになったミアも、わたわたと慌てていた。

 

 堂々と仁王立ちしながら返答を待つ私に対して、ミアが意を決した様子で言う。

 

「あ、あの! ……本当に申し訳ありません。私の発言が誤解を招いてしまって……詳しく説明がしたいのですが、許していただけるでしょうか?」 

 

「……いいよ、聞いてあげる」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 一応、階級はあっちの方が上なのだが、とてもそうとは思えない。

 そういう部分も結構特殊だなと思いながら湯船に浸かった私は、とりあえず三人の()()を確認する。

 

(……よし! 私の勝ち!!)

 

 三人ともスタイルがいいし、ミアに至っては色々私と被ってる部分があるが、最胸戦力を有しているのは私だ。

 それにお尻の方も私の方が大きいし……いや、MSパイロットとしてお尻が大きいのは衝撃を吸収してくれて助かるからアド! と、微妙にそれは負けなんじゃ? という考えを必死に振り払ったところで、ミアが口を開く。

 

「クロスさんのG型ザクに不調をきたすような異変がなかったというのは本当です。ですが、クロスさんが自分のミスをザクのせいにしたというわけではないんです。むしろ、だからこそ問題があるっていうか……」

 

「ん? どういうこと?」

 

「……()()()()()()()んです、ザクの反応が。クロスさんの操縦技術と反射神経は、ザクの反応を上回っていたんです」

 

「つまり……クロスが思い描いている動きを、ザクができなくなってるってこと?」

 

 私の言葉に、ミアが大きく頷く。

 さっきクロスを馬鹿にしたような発言をしたヘレナも、その答えに唖然としているようだ。

 

「それ、マジなのか? パイロットの反応に機体が追い付かなくなるって、そんな……!?」

 

「私も半信半疑だったので、確認のためにシミュレーターを使ってみたんです。相当ピーキーな設定にして、対戦相手を通常のザクに搭乗した私たちのデータに設定して、それでクロスさんに挑戦してもらったんですけど……」

 

「……結果は?」

 

()()でした。私たちの中で一番MS適性があるアルマさんですら苦戦するくらい敏感に設定したドムを初見で完璧に乗りこなした上で、私たちを一方的に撃破したんです」

 

 ドムってなんだ? という疑問があったが、大事なのはそこではないので口には出さないでおいた。

 大事なのはクロスの技量がザクを完全に凌駕していることで、専用カスタムを受けたG型をもってしても追い付けないクロスの力量には、私も驚くしかない。

 

「とりあえずですけど、クロスさんのザクのリミッターを完全に解除して、反応速度を限界まで高めました。部品もアルマさんのザクの物を流用して、完璧な状態に仕上げるつもりですので、しばらくはこれで大丈夫だと思います。でも……」

 

「……その内、限界がくるんだね? クロスさんはまだまだ成長の余地があるから、あのザクじゃあどうしようもなくなる時が来る。そうでしょ?」

 

 アルマの言葉にこくんとミアが頷く。

 その姿を見た私は、彼女に一つの質問を投げかけた。

 

「そのことをクロスには伝えたの?」

 

「……いえ、ごまかしてます。なんとなくですけど、クロスさんがこのことを知ったら、敢えて手加減してザクに乗ろうとするんじゃないかなって思ったんです。それで悪循環に陥って、彼が実力を発揮できなくなることを、あのザクは望んでいないと思ったので……」

 

 多分、ミアの考えは正しい。クロスはあれで割とデリケートだから、色々と考えてしまいそうだ。

 だったら応急処置でザクの反応を上げて、その間に本格的な対策を取ればいい。

 

 具体的に言えば……と考えたところで、ヘレナが口を開く。

 

「クロスさんの反応がG型ザクの限界を超える前に、新型機に乗り換えてもらわないと困るよな? ツィマッドで作ってるMSとかどうなんだ? シミュレーターとはいえ、私たちを一方的に撃破できたんだろ?」

 

「私も最初は両親に言って、テストという名目でドムを配備してもらおうかと思ったんです。でも……クロスさんとドムの相性はあまりよくない気がします。戦闘データを確認した限り、ホバーで地上を動き回るドムに対して、クロスさんは三次元的な動きを得意としているんです。高機動型ザクの強みを活かした戦い方をしているだけで、ドムに乗り換えたらまた戦い方を変えてくださる可能性も十分に考えられますけど、他の機体の方がいいんじゃないかなって……」

 

「……色々考えてるんだね、あなたも」

 

 さっきは少しカチンときたが、ここまで深く考えてくれていたと知った今は寛容になれる。

 クロスと二人きりで長い時間を過ごしていたことは若干イラっとしたが、データ収集のためならば仕方がない。うん、仕方がない。

 

 そもそもあいつが女の子と二人きりでいようとも私には関係ないし? ただちょっと腹が立つのは、どうして私に似ている女の子と仲良くなるかなってところだ。

 もしかしてあいつ、ロリ巨乳なら誰でもいいのか? いや、私に手を出してない時点でロリ巨乳は好みじゃない? 待って、そもそもどうして私はこんなことを考えてる?

 

「リリアさん? 大丈夫ですか? 色々考えてるみたいですけど、のぼせてません?」

 

「え? あ、ああ、大丈夫!」

 

 ……と、そこまで考えたところでアルマに声をかけられて我に返った私は、必死でごまかしに入った。

 前々からどうにもクロスのことを意識してしまっている自分の浮かれっぷりにため息を吐いたところで、ミアとヘレナの会話が耳に入ってくる。

 

「ザクの反応を超える操縦技術か、ちょっと興味あるな。後でシミュレーター、触ってみようかな……?」

 

「止めておいた方がいいと思いますよ? 私も試しにクロスさんと同じ設定で乗ってみたんですけど、しっちゃかめっちゃかになっちゃいましたし……」

 

 どうやらクロスのMSは相当ピーキーに設定されているらしい。それでも限界が近いだなんて、あいつはやっぱり化物だ。

 そう思いながら天井を見上げた私の耳に、アルマの呟きが響く。

 

「あの人……本物なのかな? 私と違って……」

 

 意味深なその言葉に驚きながら彼女の方を向けば、アルマの横顔にはこれまで見てきた活発な雰囲気がなかった。

 どこかコンプレックスを抱えているような、そんな雰囲気を感じ取った私は、何も言わずにそっと目を逸らす。

 

(複雑な事情を抱えてるのはどこも同じ、ってことか……)

 

 特別競合部隊という特殊過ぎる環境にいる私たちだが、他の部隊も何もかもが普通というわけではないのだろう。

 誰だって、何か事情を抱えている……温かい湯船に浸かりながら、私は改めて、その当たり前の事実を認識するのであった。

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