ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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隊長としてすべきことを

 空中からの降下……久しぶりの感覚だ。

 キャリフォルニア・ベース攻略戦でHLVから飛び降りた時のことを思い出しながら着地した僕は、すぐさま攻撃を受けているギャロップへと接近する。

 

(ザクの動きに問題はなし。メンテナンスをしてくれたミアに感謝だな)

 

 その際、空中に見える敵機に向かってマシンガンを連射してその内の一機を撃墜したところで、僕は先の戦闘で挙動のおかしかった自分のザクが思った通りに動いてくれることを確認し、大きく頷いた。

 そんな僕の動きを見たみんなも、同じように戦闘機を攻撃し始める。

 

「ハエみたいにブンブンブンブンと……数だけは多い!!」

 

「ギャロップに近付かせるな! 弾幕を張って、敵を牽制しろ!!」

 

 苛立ったようなガスの声と、グリーン小隊に指示を出すオリバーの声。

 攻撃を受けるギャロップの護衛のために反撃を繰り返す中、飛び回る戦闘機を見つめていたアルマが動く。

 

「こいつら、飛んでるからって好き放題して……っ! だったら!!」

 

 G型ザクのバーニアを点火、そのまま一気に空中へと跳び上がったアルマがヒートサーベルを振るう。

 空中でセイバーフィッシュを一刀両断した彼女は、再びジャンプすると同じことを繰り返し始めた。

 

「うそでしょ……!? アルマさん、空中で敵機を……!!」

 

 ミアの驚きに染まった声が通信機から聞こえてくる。

 確かにそれを行えるアルマの技術はすさまじいとは思ったが、若干迂闊にも感じられた。

 

 その行動から焦りのようなものを感じる僕の目に、剣を振るった彼女の横をすり抜けるフライマンタの姿が映る。

 

「しまったっ! 一機取り逃した!!」

 

 慌ててその背を追おうとするアルマだが、他の戦闘機から狙い撃ちにされ、回避に専念するしかなくなってしまった。

 そのカバーをすべく、彼女を狙う戦闘機を撃墜した僕は、続いてギャロップに突っ込むフライマンタを撃ち落とそうとしたのだが――。

 

「甘いね」

 

 そんな一言と共に、飛んできた弾丸がフライマンタを射抜く。

 狙撃ポジションで待機していたヘレナが、見事なスナイプで敵機を迎撃したのだ。

 

「助かったよ、ヘレナ。近付く敵機の迎撃は任せても大丈夫かい?」

 

「手柄を全部奪っちゃっていいのなら、お任せを」

 

「ははっ……! ホワイト小隊、空中の敵機をヘレナが狙撃しやすいポジションに誘導するんだ!」

 

「了解! でも、できるなら撃ち落としちゃってもいいんでしょ?」

 

 今回は混成部隊での任務、お互いの協力が鍵になる。

 狙撃を得意とするヘレナの持ち味を活かすために協力しつつも、彼女だけに任せずに敵機を迎撃していった僕たちは、あっという間に相手の航空戦力の殲滅を完了させた。

 

「終わったか……思ったより楽な相手だったね」

 

「まあ、こっちはザクが九機もいるからな。この程度の相手は楽勝だよ」

 

 パーシーとオリバーの話を聞きつつ、警戒態勢を解除した僕も息を吐く。

 その間に、アルマはギャロップに通信を入れていたようだ。

 

「ギャロップ、こちらはザクのパイロットです。ご無事ですか?」

 

「なっ……? 女!? それも子供じゃないか! あの戦いをしてたのが、あんたらみたいなガキだって? 勘弁してくれよ」

 

「なんだと……?」

 

 ギャロップの乗組員の身を案じたアルマに対して、彼女の姿を見たであろう隊長と思わしき男の困惑と無意識に女子供を見下した声が響く。

 その発言に怒りを抱いたヘレナが一歩前に出る中、僕は彼女を制すると代わりにギャロップの乗組員たちへと言った。

 

「見事な戦いを見せたザクのパイロットが女子供で何が悪いのでしょうか? 窮地を救った恩人に対して、その口ぶりはあり得ないのでは?」

 

「い、いや、しかし――!!」

 

「待て! ……オレンジ色の機体と蛇と十字のパーソナルマーク……もしかして、ビッグトレーを鹵獲した凄腕の……!?」

 

「凄腕かどうかはわかりませんが、ビッグトレーを鹵獲したのは僕ですよ。それに、僕もまだ十八歳だ。それで? ガキがなんでしたっけ?」

 

「し、失礼した! 先ほどの発言を撤回し、謝罪させていただく!」

 

 今、自分たちが運んでいる積み荷が、何のためのものであるか? それを運ぶきっかけをつくった人物である僕の言葉に、大慌てでギャロップの乗組員たちが謝罪の言葉を口にする。

