ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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『屍食鬼』ギベオン・グレイズ

「先日、初陣を終えたばかりなんだって? 随分とデビューが遅いじゃないか、アルマ・シュティルナー」

 

 アルマからそう呼ばれた金髪の青年は、彼女を蔑む視線を向けたままそう言った。

 アルマの方はギベオンの言葉に体を縮め、怯えた雰囲気を出しながら俯いている。

 

 二人の間にあるただならぬ雰囲気に流石のロメオ少将も尻を揉む手を止め、呆然とする中、ギベオンは続けてアルマへと言った。

 

「君は子を産むなよ、アルマ。落伍者である君の才能が子供に受け継がれるだなんて、私には我慢できない。他の女たちも大した才能は持っていないが、君だけは――!!」

 

 そう言いながらノイジー・フェアリー隊のみんなや僕たちの方を見たギベオンが、リリアを目にした瞬間に息を飲んだ。

 驚きに目を丸くした彼は、不意に笑みを……全く温もりを感じさせない、貼り付けたような笑みを浮かべながら、リリアへと言う。

 

「驚いた……! こんな掃き溜めに鶴がいるとは! 君は私の子を産むに相応しい存在だ! 君はあの落伍者とは何もかもが違う!!」

 

「え、えっと、あの……?」

 

 急に興奮した様子でそう叫ぶギベオンの心の動きが、僕たちにはわからなかった。

 ただ、彼が放つプレッシャーがより毒々しさと冷たさを増していくことを肌で感じた僕は、困惑しているリリアを救うために声を上げる。

 

「お待ちください。彼女は、自分の部下であり、MSパイロットです。そういった行為は、任務に含まれておりません」

 

「ん? ん……っ!?」

 

 そこで僕の存在に初めて気が付いたような表情を浮かべたギベオンは……直後に、リリアを見た時よりも大きな衝撃を受けたような顔になった。

 直後に深い怒りと憎しみをその顔に浮かべた彼は、僕に歩み寄ると共に握り締めた拳を横っ面に叩き込んでくる。

 

「ぐあっ!」

 

「クロス!?」

 

 突然の鉄拳制裁に驚いた僕は、思わずよろめいてしまった。

 そんな僕を憎しみを込めた冷たい表情を浮かべながら睨みつけるギベオンは、吐き捨てるように言う。

 

「階級章を見るに、貴様は曹長だろう? 私は少尉、私の方が階級は上だ。今のは、上官の命令に従わない貴様への罰だと思え」

 

「……繰り返します。彼女は誇り高きジオン軍人であり、私の部下のMSパイロットです。彼女の任務に慰み者になることは含まれていない。彼女に手を出すことは、おやめください」

 

「まだ逆らうか! 生意気なっ!!」

 

 ここは譲れない。こいつにリリアを引き渡したら、何かとんでもないことになる確信がある。

 二度目の鉄拳制裁を受けても譲らず、今度は心構えをしていたおかげで踏ん張ることができた僕は、黙ってギベオンを睨みつけ、自分の意思を示した。

 

「なんだ、その目は……? 私を見下すつもりか? 貴様は、貴様が……っ!!」

 

「っっ!?」

 

 僕の反抗的な態度に怒りを沸騰させたギベオンが、腰のホルスターから拳銃を引き抜く。

 それを僕の額に向ける彼は、静かだが怒りを込めた声で唸った。

 

「言え、その女を私に差し出すと。さもなければ貴様を上官命令に逆らった罰で撃つ」

 

「……お断りします」

 

「く、クロスさん!?」

 

 そう言いながら、僕はギベオンが構える銃を握り返し、その銃口を自分の額に押し付けた。

 撃てるものなら撃ってみろと……そう無言で伝える僕と彼との間に一触即発の空気が流れる中、ギャレット少佐が口を開く。

 

「ロメオ少将、彼はあなたの直属の部下でしょうか?」

 

「え? あ、ああ、そうだが……」

 

「でしたら、すぐに止めた方がいいでしょう。今、彼が銃口を向けている相手は、キシリア様が大変目をかけているMSパイロットです。近い未来、ジオンにその名を轟かせるであろうエースをこんなくだらないいざこざで失ったとあっては、キシリア様も大変ご立腹なさるでしょうから」

 

「ひっ……!?」

 

 この場を収められる人間は、ロメオ少将以外に誰もいない。そしてどうやら、ギベオンの上司である彼は権力というものにとても弱いようだ。

 

「ギベオン少尉! すぐに銃を下ろせ!! このようなことで仲間同士が争うなど、あってはならない!!」

 

「……了解です、少将」

 

 先ほど、上官命令は絶対だと言った手前、自分より立場が上のロメオ少将の言葉に逆らうわけにはいかなかったのだろう。

 明らかに憎しみを込めた目を僕に向けながらも、ギベオンは渋々といった様子で銃を下ろした。

 

「貴様、名前は……」

 

「クロス……クロス・レオンハート」

 

「そうか……! その名前、憶えておくぞ……!!」

 

 人形のような美しい顔を憎しみに染め、ギベオンが唸る。

 明らかに強まったプレッシャーを感じながら、僕は黒い炎が燃え上がる彼の瞳をただ無言で見つめ返し続けた。

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