ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「おい、指揮官機がいねえぞ? どういうことだ? こいつら、前に戦ったのとは別の部隊か?」
「ああ、多分そうだろうね」
目の前にいるザクは五機。ガスの言う通り、前回見たS型はいない。
フェデリコのプレッシャーも感じないことから、少なくともこの部隊は彼の指揮下に入ってないのだろうと考えた僕は、ゆっくりとヒートホークを構えた。
ガスのグフがヒートサーベルを、アクセルがマシンガンを構える中、合計八機のMSが一斉に動き出す。
「人から盗んだモンで好き勝手やりやがって! いい加減、ウゼぇんだよ!!」
『こ、この新型、速っ……うわああああっ!!』
前回の戦いでもそうだったが、格闘戦に特化したグフの動きにF型のザクでは対応し切れないようだ。
急接近したグフのヒートサーベルが唸り、一刀両断にされたザクのパイロットの悲鳴が響く中、僕もまた射撃を繰り出してきた二機のザクの間に着地すると共にヒートホークを振るう。
『か、カメラがやられた! 何も見えないっ!!』
『待て、トッド! こいつ、俺を盾にして――ぎゃああっ!!』
近くにいたザクの顔面にヒートホークを叩き込みつつ、再び跳躍。
カメラを破壊されて何も見えなくなったザクに対し、もう一機のザクを盾にしながらバーニアを吹かし、突っ込んでいく。
「こいつだけでも返してもらうよ。元々、こっちの物だからね」
二機のザクをまとめて近くの建物に激突させた僕は、そのまま敵のヒートホークを奪うとコックピットを叩き斬ってやった。
続いて、こちらを狙おうとするザクへと奪った斧を投擲して動きを止めた後、接近してキックを叩き込んでやる。
『あああっ!? うああああああっ!!』
成す術なく倒れたザクに向け、マシンガンを斉射。
爆発を起こした敵機から視線を外せば、最後の一機をアクセルが仕留めているところだった。
「俺たちが一機倒している間に三機撃破か……流石だな、クロス」
「二人の援護のおかげだよ、助かった」
「ちっ……!! またお前がトップかよ。ムカつくぜ」
おそらく、フェデリコたちが保有している五体満足に動けるザクは、こいつらが最後だろう。
またどこかで鹵獲してくる可能性もなくもないが、F型や旧ザクを運用するくらいなのだからあっちも余裕があるというわけではないはずだ。
問題は、今回登場したガンタンク。既に連邦はMSを実戦投入できるところまできている。
だとするならば、ここからのジオンは……と考えたところで、アルマの声が響いた。
「ヘレナ、ナイス! おかげで助かったよ!!」
「誘導、ありがとうな。こっちこそ助かったよ、アルマ」
破壊されたガンタンクたち。一機はヒートホークが突き刺さり、もう一機は狙撃銃の弾を受けた跡が残っている。
どうやら、今度は一人で動くのではなく、チームで協力して動けたようだなとアルマとヘレナの会話から状況を察した僕は、大きく頷くと共に微笑みを浮かべる。
「今度こそ……敵部隊、完全に沈黙しました。あの、すみませんでした。私が上手くできなかったせいで、みんなを混乱させてしまって……」
「大丈夫だよ、ミア。だって、みんな生きてるもん。だからオールオッケー、ってことにしようよ!」
「そうだね、アルマの言う通りだ。みんな生きてるなら、それでいいんだよ……お疲れ様、ミア。君の分析のおかげで敵を撃破できた。十分過ぎるくらい、よくやってくれたよ」
「……はい! ありがとうございます!」
アルマの言葉に同調し、僕もミアを褒め称える。
少しずつ上り始めている朝日と同じように……作戦開始前は沈んでいたノイジー・フェアリー隊の雰囲気もまた、明るくなり始めていた。
△ ▽ △ ▽ △
戦闘終了後、ノイジー・フェアリー隊と僕を除くみんなは、輸送機に乗って移動していた。
僕たちはギャロップの上に乗り、何時敵に襲撃されてもいいように待機している形だ。
流石に九機のMSは載せられないよなと考えながら、少しずつ明るくなる夜空を見上げていた僕は、アルマのザクからの通信を受け取る。
実際に機体同士を触れさせて接触回線で話をする、お肌の触れ合い通信というやつだ。
「あの、クロスさん……ありがとうございました。あの場面、ミアを落ち着かせるのは私の役目だったはずなのに、代わりにやってもらっちゃって……」
「気にすることなんてないよ。お互いに助け合い、支え合う……僕だってアクセルとガスに助けてもらった。そんなふうに協力するのがチームなんだからさ」
「……その後、新型の相手を私たちに任せてくれたのも、私が焦ってたから、ちゃんとリード・パイロットとしての役目を思い出せるように