 ロメオ少将やギベオンもそうだが、こういう妙にプライドが高いのはジオン軍人の良くないところだよな……と改めて思う僕に対して、ヘレナが声をかけてきた。

 

「……サンキュー。あんた、いい奴だな」

 

「お礼を言われるようなことはしてないよ。さっきは見事な狙撃だった。おかげで助かったよ」

 

 ヘレナからの感謝に、軽くザクの手を上げながら応える。

 モニターに映る彼女の表情にわずかに照れの色が浮かぶ様を目にした僕は、ヘレナも不愛想に見えてやっぱり年頃の女の子なと……そう思った時だった。

 

「っっ!?」

 

 唐突に吹き出したプレッシャーに、思わず反応して目を見開く。

 僕が身構えたその瞬間、爆発音と共にギャロップのエンジン部分に火が着いた。

 

「なっ、なに!? 敵の攻撃!?」

 

「嘘だろ!? セイバーフィッシュもフライマンタも一掃したはずじゃないか!!」

 

「狙撃か? 何の攻撃を受けた!?」

 

「違う……! 今のは砲撃! 上から攻撃が降ってきてた!! また来るっ!!」

 

 リリアが叫んだ通り、そこからも断続的に上空から砲弾が降ってきた。

 精度こそ低いために回避をするようなものではなかったが、次々と降り注ぐ砲弾を放置しておけない僕たちはその攻撃に焦りを募らせていく。

 

「砲撃の威力から考えるに、61式戦車でも陸上戦艦でもない。じゃあ、何? 他に連邦が持っている長距離武器は……!?」

 

「ミア、ソナーを使って!! 敵の位置を調べるの!」

 

「もうやってます! でも、でも……ノイズが……!!」

 

 ソナーを搭載しているザクで敵の位置を探そうとするミアであったが、ノイズのせいで敵の動きが掴めないようだ。

 唯一の敵を捕捉する方法が使えないとなっては、僕たちはただ敵の攻撃に晒され続けるしかない。

 この状況が、みんなのストレスと焦りをさらに加速させていく。

 

「ミア! 敵の位置は!? 早くしないと、私たちもギャロップもやられちまうぞ!!」

 

「す、少し黙ってください! 本当にわからないんですよぉ!!」

 

「わからないじゃねえだろうが!! お前が敵の位置を探り出さないと、話にならねえんだよ!!」

 

「ガス! あんた、仲間を焦らせてどうすんのよ!?」

 

「ヘレナもミアも落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから……!!」

 

「ギャロップが燃えてる! 消火作業に入らないとマズいぞ!」

 

「待て、パーシー! 敵が何時接近してきてもおかしくないんだ、勝手な真似をするな!」

 

 ヘレナとガスがパニックに陥っているミアを焦らせ、彼女をさらに追い詰めていく。

 リリアとアルマはそんな二人を止めているが、ミアにとってはその制止の声は焦りを募らせるものでしかない。

 パーシーは護衛対象のギャロップのピンチに慌てているし、オリバーも指揮を執る余裕がなさそうだ。

 

 統率が乱れている。このままでは、敵の思うつぼだ。

 

(この状況で、隊長の僕がすべきことは……)

 

 静かに息を吐いた僕は、ソンネン少佐からの教えを頭の中に思い浮かべる。

 隊長として、部下を導く……そのために必要な行動を瞬時に判断した僕は、まずミアに声をかけた。

 

「ミア、落ち着くんだ。ソナーのことは今は忘れていい」

 

「え? あ……」

 

 まずはパニックの根幹を落ち着かせる。ミアの焦りがみんなに伝播しているのなら、最初に声をかけるべきなのは彼女だ。

 彼女に声をかけることには別のメリットがある。ミアを冷静にさせながら、僕は彼女に質問を投げかけた。

 

「わからないことを探るんじゃない。まずは、わかっていることを僕に報告してくれ。僕は君を信じてる。このザクが問題なく動くようになったのは、ミアの知識と技術のおかげだ。だから自信を持つんだ、ミア。君の知識は、必ずこの状況を打開する鍵になる」

 

「クロスさん……!!」

 

 お世辞を言っているつもりは微塵もない。これは全て、僕の本心だ。

 彼女が落ち着けば、技術士官だからこそ持つ知識が状況を打開するきっかけを生み出してくれる……その考えの通り、彼女は今現在、自分が有している情報を僕たちに共有してくれた。

 

「……弾道から想像するに、敵の位置は北東です! 最初の一発はギャロップに直撃しましたが、そこからは闇雲に撃ってる……敵は私たちを確実に仕留めるためか、あるいは練度が低いのかはわかりませんが、接近している可能性が高いと思います!」

 

「なるほどね……敵にソンネン少佐レベルのパイロットがいなくて良かった。もしそうだったら、もう勝負は着いてる……僕たちはラッキーだな」

 

