ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「クロスさん! 本当にありがとうございました!!」
「もうお別れか。寂しいけど、同じ北米で戦ってたらまた会う機会もあるだろうし、その時はよろしくね」
「はいっ!! ノイジー・フェアリーのみんなと、絶対に生き抜いてみせますから!!」
ギャロップと共にキャリフォルニア・ベースに帰還した僕たちは、そこでアルマたちノイジー・フェアリー隊とお別れの時を迎えようとしていた。
軽い整備を受けた後、シャワーを浴びる暇もなくティルナノーグに帰ろうとしている彼女たちと僅かな時間を使って別れの挨拶をする僕は、すっかり元気になったアルマの姿に安堵しながら頷く。
これからも、厳しい戦いが彼女たちを待ち受けているのだろう。
でも、アルマたちなら大丈夫だ。上手く言えないが、そういう確信がある。
そんなふうにこれから強く成長していくであろうノイジー・フェアリー隊のみんなを笑顔で見つめていた僕であったが、そこでアルマがこんなことを言い出した。
「本当にクロスさんにはお世話になっちゃいましたね。何か、お礼ができたらいいんですけど……」
「いいよ、そんなの。仲間同士助け合うのは当然でしょ? ミアにザクの整備もしてもらったし、それで十分だって」
「そういうわけにはいきませんよ! 何かないかな……? あっ、そうだ!!」
そこでくるりと反転したアルマが、パイロットスーツに覆われた自分のお尻をぺんぺんと叩く。
笑顔の彼女は、振り向きながら僕へとこう言ってきた。
「私のお尻、揉んでおきます? 結構自信ありますよ!!」
「ぶふっ!?」
とんでもないことを言い出したアルマのせいで盛大に吹き出してしまった僕だが、彼女はいたって真面目のようだ。
若干前屈みになってお尻を突き出しながら、無邪気な様子で話を続ける。
「ロメオ少将にセクハラされた思い出を上書きできるし、一石二鳥かなって……さあ! 遠慮せずにガッ! といっちゃってください! さあさあ!!」
「いけるわけないでしょ!? そういうの良くないって!!」
自分を安売りするなとツッコむ僕であったが、アルマはあまり気にしていないようだ。
本当にお礼のつもりなんだなと軽く引く僕のところへ、他の面々と話していたミアとヘレナが近付いてくる。
「あの、クロスさん。これを……」
「え……?」
歩み寄ってきたミアは、僕へと封筒に包まれた何かを差し出してきた。
おそらくは手紙……と、何らかのデータが入ったディスクのようなものが入っているのだろうと考える僕の前で、アルマが興奮気味に言う。
「も、もしかして、それってラブレター!? ミア、そういうこと!? うわ~っ! うわ~っ!」
「ち、違いますよぉ! これはギャレット少佐から頼まれてた今回の作戦に関する報告書で、クロスさんの上官に渡してもらおうと思っただけであって――!!」
「いや~、流石は曹長殿! 私たち三人をあっという間に墜とした腕前には感服するしかありませんな!」
「ヘレナ!? 何で君まで乗ってるの!?」
早口かつ超小声で「シミュレーターで」と付け加えつつ誤解を招くようなことを大声で言ったヘレナへと大慌てでツッコミを入れる僕であったが、それがむしろみんなの注目を集めてしまったようだ。
サブナック隊のみんなやメカニックさんたちの視線が集まる中、それに気付いていないアルマとミア、気付いていて敢えてふざけるヘレナが姦しく話をし始める。
「そうだった! 私たち、三人纏めてクロスさんに撃墜されちゃったんだ! これはもう、リリアさんに倣ってお尻にパーソナルマークを入れるしかないね!」
「あ~、残念だな~! 私はこの通り、体に色々入れちゃってるから、スペースがないんだよな~!」
「だったら私とミアがヘレナの分まで入れるよ! お尻の片方に自分の分を入れて、もう片方に半分こずつでいいかな?!」
「え、ええっ!? あの、できたら私、そういうのはちょっと……体に墨を入れるっていうのは……あ、落書きみたいなのでしたらギリギリセーフ、かな……?」
「おい、聞いたかよ。クロスの奴、他の部隊の女にも手を出してるみたいだぜ……」
「しかも三人同時撃墜とか、どんだけだよ……!?」
「墜とした女の尻にパーソナルマークを入れるのは恒例行事になってるんだな。流石は大蛇、支配欲が強い」
「違う、違うんだ……! 誤解なんだって……!!」
助けて、ソンネン少佐。また僕はひどい風評被害に遭っています。
っていうかこの子たち、いたずら好きが過ぎない? やってることが完全に旅人を困らせる妖精じゃないか!
「それじゃあ、クロスさん! 本当にお世話になりました!! あ、入れ墨は入れないから安心してください!」
「まあ、ボディペイントくらいならいいんじゃないっすかね? 今度、アルマとミアのケツに落書きしたら、写真撮っておきますよ」
「あの、本当にすいません……ご迷惑をおかけしました……」
そんなこんなで、騒がしい妖精たちはありったけの混乱を置き土産にしてキャリフォルニア・ベースを去っていった。
周囲からの好奇の目に晒される僕の肩を叩いたセシリアが、盛大な溜息を吐きながら言う。
「あのね……相手は選べって言ったでしょ? 誰彼構わず手を出してどうするのよ、ホント……!!」
「違うんだって! 本当に、違うんだって!」
またとんでもない誤解が生まれた気がする。いや、絶対に生まれた。最後の最後でこうなるだなんて、本当にどうなってるんだ、これは?
僕の嘆きが響くキャリフォルニア・ベースは、直後に生まれたみんなの大爆笑で埋め尽くされ……こうして、僕とノイジー・フェアリー隊のファーストコンタクトは幕を下ろしたのであった。
……ジオン公国軍地球方面軍司令官、ガルマ・ザビが戦死したのは、この数日後のことだ。
ここからジオンは苦しい状況に追いやられ、僕たちの戦いも厳しさを増していく。
次に僕が出会うのは、苦境の中で戦い続けていた炎の魔神と連邦の妖精……たった一日だけ、顔を合わせた時間は数時間程度。だが、彼らの存在は僕の心に深く、そして強く刻まれている。
この戦争は、何のためのものなのか? 何故、僕たちは戦うのか? その答えはきっと、人それぞれなのだろう。
ならば……僕は、せめて捧げようと思う。その答えを見出して散った、
かなり長くなってきたので、少しでも見やすくするために章ごとに分けるかもしれません。
次の話は物語というよりレポートなので、微妙に今後の展開のネタバレになるかも。