ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「もっと、話を聞いておくべきだった。俺が強く止めておけば、あいつらは……!!」
「フェデリコ隊長……」
発見したギャロップ及び出現した敵MS部隊への攻撃任務は、失敗に終わった。
任務に参加した新セモベンテ隊B小隊が壊滅したことを悟ったフェデリコ隊長は、部下の死に握り締めた拳をデスクに叩きつけながら呻く。
「リーバル隊長……! トッド中尉、ジーノ軍曹、みんな、みんな……っ!!」
「泣くな、ソナ。B小隊の先輩たちは皆、立派に戦った。泣くんじゃなく、その遺志を背負って戦うんだ」
俺の隣では、同期のソナが涙し、そんなソナをブリッツが鼓舞している。
俺は正直、どう反応すればいいのかがわからなかった。
「……これで何人だ? 黄昏の大蛇に、何人やられた? かつての部下たちの仇を取るどころか、どんどん奴に仲間を殺され続けている……!!」
黄昏の大蛇……俺たち、そしてフェデリコ隊長と浅からぬ因縁を持つジオンのMSパイロット。
ジオンから鹵獲したザクを運用する特殊部隊、セモベンテ隊の指揮官として活動していたフェデリコ中佐は、アリゾナ砂漠で奴と出会ったらしい。
黄昏の大蛇と戦闘に入ったセモベンテ隊は、フェデリコ隊長を残して全滅。
隊長も部下たちの必死の時間稼ぎでザクから脱出し、砂漠を彷徨った後で友軍に救出された。
一か月ほどの治療を経て、前線に復帰した隊長は上から再び鹵獲したザクを使った特殊部隊……新生セモベンテ隊の指揮を執るよう、命令を下された。
今度は大量のザクを預けられ、それに比例するかのようにパイロットの数も増え、隊長は大隊長になった。
俺も新セモベンテ隊の旗揚げに際し、MSパイロットとして部隊配属を志願した人間の一人だ。
まだ軍に入りたての俺をフェデリコ隊長や戦死したマリオン大尉たちはかわいがってくれて、粗暴な雰囲気があるが立派な軍人である彼らを尊敬していた。
それはソナもブリッツも同じで……だからこそ、先輩たちを殺した黄昏の大蛇を討つべく、この部隊に志願したのだろう。
しかし、再度の邂逅を果たした黄昏の大蛇を相手に、俺たちは犠牲を増やすことしかできていなかった。
「ジーノ軍曹が命を懸けて囮役を引き受けたのに……それなのに、仇を討つどころか手傷一つ負わせられないだなんて……!」
「黄昏の大蛇も、その仲間の紫色のザクも手練れだ。ガンタンクを破壊し切ることなく動きを止めた。これで、あいつらは三機分のガンタンクを確保し、こちらのMS技術を学ぶことだろう」
「そんな!? じゃあ、先輩たちの命を懸けた行動は、無意味どころか敵の利益に……!?」
今回受領したばかりの新型MS……RX-75『ガンタンク』。
MSと呼んでいいのかわからない形状をしているが、連邦軍が初めて作り上げたMSであるそれを、黄昏の大蛇たちに奪われてしまった。
思えば、リーバル隊長たちは出撃する際に何か覚悟を決めた表情を浮かべていたと思う。
あれは死を覚悟していた男の顔だったのだろうと……そう思う中、フェデリコ隊長が俺たちへと言った。
「……あいつらの死は無意味ではない。あいつらは、『刺し違えてでも敵を倒す』という戦い方が招く結果をお前たちに見せてくれたんだ。まだ若いお前たちに命を散らすなと、そう警告してくれたんだよ……」
「隊長……」
苦し気に語るフェデリコ隊長からは、かつてのような明るい雰囲気が感じられない。
アリゾナ砂漠での戦闘から生還して以降、奇跡の男として評判になった隊長だが……自分がどんな立ち位置にいるか理解してもいるのだろう。
極秘部隊といえば聞こえはいいが、セモベンテ隊は連邦からその存在を抹消された部隊だ。
連邦軍だと認識できるマークなども付けずに敵軍に不意打ちを繰り返すその行為は、戦争犯罪に等しい。
ソナやブリッツは「コロニー落としという大虐殺を行ったジオンにそれを非難する資格などない」と言っているが、だからといってセモベンテ隊がやっていることも卑怯な行為であることに変わりはないだろう。
大量のザクを回されているのも、これからMSが本格的に量産され、運用され始めた際に備えてのデータ収集という側面が強い。
人員は大量にいるし、今回のようにガンタンクを回してもらえたりもするが……俺たちは、使い捨ての実験動物だという自覚があった。
(俺たちのザクも隊長の指揮官機も、修理用のパーツは残ってない。パイロットは補充してもらえるだろうけど、それでいいのか……?)
先日の戦いでも十名近くの犠牲者が出た。そして、今回の戦いでも同じくらいの戦死者が出ている。
MSの損害も大きく、鹵獲したザクを修理するにも限界がある。
今回、フェデリコ隊長が出撃できなかったのも、前回の戦いで黄昏の大蛇に自分のザクを中破させられ、修理が間に合わなかったからだ。
そのせいで自分が出撃できず、B小隊のみんなを死なせてしまったことを後悔しながらも……それでも、彼らの死を背負って進む覚悟を決めている隊長が、俺たちへと言う。
「近々、我が軍のMSの量産が開始されるという情報が入った。それに先んじて、陸戦に特化した機体がロールアウトされる……そのMSを俺たちセモベンテ隊に回してもらえることになった。もう、ジオンのザクに頼る必要はない」
「そいつがあれば、仇を取れるんですね!? みんなを殺した黄昏の大蛇を、その仲間たちを、倒すことができるんですね!?」
「ああ、できる! 必ず、部下たちの仇は俺が取ってみせる……!!」
隊長の瞳の奥に黒い炎が燃える様が見えた。ソナも、ブリッツも、同じく復讐の炎を瞳に燃えあがらせている。
かく言う俺も、俺の瞳の中にも……黄昏の大蛇への憎しみを薪にして、黒い復讐の炎が燃え上がっているのだろう。
「セモベンテ隊は再び生まれ変わる。鹵獲ザク部隊ではなく、連邦のMSを運用する部隊としてな。ブリッツ、ソナ、レックス……その際には、お前たちの力もあてにさせてもらうぞ」
「はいっ!!」
レックス・ソウル……俺の名前を呼んだフェデリコ隊長へと、大声で返事をする。
もう二度と、黄昏の大蛇に遅れは取らない。先輩たちの仇は、隊長や仲間たちと共に俺が討つ。討ってみせる。
早鐘を打つ心臓の鼓動を感じながら、俺は自分自身にそう強く誓った。
軽い原作キャラ解説
フェデリコ・ツァリアーノ
階級は中佐。『MS IGLOO』第二話に登場。
鹵獲ザクを運用する極秘部隊、セモベンテ隊の隊長で、ソンネン少佐が駆るヒルドルブと遭遇、そのまま戦闘に。
6機のザク+2台の戦車という戦力を有していたが、ヒルドルブと相討ちになる形で壊滅させられてしまう。
ただ、セモベンテ隊は隊長含め結構有能かつ勇猛な人物ばかりだった。決して弱かったわけではない。むしろヒルドルブ1機で殲滅できて大儲けレベル。