ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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ボーイズトーク・インザ・シミュレーションルーム

「くそっ! ちくしょう!!」

 

「ん? なんだ……?」

 

 ギャレット少佐のご厚意で開放してもらった大浴場に向かう途中、シミュレーションルームから聞こえてきた声に立ち止まった僕は、部屋の様子を覗いてみた。

 そうすれば、昼間に僕が使っていたシミュレーターにガスが座っている姿が見える。

 

 拳を何度もシミュレーターに叩きつける彼のことを見過ごすわけにはいかなくなった僕は、扉を開けると共にガスへと注意した。

 

「それはノイジー・フェアリー隊の機材だし、乱暴に扱うべきじゃない。何に苛立ってるのかはわからないけどさ」

 

「く、クロス……!?」

 

 僕の登場に驚いたであろうガスが、呻き声を漏らした後で項垂れる。

 てっきり噛み付いてくると思っていた僕は、思ったより大人しい彼の態度を怪訝に思いながらもシミュレーターの画面を確認してみた。

 

 あまりいい……というより、悪い点数が表示されている画面を見る僕に対して、ガスは自嘲気味に笑いながら小さな声で言う。

 

「笑えよ……! お前と同じ設定でシミュレーションしてみたら、この様だ。足元にも及ばないどころか、完全にぶっちぎられてる……だせえよな? 笑えるよな……!!」

 

「機種転換は難しいもんだよ。何度かやってれば、ガスだってすぐに――」

 

「そういう問題じゃねえ! そういう話じゃあねえんだ!!」

 

 ドムとグフでは扱いが大きく違う。僕が初見で乗りこなせたのは、前世の知識があったからだ。

 慰めというわけではないが、無理に自分を卑下する必要はないと伝えようとした僕であったが、それよりも早くに立ち上がったガスに胸倉を掴まれ、怒鳴られてしまった。

 

「俺は部隊内でも成績一位で、将来を有望視されてて、MSの操縦技術も高い! 新型も優先して配備してもらえてる! なのに……何故だ!? どうしてお前とここまでの差が生まれた!? お前と俺の、何が違うっていうんだ!?」

 

「ガス……」

 

 慟哭か、絶叫か……プライドの高い彼は、シミュレーターに表示された残酷なまでの現実に打ちのめされていた。

 ランキング外の自分のスコアと、トップに刻まれている僕の名前。その二つを見比べ、歯を食いしばったガスの目には、悲壮の色が浮かんでいる。

 

 下手な慰めは余計に彼のプライドを傷付けるだけだと、さりとて叱責なんてできる柄でもない僕は、静かに息を吸うと間近にあるガスの目を真っすぐに見つめながら、彼へと言った。

 

「……何もかも、全部違うよ。当たり前じゃないか」

 

「はっ……! エリート部隊一歩手前のお前にとっちゃ、俺みたいな奴と一緒にされること自体が心外だってか!?」

 

「そうじゃないさ。僕とガスは別の人間なんだから、違うところだらけに決まってる。何もかもが違って当然なんだよ」

 

 僕の言葉を受けたガスは、僅かに拳に込める力を緩めた。

 そんな彼へと、僕は言葉を続ける。

 

「ガスにはできないことが僕にできるのと同じで、僕にできないことがガスにはできるかもしれない。それが当然で、お互いに補い合うからチームなんだ。できないことを認めることも、誰かに助けを求めることも、絶対に恥なんかじゃないよ」

 

「うるせえ! 俺は、俺は……っ!!」

 

 ガスは何かを言い返そうとしたようだが、何も言えずに苛立った様子で口を閉ざした。

 そんな彼の手を胸倉から外した時、シミュレーションルームの扉が開き、ギャレット少佐が姿を現す。

 

「どうかしたの? 随分と騒がしいけれども」

 

「いえ、なんでもありません。風呂に入る前に少しシミュレーターで汗を流そうと思いまして……そうだろ、ガス?」

 

「……ああ」

 

 余計な詮索をされたら、またガスのプライドが傷付く。

 僕に庇われているこの状況自体が彼にとっては不本意かもしれないが、それでもまだマシだろうと考える中、ひょっこりリリアとノイジー・フェアリー隊のみんなが顔を出した。

 

「お風呂に入るんだったら急ぎなよ。今、ちょうど空いてるからさ」

 

「他の誰かが入ったら、待ちぼうけをくらっちゃいますしね」

 

「ああ、ありがとう。行こう、ガス」

 

「へっ、行くならお前一人で行けよ。俺は後で入る」

 

「ガス、お前はまた――!」

 

 僕への敵愾心を燃え上がらせているガスへと注意しようとしたところで、苛立ったような笑みを浮かべた彼は吐き捨てるようにこう返してきた。

 

「お前の()()を見せつけられるこっちの身にもなってみろってんだ。惨めな思いなんかしたくないからな、お前と一緒に風呂だけは御免だぜ」

 

「は……? はあ!?」

 

 珍しくジョーク(?)を飛ばしたガスの予想外の態度に僕が大いに驚く中、くすくすと笑ったギャレット少佐がこんなことを言う。

 

「あら? もしかして()()()()()ってそういう意味だったのかしら?」

 

「いや~、実はそうなんですよ~! 夕暮れの時間になるとクロスの股間の大蛇は急に狂暴になるもんで、相手をするこっちは大変で大変で……!!」

 

「ええっ!? そ、そうなの!? やっぱ男女の混成部隊って、そういうこともあるんだ……!!」

 

「はわわ、わわ、わわわわわ……っ!?」

 

「へぇ~、そうなんだ。ちょっと見てみたいな」

 

「リリア!? 何しれっとデマをバラ撒いてるの?! ノイジー・フェアリー隊のみんなも信じないで! 嘘だから! これ全部嘘だから!!」

 

「そこまで言うなら確かめてみよう! 全員、今からもう一回風呂ね! クロスの大蛇大捜索ってことで!!」

 

「ふふふ……! 青春ね~。でも、あんまり破廉恥な行動はしちゃダメよ? ほどほどにね?」

 

「ほどほどにね、じゃなくて! ギャレット少佐も強く止めてください! 風紀が!! 基地の風紀が乱れまくってるんですけど!?」

 

 とても軍隊とは思えない緩い会話の中、僕の絶叫が響き渡る。

 色々と言いたいことはあったが、ガスの態度が少し軟化したことは、喜ばしいことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そう、今日は色々なことがあった。極秘部隊との邂逅や宿敵との再会、新たな出会いが多くあった日だった。

 でも、本当に大きな出来事は、僕たちの思ったよりもずっと近くで起きていたのだ。

 

 宇宙世紀0079年9月23日……この日、北米大陸に巨大な流星が降下した。

 木馬、と名付けられたその流星は、この戦争に大きな変化をもたらそうとしている。

 

 そして……この数日後、僕はとある男と出会う。

 この長い戦いの中で、フェデリコ以上に深い因縁を持つことになる屍食鬼(グール)との出会いは、もう間近に迫っていた。

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