 ソンネン少佐とヒルドルブだったら、ギャロップはもちろん僕たちの中から何名かは犠牲になってる。

 そうなっていないことに感謝しながら、僕は静かにザクを北東の方角に向けた。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるよ。ヘレナ、狙撃よろしく!」

 

「よろしくって……まさか、あんた!?」

 

 ヘレナが言い終わるより早く、G型ザクのバーニアを吹かした僕は一気に北東の方角へと駆け出した。

 滑るようにザクを低空飛行させる僕は、徐々に強まるプレッシャーから敵の位置を推察すると共に、ついに敵機の姿を見つけ出す。

 

(ガンタンク……!? もう実戦に投入されてるのか!?)

 

 砲撃を繰り返していた敵機の正体……それは連邦軍が開発した初のMS『ガンタンク』だった。

 既に実戦に投入されていることに驚きつつも、僕はヒートホークを取り出すと目の前の敵機にそれを振り下ろす。

 

 機動力に長けているとはいえないガンタンクは、成す術もなく僕の攻撃を喰らい、その動きを止めた。

 しかし、ガンタンクがこの一機だけとは思えない。他にも砲撃を行っている機体がいるはずだ。

 

 それに、何より――。

 

「かかったな、黄昏!!」

 

 ――やっぱりな、という思いがあった。

 

 ガンタンクを仕留めた僕の背後の建物の陰から、鹵獲したザクがマシンガンを手に飛び出してくる。

 砲撃機の傍に護衛のMSがいるのは当然のこと。僕だって、ソンネン少佐と一緒に任務を行っていた時は、ヒルドルブを単機で放置なんてしなかった。

 

 このガンタンクは囮だ。ギャロップに砲撃を繰り返し、そのまま撃破できればそれで良し。

 位置を特定された場合、突っ込んでくるのは機動力に優れた機体に乗る僕だと判断し、罠を張っていたのだろう。 

 

「死ね、黄昏の大蛇! お前に殺された仲間たちの仇だ!!」

 

 仲間を見殺しにしておいて、仇もクソもないよな~と僕は思う。

 相応の覚悟があったと見なすこともできるが、だとしたらこんなにベラベラしゃべってないで早くマシンガンを撃つべきだった。

 

「なっ!? う、うおおおおおおっ!?」

 

 鹵獲ザクがトリガーを引くよりも早く、その背後から弾丸の雨が浴びせかけられる。

 僕を背後から討とうとした自分が、あべこべに背後から攻撃されるとは思っていなかったのだろう。ザクのパイロットは悲鳴を上げながら、爆発する機体と運命を共にした。

 

「なるほど、ミアが練度が低いと言うわけだ。もたつきが過ぎる」

 

「獲物を前に舌なめずりは三流のやることだって言葉もあるけど……納得だね」

 

 燃え上がるザクの向こう側から、マシンガンのマガジンを交換しながら歩いてきたアクセルと、そんな会話を交わす。

 僕が駆け出したのなら、絶対に……彼はその後を追って駆け付けてくれる。そんな確信があったからこそ、僕は不意打ちにも動揺せずにいられた。

 

「無茶をする奴だ、付き合わされるこっちの身にもなれ」

 

「バックアップはしてくれるんだろ? 頼りにしてるよ、相棒」

 

 レーダーに映る数機の鹵獲ザクの反応を確認しながら、僕たちは迎撃の準備を整えていく。

 仲間がいるのは、相手だけじゃない。ガンタンクを囮にするような作戦を立てている時点で、僕が一人で戦っていると思っている証拠だ。

 ならばもう、勝敗は決している。個を相手にするつもりの敵に対して群れで当たれば、その時点で敵の戦略は崩壊するのだから。

 

「クロスさん! 追いついた!!」 

 

「クロス! てめえだけに手柄は立てさせねえぞ!!」

 

 敵が準備を整えるよりも早く、機動性に優れたMSに乗るアルマとガスが追い付いてくれた。

 これでこちらは四機。ギャロップの護衛にもリリアたちが残ってくれているから、ちょうどいい配分になったはずだ。

 

「アルマ、ギャロップを砲撃しているのは連邦軍のMSもどきだ。小隊で考えるなら、残りは二機だと思う。そっちの相手は、()()()に任せても大丈夫だね?」

 

「……はいっ!!」

 

 アルマの声は、顔は、吹っ切れた様子があった。ちゃんと僕の言葉の意味を理解してくれたようだ。

 これならきっと大丈夫だと……そう判断した僕は、姿を現したザク部隊を見て、静かに言う。

 

「さあ、終わらせようか」

 

 驕っているつもりはない。敵を舐めているわけでもない。

 味方を犠牲にするような作戦を立てる相手には負ける気がしない……ただ、それだけの話だ。

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