ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
(また砂漠か……本当に、縁があるなぁ……)
――宇宙世紀0079年10月9日、僕はゴビ砂漠にいた。
アリゾナの次はゴビかと、何かと砂漠に縁があるのはどういったことだと思いながら自分のザクと武装、食料を乗せた車を走らせる僕は、ウルフ・ガー隊が待機しているらしきポイントへと向かっていく。
(ウルフ・ガー隊……隊員のほとんどが軍事法廷で有罪判決を受けた者たちで構成されている、囚人部隊。隊長以外は今回の任務に関して何も知らないって話だけど、大丈夫なのか……?)
ヨハンソン隊長の話を思い返しながら、僕はこれから合流するウルフ・ガー隊の面々に対して、一抹の不安を抱いていた。
話によれば、ウルフ・ガー隊はジオン軍中央アジア方面迎撃部隊に編入され、反攻作戦を狙う連邦軍との戦いに臨んだが、圧倒的物量の前に部隊は敗北。その後の追撃を辛くも振り切ることに成功するが、戦いの混乱の中で本隊とはぐれてしまった。
……というのはウルフ・ガー隊の指揮官であるヘンリー・ブーン大尉が描いたシナリオで、実際はそうではない。
本体とはぐれたふりをしてゴビ砂漠を彷徨ったウルフ・ガー隊は、連邦軍の補給基地を発見し、物資を確保するためにそこを襲撃する中で、搬送された新型MSを発見、それを破壊するために動く……というのが、隊員たちに事情を隠しながら任務を遂行しようとしている大尉の考えたプランだそうだ。
どうして事実を言わないのか疑問に思ったが、ヨハンソン隊長曰く、「犯罪に走る心の弱い人間が連邦軍の新型MS破壊任務という危険な任務を通達されれば、まともに戦うことができなくなる可能性が高いから、敢えて隠したのだろう」とのことだった。
僕としては仲間のことは信用した方がいいと思うのだが、実際に部隊の指揮を執る大尉がその方がいいと判断したのだからそれに口を挟むべきではないだろう。
そんなことを考えながら車を走らせていた僕は、砂嵐の中から発せられるプレッシャーのようなものに気付き、ブレーキを踏んだ。
次の瞬間、砂嵐の中で丸い光が輝き、それがまるで目玉のように動くと僕の方を見やる。
「へぇ……? 勘が良いね」
あの光はザクのモノアイだなと考えた僕の目の前で、砂嵐が晴れた。
予想通り、その中から姿を現したJ型ザクの姿を目の当たりにし、そこから聞こえてきた女性の声を耳にしたところで、そのザクがマシンガンの銃口を向けてくる。
「お前は何者だ? どうしてこんなところを走ってる?」
「……本隊からはぐれてしまった狼に、届け物をするためですかね」
「……!!」
無線を使って遠回しな答えを返せば、驚いたザクは少し間を空けてからマシンガンを下ろしてくれた。
そうした後、振り返った彼女は手招きをしてから僕を案内してくれる。
「補給か、助かったよ。とは言いつつも、こっちもある程度の物資は確保したところだったんだが……あって困るようなもんじゃないしね。隊長に報告するから、ついてきな」
「ありがとうございます」
ザクに先導してもらいながら、僕は車を走らせていく。
その先に待ち受ける、激戦の予感を感じながら。
△ ▽ △ ▽ △
「君か。俺たちの捜索命令を受けて、基地から派遣されたというのは」
「クロス・レオンハート曹長です。ウルフ・ガー隊の皆さんが無事で良かった」
「どうせなら輸送機で来てくれれば、この砂漠からも脱出できて助かったんだがな」
「マーチン、無理を言うな。ここは連邦の部隊がごろごろいる。そんなところを無防備に飛べるわけがないだろう。こうして補給物資を持って車を走らせるだけでも十分過ぎるほど危険だ。彼に感謝しよう」
「わかってますよ、大尉。曹長を責めたわけではないんです」
案内された先で待っていたのは、二人の男性だった。
片方は白髪で頭に鉢巻を巻いたナイスミドルといった感じの男性。もう片方は左目に大きな傷がある、ムキムキマッチョで粗暴な雰囲気のある男性だ。
「自己紹介が遅れたな。俺はヘンリー・ブーン大尉、ウルフ・ガー隊の指揮を執っている。こっちは、マーチン・ハガー。君と同じ曹長だ」
「助かったぜ、クロス。まあ、もう少し早く来てくれれば、さらに助かったんだけどな!」
「マーチン、一言多いぞ」
「大丈夫です、ブーン大尉。見つけ出すのが遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
ハガー曹長に悪意はないことを感じ取れている僕は、苦笑を浮かべながらそう答えた。
そのタイミングで、また別の人物が話に加わってくる。
「大尉、補給物資はレイとレスタにザクで運んでもらっています。食料と水もありますので、後でお召し上がりになってください」