ちゃんとわかっているなら、何も問題ない。あの後、実際にアルマはヘレナと協力してガンタンクを仕留めた。
落ち込むミアへのフォローもしっかりこなしていたし、十分に立派だったと彼女に伝えれば、嬉しそうにしながらもどこか寂しそうな声でアルマはこう言葉を返してくる。
「でも……まだまだです。私は、自分の役目を果たせているとは思えません。実際、今回はクロスさんのおかげでピンチを切り抜けられたようなものですし……」
(役目、か……)
役目というのは、言い換えれば『期待されていること』ということになる。
アルマの心の中にあるのは、周囲からの期待に応えられなければまた落第生の烙印を押され……見捨てられてしまうかもしれないという不安なのだろう。
その全てを取り除くことなんて、僕にできるわけがない。
だけど、彼女に言えることならばあった。
「いいや、アルマはすごいよ。君は、誰も死なせてないじゃないか」
「え……?」
「……僕は初陣で、乗っていたパプアの乗組員を大勢死なせてしまった。その次の戦いでも、助けたかった人を助けられなかった。敵を倒せても、味方を守ることはできなかったんだよ」
「でもそれは、クロスさんが悪いわけじゃ――!!」
「そうかもしれない。でも、そうじゃない部分も絶対にある。その逆も然りだ。初陣と今回の戦いで犠牲者が一人も出なかったのは、リード・パイロットであるアルマの頑張りがあってのことだよ。他にも要因があるのかもしれないけど、君の頑張りが何の意味も成さなかったわけじゃないんだ」
「……でも、やっぱり私は……」
「ニュータイプとしては落第だから、自信が持てない?」
「っっ……!?」
少し、罪悪感はあった。アルマの心の中にある弱い部分を抉る言葉に、僕の胸もちくりと痛む。
それでも……言わなくちゃいけないことがあると、僕は自分を奮い立たせると共に彼女へと言う。
「アルマは、ギャレット少佐にニュータイプとしての活躍を求められてると思う? それを期待して、少佐は君をスカウトしたと思ってる?」
「それは……違うと思います。もしそうなら、フラナガン機関の他の子を選べば良かったわけですし……」
「そうだよ。だから、ギベオンの言ったことを気にする必要なんてないんだ。ギャレット少佐がアルマに期待しているのは、みんなを生き延びさせる正しい道に導いてくれることだと思う。上手く言葉にできないけれど……アルマには、そういう力があると思うんだ」
少し無鉄砲なところもある。プレッシャーに弱い部分もある。だけど、それがアルマ・シュティルナーという女の子だ。
スモークの中で突撃してくるガスのMSを回避したり、敵の攻撃を察知したり……そういう力は、ニュータイプとしての能力というよりも、『仲間と一緒に生き延びるための力』といった方が正しいように思える。
きっとそれは、他のニュータイプにはない力だ。あのギベオンだって、そんな力は持ち合わせていない。
ニュータイプは殺し合いの道具じゃない……そんな言葉を思い出しながら、僕はアルマへと言う。
「ギャレット少佐とハハリ中尉、ミアとヘレナ……少しずつ、みんなと歩いていけばいいんだよ。それで、君の力でみんなを守って、みんなに守ってもらえばいい。僕ができなかったことをやってみせたアルマなら、ノイジー・フェアリー隊のみんなと一緒に戦い抜けるさ」
「……ありがとう、ございます……!」
通信機から聞こえるアルマの声は、少しだけ涙で滲んでいた。
きっと、彼女は大丈夫だと……そう思いながら顔を上げた僕の目に、闇を照らす朝日が映る。
「夜明けか……随分と長い夜だったな」
アクセルの言葉に頷きつつ、僕も息を吐く。
短いようで長い夜を越えた僕たちが静かに朝日を眺める中、ミアが呟くように言った。
「夜明けのオレンジ色って、クロスさんのザクの色にそっくりですよね……」
「確かに、こっちからだとシールドの十字架が朝日に照らされて輝いて見えるな」
「夜明け……暁。いいじゃない、詩的で。仲間を守り、その未来を照らす暁の十字架……連邦が付けた黄昏の大蛇って二つ名より、私はこっちの方が好きね」
ノイジー・フェアリー隊のみんなと、ギャレット少佐の話を聞きながら僕も同じことを思う。
日が沈む黄昏より、日が昇る暁の方が縁起がいい。あと、黄昏は真っ二つにされそうだからできれば避けたい。
「暁の十字架……サンライズ・クロス。な~んて、ちょっと格好つけ過ぎる名前かな?」
「かもね。でも、結構気に入ったよ」
冗談めかしたリリアの言葉に、笑顔で応える。
眩く輝く朝日を見つめながら……僕たちは、キャリフォルニア・ベースへと向かっていくのであった。