ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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あの、なんかガンダムさんがいるんですけど……?

 補給を済ませた僕たちは、標的である連邦軍の補給基地の近くまでやって来ていた。

 上手く敵から発見されない位置に身を潜めながら基地の様子を窺いつつ、僕はウルフ・ガー隊の戦力を同時に確認する。

 

(僕を除くと全部で五機。内四機はJ型ザクで、残りの一機は――)

 

 隊長であるブーン大尉の乗機は、かなり珍しい機体だ。

 ただ、同時にかなり有名な機体なので、僕も少しではあるがこのMSのことは知っている。

 

 カラーリングは青。肩のスパイクも相まって、グフによく似ているこのMSの名前は『イフリート』。ジオン軍のエースパイロットにのみ支給される、地上戦用MSだ。

 瞬間的な機動力はグフをも上回り、武装もある程度使い勝手がいい物を揃えたおかげで、中近距離戦ではかなりの強さを発揮する。

 

 僕が知っているのは両肩が赤く塗られた『イフリート改』と、この戦争から一年経った頃に運用される『イフリート・ナハト』という機体で、ほとんど改造を受けていない素のイフリートを目にするのは初めてかもしれない。

 

 この機体を預けられるということは、ブーン大尉は相当な腕前を持つパイロットということなのだろう。

 犯罪者であるというのに、ここまでの信頼を得ている彼の素性が少し気になってきた僕であったが、そこで基地へと進攻するMS部隊を発見した。

 

「大尉、味方の遊軍です。合流しましょう」

 

 グフとザクの混成部隊を発見したサキ軍曹が、ブーン大尉へとそう提案する。

 普通ならば彼女の言うことに従い、あの部隊と一緒に基地に攻め入るべきなのだろうが……大尉は敢えてそれを却下し、言う。

 

「……いや、ここで様子を見る」

 

「そんな、何故です!?」

 

「あの基地にはまだ何かがある。それを見極めたい。あの連中には悪いが、噛ませ犬になってもらう」

 

「確かに……あの設備の充実ぶりは、こんな砂漠の中にある基地にしては大袈裟過ぎます。何かがあるという大尉の意見には、自分も同意です」

 

 この基地の中に、連邦軍の新型MSが運び込まれているかもしれない。

 その情報を隊の中で唯一知っているブーン大尉の言葉に同意し、彼の作戦を後押しすれば、モニターに映るサキ軍曹の顔が訝し気に歪んだ。

 

「チャンスがあれば我々も動く。総員、戦闘準備を整えて待機だ」

 

「奴らのお手並み拝見ってところですか。まあ、それも悪くないでしょう」

 

 ブーン大尉の指示に従ったハガー曹長が、のんびりとした口調で言う。

 僕も彼の傍で成り行きを見守る中、曹長が声をかけてきた。

 

「なあ、クロス。お前、あいつらの戦いぶりをどう思う?」

 

「そうですね……初手は良いとは思いますが、その後が真っすぐ過ぎるかな、と……」

 

 目の前で基地の防衛戦力と戦い始めたグフとザクの混成部隊は、砂嵐に乗じて敵基地を奇襲するところまでは戦略として良かったと思う。

 ただ、その後の戦い方があまりにも真っすぐ過ぎる。わらわらと突っ込み、防衛戦力と撃ち合って……という、正攻法しか取っていない。

 

 そのやり方ならばまあ全滅はしないし、敵基地の内部まで踏み込めるだろう。

 しかし、間違いなく犠牲は出る。現に装甲も薄く、足を止めて撃ち合っているザクたちは、防衛砲台からの攻撃を喰らって次々と撃破されていた。

 

 折角奇襲という形を取ったのなら、全員で足並みを揃えずに機動力と装甲に優れるグフが一気に内部まで進攻してしまった方が良かったと思う。

 グフならば敵の攻撃を回避か防御でしのげるし、そうやって彼らが囮になっている間にザクたちが防衛戦力を攻撃すれば、もっと犠牲は抑えられたはずだ。

 

 ……という意見を述べれば、ハガー曹長は感心した様子で僕に合格を言い渡してくれた。

 

「おお、やるじゃねえか! 流石はその歳で曹長にまでなってるだけはあるな!」

 

「師匠の教えが良かったからですよ。僕自身は、大した人間じゃありません」

 

「大した人間じゃない、ねぇ……? だったらどうしてパーソナルカラーと専用機を与えられてるんだか?」

 

「しっ! お前たち、集中しろ! 何かが起きるなら、そろそろだぞ……!」

 

 余計な会話を繰り広げる僕たちを、ブーン大尉が叱責する。

 その声に反応し、生き残ったグフたちへと視線を向けたその瞬間……それは起こった。

 

「あ、あれは……まさか……っ!?」

 

 攻撃を受けた基地の中、その倉庫の一つから一機のMSが姿を現す。

 連邦軍がMSを運用していることも驚きだが、僕が驚いたのはそのMSにすさまじいレベルの見覚えがあったからだ。

 

「は、早い……!! しかも、ビームの剣を装備しているですって……!?」

 

 そのMSは、両手にビームダガーとでもいうべき短剣を装備し、基地に侵入したグフに襲い掛かった。

 恐るべきはその機動力で、近接戦闘に特化したグフに反応する暇すら与えず、一撃で葬り去ってしまったではないか。

 

「出たな……どうやらあれが、連邦軍の新型で間違いないようだ」

 

 新型……そう、新型だ。僕は新型MSの破壊もしくは奪取の任務を受け、ここに来たんじゃないか。

 決してそれを忘れていたわけではない。しかし……まさか、このタイミングであの機体と顔を合わせることになるとは思わなかった。

 

 白を基調にしたトリコロールカラー。額のV字型アンテナも、ヒロイックなその顔も、全てに見覚えがある。

 肩パーツに見慣れないマークが入っていることや、やや細身だという違いはあるが……間違いない。

 

(ガンダム……! あれは、ガンダムだ!!)

 

 シリーズのタイトルにも入っている、看板MS……ガンダム。

 その名前を冠した機体は数多く存在しているが、今、僕の視線の先にいるのもその中の一機だ。

 

 名を、『ガンダム・ピクシー』。ジオンのグフやイフリートと同様、機動力と近接戦闘能力に特化した地上戦用機体。

 本家のガンダムよりも装甲が薄いものの、それを遥かに凌駕する機動性を持つ()()が、この砂漠に姿を現した。

 

「よし……! 奴はまだ、操縦に慣れていない! ここで仕留めるぞ!!」

 

 ブーン大尉の号令を合図に、ウルフ・ガー隊のザクたちが一斉に立ち上がる。

 僕もまたハッとすると共に愛機を起き上がらせ、敵を見据えたところで……ヨハンソン隊長の言葉を思い出した。

 

『私は、今回もお前が当たりを……貧乏くじを引くことになる予感がしているんだ』

 

(本当ですよ、隊長。とんでもない貧乏くじを引いちゃいましたよ……!!)

 

 今から僕はこのザクで戦うのだ。連邦軍最高峰のMSであるガンダムと、正面衝突するのだ。

 自分が引いてしまった貧乏くじの大きさに笑うことしかできなくなりながらも、僕はザクを駆り、戦場へと踊り出て行った。

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