「助かる……ああ、サキ。こちらはクロス・レオンハート曹長。物資を運んできてくれた、我々の恩人だ」
「あっ、先ほどのザクの……! 案内、ありがとうございました。おかげで助かりました」
「曹長……? 失礼しました。サキ・グラハム軍曹です。階級が上の方だと知らず、先ほどは失礼な物言いをしてしまいました。申し訳ありません」
「そんな、気にしないでください。僕みたいな若造に敬語なんて、使う必要ないですよ」
「確かに……若いな。まだ十代だろう? 君みたいな若者が戦場の真っただ中にいるとは、少し寂しさを感じるよ」
赤紫色の髪をした、ワイルドな雰囲気を漂わせる美人。
グラハム軍曹……いや、止めよう。なんかブシドー的な人物とフラッグファイターを思い出しちゃうから、サキ軍曹と心の中で呼ぶことにした。
「そういやクロス、お前はどこの部隊の人間なんだ? 中央アジア方面軍にはいなかった気がするんだが……?」
「僕はサブナック隊という、少し特殊な部隊に所属しているんです。便利に使われる遊軍部隊みたいなものですよ」
「便利使いの遊軍部隊……?」
「……どうした、サキ? 何か気になることでもあるのか?」
「……いえ、なんでもありません」
僕の言葉を聞き、目を細めたサキ軍曹の視線が突き刺さる。
なんだか戦場で感じるそれとは違うプレッシャーを感じる僕であったが、ブーン大尉が間に入ってくれたこともあって、それ以上は特に何も話が進むことはなかった。
「それで、大尉。この砂漠からの脱出方法ですが――」
「ああ、わかっている。先ほど、襲撃した補給基地にもう一度向かってみよう。少し、気になることもあるしな」
サキ軍曹の言葉を受けたブーン大尉が軽く頷きながら言う。
そうした後、僕の方を向いた彼は、こんなことを言い始めた。
「曹長、我々は今から連邦軍の補給基地に向かう。君もザクは持ってきているな?」
「はい。戦闘があることも見越して、準備してあります」
「よし。では、君も作戦に参加してくれ。長旅の直後で悪いが、我々が無事に生還できるかどうかがかかっている。少しでも戦力がほしい」
敬礼の姿勢を取りつつ、頷く。こうなることは予定通りだ。
ブーン大尉とハガー曹長が自分の機体のチェックに取りかかる中、残されたサキ軍曹が声をかけてきた。
「レオンハート曹長、あなたのザクのことですが――」
「あっ、クロスで大丈夫です。敬語も使わなくていいですよ。僕の方が年下ですし……」
「……そう。なら、お言葉に甘えさせてもらうわ。代わりに、私のこともサキでいいから」
その申し出は本当にありがたい。グラハムという名前(苗字)がちらつく度に、さっきから頭の中で「この気持ち、まさしく愛だ!」とか「抱きしめたいな、ガンダム!」とCV中村さんのキャラの迷台詞が飛び交っていたから。
前世の知識って結構損になることも多いんだなと思う僕へと、サキ軍曹が言う。
「あんたのザク、専用機だよね? しかも普通のJ型と違う。もしかしなくても、あんたってかなりのエースパイロットなんじゃないの?」
「さ、さあ、どうでしょう? 自分でエースを名乗るのは、ちょっと恥ずかしいかなって……」
「専用機を与えられているエースが、たった一人で囚人部隊への補給任務のために派遣される? なんか、きな臭いね……」
「そ、そう仰られましても、僕は任務を請け負っただけですので……あは、あははははは……」
この人、かなり鋭い。ブーン大尉が描いたシナリオの裏に隠れている真実にも気付いてるんじゃないだろうか?
笑ってごまかすことしかできない僕は、サキ軍曹からの訝し気な視線に耐えた後、ザクのチェックをすると言ってその場から逃走した。
僕たちが出撃したのは、それから数十分後のことだ。
僕はその先で、炎の魔神と砂漠の妖精に出会うことになる。
軽い原作解説
機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079『死にゆく者たちへの祈り』
結構マイナーな作品なので軽くですが解説させていただきます。
こちらはスーパーファミコンで発売されたゲーム、『死にゆく者たちへの祈り』というタイトルはその中に収録されているというシナリオ名になっています。
詳しく書くとネタバレになってしまうので内容に関しては語りませんが、IGLOOやブルーディスティニー、コロ落ち、ジオニックフロントなどの作品などと比較すると知名度は低く、上記の作品と違ってVSシリーズにも参戦していません。(多分……)
オリジナル版とPS3で他のガンダム外伝と一緒にリメイク(?)されたサイドストーリーズ版、並びに宇宙世紀の戦いを主軸に作られたGジェネジェネシスくらいしか外部出演もないんじゃないかな……?
ただ、この作品はとあるMSたちが初出演した作品でもあるので、今回シナリオに組み込ませていただきました。